どんなに大切に使用していても、丁寧な運転を心がけていても、日々クルマを使用しているとどうしてもついてしまうのがバンパーの傷です。
本来バンパーとはクルマが衝突するなど大きな衝撃を受けた場合に、そのエネルギーを緩和するための緩衝装置です。車体のダメージを減らし、なおかつ乗員を守るためにあるもの。つまりぶつかることが前提のパーツです。
ということは傷がつくのは仕方がないともいえます。とはいえ、実際にバンパーを緩衝装置として考えるドライバーはほとんどいないでしょう。
むしろスポイラーのような、特別な機能を持ったクルマのデザインに重要な装飾パーツの一部として考えている方も少なくないはずです。そんなバンパーに軽くこすった程度でも傷がついてしまうと非常に目立ちます。かといってDIYで補修するのはハードルが高すぎる。そう思っている方がほとんどでしょう。
でも、傷の程度によっては本格的なペイントなど不要で簡単に補修可能な場合もあります。ではどんな傷ならDIY初心者でも補修が可能なのか? その見極め方と、補修方法をご紹介します。
目次
バンパーはもともと傷がついてもいいもの
とはいえやっぱり傷があれば直したい
どんなクルマであっても必ず装備されているのがバンパーです。バンパーは万が一クルマが何かに衝突したり、外部からの強い衝撃を受けた時に、真っ先にその力を受け止めるというもの。そして変形や破損することでエネルギーを吸収、分散してクルマ本体の破損を減らし、また乗員の安全を守るのがバンパーの役割なのです。
昔はクロームメッキが施された金属性のバンパーもありましたが現在はそのほとんどが樹脂製です。適度な柔軟性を持たせることで、あえて破損しやすく作られているものがほとんどです。
そのため日々クルマを使用していればどうしても傷がついてしまうのです。三角コーンにこすったなどちょっとしたことでも簡単にダメージを受けてしまいます。
でも、表面に傷がついた程度ならそのままでももちろん問題はありません。経年によるダメージといってもいいものなので、たとえカーリース車でもその程度の傷なら問題となることはほとんどないでしょう。もちろん表面の塗装を超えて樹脂素材部分まで達した深い傷なら別ですが。
そもそもヨーロッパなどでは駐車車両の隙間にクルマを停めるのにバンパーぶつけて、ほかのクルマをずらしてから自分のクルマを隙間に駐車するなどということが(かつては)普通に行われていたと言われています。ちょっとの傷でも気にしてしまうのは日本ならではかもしれません。
とはいえ今どきのクルマはバンパーもデザインの一部ですし、そもそもパーツとしてのとても大きい。ちょっとこすった程度の傷であってもやっぱり目立ちますし、オーナーとしては気になってしまいますよね。でも直すのはお金もかかるし大変。じゃあ放っておくのか?
でも、実はバンパーの傷は目立つものでも、多くの場合、簡単に治せる場合が少なくありません。それも本格的な修理ではなくコンパウンドなどで磨くだけといったDITで補修できるものがほとんどです。もちろんすべての傷に対応できるわけではありませんが、浅い傷なら補修できる可能性は大です。ではどの程度の傷ならコンパウンドで対応可能なのでしょうか。
塗装そのものやボディにまで
達していない浅い傷なら消せる!
樹脂製のバンパーは基本傷があってもサビに犯される心配はありません。あわてず修理に持ち込む前にまずは傷の程度を見極めましょう。傷をよく観察してください。バンパーそのものに変形や割れはありませんか。その場合の補修は難易度が高いです。その場合は業者に依頼です。
もし、割れやへこみもなく傷がついているだけなら、次にその傷の深さを確かめます。塗装やクリアコートの状態を確かめてみてください。傷がボディカラーとは別の色の場合、それは汚れや塗料が表面に付着して傷に見えているだけかもしれません。それなら表面を磨くだけでOKです。
また、深くはないけれど明らかに塗装面に傷がついている場合は、その傷の深さを爪で確かめます。爪を立ててその傷に触ったときに引っかかるかどうかチェックしましょう。もし引っ掛かるようならタッチアップや塗装が必要となる可能性があります。小さなものならDIYのタッチアップでも目立たなくすることは可能ですが、決して簡単ではありません。
WEBのハウツーコンテンツや、動画などで、いかにもタッチアップで簡単に直ります、的に言っているものもありますが、実際には簡単ではありません。安易にチャレンジすると、無残な結果がまっています。自信がないならやらない方が賢明でしょう。
しかし爪が引っ掛かるようでも軽い抵抗を感じるくらいだったり、爪が引っかからないものは磨けばその傷を落とすことが可能かもしれません。こういった傷は塗装面へのダメージではなく、クリア層やトップコートの表面についたものがほとんど。クルマの塗装は通常このようになっています。
このクリア層への浅い傷であれば、塗装そのものにダメージを受けている可能性が低いでしょう。そのため、コンパウンドを使用し、クリア層やトップコート表面の傷を研磨し平らに慣らしてしまえば、目立たなくすることができるのです。
完全に傷が消えるというわけではありませんし、塗装面にまで達している傷の場合は難しいですが、DIYでもほとんど目立たないレベルまで補修することが可能です。ではどのようにすればいいのか。そのやり方を次のパートで紹介します。
研磨用のコンパウンドは
細目を基本にいくつか揃えよう
(引用:ソフト99公式HP)
まず必要なものは細目や仕上げ用のコンパウンドとコンパウンド用のスポンジ、マスキングテープ、仕上げ用のウエスなどです。クルマ用のコンパウンドはカー用品店やホームセンターなどで入手可能です。また、ネット通販などでも簡単に購入できるでしょう。
●参考サイト:http://www.holts.co.jp/prods-detail/?spo=s_on&id=1606
●参考サイト:http://www.holts.co.jp/prods-detail/?spo=s_on&id=1809
●参考サイト:https://www.soft99.co.jp/products/detail/09193/
こういったセットになったものがお手軽でおすすめです。合わせてコンパウンド用スポンジもいくつか用意しておきましょう。
●参考サイト:https://www.soft99.co.jp/products/detail/09148/
コンパウントのかけ方の基本は、粗目のものから使用して、徐々に細めのもの、極細と使い分けて磨きこんでいくのですが、初心者であれば、いきなり粗目のコンパウンドの使用は危険です。粗目は研磨力が高いため、余計な部分にまで擦り傷を付けてしまう可能性があるからです。
細目、極細、超極細など研磨力のあまり高くないコンパウンドを使用するのが賢明です。細目のコンパウンドで傷が消えないようであれば、少し粗目のコンパウンドを試すといいでしょう。
磨き始める前にまずはクルマの洗車を行ってください。傷の周囲に鉄粉や砂などが付着しているとコンパウンドを使用して磨く際に余計な擦り傷を付けてしまうことがあります。傷の状態を確かめる意味でも汚れなどを洗車で落としてしまいましょう。ワックスをかける必要はありません。ワックスはコンパウンドで磨いたあとにかけてください。洗車を終え準備ができたら研磨してみましょう。
コンパウンド研磨の前に
まずはしっかりと準備を行う
研磨の方法を順に説明します。まずは磨き始める前に、洗車や脱脂を行い、傷の部分の周囲をマスキングテープで養生します。コンパウンド掛けはクリア層の表面を削ることになるので傷の倍部分にダメージを与えないためです。では本格的に磨いていきましょう。
■コンパウド研磨による傷の消し方
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①スポンジを水に浸し固く絞る
細目のコンパウンド、コンパウンド用スポンジ、バケツと水を用意したら、コンパウンド用スポンジを水に浸して固く絞ります。水に濡らす理由は、摩擦熱の影響を減らすためです。コンパウンド掛けはスポンジでボディ表面をこすることになるので乾いたままのスポンジで作業すると必要以上に摩擦力が強く働き熱が発生して余計にクリア層を削ってしまうからです。
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②スポンジにコンパウンドを少量取る
絞ったスポンジに細目のコンパウンドを、小指の先くらいの量取ります。そして傷だけでなく、養生した傷の周辺にコンパウンドを均等に塗布するようにやさしくなでるようにします。そしてスポンジで磨いていきます。
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③直線状に研磨する
磨き方は直線状に磨くといいでしょう。力を入れすぎないようにやさしく磨きましょう。なお、円を描くように磨くと円状のスクラッチ傷ができてしまいかえって目立ってしまいます。スポンジは傷にそって平行になるように、縦方法や、横方向の直線状に動かすようにして下さい。
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④傷の部分を集中的に研磨する
研磨したいのは傷の周辺なので、それ以外の部分に傷をつけないように慎重に研磨してください。
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⑤10回程度研磨したらウエス拭き取り確認
10回前後スポンジで磨いたら一旦拭き取り用のウエスで拭き取って状態を確認しましょう。一気に傷を削り落とすのではなく、これを何度も繰り返し目立たなくなるまで少しずつ磨いていきましょう。部分的に磨きすぎるとクリア層を超え、塗装面まで傷つけてしまうので注意してください。
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⑥傷が目立たなくなったら極細コンパウンドで仕上げる
細目コンパウンドで磨いて、傷が目立たなくなったら極細コンパウンドや仕上げ用コンパウンドで磨きます。これは細目コンパウンドでできてしまった細かなスクラッチ傷を研磨力の弱いコンパウンドで磨くことで平に慣らすためです。傷やスクラッチが十分目立たなくなったらマスキングテープをはがしましょう。
磨き終えたら洗車を行いコンパウンド洗い落とします。そして最後にボディにコーティング剤やワックスをかけてください。コンパウンドで磨いたボディはクリア層の表面がむき出しになってしまっているので、コーティングでクリアを守ってあげましょう。
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①洗車をして傷の周囲の余計な汚れを落とす
まずは洗車です。傷の中やその周辺の砂や泥、ホコリなどの余計な汚れを洗い落とします。
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②コンパウンドをかける
全てをタッチペンに頼るのではなく、コンパウンドで消せる傷はまず研磨で消しておきます。
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③サンドペーパーで傷の中の汚れやサビを取る
600番程度のサンドペーパーを用意して、傷の中の汚れやサビを取ります。ダメージのない塗装を傷つけないようにサンドペーパーを折り曲げて傷の中だけを磨くようにして汚れやサビを削り落とします。こうすることで塗料の乗りがよくなります。
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④シリコンオフスプレーで油分を取る
次に、油分が残っていると塗装がうまく乗らないので、ワックス分やオイルなどを落とせるシリコンオフスプレーなどを傷の周囲にスプレーして脱脂しましょう。
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⑤傷の周囲をマスキングテープで養生する
傷以外の場所にタッチペンの塗料が付かないよう、傷の上下にマスキングテープを貼って周囲を養生します。
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⑥傷の中を塗料で埋めていく
タッチペンをしっかり攪拌してから、キャップを取り、傷のなかをキャップに内蔵されている筆の先端で慎重に塗装していきます。塗料で点々を打つように傷を埋めていくのがコツです。塗料が盛り上がるまで何度も塗装と乾燥を繰り返しましょう。一度に埋めようとせず、少しずつ塗っては乾燥を繰り返すのがコツです。
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⑦塗料を乾燥させる
塗装を終えたら、マスキングテープを剥がしてしっかり自然乾燥させましょう。できれば数日間、可能であれば一週間は乾燥させるのが理想的です。
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⑧傷の状手をマスキングテープで養生する
しっかり乾燥したら、傷口の上下に沿って再度マスキングテープを貼ります。この上からサンドペーパーをかけるので3枚重ねくらいでしっかり貼り付けましょう。
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⑨耐水ペーパーで盛り上がった塗料を研磨
1000番や1500番の目の細かい耐水ペーパーを用意してマスキングテープの上から傷口に盛った塗料を静かに研磨します。力を入れず慎重に磨いてください。塗料の表面が平らになったらマスキングテープをはがします。
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⑩細目コンパウンドで磨く
細目コンパウンドでさらに研磨します。そして最後に仕上げ用の液体コンパウンドなどで完全に平らになるまで磨いて仕上げましょう。傷が目立たなくなったことを確認したら、洗車で油分を落とし、ワックスやコーティング剤で塗装面を保護して終了です。
腕に自信があるなら
タッチペンによる補修にチャレンジ
細かな傷やスクラッチ、何らかの塗料などが表面に付着しているような軽度のダメージであれば、コンパウンドを使った研磨で十分目立たなくできるはずです。
しかし、コンパウンド研磨を行っても、傷がどうしても目立たなくならない、という場合は、クリア層を超えて塗装にまでダメージを受けている可能性があります。ひどい傷であれば板金塗装修理などに出すしかないでしょう。ディーラーや修理工場に依頼するか、最近は手軽に依頼できるリペアショップなどもあるのでそちらを利用するのが確実です。費用は掛かりますが仕上がりはDIYとは比べ物になりません。
傷がある程度深いけれどとても小さなものなら、タッチアップに挑戦してみるという手もあります。塗装補修用のタッチペンなどはディーラーやカー用品店で簡単に手に入りますし、作業自体も決して難しくはありません。タッチペンはできればディーラーでクルマの純正色のものを手に入れるのがいいでしょう。
タッチペンで補修というと、簡単にできそうに思えますが、コンパウンドによる研磨に比べれば難易度は間違いなく高くなります。プラモデル作りなどで細かな塗装になれているならやってみてもいいですが、DIY作業自体あまり経験がないという方は避けた方が無難です。それでもチャレンジしてみたいという方のために一応そのやり方を簡単にご紹介しましょう。
■タッチペンを使った傷の消し方
コンパウンドでも消えない傷は
専門の業者に任せるのが賢明
クルマの傷はオーナーとして非常に悲しいもの。でも紹介したように浅い傷であれば、経験がなくてもDIYで簡単に目立たなくすることは可能です。
もしお持ちのクルマやリースで利用中のクルマに、以前から気になっていた小さな傷があるのなら、一度コンパウンドを使った傷の補修に挑戦してみてはいかがでしょう。タッチアップによる塗装の補修は、失敗などのリスクがありますが、コンパウンドによる研磨であれば、傷がひどくなることはありません。やってみる価値は十分あるでしょう。
ただし、もし、挑戦してもだめだったら素直に修理に出してください。くれぐれも「スプレー缶で塗装をやり直してよう!」などということはやめてください。素人による塗装は決していい結果をうみません。ダメージを悪化させるだけです。
できるとしたらせいぜいタッチペンによる補修でしょう。それ以上はディーラーや修理工場、リペア業者に依頼するのが間違いありません。安易な行動は絶対にやめましょう。きっと後悔しますよ。