その肩身が益々せまくなりつつある愛煙家にとって、最後の砦ともいうべく空間がマイカーの車内です。マイカーの中なら誰にも迷惑をかけることなく思う存分タバコを楽しむことが可能です。でもそのクルマが購入したものではなく、カーリース車両であった場合にはどうなのでしょう。もしかしたら後々大きな問題になることもあるかもしれません。たかがタバコですが、あなどっていると思いのほか手痛いしっぺ返しがあるかもしれません。では、いったいどのような問題となるのでしょうか?もしそうならば、クルマにこびりついたタバコの臭いや汚れを取る方法はないのでしょうか。

一度ついたタバコの臭いと
ヤニ汚れはなかなか落ちない

健康増進法の改正もあって、今や街中では自由にタバコを楽しむこともできなくなっています。喫煙用に設けられたスペースなどもありますが、そこでおとなしく一服を楽しんでいるだけでもなぜか理不尽な白い目で見られてしまうなんてことも珍しくありません。でも、愛煙家にしてみれば「自分たちは高い税金を負担して、ちゃんとルールを守ってタバコを吸っているだけなのに、何でこんなにも嫌われてしまうのか?」などと疑問を感じていることでしょう。

飲食店ではもはや喫煙は一切NG。公共の施設ももちろんダメ。コンビニ前の灰皿を使えば煙たがれるし、自宅に帰れば家族からも煙い、臭いと嫌がられる。もはや愛煙家にとって一服をたのしめる最後の砦は自分だけの密閉空間であるマイカーの中だけにしかないのかもしれません。

でも、車内で一度でもタバコを吸ってしまうと、その臭いは長い間消えずに残ってしまう上、長期にわたった喫煙を続けると臭いがこびりつき、内装が黄ばんでしまうこともあります。さらにタバコの火でシートに焦げ跡などを作ってしまったらそれこそ最悪。でもシートの焦げは問題外として、このタバコの臭いと汚れは掃除すれば問題ないのではないか?と愛煙家なら考えるかもしれません。

しかし、周りを見てください。タバコに臭いに対して病的なくらい敏感で、ちょっと臭いを漂わせただけですぐに注意してくる人(得てしてそのような人は禁煙でタバコをやめたかつての愛煙家であることが多いです)はいませんか?そう、タバコを吸わない人にとって、タバコに臭いや汚れはものすごく気になるものなのです。

そして、そういった人たちが気にならないレベルまで臭いや汚れを完璧に取り去るのは簡単なことではありません。だからこそ「タバコの臭いや汚れを完璧に除去します!」などとうたった専門業者がいるのです。

リースの場合タバコのせいで
違約金が発生することも

もちろんいくらクルマにタバコの臭いがこびりついていたってそれが自分購入したものならば何も気にすることはありません。せいぜい家族や友人に嫌がられるくらいでしょう。また、手放す際に下取りや買い取り価格の査定が下がるだけです。

査定…。そう、喫煙車は中古車市場でも嫌われるので下取りの査定が下がってしまう可能性が非常に高い。ということは、つまり、カーリース契約満了後の残価査定でも大きな影響を受ける可能性があるということです。カーリース車両は、リース満了後、原状回復を原則として返却します。そして査定を受けマイナス査定(原状回復ができていない)となった場合は原状回復(この場合やタバコの臭い取りヤニのクリーニング、焦げ跡の補修など)のために必要な費用となる違約金が請求されることになるのです。

車種やダメージの状況によって変わりますが、例えば中古車査定などの場合喫煙車であると判断された場合、3~15万円程度は買取価格から差し引かれるとされています。カーリースでも同様に査定が行われるのでそれくらいの差額を違約金として請求される可能性があると考えていいでしょう。

どうでしょう。タバコを吸っただけなのに、そのことであとあと受けるダメージが思いのほか大きいものになるということがお分かりでしょうか。今現在カーリース車両に乗っている愛煙家の方は、これは何とかしなくてはならないでしょう。

隅々までこびりついてしまう厄介なタバコの臭いと汚れは簡単に除去することができないとされていますが、ある程度クリーニングができるのであれば、リース車両の返却前に是非やっておくべきでしょう。ヘビースモーカーで、車内に臭いや汚れがひどくこびりついてしまった場合には、DIYでは限界もありますが、ある程度臭いや汚れを除去することはできます

ちょっとでも査定がよくなる可能性があるのならやっておいて損はありません。というか印象をよくするためにも洗車や車内の掃除は是非やっておくべきことなので、ついでにタバコの臭いに解消も試してみるといいでしょう。そのための方法をご紹介します。

加熱式タバコでも喫煙車として
判断されてしまうことも

タバコの臭いの原因はなんでしょうか?それは、タバコに含まれているアンモニア、酢酸、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、トリチルアミンなどの添加物にあるとされています。これらのさまざまな添加物が燃焼することで、タバコ独特の嫌なニオイが発生しているのです。

ちなみにアイコスなどの加熱式タバコを愛用している方は、「これなら臭いもしないし煙もないからクルマで吸っても問題ないだろう」などと考えていえるかもしれませんが、臭いは決してしないわけではありません。アイコスから出る水蒸気もタバコを吸わない人間にとっては臭いと感じるものなのです。また、臭いも車内にも残ることから、「アイコスしか吸ってないから禁煙車と一緒だ!」などと主張してもコンディションによっては査定時に喫煙車とされてしまう場合があります。

ただし、ニコチンやタールがない電子式タバコの場合は、ほとんど臭いが発生しないので禁煙車と扱われることもあるそうです。いずれにしても査定の際に査定士が気になるような臭いが残っていれば減点対象となる可能性はあります。いずれにしてもクリーニングは行っておいたほうが良いでしょう。

フロアマットの奥にこびりついた
汚れや匂いを洗浄する

車内のクリーニングによってタバコの痕跡を極力除去するにはとにかく隅々まで徹底的に掃除を行うことが重要です。なぜならタバコの煙の粒子はとても小さいため、天井やフロアマット、エアコンの中など、どこにでも侵入してしまうからです。

まずは、フロアマットをすべて取り外します。タバコの灰は下へ落ちるのでフロアマットには臭いの原因となる灰やヤニが溜まっているからです。クルマから離れた場所で洗濯たたきなどを使って灰やゴミ、ホコリを落とします。ある程度落ちたら掃除機をかけます。毛足の長いフロアマットは掃除機をかける前にブラシなどでゴミをかき出しておくと効果的です。

次に洗います。最初に軽く水洗いしたあとに洗剤を使います。バケツにためた水で中性洗剤や専用洗剤を泡立てて、たわしや洗車用ブラシを使ってゴシゴシとしっかり洗って汚れをかきだします。汚れが落ちたら、しっかりとすすいで洗剤を洗い流します。最後に天日干しでしっかり乾燥させます。これが重要です。フロアマットに湿気が残っていると雑菌が発生してかえって悪臭を放つ原因になります。完全に乾燥したらフロアマットを車内に戻しましょう。

掃除の基本は水拭き
固く絞ったウエスで隅々まで拭く

次に掃除機をかけてホコリやゴミなどを取り除きます。使用する掃除機は強力な家庭用のものがおすすめです。パワーのあるコイン洗車場の掃除機をつかうのもよいですが、不特定多数が使っているものなのでノズル部分が汚れていないかチェックし汚れていたらふき取ってから使うようにします。シートの下や天井の内張り、ドアポケットの中やコンソールの隙間なども徹底的に掃除機をかけてください。

さらに固く絞ったウエスなどで、車内を徹底的に拭きます。ダッシュボードやメーターパネル周りなどはウエスを割りばしなどに巻き付けて細かなところまで拭いてください。またシートの生地にも汚れや匂いが染みついています。しっかりと拭き掃除をしてください。シートの汚れが思いのほかひどい場合は専用のシートクリーナーなどもあわせて使いましょう。

シート以外にも天井の内張りやドアポケットの中、ハンドグリップやルームミラーの裏側まで手の届く範囲はすべて拭きます。これでインテリアに付着したタバコの汚れと臭を取り除くのです。水拭きしてみるとウエスが想像以上に汚れることに気づくはずです。ウエスはその都度バケツですすいでさらに拭き取り作業を行っていきます。

目に見える場所だけでなくグローブボックスの中やサンバイザーの裏、シート下など隅々まで拭きとりましょう。拭きとりが終わったらしっかりと乾燥させ、カビの原因となる湿気を取り除きましょう

もし、水拭きの効果があまりなかった(ヤニがこびりつき汚れが取り切れないなど)場合は、専用のクリーナーや拭き取りシートなどを使うといいでしょう。特に内装が白やベージュなど明るい色の場合には、丁寧に汚れを取り除くことが重要です。ヤニ汚れで気が付かないうちに茶色に変色している可能性があります。きれいに拭き掃除をすると見栄えが大きく変わってきます。

エアコンの内部も
タバコの臭いがこびりつきやすい

やっかいなことにタバコの煙はエアコンの内部にまで侵入してしまいます。車内をしっかり掃除してもエアコン内部にこびりついた臭いを完全に完全に除去しない限り車内のタバコ臭さは消えません。エアコンのスイッチをいれるたびにタバコ臭が充満してしまいます。そんなエアコンからのタバコ臭対策として簡単にできて効果的なのがエアコンフィルターの交換です。グローブボックスの内部などに簡単に取り外せるエアコンフィルターがあるはずなので、一年以上交換していないなら迷わず交換します。エアコンフィルターの位置や、取り外し方などはクルマの説明書などに書かれているはずです。

次にエアコン内部のエバポレーターの洗浄です。エバポレーターは空気を冷やすための重要なパーツでここを通過することで空気は冷却されます。車内の空気が通過するので、タバコの煙があればその煙の粒子もここを通過することになるため汚れが付着しやすく、タバコの臭いもこびりつきやすいのです。ですから洗浄することで臭いの原因を取り除くことができます。カー用品店などにいくと専用のエアコン洗浄剤が売られているのでそちらを使うことで洗浄が可能です。

ただし、このエバポレーターまでたどり着くのにはグローブボックス他いくつかのパーツを外さなくてはならないので、DIYでの作業は簡単とはいえません。クルマいじりの経験がない人にはあまりおすすめできません。自分には難しいかなと感じる場合はスチームタイプのエアコン消臭剤を試してみてください。これは車内で煙(スチーム)を焚き、その煙(除菌、消臭成分を含んだミクロの煙)で隅々まで消臭するというアイテムです。これなら使い方は簡単なので是非試してみてください。

最後の手段、プロに任せてしまう
という手もあり

車内の掃除やエアコンのクリーニングなど、自分でケアをするのはやっぱり面倒だ、という方はいっそプロに任せてしまうという手もあります。大手カー用品店などではエアコン掃除のサービスなどが用意されているのでそちらに依頼してみるのもいいかもしれません。費用はかかりますが、洗車のプロショップで行う本格的な掃除よりも手ごろですし、プロの手によるクリーニングなら効果的です。それに失敗の危険もありません。

タバコの臭いは放置しているとどんどん蓄積して、時間がたつほどなかなか消えなくなってしまうのですから、とにかく早めに手を打つのが先決。どうしても車内でタバコが吸いたいというのならば、定期的に車内の掃除とエアコンの消臭を、プロに任せてしまうのがいいでしょう。面倒だからと放置して臭いがヤニがこびりつきカーリース車両の返却の際に高額な違約金が請求されてしまっては元も子もありません。

それに定期的にクリーニングして車内を常にクリーンにしておけば、清潔な車内で気持ちの良いドライブも楽しめるはずです。同乗する家族や友人、同僚なども喜んでれること間違いありません。さらに、車内に嫌な臭いや汚れがなく、きれいに扱われていたクルマと判断されれば、査定でも、間違いなくプラスに評価してもらえるはずです。