2021年7月19日、トヨタのハイブリッド専用車「アクア」がフルモデルチェンジを実施して2代目となりました。いつになったらモデルチェンジするのかなどと言われながら約10年にわたって販売されてきた初代アクア。ここまでロングセラーとなったのはなぜなのか。簡単です。モデル末期でも売れ続けていたからです。

燃費に優れ価格はリーズナブル実用性も高く、見た目もクリーンで万人受けするクルマでした。そんな売れていたモデルのフルモデルチェンジとなれば、当然ですが注目度は非常に高くなります。実際、新型アクアへの買い替えやリース契約を検討している方も、また、すでに乗り換えたという人もきっと多いと思います。

そんな新型アクアですが、5ナンバーサイズのコンパクトハッチバックでハイブリッド専用という基本的なコンセプトは先代を踏襲していてぱっとも見もさほど変わったように見えません。いったいどこが変わったのでしょう。詳しくチェックしてみました。

5ナンバーサイズをキープしつつ
新型にフルモデルチェンジ


(引用:トヨタ公式HP)

新型アクアが2021年7月ようやく発売となりました。初代アクアは2011年12月の発売当初から人気を集め、結局約10年にわたってフルモデルチェンジを受けることなく販売が続けられました。これってなかなか凄いことです。そして、その間ずっと売れ続けていた。これも凄い。

なんといってもモデルチェンジ目前の2021年1月~6月までの販売台数は、2万119台です。決してバカ売れではありませんがこの数字はたいしたもの。発売から9年経過したファミリーカーとしては十分以上といえるでしょう。

そしてここにきてようやくのフルモデルチェンジ実施。人気車種だったからこそアクア(初代)オーナーの数も多いですから否が応でも注目度は高まります。当然ながら先代アクアやまた同門のヤリスと比較されることになります。ではどのようなクルマに仕上がっているのでしょう。

まずサイズです。最近は新型になるたびボディサイズが拡大される車種も多い中、新型アクアは全長4,050㎜×全幅1,695㎜×全高1,485㎜。そしてホイールベース2,600㎜。全長と全幅は変わらず、全高がわずかに高くなっている程度。5ナンバーサイズをそのまま踏襲しています。

コンパクトなサイズで国内ではベストと言っていいサイズでしょう。ヤリスなどとも同等のサイズ感ですが、全長やホイールベースは新型アクアの方がわずかに長い。数値としてはわずかな差ですが、この数センチの差がヤリスと新型アクアを分ける大きなポイント(後述)にもなっています。

デザインのイメージは先代を踏襲
しかし高級感や上質感は向上!


(引用:トヨタ公式HP)

デザインのイメージも先代を踏襲しており、パっと見ただけではどこが変わったのかわからないかもしれません。ただより伸びやかなプロポーションになっていてホイールベースが5cm伸び、その分後席スペースにも余裕が生まれました。

デザイン的に印象的なのはやはりフロントマスクではないでしょうか。一目でアクアというイメージが引き継がれていますが、よりワイドになったフロントグリルと、薄くなったヘッドランプによって以前よりもシャープで精悍な顔つきになっています。

また、グリル周囲をぐるりと囲んだ金属調の加飾パーツが上質な印象を演出していて高級感も感じられます。

サイドからみると、シルエットはアクアらしいモノフォルですが、リアのサイドウインドーを後ろに向けて大きく持ち上げて、ウインドーの形をとがらせることでクールな印象です。ただし、その分リアのウインドーの面積が小さくなってしまっているので見た目は格好いいですが斜め後方の視界が悪くなっているかもしれません。

リアコンビランプをサイドに回り込ませているのは先代と同じですが、リアのサイドウインドーのとがったラインをより強調するような造形となっていて、ここもなかなかスタイリッシュ。後方から見るとリアフェンダーの張り出しも強調されているのも好印象です。先代アクアにあったちょっとチープな印象がなくなっているといえるでしょう。

気になる燃費性能も大幅アップ!
ただしヤリスと比べると?


(引用:トヨタ公式HP)

新型アクアに採用されたプラットフォームは最新のものです。TNGA (トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ) GA-Bプラットフォームといわれるものでコンパクトカー向けのプラットフォーム(車台、シャシー)です。TNGAはトヨタの新しいクルマづくりの設計思想によって生み出された新しいプラットフォーム。高度な接合技術を使用することで軽量化とコスト削減を実現しつつ、高いボディ剛性を確保しているというのが大きな特徴となっています。

ちなみにヤリスやヤリスクロスもこのGA-Bプラットフォームを使用しており、ホイールベースや全長、トレッド幅なども変更できるモジューラー設計となっていることから今後登場するコンパクトクラスの新型車に次々採用されることになるのでしょう。

そんなTNGA GA-Bプラットフォームを採用するアクアの特徴はなんといっても優れた燃費性能でしょう。その燃費に期待して新型アクアを選んだというオーナーも間違いなく多いはずです。

では実際どれくらい燃費が向上したのか。先代アクアのWLTCモード燃費と比べてみましょう。先代アクアの燃費はグレードによって違いますが先代の最終モデルで27.2~29.8kmとなっています。では新型はどうなのか? こちらもグレードによって変わってきますが、WLTCモード燃費は33.6~35.8km/Lとなっています。かなり優秀。

ちなみに兄弟車ともいうべきヤリスハイブリッドの燃費はどうなのかというと、WLTCモード燃費35.4km~36.0km/Lです。なんとわずかながらヤリスの方が新型アクアよりも燃費に優れています。これはちょっと意外ですね。

同じプラットフォームを使い、ハイブリッドのパワーユニットも直列3気筒M15A-FXE型1.5LエンジンにTHS IIハイブリッドシステムハイブリッドシステムとほぼ同じなのになぜこうなっているのか。

新型アクアにはバイポーラー型
ニッケル水素電池を世界初搭載


(引用:トヨタ公式HP)

まず、車重の違いがあります。アクアはヤリスより約40~70kgほど重い。これはホイールベースが50㎜長いというのも関係してくるでしょう。

また、バッテリーの違いもあります。アクアはベーシックグレードのB以外、新型バッテリーの「バイポーラー型ニッケル水素バッテリー」を世界で初めて搭載しているのです。

このバイポーラー型ニッケル水素電池の特徴は、従来のニッケル水素電池のようにセルが独立しているのではなく、セル同士を直接接続しています。そのためセルモジュールを小型化(同じサイズなら大容量化)ができる。

さらに、部品点数を削減が可能で、大電力も扱えるという革新的なバッテリーなのです。つまり進化した構造を持つニッケル水素バッテリーということ。そのため従来のニッケル水素バッテリーよりも性能的には大幅にアップしています。

でも新型バッテリーを使っているのにヤリスよりも燃費が落ちるというのはちょっと理解できないですよね。ちなみにヤリスハイブリッドは全グレードリチウムイオンバッテリーを搭載しています。ということは新しいのにバイポーラー型ニッケル水素電池はリチウムイオンバッテリーよりも性能が低いということなのか?

単純にバッテリーとしての性能だけでいえばリチウムイオンバッテリー>ニッケル水素バッテリーという図式は変わらない。ただ、このバイポーラー型ニッケル水素バッテリーは小型化が可能で、同じサイズなら従来のリチウムイオンバッテリーと同等の性能を出すことができるとされています。

また、コスト的にも将来的にはリチウムイオンバッテリーよりも有利(現在は生産が始まったばかりなのであまり安くないでしょう)となるはずです。つまりコンパクトなハイブリッドカー向けのバッテリーとして将来を期待されているバッテリーなのですね。さらに進化していけばリチウムイオンバッテリーと同等以上の性能も期待できるでしょう。

ただ現時点では前述のとおりリチウムイオンハイブリッドのほうが性能的には上。そのため全グレードにリチウムイオンバッテリーを積むヤリスの方が、結果的に新型アクアよりも燃費も良いということになっているわけです。ただその差はわずかですが。

後席も広く汎用性の高さなら
新型アクアのほう優れている


(引用:トヨタ公式HP)

価格はハイブリッド同士ならほぼ同じです。だったらやっぱり燃費の良いヤリスハイブリッドの方がお得なクルマなのか? 単純にそうはなりません。まず前述したとおり新型アクアはヤリスよりも50mm長い2600mmというホイールベースを採用しています。これが大きなポイントです。

リアシートやトランクなどのスペースがヤリスよりも確実に広いのです。ヤリスはコンパクトなサイズで見た目も個性的。パーソナルカーとしては非常に優れたパッケージングですがリアシートに関しては正直あまり広くない。

先代にあたるヴィッツよりも明らかにスペースが削られていて、大柄な人が座るとかなり窮屈な思いをします。先代にあたりヴィッツのオーナーが、ヤリスに乗り換えると、間違いなく「ヤリスのリアシート狭い!」となるはずです。

その分ヤリスは軽量で重心も低くハンドリングも良い、とされているので、後席をあまり使用しない方にとってはきっと優れたコンパクトカーとなってくれるでしょう。

しかし、より幅広い用途ならやはり新型アクアです。後席も十分なスペースを確保していますしトランクスペースも少しだけですが新型アクアの方が大きい。ファミリーカーとして後席を使う機会があるのならヤリスよりも間違いなく新型アクアの方が適しているでしょう。

そのほかにも新型アクアならではの特徴も少なくありません。例えば走行モードを「パワー+」にすると、アクセルペダルを緩めるだけで2倍の減速感が得られる「快感ペダル」が採用されています。いわゆるワンペダルドライブで、アクセルだけでスムーズな加減速ができるというもの。ただし、日産のe-POWERのようにブレーキを踏まずに停止状態までいけるといったものではなく、ブレーキペダルの併用が必須です。トヨタによればこの快速ペダルによって、走行時のペダルの踏みかえ頻度は4割減り、運転時の疲労軽減にも役立つということ。ちなみに、この快速ペダルはトヨタ車ではこの新型アクアが初採用。つまりヤリスには搭載されてません。

また、100V・1500Wのアクセサリーコンセントがすべてのグレードに標準装備というのもヤリスにはない特徴です。これがあれば、駐車中に非常時給電モードを選ぶことで家庭電化製品のための電気を取り出すことができます

ヤリスハイブリッドにもメーカーオプションで追加は可能ですが、+44,000円が必要で結構お高め。
さらに、予防安全・運転支援システムは最新世代の「Toyota Safety Sense」が全車標準装備。交差点での右左折時の事故にも対応したプリクラッシュセーフティや、全車速対応型のアダプティブクルーズコントロール、車線内の中央を走行するよう支援してくれるレーントレーシングアシストなども含まれていて、このクラスとしてはかなり充実した内容。

ほかにも、駐車時の操作をクルマが支援してくれるトヨタチームメイト アドバンストパーク(メーカーオプション)や、前後に加えて側方の静止物も検知して警報やブレーキを制御して接触の回避を支援してくれるパーキングサポートブレーキ(ZとGグレードに標準、XとBグレードにはメーカーオプション)などといった高度な機能まで採用。

これらはトヨタの小型車では新型アクアが初となる機能で、新型アクアにトヨタがどれだけ期待しているのかが分かります。価格はFF車の廉価グレードBの198万円から、4WD(E-Four)のZの259万8,000円。Bはおそらくレンタカー向けの廉価グレードなのでしょう、さすがに装備がチープなので選びにくいでしょう。おすすめはFFの中間グレードでるG(223万円)あたりでしょうか。このGなら装備なども充実していてバランスも良くお得感もあるのでおすすめです。

新型アクアはバランスに優れた
優等生的コンパクトハイブリッドカー


(引用:トヨタ公式HP)

ハイブリッド専用車である新型アクアが、同門でガソリンエンジングレードも用意するヤリスハイブリッドに燃費で負けている、という点にはちょっと複雑なところがありますが、その差はほんのわずか。それ以上に快適なスペースと、高級感があって上質なデザインが手に入ると考えれば十分納得できるはずです。ちょっと個性的で、使う人を選ぶヤリスに比べればソフトな印象で幅広いニーズに対応できる優等生的なコンパクトハイブリッドカーなのが新型アクアなのです。

またなんといっても世界初のバイポーラー型バッテリーを搭載しているという点も自慢できるポイント。いずれにしてもトップクラスの燃費性能を持つ魅力的なコンパクトカーであるということは間違いありません。

リースナブルでも、新型アクアのリース車両がお得な月額(税込6,600円/月~)で用意されていますので、気になる方は、カタログや公式サイトをチェックしつつ次のマイカー候補として検討してみてはいかがでしょうか。