クルマを運転するうえで最も危険な季節といえば冬です。その理由は気温の低下と雪。ちょっとした操作ミスでクルマは簡単にスピンやスタックを起こし、スピンした先に対向車などがいれば、大きな交通事故につながることもあるでしょう。

また、雪や凍結路でクルマがスタックして、身動きできなくなってしまったらどうしますか。大切なクルマに傷をつけることなく脱出するのは想像以上に困難です。いずれにしても万が一のことを想定しウインタードライブに向けた事前の準備と、いざという時に対処できる知識は持っておく必要があります。

間違った方法で脱出を試みてカーリース車両に傷をつけてしまっては最悪です。なんといってもカーリースの車両の傷は契約終了時に違約金につながります。そこで、クルマに極力傷をつけないようにスタックのトラブルから脱出する方法についてご紹介します。

カーリース車両は原状回復が基本
トラブルで傷をつけないよう注意

天候や気温を気にすることなく一年中快適な移動を約束してくれるクルマ。家族の送り迎えやちょっとしたお買い物、帰省やドライブなど身近にあればこれほど便利なものはありません。とはいえ年々価格が上昇する新車を購入するのはハードルが高い。そこで注目をあびているのが、マイカーのように新車を利用できる新車カーリースです。

頭金などの準備不要で手軽ですし、家計の管理なども簡単。そのメリットが理解され、個人ユーザーにもニーズがふえていることを受けて、最近は便利な個人向け新車カーリースサービスも充実しています。クルマの購入をやめ、カーリースの利用をはじめた、もしくは、これからはじめようと検討中という方も少なくないはずです。

カーリースは名義上の所有者はカーリース会社となりますが利用者はカーリース契約者。ナンバーもレンタカーやカーシェアなどの“わ”ナンバーではなく、通常のマイカーと同じ。もちろん乗るための予約などもいりません。

月々定額のリース料を払うだけでその中に自動車保険や税金の支払い、さらに車検費用も含まれているので急に負担が増えることもなく家計の管理も簡単。リース契約期間はマイカーと同様に便利に気軽に使用することができるのが何よりも魅力です。

ただ、カーリースを利用するうえで気を付けなくてはいけないのが車体へのダメージです。カーリースはあくまで借りているクルマ。リース契約終了時の原状回復が基本です。そのためクルマに極力傷をつけないような運転を心がける必要があります。

スタッドレスタイヤ装着は当たり前
雪道では万全の準備が必須

しかし、ウインタードライブではどんなに慎重に運転していてもなんらかの傷やダメージ与えてしまう可能性が高まります。もちろんスタッドレスタイヤを履かずにタイヤが滑って交通事故を起こしてしまった!などというのは論外ですが、タイヤチェーンの誤った装着でクルマに傷をつけることもありますし、路面のコンディションが悪くタイヤを脱輪させてしまうなどということもあり得ます。

特に最近の冬は記録的な大雪に身見舞われることが増えてきているので万全の準備が必要です。本格的に雪が降り始める前に、タイヤはスタッドレスに履き替えタイヤチェーンは事前に用意し、装着方法も予習しておくといったことを欠かさないようにしましょう。

また、雪道にはまりクルマがスタックしてしまった場合にはどうすればいいのか、そのことについても事前に学んでおくことが重要です。ネットで検索すれば様々な脱出方法が紹介されています。それらを見ておくだけでもそれなりに役立ちます。しかし、やり方を間違えるとかえってより深刻な事態になることもあるので注意が必要です。

例えば、脱出どころかかえって雪の中にタイヤが埋まってしまったり、雪道脱出用のヘルパーで車体を傷つけたり、クルマの下敷きになってしまうなどという危険もあります。あいまいな知識で脱出にチャレンジするのは危険ですので、どのようなツールを使い、正しい手順を踏んで脱出を試みましょう。では実際どうすればいいのか、次の章からは、スタックの状況別の脱出方法をご紹介します。

雪道でのスタックからの脱出方法とは

そもそもスタックはどのような状況のことをいうのか。簡単に説明すると、砂地やぬかるみ、雪道などのような滑りやすい路面で、タイヤのグリップ力が低下し、アクセルを踏んでもタイヤが空転して進めなくなる状態のことをスタックといいます。

スタックするとクルマは前にも後ろにも動けなくなるので当然ですが立ち往生してしまいます。こうなると何らかの脱出手段を講じてタイヤのグリップ力を回復させなくてはなりません。それが軽度なスタックであればクルマを前後に揺らすなど簡単な方法で脱出できる場合もありますが、最悪の場合はクルマが完全に走行不能となってしまうこともあります。

もしそのスタックの原因が雪であった場合、立ち往生の結果クルマが雪に埋もれて自力ではどうすることもできないなどということもあるのです。そうなったら重機などで救出してもらわないと脱出は難しいでしょう。さらに積もった雪で立ち往生したクルマの中に閉じ込められ、一酸化中毒になってしまうなど最悪の事態も考えられます。実際そのような事故は過去にも何度も起きているのです。そうならないために状況にあった適切な方法で脱出を試みましょう。以下が代表的なスタックの脱出方法です。

●タイヤが雪や凍結路でスリップしている

滑りやすい路面でタイヤが空転してしまうというスタックの中でも比較的軽度なシチュエーションです。凍結路や新雪にはまって前にうまく進まないという場合は、タイヤのグリップを取り戻すために以下のようなことを試してみてください。

まず、スコップなどがあればタイヤ周辺の雪を取り除きます。そしてゆっくり小刻みに前進とバックを繰り返し前後の雪をタイヤで踏み固めます。こうすることでタイヤのグリップを回復します。そして、ある程度動けるようになったらゆっくりと発進しましょう。

また、雪国などでは、道路脇に砂箱が用意されていることもあります。砂が手に入るのであれば、駆動輪の外周にこの砂を振りかけることで、凍結路面でもグリップ力の回復が期待できます。周囲を探してみてください。

●雪を踏み固めても脱出できない

そもそもタイヤが空転してクルマを前後に動かすこともできないという場合は、タイヤチェーンをタイヤの下に縄梯子のように敷いてみましょう。タイヤと路面の間に摩擦力の大きなチェーンを介して、その摩擦力でグリップ力を回復させます。タイヤがチェーンの上に乗ったらゆっくりとアクセルを踏み脱出を試みます。

タイヤチェーンは駆動力がかかった際に跳ね上がってタイヤハウスやフェンダーに傷をつけてしまう可能性もあるので、できれば緊急脱出用のスノーヘルパー(樹脂でできた板で、自動車用品店などで売られています。)などがあればそちらを使用したほうが良いでしょう。

気を付けないといけないのはいずれにしても決してアクセルを踏み込みすぎないことです。チェーンやスノーヘルパーが勢いよく後方に弾き飛ばされ、後方に人やクルマなどがあれば大変危険です。気を付けてください。

それらもない場合は緊急用に毛布やタオル、クルマのフロアマットなどを使うという方法もあります。駆動輪側のタイヤの下にこれらを敷き、摩擦力を発生させるのです。ただし、うまくタイヤの下にかませることができないと駆動力がかかったとたんに滑ってしまいタイヤが空転して状況が悪化することもあり得ます。また、使用したフロアマットが傷んでしまうのも気になるポイントです。どうしようもない緊急時以外には使わないほうが良いかもしれません。

そして、上記の方法を試す場合は、駆動輪側にできるだけ荷重をかけるのも効果的です。同乗者がいる場合に限られますが、FF車なら助手席に乗ってもらう。FR車なら、後部座席に何人か乗ってもらうといいでしょう。こうすることで駆動輪側により荷重がかかり、脱出できる可能性が高まります。

また、タイヤの空気圧を下げ、タイヤの接地面積を増やすことでもグリップ力を上げることができます。ただし、脱出後に適性の空気圧に戻す必要があるので注意が必要です。

これらの方法を試してもどうにもならない場合は、同乗者や通りがかりの人に救援を求め、クルマを押してもらいましょう。また、牽引ロープやけん引したくれるクルマがあれば引っ張ってもらってもいいでしょう。

●雪の塊に乗り上げてしまい、動けなくなった

タイヤがスリップしている時と同じようにゆっくりとクルマを前後に動かしてみます。それでクルマが動くようであればタイヤが接地しているので前後の雪を踏み固めて、タイヤのグリップ力を回復させ脱出を試みます。しかし、タイヤが浮いてしまっており、クルマを前後に動かすこともできないという時は、スコップなどで雪をかき出して、タイヤを路面に着地させてください。

その際、危険なのでクルマの下に入るようなことはせず、スコップを伸ばして慎重にクルマの下の雪をかきだします。タイヤが無事着地したらゆっくりと発進を試みます。さらにスノーヘルパーなどを併用すると効果的です。

それでもまったく動かないという場合は、周囲のクルマに救助をたのみ牽引ロープなどで引っ張ってもらいましょう。ただし、クルマが全く動かない状況での、牽引ロープの使用は経験者でないとクルマを傷つけてしまう可能性があります。また過度な負荷がかかって牽引ロープが切れ、クルマや作業者を傷つけてしまうこともあります。自信がない場合は素直に自動車保険のロードサービスや、JAFなどに救助を頼むほうが賢明です。

●タイヤが脱輪して動けない

脱輪してしまった場合はロードサービスによる救助を頼むのが確実です。その場にドライバーしかいない場合、デフロック付きの4WD車でない限り、一人で脱出するのは非常に困難です。しかし、2WD車でも、脱輪したのが駆動輪(FFなら前輪、FRなら後輪)ではなく、周囲に救助を頼める人がいる場合は、クルマを後ろから押してもらうことで脱出できることもあります。助手席に重り代わりに誰かに同乗してもらいつつ、後ろからクルマを押しゆっくりとアクセル踏んで脱出を試みましょう。

しかし、脱輪したのが駆動輪であったり、片側の前後輪ともに脱輪してしまった場合は、アクセルを踏んでも接地しているタイヤ側には駆動力が伝わらない(デフでつながった駆動輪の片輪が完全に浮くと、もう片輪には駆動力が全く伝わらなくなる。)ので後ろから押すだけでは脱出は困難です。クルマが動かないからとアクセルを強く踏み込むと危険なので、他の方法を考えましょう。

もし、クルマが軽自動車など軽い場合は数人の人力で持ち上げて移動できる可能性があります。手や足が滑らないように気を付けなくてはいけませんが、試してみる価値はあります。

ほかにはジャッキを使い路面の高さまで車体を持ち上げて、駆動輪と路面の間に板などをはさむという方法もあります。この方法はとても効果的なのですが、路面が雪道の場合それは簡単ではありません。また、ジャッキを正しくかけることができないと、外れる可能性があり大変危険です。よほどの緊急時以外あまりおススメできません。失敗すればクルマに傷をつけてしまうこともあるので、迷ったら素直にロードサービスをお願いするのが間違いありません。

雪道でのドライブには危険がつきもの
とにかく慎重な運転を心がけよう

いずれの方法を試す場合も、作業には慎重さが求められます。滑りやすい雪道は普段の道路とは状況が異なるのでわずかな気のゆるみが大きな事故やトラブルにつながる可能性があります。十分に気を付けてください。

また、吹雪など視界が遮られた環境では車外で作業を行うのは危険です。ロードサービスに連絡をして救出を頼むべきです。安定した天候と、作業できるスペース、そして安全確保ができたときのみにチャンレンジしてみて下さい。できればこういったノウハウは使う機会がないほうがベストです。ウインターシーズンにクルマを運転する際は、雪道は危険であるということを常に頭に入れておき、大切なカーリース車両に傷を付けないよう、とにかく安全な運転を心がけてください。