今年は、梅雨をすっ飛ばしていきなり夏がやってきました。それもただの夏ではありません。猛暑の夏です。すでに熱中症による被害が全国で起きているようですが、暑さ対策は万全でしょうか。

人間だけではあるません。クルマだって暑さ対策は欠かせません。なんといっても夏のクルマトラブルの代表といえば暑さによるオーバーヒート。そしてオーバーヒート対策の基本はクーラント(冷却水・LLC)の管理です。交換やチェックは万全でしょうか。

ちなみにあなたのクルマのクーラントはどんな色ですか? 緑、それとも赤? 青やピンクという人もいるでしょう。ところでこのクーラントの色の違い、何か意味はあるのでしょうか。クルマによって色が違うのはなぜなのでしょう。

今回はそんなクーラント(LLC)について、交換の必要性や色の違いの意味などを解説します。

LLCは徐々に劣化していくので
定期的な点検や交換が必要

定期的な点検や交換が必要

オーバーヒート。かつては夏場のクルマのトラブルの定番でしたが、最近はそうそう起きることはありません。今のクルマは効率的に走行風を取り入れるようなデザインとなっていますし、ラジエターなどの冷却系の品質も上がり、クーラント(以後LLC)の性能も上がっています。いくら暑い夏とはいってもそうそうオーバーヒートなど起きることはありません。今どき街中でボンネットを開けエンジンを冷やしているなんて光景を見る機会もそうそうないはずです。

ただ、今年の夏(2022年)のような猛暑となると状況は変わってきます。40度オーバーという観測史上最高というかつてない高温が続くとさすがにクルマもオーバーヒートを起こしてしまうかもしれません。特にLLCの管理を怠っていると、そのようなトラブルに巻き込まれる可能性もあるでしょう。

キチンと定期的なメンテナンスをして、定期的にラジエターやホースに点検を行い、ラジエターキャップやLLCの交換をしていれば、そうそう起こることはありませんが、あなたのマイカーはそういったチェックをちゃんとやっているでしょうか。

あなたのクルマがカーリース車両であれば、日ごろの点検やメンテナンスをリース会社がしっかり行ってくれているかもしれませんが、点検や交換をさぼっていると、真夏の渋滞路でエンジンがオーバーヒート!などというトラブルに遭遇する可能性もゼロではありません。気を付けてください。

是非一度マイカーのボンネットを開けて、LLCのリザーバータンクの量の確認くらいはしてみてください。半透明のタンクですので目視で分かるので簡単です。量だけではなく色のチェックもあわせて行いましょう。汚れていたらそろそろ交換が必要です。

クルマの冷却水としてLLCが
使用されているのはなぜなのか

クルマの冷却水

そもそも、LLCは、エンジンを冷却するための液体です。ちなみにLLCは(Long Life Coolant/ロング・ライフ・クーラント)の略であり、ようするに長寿命の冷却水ということですね。

LLCは、エンジン内部から熱を奪い、クルマの前部に配置されているラジエターに熱を持ったLLCをウォーターポンプによって移動します。そこで走行風によって冷やされ、再びエンジンに戻ってエンジンを冷却するというサイクルを繰り返しています。

エンジンの熱を奪って、冷やすのであればただの水でもよさそうなものですが、真水では真冬の低温化では凍ってしまいますし、金属でできたエンジン内部にサビを発生させてしまいます。LLCは冬場でも凍結せず、長期間使用してもエンジン内部にサビや腐食を発生させないということがもとめられるので、真水ではだめなのです。

LLCの成分は凍りづらい特性があるグリコール系溶媒に防錆剤などの添加剤を加えた液体がほとんどです。LLCによって、色は違っていてもその機能にはほぼ違いはありません。そして透明ではなく色がついている理由ですがこれは、成分によるものではなく、わざと目立つ赤や緑に着色されているのです。

なぜなら、そうすることでトラブルをいち早く見つけることができるから。クルマのエンジンルームではエンジンオイルやミッションオイル、ブレーキフルードにウォッシャー液などクーラントの他にも様々な液体が使用されています。

もしどこかにトラブルが起きて、クルマの下に液体が漏れているのを発見したらどうでしょう。液体に分かりやすい色がついていれば、例えば赤や緑の水なら、それは冷却系のトラブルであることがいち早く分かります。こういった目的でクーラントには着色がされているのです。

ちなみに、トヨタは純正クーラントが赤で、日産は緑が定番となっています。どちらもクーラントの成分自体には特に違いはないとされています。ではなぜ色が違っているのでしょうか?

LLCに色が付いているのには
ちゃんとした理由があった

LLCに色が付いている理由

現在、国産車で使用されているLLCには主に赤、緑、青、ピンクの4色があります。昔からおなじみなのは赤と緑のLLCですね。赤と緑のLLCはエチレングリコールを主成分としたもので、その耐用年数はおよそ2~3年となっています。

ロングライフという割に対して寿命は長くないなと思うかもしれませんが、あくまでLLC登場以前のクーラントよりも長寿命ということです。そのため「LLC(ロング・ライフ・クーラント)」という名前がついています。

そして、寿命が2~3年なので、車検のタイミングごとに交換するのが良いとされています。

しかし、最近は赤や緑ではないLLCが純正採用されているクルマも増えています。それらに使用されているのが青やピンクのクーラントでそれらは「スーパーLLC」と呼ばれるものです。成分はプロピレングリコールでスーパーロングライフというくらいですから従来のLLCよりも圧倒的に長寿命。その耐用年数は7~10年を実現しています。

そこまで寿命が長いと、新車購入からそのクルマを手放すまで、クーラントを交換する必要はないというオーナーもきっといるはず。カーリース車の場合、リース期間は3年、5年、7年といったプランがほとんどですから、どのプランであってもリース期間はまるまるスーパーLLCの寿命内に収まります。

メンテナンスリースではない人にとっては、余計なメンテナンスの手間が減りますし、交換のための費用も抑えられます。また、クーラントは有害な廃棄物でもあるので、捨てる回数が減ればそれはエコにもつながります

「だったら自分のクルマもLLCではなくスーパーLLCに交換しよう!」なんて考える方もいるかもしれません。でも、それは考え直しましょう。性能が高いからといって安易にLLCをスーパーLLCに変えるのは避けるべきです。それには理由があります。

LLCとスーパーLLCを
クルマに合わせて使い分ける理由とは

クルマに合わせて使い分ける理由

その理由とはもともとLLCが採用されているクルマに性能の高いスーパーLLCを入れると、その高い洗浄能力によって、ラジエター内の汚れが落ち、配管が詰まったり、冷却系に故障を引き起こす可能性があるからです。

逆にスーパーLLCを採用しているクルマにLLCを入れてしまうと、洗浄能力が発揮できずラジエターや配管などに汚れが残ってしまう可能性が高くなります。LLCが使用されている車にはLLCを、スーパーLLCが使用されているクルマにはスーパーLLCを使用するのが間違いはありません。

さらに、LLCどうしであれば異なる色のLLCを混ぜてしまってもいいのか?ですが性能的にはおそらく問題ないでしょう。

しかし、LLCはその色の変色によって劣化を知ることができるという特徴も持っています。それなのに異なる色で混合してしまうと液体が濁ってしまい、劣化による変色が分からなくなってしまいます。やはり、赤なら赤、緑なら緑というように、同じ色のLLCを使用するのが好ましいでしょう。

LLCはDIYで交換することはできる?
また交換はどれくらいのサイクルで行えばいい?

LLCはDIYで交換することはできるのか

LLCはクルマを使用していれば徐々に蒸発して量が減っていきます。またロングライフとはいっても劣化も起きます。劣化すると、エンジンの熱を下げる性が能低下し、ラジエターやウォータージャケット内部にサビが発生してしまう可能性があります。結果、オーバーヒートを起こしてしまうかもしれません。定期的な交換や補充は欠かせません。

では、どれくらいのペースで交換を行えばいいのか。前述したとおり、LLCなら寿命が2~3年、スーパーLLCなら、走行距離16万kmまたは7年となっていますので、これを目安に交換すればいいでしょう。LLCなら車検に合わせて点検を依頼し、交換を行えば問題ありません。

スーパーLLCなら3回目の車検時となります。また点検を行い明らかに劣化が進んでいたり、量が減っていた場合はそれらのタイミング前に交換や整備を行ったほうがいいかもしれません。

LLCの点検は、エンジンルーム内のラジエターリザーバータンクで確認します。リザーバータンクはたいていエンジンルーム内にあり、目盛り付きの半透明樹脂でつくられています。ウォッシャー液のタンクと間違えやすいですが、LLCは緑や赤、スーパーLLCならピンクや青色がついているはずなので、そのような液体が入っている半透明の容器を探しましょう。

タンクの側面には目盛りが付いており、タンク内の液面が「FULL/LOW」もしくは「MAX/MIN」の間に収まっていれば量に関しては正常です。液面はクーラントの温度によって上下するので必ずエンジンが冷えた状態で確認するようにしてください。

LLCの色が目視で明らかに濁っていた場合、劣化が進んでいます。経年なのかそれとも冷却系のトラブルによるものかは色だけでは分かりませんので修理工場やディーラーなどに持ち込み修理を依頼してください。

DIYでもLLC交換は可能だが
難易度が高いのでプロに任せるのが賢明

難易度が高いのでプロに任せるのが賢明

LLCは、エンジンオイルなどと同様にDIYによって交換することも可能です。しかし、作業にはクルマの下に潜ってラジエターからLLCを抜く作業が必要になるので、簡単ではありません。また高温になるLLCを扱うので危険も伴います。

さらに、クルマによってはラジエターからの排出だけではLLCが抜けきらないこともありますし、水道水などを使って冷却ラインを洗浄するといった作業も必要です。

加えて、抜き取ったLLCは有害な液体であり、環境に悪影響を及ぼすものでもあるので処理が面倒です。言うまでもなく側溝や下水に流して捨ててはいけません。

このように作業も難易度が高く、抜き取った古いLLCの処理も面倒ですので、やはり整備工場やディーラーなどのプロに任せてしまうのが賢明でしょう。

応急処置以外、LLCのかわりに
水道水を使用するのは避けましょう

水道水を使用するのは避けましょう

もし、走行中に水温警告灯が点灯したり、水温計が急上昇してしまった場合はLLCや冷却系にトラブルが発生している可能性があります。そうなったらクルマを速やかに安全な場所へ退避させてください。

ボンネットから水蒸気が見えても、危険なのでいきなりラジエターキャップを開けるようなことはしてはいけません。LLCの温度が100℃以上の高温になっている場合があるので危険です。キャップを開けた瞬間に高温のLLCが吹き出し火傷してしまうかもしれません。気を付けてください。

また、すぐにエンジンを停止させてはいけません。エンジンを切ると、ウォーターポンプによるLLCの循環が滞り、冷却ファンも止まってしまうからです。そのままアイドリング状態でまず水温系計を確認します。

水温計の温度がその状態で徐々に下がるようならしばらくアイドリングで様子を見ます。逆に、アイドリング中も水温がどんどん上がってしまうのであれば、すぐにエンジンを停止しましょう。そして、ロードサービスなどの応援を呼ぶべきです。

とりあえずアイドリングで水温が下がるようならLLCのリザーバータンクを確認します。明らかに水位が下がっている場合は、とりあえず応急処置として水道水を継ぎ足しても構いません。

ただし、あくまで緊急時の対応です。冷却性能が一時的に回復できるはずですので、慎重に走行して、修理工場やディーラーにクルマを持ち込みましょう。そこで水道水を継ぎ足したことを告げ新しいLLCに交換してもらいましょう。

そして、修理を依頼してください。オーバーヒートが起きるようであれば、冷却系に重大な故障が発生している可能性があるので、隅々まで点検してもらい、完璧に修理してもらうようにしてください。

オーバーヒートにならないように
この時期はLLCの点検を必ず行おう

オーバーヒートにならないようにLLCの点検を必ず行おう

今回は、クルマの冷却に欠かせない、LLC(冷却水)について、その色の違いの意味や、種類の違い、点検の仕方などをご紹介しました。

冷却水はエンジンオイルなどと違って日ごろあまりチェックすることはないでしょうが水冷エンジンのクルマのとっては非常に大切なもの。不具合があればオーバーヒートという重大なトラブルにつながってしまいます。

特に夏場はトラブルも起きやすいので、遠出をする予定があるならその前に最低でもLLCの量や色の点検などをしっかりしておきましょう。