例年よりも厳しい暑さになるといわれていた今年の夏。全国的に異例の速さで梅雨明けとなりましたが、7月に入ってからは、また雨が続き「戻り梅雨」などということになって、いっとき涼しくはなりましたが、それもつかの間。7月後半に入りやはり猛暑がやってきました。

猛暑の夏、ドライバーにとってつらいのが車内の暑さです。クルマに乗るたびにまるでサウナのような車内の熱気にウンザリしてしまいます。とくに日向に駐車したあとは、ハンドルに触るのも躊躇してしまうくらい車内はアツアツ! そんなときはどうすればいいのでしょう。

そこで今回は、夏間の駐車後に車内の温度を極力上げない方法と、熱気がこもってしまった車内の素早く下げ、快適な環境にする方法についてご紹介します。

夏場屋外に駐車しておくと
車内の温度はあっという間に55℃まで上昇!

車内の温度はあっという間に55℃まで上昇

真夏の車内がとんでもない暑さになるということはだれもが知っていますが、実際どれくらいまで温度は上がるものなのでしょう。JAFは過去に実験を行っています。それは、気温35℃の真夏の炎天下に車を停めて、車内の温度はどのように変化するのかというものです。

この時の実験によると、外気温35℃の状況下で、昼12時から16時の4時間測定した結果、窓を閉め切った車内の温度はわずか30分で約45℃まで上昇。15時頃には55℃を超えてしまったとのことです。そのような高温の車内はとてもではありませんが耐えられません。万が一閉じ込められればあっという間に熱中症になってしまうでしょう。

毎年夏になると、車内に子供を置き去りにして、熱中症となり死亡してしまうというような悲惨事故が起きています。駐車中の車内に子供を残し、エアコンが作動させたままならいいだろうと、用事をすませて(パチンコなど遊んでいたという許しがたいケースが多いようです)いたらエアコンが途中で切れてしまい、車内の温度が急上昇、そして悲惨な結果となってしまうといった事故です。

こういった事故は長時間子供を放置していた結果と思われがちですが、そうではありません。幼児ならわずか10分程度、夏の車内に放置された場合、命を落とす恐れがあります。

幼児は大人と比べて、汗をかく能力が低く、自分で水分補給することができません。さらに、体の調子が悪くなってもそれを大人に伝える事がうまくできないことから熱中症になりやすいといいます。

「買い物の間だけ」や「忘れ物を取りにいくくらいなら」などと、短時間でも子供を車内に置き去りにすることは絶対に避けるべきです。外気温がそれほど高くない状況でも、取り返しのつかない事態になることもあり得るので絶対にやめてください。

このように命の危険さえある真夏の車内の温度。乗り込む際に素早く温度を下げるテクニックも重要ですが、まずは駐車中に極力温度を上げないようにするための方法を考えてみましょう。

すぐにできる車内の温度上昇を
効果的に抑えると方法とは

車内の温度上昇を効果的に抑えると方法とは

車内の温度を上げないようにするためにはどのようなことができるでしょうか。いくつか挙げてみましょう。

①日差しを避けて日陰に駐車する

夏の強烈な日差しによって車が熱せられ車内の温度が急上昇してしまうのですから、日陰に駐車するというのは確かにありです。うまいこと日陰に駐車できれば駐車後の車内の温度上昇を抑えることができるはずです。

とはいえ、あくまである程度です。それに必ずしも日陰に駐車できるとは限りません。普段からクルマを管理している駐車場に簗がなければ日差しを避けるのは難しいでしょう。

②駐車の際窓を少し開けておく

最もシンプルな対策です。車内に熱気がこもらないよう、クルマの窓を開けておき、風を通すのです。驚くほどの効果は期待できませんが、確実に車内温度の上昇が抑えられます。

ただし、防犯面の心配はあります。また、万が一ゲリラ豪雨などがあれば車内が水浸しになってしまう危険も。あまり長時間の駐車ではなく、雨の心配のない環境であればやってみる価値はあるのではないでしょうか。

③ウインドウシェードを使う

車内に差し込む日差しを遮るならフロントガラスを覆うウインドウシェードを使用するという方法も考えられます。調べてみると確かにある程度効果が期待できるようです。

過去の実験データなどを見るとウインドウシェードを使用することで、2~5℃程度、車内温度の上昇を抑えられたという結果が得られています。例えばサンシェードを使用していない場合には50℃だったものが、使用することで45℃に抑えられるということです。

また、直射日光が車内に差し込むことを防げるため、ダッシュボードの温度上昇を抑える効果も期待できます。真夏の炎天下に駐車した車のダッシュボードは、時に70℃を超えることも珍しくありません。

ウインドウシェードを効果的に使用すれば、そんな触れないくらい熱くなるのを防ぐことができます。その分エアコンを使った際にも温度を下げやすくなるでしょう。さらに、強烈な日差しでダッシュボードが割れたり、ドライブレコーダーやカーナビなどの故障を防いだり、インテリアの色褪せを防ぐことができるでしょう。簡単ですので是非試してみましょう。

④白いボディカラーやインテリアカラーのクルマに乗り換える

これも過去にJAFによって実験が行われているのですが、黒系のボディカラーと白系のボディカラーの同車種を、同じ環境において温度の上昇を観察すると、黒系に対して白系は車内温度が5℃も低くなったとのことです。

同じようにインテリアカラーに関しても黒系より白系のほうが温度の上昇は緩やかになるという結果が出ています。

ということは、白系のボディカラーでさらに白系のインテリアカラーのクルマに乗り換えれば、夏の灼熱地獄が避けられるということです。とはいえ暑さ対策のためにクルマを乗り換えるというのはさすがにあまり現実的ではありませんね。

⑤ハンドルやシートにカバーをかけておく

今使用中のクルマでも、似たような方法で、可能なこととしてはハンドルやシートなど日差しがあたる部分に、白いカバーをかけておくというのはいかがでしょう。日差しを遮り直射日光でハンドルなどが熱せられるのを防ぐことができます。それにこれならすぐにでも実践できるはずです。

こうしておけば、クルマに戻った際に「熱くてハンドルが握れない!」などということはなくなるでしょうし、少しは車内温度の上昇を抑えられるはずです。簡単なので、サンシェードの使用と合わせてやってみる価値はあるのではないでしょうか。

⑥断熱(遮熱)フィルムを貼る

日差しはウインドウから差し込んできます。そこで、ウインドウに高性能な断熱(遮熱)フィルムを貼っておくというのも効果が期待できます。最近のクルマははじめからIR(赤外線)カット効果を持つガラスが使われているものもありますが、そうでない少し前のクルマであればIRカットフィルムの装着は効果的です。

その際の注意点としては、フロントウインドウとフロントのサイドウインドウには濃色のスモークフィルムを貼らないということ。違法ですし、色が薄くても効果的にIRカット効果を持つフィルムもあるのでそういったものを使用してください。安くはありませんがやってみる価値はあります。

車内の温度を素早く下げるには
どんな方法が効果的?

車内の温度上昇を効果的に抑えると方法とは

紹介した方法を組み合わせれば、ある程度車内温度の上昇は抑えられるはずです。しかし、最近の日本の夏は想像を超える猛暑が続いています。

上記の方法を試して温度の上昇をある程度抑えても、結局は暑いことには変わりません。やらないよりはやったほうが間違いなく良いのですが、サウナ状態になった車内に乗り込むのはやっぱり勇気が必要です。

では、灼熱地獄となってしまった車内の温度をできるだけ素早く下げるにはどうすればいいでしょう。ネットを検索してみるといくつかの方法が紹介されています。その中で、先日ツイッターで話題となったハッシュタグがあります。それが #熱中症対策 #ドアバンバン です。

これは車内の熱い空気を素早く逃す方法を紹介したツイートで、その方法はこのようなもの。

  1. 助手席後ろの窓を開ける
  2. 運転席のドアを5回開閉する

こうして空気の通り道を作り、ドアを開閉するだけで車内温度が下げられる、といったものでした。

これは、クルマ専門誌でも過去に紹介された方法で確かに効果はあるようです。ただし、54℃の車内を45℃に下げるのには5回の開閉ではなく、2分間繰り返しの開閉が必要だったとのこと。効果はあるのでしょうが、真夏の炎天下で、こういったことを2分間も繰り返すのはかなりつらそうです。クルマに乗るころには汗だくですね。

また、勢いよくドアを開閉させると騒音もうるさいですし、ドアヒンジなどにも影響がありそう。また、クルマの横にある程度のスペースがないとできませんので、正直おすすめはしにくいです。ただ、こういったことが試せる環境でならばやってみてもいいかもしれません。

ボディに水をかけたり
冷却スプレーを使うのは効果的か?

冷却スプレーを使うのは効果的か?

クルマのボディに水をかけてダイレクトにクルマを冷やすというのはどうなのか。これもJAFが過去に実験を行っています。日差しで熱せられたクルマに8Lの水を3杯かけてみるということを行ったそうです。

その結果は車内の温度は0.9℃下がっただけ。労力に見合った効果かどうか考えると微妙です。それこそゲリラ豪雨で大量の水でボディを冷やせば効果的でしょうが、やってみる価値はあまりなさそうです。

では、カー用品店やディスカウントショップなどで売られているクルマ用の冷却スプレーを使うのはどうでしょう。冷却スプレーはLPGと呼ばれる可燃性ガスや揮発性のあるアルコールのエタノールなど気化する際に熱を奪っていく作用を利用したものです。

LPGを使ってエタノールを車内に噴射することで、こもった熱を奪い、車内の温度を下げているのですが、正直筆者も使ったことはあるのですが、その効果は限定的でした。例えば日差しで熱せられたハンドルに直接噴射して、部分的に冷却するということは可能ですが車内の温度を確実に下げるというのは難しいでしょう。

また、使用する場合には注意も必要です。LPGは空気より重く、噴射すると車内の床などに一定時間溜まりやすいという特徴があります。LPGは可燃性のガスのため、そのガスがなんらかのきっかけで引火して爆発を起こすという可能性があるのです。

実際に、冷却スプレーを使用したあとに車内でタバコに火をつけて引火したケースや、エンジンを始動した際に引火して爆発をしたという事故も起きているようです。

冷却スプレーを使用した際はすぐにクルマに乗りエンジンを始動させず、十分に換気してから乗り込むように注意したほうが良いでしょう。もちろん火気は厳禁です。

エアコンを効果的に使用するのが
最も簡単に温度を下げる方法

冷却スプレーを使うのは効果的か?

車内の温度を素早く下げる方法として、最も効果的なのは非常に単純ですが、エアコンを使用するという方法です。そのやり方はとても簡単です。

  1. エアコンを外気導入にして設定温度をLo(最低)にします。
  2. 窓を全開にして、2分走行し車内の熱気を排出します。
  3. 窓を閉めて内気循環に切り替えエアコンを稼働させます。

これだけです。実験では、車内温度が55℃の状態から測定し、窓を全開にして走行後わずか2分後には車内の温度は28℃まで低下したということです。

そして温度設定がLo(最低)のまま、2分後に窓を閉めて、エアコンを内気循環に切り替えたのちも、車内温度は28℃をキープし続けたとのこと。

ポイントははじめに外気導入で車外の空気を取り入れ、車内の熱せられた排出すること。そして、車内が冷えたら内気循環にして、冷えた車内の空気よりも熱い車外の空気を車内に入れないということです。これだけで効果的に車内の温度を下げることが可能です。これはやってみるしかありませんね。

ただし、エアコンを内気循環のままにしておくと、車内の酸素量が低下して眠気を誘うなどの悪影響もあるので、ある程度涼しくなったら外気導入に切り替えるようにしてください。

最近はオートエアコンが当たり前で常にAUTOのままという方も多いと思いますが、紹介したように外気導入と内気循環をうまく活用することで、エアコンの効果を高めることができるのです。車内の暑さに毎年困っているという方は、是非紹介した方法を試してみてください。