群雄割拠の国産Mクラスミニバン市場。各主要メーカーは人気、実力とも一級品のラインナップをそろえていますが、2022年はそれらがすべて新型へとフルモデルチェンジした重要な年となりました。そして、その中でも最後発にしてインパクトも大きかったのが日産のセレナです。

日産のMクラスミニバンセレナは、先代モデルはロングセラーでありながらその人気はモデルチェンジ寸前まで衰えることがありませんでした。その人気車がすべてを一新するのですからファンから期待も相当高まります。そして2022年11月28日ついにフルモデルチェンジが発表され、登場したのが6代目となるC28型セレナです。

従来のセレナのイメージをしっかり受け継ぎながらデザインや機能は大幅にバージョンアップ。それでいて車体サイズは5ナンバー枠をキープするという、ライバルが軒並み3ナンバー化となった中、扱いやすいサイズをキープしている点が、高く評価されています。また、注目されたのが新たに追加された高級グレードの「LUXION(ルキシオン)」の存在です。

こちらはセレナの最上級グレードという位置づけなのですが、価格はなんと479万8,200円! 日産の最上級ミニバンエルグランド並みの高額グレードです。なんでこんなに高いのか、このルキシオンその価格に見合うだけの価値があり、どんな特徴があるのでしょうか。気になったので詳しく検証してみました。

エントリーグレードに比べると200万円も高い
「e-POWER LUXION(ルキシオン)」

e-POWER LUXION
(引用:日産公式HP)

新型セレナの最上級グレードとなるのが、「e-POWER LUXION(ルキシオン)」です。新型セレナはグレードが豊富に用意されていますが、最もリーズナブルなのはガソリンエンジンを搭載したXグレードの2WDモデルで2,768,700円です。そして、おそらく最も人気が高いと思われるのはエアロパーツが装着されたハイウェイスターのe-POWERグレード、e-POWERハイウェイスターV(2WD)でしょう。こちらの価格は3,686,100円です。こちらでも十分高級なMクラスミニバンですね。

そして、注目のルキシオン、グレードとしては「e-POWER LUXION(ルキシオン)」(2WDのみの設定)ですが、こちらの価格が4,798,200円です。セレナの高級グレードという位置づけのハイウェイスターVと比べると、その価格差は、なんと1,112,100円!軽く100万円以上ルキシオンのほうが高額となっています。

ちなみに日産のLクラスの最上級ミニバン、エルグランドの現在の価格は3,799,400円~7,713,200円です。さすがにエルグランドの高級グレードよりはルキシオンは安いですが、それでもエルグランドの主要グレードのほとんどよりもセレナのe-POWERルキシオンのほうが高額となっています。驚きです。

ライバルのMクラスミニバンと比べても
セレナのルキシオンは圧倒的に高額!

セレナのルキシオンは圧倒的に高額
(引用:日産公式HP)

さらにライバルとも比べてみましょう。トヨタのMクラスミニバンであるヴォクシーの価格は3,090,000円~で、最も高額なグレードがHYBRID S-Z E-Fourの3,960,000円です。こちらをセレナのルキシオンと比べると838,200円もルキシオンのほうが高い。

そして、もう一台のライバルはホンダのMクラスミニバンステップワゴンですが、こちらの価格は2,998,600円~で、最高額グレードはe:HEV SPADA PREMIUM LINEで3,846,700円です。こちらもルキシオンと比べてみるとルキシオンのほうが951,500円も高い。もはやクラス違いといっていいほどルキシオンのほうが飛びぬけて高額なことがわかります。

もはやルキシオンは、Lクラスミニバンのエルグランドやトヨタのアルファードと同等(価格だけでみれば)ということになります。とはいえそれだけでの価値があればもちろん何も問題はありません。実際のところこれだけの金額を払うだけの特別なものがルキシオンにはあるのでしょうか。

ルキシオンのエクステリアは
ハイウェイスターVとほぼ同じ

ルキシオンのエクステリア
(引用:日産公式HP)

まずはエクステリアを見てみましょう。新型セレナのエクステリアデザインは、先代のセレナと比べると上質でモダンな要素を取り入れた高級感あるデザインに進化しています。ボディサイズは拡大していないのに、より大きく見えそれでいてシャープですっきりした印象もあります。

ヘッドライトも印象的です。全てLED化されているうえ、e-POWERルキシオンについてはヘッドライト横の「フェンダーフィニッシャー」をガンメタリック塗装として、他のグレードと差別化が図られています。

ただし、e-POWERルキシオンとハイウェイスターVのエクステリアパーツは基本的に共通となっています。ボディサイズは全長4,765㎜×全幅1,715㎜×全高1,885㎜で3ナンバー化されているのも同じで、フロントグリル、フロントエアロバンパー、サイドシルスポイラー、リヤエアロバンパーなども全く同じもの。

前述したフィニッシャーなど細部が違っているだけです。ハイウェイスターVでも十分スタイリッシュですが、100万円以上も高いe-POWERルキシオンなのに見た目がほとんど変わらないというのはちょっと肩透かしです。

パワーユニットはe-POWERのみ
パワーは従来型よりも大幅アップ

ルキシオンのパワーユニットはe-POWERのみ
(引用:日産公式HP)

それではパワーユニットが差別化されているのか? 新型セレナのパワーユニットのラインナップは2Lガソリンエンジンとe-POWERの2種類です。高級グレードのe-POWERルキシオンはもちろんe-POWERのみです。

e-POWERはエンジンで発電を行い、その発電された電気を使ってモーターでホイールを駆動するという仕組みですが、発電用のエンジンは新型では1.4Lに排気量が拡大しています。そして、駆動用モーターの動力性能も向上していて先代の136PS/32.6kgf-mから163PS/32.1kgf-mへと大幅にパワーアップしています。

ただし、この新しいe-POWERユニットは、他のセレナのe-POWERグレードと全く同じもの。特にe-POWERルキシオンだからとパワーアップされていたりするわけではありません。つまりエクステリア同様にハイウェイスターVと一緒というわけです。

ルキシオンはキャプテンシートの
7人の乗り仕様のみを設定

ルキシオンはキャプテンシートの7人の乗り仕様
(引用:日産公式HP)

ではインテリアは差別化されているのか?カタログの装備表でハイウェイスターVとe-POWERルキシオンのインテリアの装備の違いを比較して見ました。まず大きな違いといえるのが、e-POWERルキシオンが7人乗りのキャプテンシート仕様のみとなっていることでしょう。ベンチシートではなくセパレートのキャプテンシートは作りもゴージャスで特等席となっています。

また、シート地も合皮なのはe-POWERルキシオンだけ。セカンドシートがゴージャスなのはさすが最上級グレードです。ただ、2列目シートのオットマンが標準装備でない(約4万円のディーラーオプション)点は物足りません。ライバルは標準なのに、480万円の高級ミニバンだったらそれぐらいはじめからついていてほしいですね。

そしてインテリアのインストロア、ドアトリムクロス(合皮(ステッチ付)がe-POWERルキシオン専用となっています。木目調フィニッシャーがブラック木目というのもe-POWERルキシオンだけです。

そのほかインテリアの違いとしては、センターコンソールボックス(アームレスト付)付きとなっていることや、スライドドアトリムにアンビエントライトが装備されるということでしょうか。こうしてみるとインテリアも思いのほか差別化はされていません。というか、e-POWERルキシオンのベースともいえる上級グレードのe-POWERハイウェイスターVの装備がもともと充実しているので、十分ではあるのですが。

ルキシオンの最大の特徴は
ミニバン初のプロパイロット2.0の搭載

ルキシオンの特徴はミニバン初のプロパイロット2.0の搭載
(引用:日産公式HP)

じゃあ、e-POWERルキシオンは他のグレードといったい何が違っているのか。ルキシオンの最大の特徴は、ハンズオフが可能な先進の運転支援システムの「プロパイロット2.0」が装備されているということです。

ハンズオフとは“手放し”を意味する言葉でハンズオフが可能ということは、一定の条件を満たした状態で高速道路を走っているときは、ドライバーがハンドルから手を放してもいいというもの。このハンズオフが「プロパイロット 2.0」は実現しているのです。

日産の先進運転支援技術「プロパイロット」は、新型セレナ全車に標準装備されているのですが、この「プロパイロット 2.0」は最上位グレードのe-POWERルキシオンにのみ標準装備です。オプションでの追加もできません。そしてこの「プロパイロット2.0」がミニバンに搭載されるのは新型セレナのe-POWERルキシオンが初となります。すでにモデル末期のエルグランドには搭載されていません。

「プロパイロット」と「プロパイロット 2.0」ですが、その機能に大きな違いがあります。どちらも高速道路の単一車線での運転支援技術であり、渋滞走行と、長時間の巡航走行でアクセル、ブレーキ、ステアリングのすべてをシステムが自動で制御してくれるというものですが、最大の違いがこの「ハンズオフ」運転ができるか否かです。

プロパイロットとプロパイロット2.0は何が違うのか

プロパイロットとプロパイロット2.0の違い
(引用:日産公式HP)

プロパイロットは、フロントカメラで前方の車両と車線を認識して、フロントレーダーで前走車の車速と車間距離を計測。その情報をもとにハンドルとアクセル/ブレーキの支援をしているのですが、プロパイロット 2.0は、7個の光学式カメラと5個のミリ波レーダー、さらに12個の超音波ソナーに3D高精度地図データを使って、より正確なステアリング操作を実現しています。その精度は前後方向で1m、左右方向に至っては5cm程度という驚異的なもの。

地図データやGPSを使用するので、事前にルート設定する必要がありますが、ナビゲーションで目的地を設定し、高速道路の本線に合流するとナビ連動ルート走行を開始して、追い越しや分岐なども含めてシステムがルート上にある高速道路の出口までの走行を支援。ドライバーが常に前方に注意して直ちにハンドルを確実に操作できる状態にある限りはドライバーがステアリングから手を離すことができるハンズオフが可能となるのです。これはすごいですね。

この「プロパイロット2.0」に対応しているのは、現状(2023年1月末現在)ではこのセレナのe-POWERルキシオンと、BEV(電気自動車)のアリアのみとなります。そしてアリアの価格は5,390,000円(単一グレード。現在一時注文停止中)ですので、比べると同じ「プロパイロット2.0」搭載車であっても、セレナe-POWERルキシオンのほうが50万円以上安いということになります。

前述したとおり、セレナのe-POWERハイウェイスターVと、e-POWERルキシオンは100万円以上の価格差がありますが、その差はほぼ「プロパイロット」と「プロパイロット2.0」の違いにあると考えていいでしょう。「プロパイロット2.0」それだけ高度で複雑なシステムなのです。

この480万円という価格で「プロパイロット2.0」が使えるというのは、むしろリーズナブルといってもいいかもしれません。なんといってもクルマの未来が体験できるのですから。それに安全性能という意味でもとびぬけて優れています。

プロパイロット2.0に100万円の価値が
見いだせないならハイウェイスターVで十分かも

プロパイロット2.0に100万円の価値があるか
(引用:日産公式HP)

ただ、他のセレナに装備されている「プロパイロット」でも現状安全機能として十分ともいえますので、あえてe-POWERルキシオンを選ぶというのは、よほどこの「プロパイロット2.0」が使ってみたい! というのでない限り強くはおすすめしません。

やはり見た目がe-POWERハイウェイスターVとほぼ一緒というのが残念です。ほぼ500万円(オプションを追加しての支払総額なら軽く500万円オーバーです)の高級ミニバンなのですからもう少し見た目にも差別化しても良かったのではないでしょうか。

480万円の価格は決して高すぎるわけではなく、「プロパイロット2.0」の優れた機能を考えれば妥当というよりもむしろリーズナブルともいえます。ただ、「プロパイロット2.0」に100万円の価格差分の価値を見出すことができないのであれば、わざわざMクラスミニバン随一の超高額車セレナe-POWERルキシオンを選ぶ理由はあまりないかもしれません。

快適装備満載で見た目もクールなe-POWERのセレナが欲しいのであれば、人気グレードのe-POWERハイウェイスターVを選ぶのが正解ではないでしょうか。なんといってもルキシオンより100万円以上安くて、見た目はほぼ一緒。それに「プロパイロット」だって搭載されています。そう考えるとe-POWERハイウェイスターVがとても魅力的に見えてきますね。

ちなみにリースナブルではそんなセレナe-POWERハイウェイスターVのリース車両をご用意しています。

参考サイト:https://leasonable.com/model/serena/

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