日産のMクラスミニバンセレナが、フルモデルチェンジを発表しました。セレナといえば、先代モデルはロングセラーでありながらいかついエアログレードの「ハイウェイスター」が大人気で、e-POWERによる経済性の高さやクラス最大級の広い室内スペースもあって、モデル末期でもその人気が落ちることがありませんでした。

新型は、その人気を受け継ぐことができるのでしょうか、動向が注目されています。そしてそんな新型セレナですが、グレードラインナップに今までないグレード名が追加されています。

それが「LUXION(ルキシオン)」です。最上級グレードという位置づけですが、その価格はなんと479万8,200円! 日産の最上級ミニバンエルグランド並みの高級グレードです。

古くなったエルグランドのポジションをセレナがカバーするといことなのかもしれませんが新しい「ルキシオン」も加わった新型セレナは先代と何がどう変わったのでしょう。その特徴などについて詳しく探ってみましょう。

新型にモデルチェンジしても
セレナは5ナンバーサイズをキープ

セレナ新型5ナンバーサイズをキープ
(引用:日産公式HP)

2022年11月28日、日産はMクラスミニバンであるセレナをフルモデルチェンジしてガソリン車を2022年冬に、そしてe-POWER車を2023年の春に発売すると発表しました。セレナとしては6代目モデルで、先代の5代目セレナが2016年発売ですので、約7年ぶりのフルモデルチェンジです。

Mクラスミニバンといえば、今やファミリーカーの定番車種で、トヨタのノア/ヴォクシー、ホンダのステップワゴン、三菱のデリカD:5といった強力なライバルがひしめき合う激戦区ですが、その中で常にトップクラスの人気を維持し続けてきたのが日産のセレナです。

そのセレナのフルモデルチェンジとなれば当然注目度は高まります。なんといっても2022年は、ノア/ヴォクシー、ステップワゴンといった強力なライバルもフルモデルチェンジを実施して、その魅力を高めているので余計にセレナへの期待も高まっているのです。

では新型セレナはどのように変わったのでしょう。あらゆる点が進化していますが、その中でも変わっていないことに筆者が注目したのはそのボディサイズです。ライバルがボディを大型化してMクラスといいながら当たり前のようにベースモデルまでも3ナンバーサイズとしたのに対して、セレナはしっかりと5ナンバーサイズを維持して(ハイウェイスターやルキシオンは3ナンバーですが)きました。

この5ナンバーサイズというのが大きなポイントです。今やコンパクトカーでも3ナンバーというのが珍しくないので、Mクラスミニバンが3ナンバーというのは、あまり違和感がないのかもしれません。

しかし、日本の道路事情にジャストサイズの“5ナンバーサイズ“というのは重要なポイント。このわずかなサイズの違いで、自宅の駐車スペースに収まらない。というケースも少なくないのです。また狭い駐車場などでの操作のしやすさも3ナンバーよりも5ナンバーのほうが上でしょう。

ミニバンで室内スペースを拡大したいならボディサイズごと大きくしてしまうのが簡単ですが、まじめに5ナンバーサイズとキープしているという点に好感がもてます。プラットフォームが先代からのキャリーオーバーということもサイズが拡大されなかった理由なのかもしれませんが。

セレナらしさを維持しながら
エクステリアも上質なデザインへと進化

セレナ新型エクステリアも上質なデザインへと進化
(引用:日産公式HP)

新型セレナのエクステリアを見てみましょう。ボディサイズは5ナンバーサイズを基本となっており、ハイウェイスターとルキシオンには専用バンパーや、エアロパーツなどが装着されて3ナンバーとなっています。

ボディサイズはこのクラスしては比較的コンパクトで、先代セレナと比べても大きく変わっていません。5ナンバーのベースモデルは全長4,690㎜×全幅1,695㎜×全高1,870㎜です。3ナンバーのハイウェイスターとルキシオンは全長4,765㎜×全幅1,715㎜×全高1,885㎜となっています。

ルキシオンの外観はハイウェイスターに準じているので全く同じです。そしてハイウェイスターの全幅ですが、先代が1,740mmだったのが新型では1,715mmと少しスリムになっています。

エクステリアのデザインは新しさを感じさせますが一目でセレナだということがわかります。評価の高かったセレナのイメージをしっかり受け次いでいます。それでいて、上質感や迫力は確実に向上しています。セレナといえば大きなフロントグリルが特徴ですが、新型のグリルもやっぱり立派。

特にハイウェイスター系はフロントグリルがバンバーグリルとつながる大きな開口部となっていて迫力満点。それでいて安易にクロームメッキでギラつかせていないところに上質感を感じます。また、エルグランドを思わせるところもあります。

縦に小さく配置された斬新なLEDヘッドライトやフロントバンパー左右に設けられた「エアカーテン」と呼ばれるスタイリッシュな通気口も目を引くポイントとなっています。このエアカーテン、ボディをワイドに見せるデザイン的なアクセントにも見えますが、ちゃんと実用的な意味があって空力性能の向上や、横風安定性などに役立つといいます。

他にもセレナのアイデンティティともいうべき、サイドウインドウ下端ラインのシュプールラインが特徴的でリアに向かって上昇していきすっきりとしたサイドビューを描き出しています。こういった点を受け継ぎながらそれでいて新型らしさを感じることができるという点が素晴らしいです。

車内もより快適に
e-POWER車でも8人乗りを実現

セレナ新型e-POWER車でも8人乗りを実現
(引用:日産公式HP)

インパネ周りは非常に解放感が高く、またメーターパネルのデザインが斬新。タブレットPCのような大型液晶メーターと、そこからにつながるこれまた大型液晶のセンターディスプレー(純正ナビ)が並んでいて視認性も抜群です。

また、シフト操作系も斬新。シフトレバーが廃止されボタン式の電子制御シフトとなっています。エアコンの操作パネルと同じパネルにボタンが左から右にP-R-N-D/Bと並んでいて、これをタッチしてシフト操作を行うのです。実に先進的で未来感を感じさせます。

操作性に関しては、ドライバーから遠く、あまりよくないとう評価もあるようですが、この辺は慣れの問題かもしれません。

他には運転席の足の通過スペースが先代モデルから120㎜拡大し、運転席と助手席の間の移動をよりしやすくなっています。また、シートスライドが3列目にも標準装備されて8人フル乗車でもすべての乗員がゆったりとした座り心地が味わえます。

好評のマルチセンターシートも進化し、e-POWER車でも8人乗りを実現したという点も注目でしょう。これを待っていたという方もいるのではないでしょうか。

また、全席にスマートフォンや財布などを置ける収納スペースを設置し500mlの紙パックが入るカップホルダーや、USB端子も搭載されています。さらに、e-POWER車は、100V AC電源(1500W)がオプションとなっているのでキャンプなどのアウトドアレジャーでも重宝しそうです。

e-POWERは発電用エンジンを1.2Lから1.4Lに
お手頃な2Lガソリンエンジンも設定

セレナ新型e-POWERは発電用エンジンを1.2Lから1.4L
(引用:日産公式HP)

新型セレナに用意されたパワーユニットのラインナップは、2Lガソリンエンジンとe-POWERの2種類が用意されています。この辺は先代型と同じです。

最近の日産といえばe-POWERですが、ベーシックな2Lガソリンエンジンが用意されているのは実に堅実。これを喜ぶ方もきっといるでしょう。その2L直列4気筒のNAエンジンは、最高出力が110kW(150PS)で、最大トルクは200N・m(20.4kg-m)です。

スペック的には先代のエンジンと同じですが、ノイズが小さく抑えられていうので、快適性は増しているようです。ただ、新型セレナは車重がFFの2WDモデルでも1,600kgオーバーという重量級なので、余裕ある走りというのはちょっと難しいかもしれません。

日産自慢のe-POWERはエンジンで発電を行い、その発電された電気を使ってモーターでホイールを駆動するという仕組みですが、発電用のエンジンが変わっています。先代の発電用エンジンは1.2Lでしたが、新型セレナはエンジンの排気量が1.4Lへと拡大されています。エンジンの出力は直接駆動力につながりませんが発電能力が向上しています。

そのため、駆動用モーターの動力性能も向上していて先代型のモーターは最高出力が136PSで最大トルクは32.6kgf-mだったのが新型セレナでは最高出力が163PS、最大トルクが32.1kgf-mとなっています。

比べると最大トルクは少し減っていますが、最高出力は27PSもアップしています。インプレッション記事などを読むと、その力強さは3Lガソリンエンジン並みとの評価なので、余裕ある加速が味わえるでしょう。

e-POWERは発電用エンジンの排気量が
アップしながら燃費性能もしっかり向上

セレナ新型e-POWERは燃費性能もしっかり向上
(引用:日産公式HP)

走行安定性も向上しているようで、プラットフォームがキャリーオーバーなので重心がライバルよりも高い点はいなめませんが、コーナー時のタイヤの接地感も向上しており、安定性が増し、走りの質もが向上しているとのことです。

WLTCモード燃費は、2Lガソリンエンジン車は13.4㎞/L(Xグレード・FF車)で、e-POWERのWLTCモード燃費は20.6km/L(e-POWER Xグレード・FF車)です。エンジンが変更になるなどハイブリッドシステムが進化したので先代のe-POWER Xグレードと比べると燃費は2km/Lほど向上しています。

ただ、2LのNAエンジンのXグレードのWLTCモード燃費は13km/Lで、先代のXグレードのWLTCモード燃費13.2㎞/Lに比べると、わずか0.2㎞/L悪化しています。これは先代モデルがマイルドハイブリッドであったのに対して新型は、マイルドハイブリッドではなくなったことが原因でしょう。とはいえわずか0.2㎞/Lの差ですのでそれほど気にならないかもしれません。

価格は319万8,800円~
最上級グレードは驚きの4,798,200円!

セレナ新型最上級グレードは驚きの価格
(引用:日産公式HP)

新型セレナの価格ですが4WDモデルの価格も先日発表となり以下の通りです。

駆動 パワーユニット グレード 乗車定員 価格
2WD e-POWER e-POWER X 8 ¥3,198,800
e-POWER XV ¥3,499,100
e-POWER ハイウェイスター V ¥3,686,100
e-POWER LUXION 7 ¥4,798,200
2Lガソリン X 8 ¥2,768,700
XV ¥3,088,800
ハイウェイスター V ¥3,269,200
4WD X 8 ¥3,034,900
XV ¥3,355,000
ハイウェイスターV ¥3,535,400

 

主力はやはりe-POWERとなるのでしょうが、その価格は、NAエンジン搭載車に比べると約41万円高いという設定です。最も安いe-POWERモデルでも319万8,800円と結構な金額。しかしe-POWER搭載車はエコカーなので、購入時税額も安いので、実質的な価格差は30万円以下なのでその分お得感があります。

それに燃費性能に優れているのでランニングコストは安く済むでしょう。そして新型セレナに新たに加わったグレード「ルキシオン」ですが、その価格は驚きの479万8,200円です。もはやMクラスミニバンとは思えないほどの高額車です。日産のLクラスミニバンエルグランドに匹敵するレベルです。

見た目はほぼハイウェイスターと同じなのになぜにここまで高額なのかというと、ミニバンとしては世界初搭載となる先進運転支援システム「プロパイロット2.0」が搭載されているからです。ちなみにルキシオン以外のグレードにも全車プロパイロット搭載ですがこちらは「プロパイロット1.0」です。

ルキシオンに搭載の「プロパイロット 2.0」は、12.3インチ日産コネクトナビと連動し、目的地を設定して、高速道路の本線に合流するとナビ連動ルート走行が開始となって、状況に応じて、同一車線内でのハンズオフ(運転中にステアリングから手を離すことができる)が可能となっています。

さらに、前方障害物に対する操舵回避の際に、ドライバーのステアリング操作を支援してくれる「衝突回避ステアリングアシスト」(全車標準装備)や、一度駐車した場所を駐車枠として記録することができる、メモリー機能付きの「プロパイロット パーキング」はセレナのルキシオンが日産として初搭載となっています。

他にも記録した駐車位置に近づくと、ボタン1つでステアリング、アクセル、ブレーキ、シフトチェンジ、パーキングブレーキのすべてを自動で制御してくれたり、リモコン操作でクルマの出し入れが可能となる「プロパイロット リモート パーキング」なども搭載。狭いスペースでの乗り降りや荷物の出し入れをスムーズに行なうことが可能となっています。

こういった先進機能が全部盛りで、それが価格の上乗せ分ということなのでしょう。この先進運転支援技術「プロパイロット2.0」が搭載されているのは、現行の日産車ではこの新型セレナとアリアのみ(スカイラインはプロパイロット2.0搭載車が廃止となっています)です。

e-POWERハイウェイスターVでも、12.3インチ日産コネクトナビやナビリンク付きのプロパイロット(1.0)をセットオプションで追加することはできますが、その価格が50万円近くする上、プロパイロットは1.0。そう考えると決して高すぎるということはないのかもしれません。それでも同じ新型セレナのe-POWERハイウェイスターVに比べ約111万2,100円も高い479万8,200円という価格はインパクトがありますね。

ライバルとは差別化した絶妙な設定で
セレナは新型でもヒット間違いなし

セレナは新型でもヒット間違いなし
(引用:日産公式HP)

今回はフルモデルチェンジが発表されたばかりの新型のC28型セレナについて詳しくチェックしてみました。5ナンバーサイズを維持しながらクラストップレベルの広さを確保した新型セレナは、セレナらしいデザインや、ライバルとは違った絶妙な設定で多くのミニバンファンに受け入れられるのではないでしょうか。おそらく新型もヒットするのはほぼ間違いないでしょう。

さらに先進運転支援技術「プロパイロット2.0」を標準装備した新グレード「ルキシオン」も価格は別としてかなり魅力的です。先代セレナオーナーも、ライバルのMクラスミニバンオーナーもこれなら新型セレナへの乗り換えを本気で考えてもいいかもしれません。