トヨタの「アクア」といえば、ハイブリッド専用のコンパクトカーでありその優れた燃費性能とクリーンなスタイル、さらに実用性も高く価格も手ごろなことから幅広い層から人気のトヨタのベストセラーカーです。そんなベストセラーカー「アクア」が二代目へとモデルチェンジしたのが2021年7月19日です。

初代のクリーンな印象をそのまま受け継ぎデザインをさらに上質なものにバージョンアップ。そして、機能性もたかめ燃費性能も向上した、2代目「アクア」は期待以上の出来で登場しました。そんな新型アクアですが一部のファンから期待されていたのが「GR SPORT」の追加です。

初代アクアにもTOYOTA GAZOO Racingが手掛けたスポーツコンバージョンモデル「GR SPORT(GRスポーツ)」が設定されていましたが、「アクア」がフルモデルチェンジされたことで、一旦ラインナップから消えていたのです。

しかしその「アクアGRスポーツ」がついに2022年11月29日に復活。いったいどのような仕様となっているのでしょう。GRスポーツの復活を期待していたファンの方のために詳しくチェックしてみました。

クリーンなイメージはそのままに
先代から機能性を大きく向上した新型アクア

先代から機能性を大きく向上した新型アクア
(引用:トヨタ公式HP)

新型アクアが発売されたのは2021年7月です。そこから約1年半たち、ようやく「アクアGRスポーツ」がラインナップに加わりました。先代にも設定されていたアクアGRスポーツには熱烈なファンもおり、新型となった際にいつ追加されるのかと待ちわびていた方もきっといたはずです。

新型アクアは全長4,050㎜×全幅1,695㎜×全高1,485㎜。そしてホイールベース2,600㎜と、サイズはほぼ先代を変わっていません。全高がわずかに高くなっている程度で5ナンバーサイズをしっかりキープしています。また、ハイブリッド専用車というところも変わっていませんし、デザインのテイストもクリーンな印象だった先代をしっかり踏襲しています。しかし明らかに質感は上がっており、ディテールの作りなど高級感も増しています

また、ホイールベースが5cm伸びていることもあってサイズ的にはほとんど変わっていないのにもかからず分後席スペースは広くなっており居住性も向上しています。見た目はあまり変わっていないように見えて、中身はしっかりバージョンアップしているのです。そんな最新スペックのアクアですから、そのアクアを強化した、アクアGRスポーツの完成度には当然期待してしまいます。では、何がどのように強化されているのか詳しくチェックしていきましょう。

アクア GR SPORTは全長が45㎜伸びているだけで
車体サイズに大きな変更はなし

新型アクア車体サイズに大きな変更はなし
(引用:トヨタ公式HP)

まず2代目のアクア GR SPORTのサイズですが、全長4095㎜×全幅1695㎜×全高1485mmでホイールベースが2600mm。そして車重が1150kgとなっています。ベースとなったアクアの最上級グレードZ(2WD)は全長4050㎜×全幅1695㎜×全高1485mmでホイールベースが2600mm。車重が1130kgなので全長が45㎜ほど長くなり、車重が20kgほど重くなっているということになります。

見た目はかなりアグレッシブになっているように見えるのですが、サイズ的にはほぼ同じです。ちなみに2代目アクア GR SPORTのコンセプトは先代アクア GR SPORTと変わらず「意のままに操れる歓び」というものです。見た目だけではなく走行性能の向上に重点が置かれています。といってもハイブリッドシステムは基本的には変わっておらず、ボディ剛性のアップやハンドリングのチューニングが主な変更ポイントとなっています。

もちろんエクステリアにも手が加わっています。サイズの違いはエクステリアパーツの違いによるもので、柔らかな印象と強いノーマルのアクアと違って見た目にもかなりシャープで非常にスポーティになっています。バンパーの違いからでしょうかボディがワイド化されているようにも見えます。では具体的にどんな点がノーマルとアクアと違っているのかまずはエクステリアの変更点について細かく見ていきましょう。

エクステリアでは前後バンパーが
専用デザインのスポーティなものに変更

新型アクア前後バンパーが専用デザインのスポーティなものに変更
(引用:トヨタ公式HP)

前述のとおり2代目アクア GR SPORTでは全長がベースモデルより45mm長くなっています。この45㎜長くなっているのは前後の専用バンパー装着されたことによるものです。

アクア GR SPORTバンパーのデザインはかなりアグレッシブでスポーティです。ベースモデルのフロントバンパーはグリルの開口部がラウンド形状で、コーナー部分も柔らかなシルエットでどちらかというとソフトな印象です。ファミリーカーとしての需要の高いアクアですから、こちらのほうが万人受けしそうですしベースモデルはこれで正解なのでしょう。

しかしアクア GR SPORTでは、バンパーがエッジの利いた形状に大きくデザインが変更されていて、コーナー部分はGTカーのようなカナードのような形状となりワイド感が強調されています。見た目がスポーティなだけでなくこの形状はフロントタイヤ周辺の空気流を整流化して、後方に流すことで空気抵抗を低減する効果と、ダウンフォースも生み出しているとのこと。機能的にも意味があるのです。

さらに、バンパーサイドまで回り込んだロア加飾バーがクールなアクセントになっています。このバンパーの違いだけで印象は全く違うものとなっています。

バンパー開口部のグリルも独特です。これはアクア GR SPORT専用の「ファンクショナルマトリックスグリル」と呼ばれるもので、六角形のメッシュ形状となっています。このメッシュをよく見るとひとつひとつの六角形が“GR“の “G”の文字に見えるようにデザインされており、Gモチーフの三角形部分は光を反射する角度で造形されていて立体感が演出されているのです。この独特の「ファンクショナルマトリックスグリル」と、バンパーのロア加飾バーを融合させることで機能性と上質なデザインを高いレベルで両立させているのです。

またリアバンパーのデザインも専用となっていて、バンパー下部を、ハの字のリヤバンパーガーニッシュでブラックアウトしつつ、フロントグリルと同様にGをモチーフとしたメッシュのテクスチャーを配して、ワイド&ローで、スポーティなリヤビューを演出しています。

エクステリアの変更点は前後のバンパーだけではありません。サイドにも専用のパーツが装着されています。それが「専用ロッカーモールディング(カラード)」です。これはドア下端部にあるロッカー部を張り出させることで、ボディサイドに厚みを持たせて、低重心かつスポーティなイメージを強めているというもの。いわゆるサイドスカートのようなものですが、ボディとの一体感があってエアロ形状がとてもクールです。ドアのキャラクターラインとのマッチングもばっちりでさすがGR SPORTといったとことでしょうか。

他には、205/45R17サイズのワイドタイヤ(ブリヂストン・ポテンザRE050A)が装着され、アルミホイールも専用の17インチ(切削光輝+ブラック塗装/センターオーナメント付き)が装着されています。ホイールからのぞくフロントブレーキキャリパーもさりげなくGRロゴ入りで赤く塗装されていてスポーティ。こんな演出もオーナーの所有欲をくすぐってくれるはずです。

インテリアはブラックを基調に
専用オーナメントなどを配置

新型アクアのインテリアはブラックを基調に
(引用:トヨタ公式HP)

インテリアを見てみましょう。まず室内寸法ですがこちらは室内長1830mm×室内幅1425mm×室内高1190mmで、他のアクアと全く同じです。スポーティモデルだからといって特に狭くもなっていません。当然後席も快適に座ることができます。

違っている点としては、まずフロントシートです。体をしっかりとサポートしてくれるスポーティシート(GRロゴ付)を採用しており、またシート表皮も専用のエアヌバック+合成皮革仕様となっています。また、足元のペダル類もアルミ製で、アクセルペダルはヒール&トゥがしやすいようの幅が5mm広くなっているというのも大きな特徴です。走りを存分に楽しめるように細かな部分の仕様にも抜かりはありません。

シフトノブや7インチディスプレイオーディオ周りにはピアノブラック加飾が施されており、また10.5インチディスプレイオーディオが装備されています。天井はスポーティなブラックで仕上げられ、専用コンソールオーナメントなども装備。

その他加飾部品はダークメタリック塗装が施されており、レジスターノブやインサイドドアハンドル(フロント)にはシルバー塗装仕上げとなっています。さすがスポーツコンバージョンモデルらしく、効果的な演出がなされておりノーマルのアクアと比べると各段にクールでスポーティなインテリアとなっています。

フロア下にボディ剛性を高める
ブレーズを2本追加して操縦安定性を向上

新型アクア操縦安定性を向上
(引用:トヨタ公式HP)

では走りのパフォーマンス面はどうなのでしょう。まず、ボディ剛性アップのために、フロア下にブレーズを2本と、リヤバンパーリンフォースを1本追加しています。さらに、フロントサスペンションはショックアブソーバーの特性やコイルスプリングの専用チューニングを施しさらにスタビライザーの特性も変更されています。

リヤサスペンションにもGR SPORT専用にコイルスプリングやショックアブソーバーをチューニングして優れた操舵応答性と質感の高い乗り心地の両立を図っています。このような足回りを中心としてチューニングによって操縦安定性と質感の高い乗り心地を高い次元で両立しています。ただ、GRスポーツだからと、走りに関してあまり尖らせたチューニングは施されてはおらず、乗り心地に関してもより質感を高めているというのがさすがメーカー純正のスポーツコンバージョンモデルといえるでしょう。

パワーユニットは特に変更なし
ただし燃費は少し悪化している

新型アクア燃費は少し悪化
(引用:トヨタ公式HP)

パワーユニットはアクアの標準モデルの2WDグレードと特に変わっていません。M15A-FXE型1490cc直列3気筒DOHCエンジン(最高出力91ps/5500rpm、最大トルク12.2kg・m/3800~4800rpm)と、フロントモーター(最高出力59kW/最大トルク141Nm)を組み合わせたもので、駆動用バッテリーはバイポーラ型ニッケル水素電池(容量は5.0Ah)です。

そのため速さという意味では特に変わらないでしょうが、そもそもアクアは新型となったことで加速力が向上し先代よりも各段に速くなっているという評価もあるので、特に手を入れる必要もなく十分といえるのでしょう。

加速力の向上はバッテリーが大電力を瞬間的に流すことのできるバイポーラ型ニッケル水素電池となった影響が大きいようですが、アクセルに対するレスポンスが明らかに違っています。あえてパワーアップなどは不要ということなのかもしれません。ボディ剛性のアップと、サスペンションのチューニングによって、ハンドリングは明らかに向上しているので、スポーティモデルらしい気持ちの良い走りが味わえるのは間違いありませせん。

パワーユニットが同じなら燃費も同じなのかというと、わずかに低下しています。これはおそらくタイヤが205/45R17というワイドタイプになっているうえ、スポーティなハイグリップタイヤであるPOTENZA RE050Aが装着されている影響が大きいのだと思われます。その分コーナーでの踏ん張りは相当効くはずです。高速道路でも安定した走りが味わえるでしょう。

アクアZグレードの2WDモデルWLTCモード燃費が33.6km/Lなのに対してアクアGRスポーツは29.3km/Lと差はそこまで大きくありません。そもそもアクアGRスポーツの29.3km/Lだって燃費性能としては抜群に良いわけでその分優れたハンドリングが味わえることを考えればこれに不満を持つ方はほとんどいないでしょう。

この内容で価格は259万5,000円
コスパ的にもかなり魅力的なアクアGRスポーツ

新型アクア価格は259万5,000円
(引用:トヨタ公式HP)

アクアGRスポーツはコンパクトカーながら大人5人がしっかり乗ることができて、荷物もちゃんと積める。それでいてGRスポーツならではの気持ちの良いハンドリングも味わうことができて価格も259万5,000円です。コスパ的にも素晴らしい、非常に魅力的なといえるのではないでしょうか。

家族のために実用的なコンパクトカーが必要だけど、走りにも妥協したくないという方にはおすすめの一台です。アクアGRスポーツのベースグレードは最上級グレードのアクアZグレード(240万円)ですが、その価格差はわずか19万5,000円です。それでこのスタイルと優れたハンドリングが手に入るのであれば相当にお買い得ではないでしょうか。今、もしアクアの購入を検討されているのであれば是非このアクアGRスポーツに注目してみてください。