近年、台風や豪雨による冠水被害が日本各地で頻発しています。2021年の夏も全国的な豪雨で、50年に一度といわれるレベルの水害も珍しくなく、もはやどこに住んでいても、いつ、自分が水害の被害者となるかわからない状況です。

豪雨で河川が氾濫し街に水があふれれば住宅に大きな被害が発生します。さらに、住宅と同じく大切な財産であるクルマも損害をうけてしまうかもしれません。

もしあなたのクルマが水没してしまったらどうしますか。大きな損害であることは間違いありませんが、さらにそのクルマがカーリース車両であった場合はどうなるのか? そもそも水没車は修理できるのか、また、水没の場合自動車保険はおりるのか、さらにリース車ならリース契約はどうなってしまうのか。いろいろ気になることがあります。そこで、今回はクルマの水害と保険に関して、特にカーリースに関わる部分にスポットをあてわかる範囲で調べてみました。

水没してしまったクルマは
ほとんどの場合廃車扱い

まず、水害による被害でクルマが水没してしまったらそもそも修理は可能なのでしょうか。これに関しては被害の程度によります。運が良ければクリーニングや、破損したパーツの交換だけで修理が可能なケースもあります。ただしそれはかなり運のよい場合です。

一旦水につかってしまったクルマは、カーペットやシートなどの内装に雑菌や臭いが染みつき、クリーニング程度では簡単には取り切れません。内装をすべてはがし、徹底的にクリーニング&防錆処置を行えば臭いをとりさることはできなくはないでしょうが、かなり大変ですし、費用だってかかります。

また、いくらきれいにクリーニングしても、水分はどこかに残っていて、あとあとサビが発生してボディにダメージを与える可能性もあります。つまり被害の程度が低ければ修理は可能かもしれませんが、元の状態に戻せるかどうかは微妙です。残念ながら廃車となるケースが多いと思います。

さらに、もし走行中に冠水した道路を走行しエンジンが止まってしまったというケースであれば、エンジンに重大なダメージをうけているはずです。エンジン内部に水を吸い込みウォーターハンマーによってコンロッドなどが曲がっていた場合などは基本的にそのエンジンはもう使えません。処分です。

それにエンジンがそこまでダメージを受けていれば吸排気系や電装系も同様に大きなダメージを受けているはずです。もはや修理は難しいと考えるべきでしょう。

もちろん、莫大なお金を支払えばどんなクルマでも修理(というかもはやレストアですが)は可能です。しかし、フェラーリやポルシェなどといった超高級車や、ハコスカGT-R、トヨタ2000GTなどといった博物館級のヒストリックカーならまだしも、一般的な乗用車であれば、そこまで費用をかけて修理する意味もあまりないはずです。廃車にして別のクルマを購入した方がお金はかかりません。

それに、当然ですがそのような莫大な修理代は車両保険ではまったく賄うことはできません。ようするに水没してエンジンがストールしてしまったというケースではほぼ間違いなく廃車となるはずです。

そんな事態を避けるには、とにかく早めに避難をして、高台などにクルマを保管するしかありません。近くのホームセンターやショッピングモールに立体パーキングがあれば、一時的にそこに避難させるくらいしか対処方法はないかもしれません。とにかく、水害がおきそうとなったら人間もクルマも早めに避難をする。それしかないでしょう。

しかし、避難が間に合わず結局クルマが水没してしまった場合どうすればいいのか。修理はむつかしいとしても車両保険はおりるのか、さらにリース車の場合はどうなってしまうのか。

水害による損害の補償に
車両保険は利用できるのか

クルマの水没による損害に対して、自動車保険(任意保険)の車両保険は使えるのでしょうか。地震などの災害によるクルマの損害は車両保険で補償されないという話を聞いたことはないでしょうか。たしかにそれは間違いではありません。じゃあやっぱり水害による水没に保険は払われない?

そんなことはありません。台風やゲリラ豪雨、高潮などによる洪水が原因で車が水没してしまったような一般的な自然災害であれば任意保険の車両保険を使ってクルマを修理することが可能なのです。つまりクルマが水没してまっても車両保険に入っていれば補償されるということ。

ただ、車両保険は故障したクルマの修理代を補償してくれるものなので修理不能の全損となった場合は、時価相当額(保険契約時に決めた額)の満額の保険料が支払われる形になります。

そして時価額を超えた金額は支払われません。全損とは支払われる保険金の範囲内で修理が不可能なことを指します。物理的に修理が可能であっても、そのように経済的に修理が不可能(車両保険の補償額をオーバーする)場合は全損扱いとなってしまうのです。

例えば、車の時価額が80万円で、修理費用に120万円かかるという場合に、そのクルマにはそこまでの金額を負担してまで修理する価値はないとされて全損扱いにとなってしまうわけです。そして、全損になった場合はクルマの時価額を上限として保険料が支払われます。つまりこのケースでは80万円が上限です。

車両保険に「免責金額」を設定していた場合でも水没なら車両保険の免責金額は引かれず自己負担額ゼロで車両の保険金額を受け取ることは可能です。

そのあとは、保険金を受け取り、足りない分を自己負担して修理するか、それともそのクルマを処分してあらたに別の中古車を入手するかという判断になるでしょう。

地震や噴火、津波などによる損害には
車両保険は適用されない

ちなみに、水没の原因が地震もしくは噴火、津波などによって生じたものである場合は基本的に車両保険による補償は受けられません。これらの災害は極めて甚大な損害を発生させる可能性があるため、適切な保険料の設定が困難。そのためほぼすべての保険会社が地震、噴火、津波を原因とする損害を保険会社の免責事項としているためです。通常の車両保険では、これらの災害が原因の損害を補償することができないのです。

ただし、一部の保険会社では「地震・噴火・津波危険『車両全損時一時金』特約」などと呼ばれる特約を用意している場合があります。こういったものです。

参考サイト:https://www.axa-direct.co.jp/auto/services/coverages/car/eq_special_coverage.html

この特約は、車両保険(一般車両保険または「車対車+A」車両保険)に契約している場合に付帯できる特約で、地震、噴火、津波によって車が「全損」となった場合に、一定額の保険金(一般的には50万円)が保険会社から支払われるというもの。

これは、東日本大震災で起きた津波によるクルマの水没被害を受けて、新たに作られたもの。万が一のことを考えたらこういった特約にも加入しておいた方がいいかもしれません。

水害によって車両保険を使っても
等級は1等級のダウンで済む

水害による損害には基本的に車両保険が適用されるということは分かりました。では、車両保険を使用した場合の等級のほうはどうなるのでしょうか。

交通事故などで自動車保険を使用した場合は、通常次年度は3等級ダウンという扱いになります。そして事故あり係数が適用(3年)となり、保険料が翌年から一気に高くなってしまいます。それが気になって、小さなダメージであれば、あえて車両保険を使用せず実費で修理を行うという方も少なくありません。車体の損害を補償してくれる保険にせっかく入っているのに、それではなんだか本末転倒のような気もしますが。

ただ、水害が原因でクルマが水没したという場合は、1等級ダウン扱いとなります。事故あり係数適用期間も1年で交通事故などよりも短くなります。

それは、なぜなのかといえば、水害による水没事故は自分自身が原因とならない事故と判断されるためです。こちらの保険会社の回答でもそのように書かれています。

参考サイト:https://www.sonysonpo.co.jp/auto/guide/agde073.html

ですので、比較的軽度の水害被害で、車両保険の範囲で十分修理が可能であれば、積極的に車両保険を利用した方がいいでしょう。実費で修理を行うよりも間違いなくお得です。

カーリース車が水害で廃車となった場合
車両保険だけでは賄えない違約金

では、水害によって損害を受けたクルマが、購入したものではなくカーリース車両だった場合はどうなるのでしょう。自動車保険に関しては前述通りですが、カーリースの場合、リース契約の問題があります。クルマが全損となってしまったら、いうまでもありませんが継続しての使用が不可能。そのためカーリース契約も強制的に解約となります。

さらにリース契約者はカーリース会社に対してそのクルマの違約金を支払わなければならなくなります。支払う費用としては残っていたリース期間分のリース料金全額。加えてリース契約時に決めたクルマの残価分も請求されます。

リース契約時に設定していた残価はリース満了時にクルマを返却して相殺するものですが、クルマ自体が廃車となればそれは不可能です。そのため契約者がその分の全額を違約金として負担することになるのです。

ただ、クルマがなくなるので税金や車検料、メンテナンス料などは不要となりその分は引かれますが、それらの費用は微々たるもの。加えてこれら違約金は一括で支払うのが基本となっています。これは厳しいですよね。

水害という不可抗力によってクルマが廃車となってしまったのに金銭的に大きな負担を払わなくてはいけない。そのうえ、生活に必要なクルマまで失ってしまうわけです。車両保険に入っていて、ある程度保証されたとしても、リースの違約金の全額を賄うことはできません。そのダメージは甚大です。

このような異常気象による水害は今、日本中で頻発しています。いつ自分の身に降りかかるかわかりません。最低限自動車保険(任意保険)は車両保険にも加入しておくべきでしょう。さらにカーリースを利用しているなら、リースならではのリスクにも対応できる保険にも加入しておくべきだと思います。

カーリース向け任意保険なら
廃車による違約金もカバーできる

ではリース車ならではの保険とはどのようなものなのか? それがカーリース専用の任意保険です。前述のとおり、通常の任意保険の車両保険では、水害などによってクルマが廃車になってもカーリースの違約金などは補償されません。

しかし、カーリース専用の任意保険ならそんなリース特有のリスクまで補償してくれます。リース特有のリスクとは前述した水害のような不可抗力によってクルマが廃車、リース契約が強制解約となった場合のこと。その際に発生する違約金までもリース専用の任意保険なら補償してくれるのです。

こういったリース専用の任意保険は、多くの場合はカーリース会社がカーリース契約とセットで用意していることが多いようです。セットで申し込めば毎年の更新手続きや保険料支払など面倒な手続きも不要な上、支払う保険料も月々のリース代に含めることができます。そのため別途任意保険に加入するよりもクルマに対する支出の管理もしやすくなります。

ただし、リース会社によってこういったカーリース専用の任意保険が用意されていない場合もあるようですので、まずは問い合わせてみるべきだと思います。

さらにメリットとしてはカーリース専用の任意保険は、保険料に関しても契約がカーリースと合わせた3年や5年といった長期での契約となるために通常の1年契約の保険料より割安になります。

そして、等級に関しては、以前に契約していた任意保険の等級が引き継げないというデメリットもありますが、それを超えるメリットがあります。それはリース車専用の任意保険では、事故を起こしても満期まで等級ダウンがないということ。たとえ事故によって保険を使用したとしても翌年からの保険料が上がるということはありません。

そして、万が一水害などによってクルマが損害を受けて、廃車→リース強制解約、となっても、契約者側の自己負担なくリースの解約が可能となるのです。

リースの中途解約費用は、一般的にそのリース車の利用期間が長くなるほど安くなっていくものですが、カーリース専用任意保険は、その中途解約費用と同額になるように、車両保険金額が設定されるので毎年の保険料を払いすぎることもありません。非常に合理的で万が一の備えとしてはこれ以上に安心なものはないといえるのではないでしょうか。

カーリース特有のリスクに備えて
リース専用保険加入を検討しよう

日本は他の国に比べて自然災害が多いとされています。豪雨による水害などはもはや珍しいものではなく、今後いつあなたが被害者になるかわかりません。

もしあなたがカーリースを利用しているのであれば、やはりそのための備えは必要。水害などの損害を受けた際に、クルマが廃車となってしまうケースも想定しておくべきでしょう。

そして、リースの強制解約に対する備えとしてカーリース専用任意保険の車両保険に加入しておくことをしっかり検討しておくべきです。

今の保険の等級が引き継げないのはイヤ、というのでない限りはカーリース専用の任意保険にはセットで加入するのがベストでしょう。もちろん使わないで済むのが一番ですが、万一の備えとして入っておけば、より安心して、カーリース車によるカーライフを送ることが出来るはずです。是非検討してみて下さい。