2022年12月、新潟県で記録的な大雪となりました。その大雪のため柏崎市の国道8号では22キロにわたって車の立ち往生が発生しました。突発的な大雪がこの立ち往生の大きな原因ですが、さらに、夏タイヤのままのトラックなどがいたということから、この立ち往生は長期化してしまったようです。
この立ち往生の一つの要因として、タイヤチェーンを準備せずにいたトラックがあったという話もあります。タイヤチェーンの装着は少しまえから義務化されています。それを知らなかったのでしょうか。
もしかしたらこのコラムを今、読んでいる方の中にもタイヤチェーン装着が義務化となっていること、知らないという方もいるかもしれません。
ということで今回はタイヤチェーンについて、いつから義務化になったのか、どんな場所で装着しなくてはいけないのか、またもしタイヤチェーン規制があったのに装着しなかったらどんな問題があるのかについて解説します。
目次
スタッドレスタイヤを装着していても
タイヤチェーンの装着が義務に
2022年12月に発生した新潟県の大雪による立ち往生は思いのほか長期化してしまったようです。さらに、今シーズンこういった大雪がさらに続くという予報も出ていて、ドライバーとしては雪に対する備えを十分にしておくことが求められています。
そもそも、前述のに新潟の立ち往生のケースですが、この時期、新潟を走るのに夏タイヤのままというのはあまりにも無防備。日本有数の降雪地帯ですからスタッドレスタイヤ+タイヤチェーンを用意しておくべきだったでしょう。もちろん今回の大雪はスタッドレスタイヤ装着車でも脱出できないほどのレベルだったので、用意していたからといって立ち往生を免れたということはないかもしれませんがドライバーとしては、雪に対する準備はしておくべきなのはいうまでもありません。
これまでも積雪や凍結などで路面状況が悪化した際には「チェーン規制」が出されていました。ただ、この以前のチェーン規制はタイヤチェーンでなくても、スタッドレスタイヤなどの冬用タイヤなどを装着していればOKという運用がなされていました。
しかし、「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」の一部が2018年12月に改正にされ、「チェーン規制」が「タイヤチェーンが必須な規制」という意味にかわりました。つまり、チェーン規制が出された場合は、スタッドレスタイヤを装着していても、タイヤチェーンを装着することが義務化されたのです。
ただし、雪が降ったらどんな場所でもチェーンを装着しなくてはならないというわけではありません。装着が義務付けられている路線を走行中にチェーン規制が出た場合は、タイヤチェーンを装着しないとならないということです。
罰則に関してですが、チェーン規制の発令時は、規制区間手前で検査員による装着確認を実施され、タイヤチェーンを装着していないとその区間を通行することができません。つまり違反にならない(違反となる区間をそもそも走行できない)ので罰則や違反金はありません。
チェーン規制の対象区間は
変更もあるので随時確認を
チェーン規制は大雪特別警報発表されるような異例の降雪時のみ発令されるものです。例えば先日の新潟の大雪のようなケースですね。ただし、全てのケースで規制が実施されというわけではなく、2022年10月時点での対象区間は下記の13区間です。
対象高速道路 | ||
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上信越自動車道 | 長野県信濃町IC~新潟県新井PA間 | 24.5km |
中央自動車道 | 山梨県須玉IC~長坂IC間 | 8.7km |
長野県飯田山本IC~園原IC間 | 9.6km | |
北陸自動車道 | 福井県丸岡IC~石川県加賀IC間 | 17.8km |
滋賀県木之本IC~福井県今庄IC間 | 44.5km | |
米子自動車道 | 岡山県湯原IC~鳥取県江府IC間 | 33.3km |
浜田自動車道 | 広島県大朝IC~島根県旭IC | 26.6km |
対象国道 | ||
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国道112号線 | 山形県西川町月山沢~鶴岡市上名川間 | 15.2km |
国道138号線 | 山梨県山中湖村平野~静岡県小山町須走字御登口間 | 8.2km |
国道7号線 | 新潟県村上市大須戸~上大鳥間 | 15.3km |
国道8号線 | 福井県あわら市熊坂~あわら市笹岡間 | 3.2km |
国道54号線 | 広島県三次市布野町横谷~島根県飯南町上赤名間 | 2.5km |
国道56号線 | 愛媛県西予市宇和町~大洲市北只間 | 7km |
これらの対象区間でチェーン規制時が発令された際には、規制区間の手前でタイヤチェーン装着状況の確認が行われます。そのため先日の新潟県ではチェーン規制は発令されていませんでした。
これらの地域は過去に立ち往生が発生した場所や急な坂がある危険な区間で、その規制対象区間内でスタッドレスタイヤなどを装着していてもタイヤチェーンの装着が義務付けられます。
新潟のケースでは通行止めが
解除されるまで26時間かかった
今回記録的な大雪となり通行止めとなったのは新潟県の国道8号と17号です。上記の通り国道8号はチェーン規制の対象ですが、新潟県内の国道8号と17号はその対象ではなくチェーン規制は出されていなかったようです。そのせいもあったのかもしれませんが、22キロにわたって断続的に立ち往生が発生し、最大で800台ほどの車が滞留したとのこと。そして通行止めが解除されるのに26時間かかりました。
新潟県はもともと豪雪地帯ですが近年は、雪国ではない地域でも予想を超える突然の大雪に見舞われるというケースが増えています。実際この原稿を書いている今現在、四国や九州でも大雪となっているというニュースが先ほどありました。
そういった地域の方は、スタッドレスタイヤを準備されていない方もきっと多いはずです。当然チェーンなども持っていない方も少なくないでしょう。そもそも雪道に対しての備えはほとんどされていないのではないでしょうか。
そのような状態で、先日の新潟のような大規模な立ち往生に巻き込まれたらどうなるのか。身動きできなくなるだけでなく、危険でもあります。実際渋滞路ではありませんが、停電のため車で暖を取っていた方が死亡するなどという事故もすでに起きています。さらに、数日にわたって都市機能のマヒしまうこともあるでしょう。必要な物資が手に入らないかもしれません。
近年の雪の降り方を見ると、そのような状況も現実として起こりえるということです。そういったことから国土交通省は2018年12月に大雪時のタイヤチェーン装着を義務化したのです。このタイヤチェーンの義務化の対象道路は前述のとおりです。これらの地域にお住まいの方は、スタッドレスタイヤに交換がおすみでも、それとは別にチェーンも必ず準備しておきましょう。
タイヤチェーンの選び方
使用の際の注意点とは
タイヤチェーンをお持ちでない方は、まずどんなタイプを用意しておけばいいのか、そこからわかりませんよね。タイヤチェーンですが、その種類にはいくつかのタイプがあります。一般的なのは金属製のもので、いわゆる金属チェーンです。
他にも金属ではないウレタンやゴム製のも非金属性のものもあります。そして、最近注目されているのが簡単に装着できる布製のものです。これらどれを装着しても問題ないのか? 基本的には大丈夫です。道路運送車両の保安基準では「タイヤ、チェーン等は走行装置に確実に取り付けることができ、かつ、安全な運行を確保することができるものでなければならない。」となっているので、上記のタイプならどれを装着してもほとんどの場合問題ありません。
こういった金属製やウレタン製、ゴム製、布製などのチェーンを用意しておけば、いざというときに「タイヤチェーンを取り付けていない車両通行止め」となってしまう規制区間も走行することが可能です。ただし、ネット通販などで売られているスプレー式のチェーンはダメです。
見た目にチェーンが装着されているかもわかりませんし、規制時にチェックができません。そもそもその効果も限定的で、物理的なチェーンほどの安全性は期待できません。ではどのチェーンが良いのかそれぞれのポイントを押さえておきましょう。
金属チェーン(ラダー型・亀甲型)
最も一般的なのが金属性の鎖で出来たチェーンです。はしごのような形をしているものがラダー型で亀の甲羅上に鎖が配されるのが亀甲型です。
ラダー型は種類が多く、対応するタイヤサイズも豊富で価格も比較的手ごろです。特徴は縦方向のグリップ力は十分ですが横方向へのグリップ力が弱いということ。対して亀甲型は縦と横、両方にグリップ力を発揮してくれ、ラダー型に比べれば乗り心地も良いとされています。
どちらも金属製なので、比較的頑丈で寿命も長めです。しかし、雪のない道路で使用すると切れやすいという欠点もあります。シンプルな構造なので価格は安めです。
非金属チェーン(ゴム製、ウレタン製など)
金属製に比べると装着時の乗り心地や、走行時の静粛性に優れているとされているのが非金属チェーンです。その種類もデザインも豊富で金属製チェーンよりも装着もしやすいのが特徴です。
ただしその耐久性は金属チェーンに劣るとされており、寿命も短いものが多いようです。ただ、金属性のチェーンはドライな路面でダメージを受けやすいですが、非金属チェーンは、ドライな路面でも切れにくく、騒音も少ないというメリットもあります。
価格は金属チェーンよりも少し高めです。また欠点としては、金属チェーンのようにコンパクトに収納できないので、トランクでスペースを取ってしまうということ。軽自動車などの場合かなりじゃまに感じるかもしれません。
どちらの場合でも金属製ならJISマーク表示のあるものを、ウレタンやゴム製チェーンなら日本自動車交通安全用品協会のJASAA認定マーク表示のあるものを選べば安心でしょう。
布製タイヤチェーン
近年注目されているのが特殊な繊維で出来た布カバータイプのタイヤチェーンです。靴下のように袋状の布製チェーンをタイヤの上からかぶせるだけでOKというもの。たったそれだけでスタッドレスタイヤ以上のグリップを発揮することができます。また収納性も高く、軽量なので運搬しやすいというのも大きなメリットでしょう。
ただし、欠点もあってそれは耐久性が低いということです。布製なので金属のように丈夫ではなく、寿命はだいたい100kmから150kmほどとされています。ドライ路面を走るとさらにダメージが大きくなり擦り切れてしまいます。
基本は緊急時に装着するというもので、繰り返し使用するというものではありません。ただし、緊急用として常備しておくのにはぴったりです。
布製タイヤチェーンで、チェーン規制区間を走行することができるのかというと、各地方自治体や警察官等担当者の認識により異なるようですが、基本はOKのはずです。ただ、場合によっては通行できないことがありますのでご注意が必要です。
いずれのタイヤチェーンも装着時は走行速度にも気を付けてください。安全性やチェーンの耐久性の面からみて、一般的な金属チェーンなら30km/h以下。ウレタンやゴム製チェーン、布製チェーンは50km/h以下に、スピードを抑えるようにしてください。
タイヤチェーンが物理的に
装着できないクルマもある
タイヤチェーンはあらゆるサイズのものが市販されているので、上記のタイプの中からマイカーのタイヤサイズに合うものを選んで購入しておきましょう。購入したら、実際に使用する前に装着テストをしておくと安心です。やっておくといざというときにスムーズに装着ができるはずです。
気を付けなくてはいけないのが、クルマによってはタイヤチェーンがそもそも装着できないものもあるということです。タイヤチェーンはタイヤの上にかぶせるように装着するので、装着するとタイヤの外径が大きくなってしまいます。そのためホイールハウスにある程度クリアランスがないと装着することができないのです。
輸入車、特にドイツ車にはそのような純正の状態なのに金属チェーンが装着できないというものもあります。タイヤハウスの間に十分なクリアランスがなく、金属チェーンを装着するとタイヤハウスをチェーンで傷つけてしまうからです。
また、ドレスアップ目的でサスペンションを交換して車高を下げていると国産車でもタイヤチェーンが装着できなくなっている場合もあります。その場合は車高をノーマル状態に戻しておくのが良いでしょう。車高調で車高を下げているなら元に戻ることもできるはずです。
輸入車オーナーで、ノーマル状態なのにタイヤチェーンが装着できないという場合はディーラーに純正オプションとして適したチェーンがないか尋ねてみましょう。専用のものが用意されているかもしれません。
もしチェーンがないのであればスタッドレスタイヤを装着しつつ、緊急用として布製タイヤチェーンを用意しておくなどの対応をしておくといいでしょう。
タイヤチェーン以外に
用意しておくべきもの
タイヤチェーンを用意したら合わせてゴム手袋やスコップ、懐中電灯や新聞紙、ビニールシートなども用意しておくといいでしょう。気温の低い雪道で、素手でチェーンを装着するのは現実的ではありません。セットで車に積んでおくようにしましょう。
また、もしかしたら雪道でクルマがスタックしてしまう可能性も考えて、緊急脱出用のスノーヘルパー(タイヤの下に敷くはしご型のアイテム)や、けん引用のロープなども準備しておくと万全です。
基本的なことですが、タイヤチェーンをどのタイヤに装着するか把握されていますか。タイヤチェーンは駆動輪側に装着するのが基本です。駆動力のかかる側のタイヤに装着しないとトラクションがかからず前に進むことができないからです。
例えばクルマがFF車(前輪駆動)であれば前輪側に装着します。FR車(後輪駆動)であれば当然後輪側に装着します。難しいのが4 WD車です。4輪すべてに装着するのが理想ですが、チェーンを4輪分も用意するのは大変ですし、装着の手間を考えるとあまり現実的ではありません。
マイカーが4WD車であるなら、そのクルマがFFベースの4WD車(乗用車ベースのエクストレイルやハリアーなど)なのかFRベースの4WD車(ランドクルーザーやジムニーなど)なのかで装着するタイヤが変わってきます。
FFがベースの4WD車なら前輪で、FRベースの4WD車ならば後輪となります。よく分からないという場合はクルマの取扱説明書などで確認してみてください。ネットで検索してもいいでしょう。
雪道を抜けたら速やかに
タイヤチェーンを外しましょう
チェーンは装着したらそれで終わりではなく、しばらく走行したら必ずゆるみがないか安全な場所に停めてチェックをしてください。特に新品のチェーンの場合は、伸びやすいので注意が必要です。緩んでいたらしっかり増し締めします。
また、チェーン規制区間を抜けたら速やかにチェーンを外しましょう。ドライ路でチェーンを装着したまま走行すると切れる可能性があります。振動はクルマにもよくないので、外してトランク保管してください。
今回はタイヤチェーンについて選び方や使い方を解説しました。今シーズンはどうやら全国的に大雪となりそうですので、クルマで出かける際は油断することなく、タイヤチェーンをはじめ雪道対策に関して怠らないようにしておきましょう。