クルマを運転していて、つい気が緩み速度が制限速度をオーバーしてしまったという経験はないでしょうか。ドライバーとしてはスピードメーターをこまめにチェックして、その道路の制限速度は超えないように運転しなくてはならないのですが、道路が空いていたり、周囲のクルマの流れが速いとついつい速度オーバーとなってしまうこと、ありますよね。

でも、そんな時に限って、道路のまたぐような門型の構造物を発見してしまう。そんなときあなたどう思うでしょうか。

「やばい、オービスだ!」

なんて思ってしまう人もきっと多いではないかと思います。でもそれって本当にオービスだったでしょうか。もしかしたら「Nシステム」だったかもしれません。

Nシステムって何? オービスじゃないの? なんて、Nシステム自体がどんなものかわからないし、そもそもそんな名前聞いたことがないなんて人も中にはいるでしょう。でも見分け方を知っておくと、運転中にオービスと間違えて慌てるなんてことなくなるかもしれません。

そこで今回は身近にあるのにその実態を知らない人も少なくない「Nシステム」について、どんな目的のものなのか、なぜ路上にあるのか、またオービスとの見分け方のコツなどをお教えします。

走行中のクルマのフロントのナンバープレートを
自動で無差別に撮影記録するNシステム

Nシステム

高速道路や国道などに設置されている門型の構造物、それが「Nシステム」です。また、道路脇に設置された逆L字型の構造物の上に、カメラらしきものが組み込まれたタイプもあります。どちらも速度取り締まり用のオービスにも似ていますが、その目的は全く違います。走行中のクルマのナンバープレートを読み取るための装置なのです。

スピード違反の取り締まりに使われている、いわゆる「オービス」と一見よく似ているため、見間違えてしまうことも多いですが、Nシステムに撮影されても速度違反の取り締まりを受けることはありません。そのための装置ではないからです。

Nシステムは日本全国に設置されていて、警察庁によると、その数は少なくとも1511台以上が日本全国に設置されているようです。このNシステムは、道路を走行中の車のフロントのナンバープレートを自動で無差別に撮影記録してそのデータを収集してホストコンピュータに送りデータベースに集約するというもの。

撮影されたデータは、例えば犯罪手配車両のリストと自動的に照会されて、手配車両の追跡や、盗難車のチェックなどといったことに使われます。

Nシステムがあることで、逃走中の容疑者を速やかに検挙することができるなど、犯罪捜査や事件解決に役立っているというわけです。ニュースなどでも容疑者のクルマを行方がNシステムに記録され、検挙につながったなどという話題が取り上げられたこともあるので、なんとなくそういったものがあるということを知っている方もいるのではないでしょうか。

ちなみにNシステムというのはあくまで通称です。「自動車ナンバー自動読取装置」(管轄する各都道府県の警察よって異なることもある)というのが、正しい名前で、クルマのナンバー(Number)を自動的に読み取るシステムということから、Nシステムと呼ばれるようになったようです。

Nシステムは、いったいいつ頃から
路上に導入されているのか

Nシステム路上導入はいつから

Nシステムが導入されたのは、バブル真っ最中の1987年とされています。その第一号が設置されたのは東京都江戸川区の新堀を通る国道14号で、以後日本中に広がっていきました。

走行中のクルマのナンバーを読み取るその目的は前述のとおり走行中の車両が、盗難車両や犯罪などに使われた可能性のある手配車両でないか、ナンバーのデータを照合するためです。人手をかけずに無人検問しようというわけですね。

撮影は自動的に行われ、そのデータは随時ホストコンピュータに送られます。ナンバーを監視するためのものですが、カメラで撮影しているのですからNシステムに記録されているのはナンバーだけではなくクルマ全体のはずです。

詳細は公表されていませんが、クルマの形状やボディカラー、さらに運転席や助手席に乗っている人の顔もなども撮影しているようです。それが別に目的に使われているかはどうかはわかりません。

そして、Nシステムが撮影したクルマのナンバーが、犯罪にかかわっているクルマのナンバーと合致したという場合は、そのクルマを撮影したNシステムの地点情報が、その情報が捜査している警察に送信されます。

そして、地点情報を受け取った警察は、その情報をもとにして、犯罪や盗難などに関係がある可能性のある車両を追跡するということになります。犯罪抑止にはとても役に立つシステムなのです。

そして、Nシステムを通過したクルマは自動的に、無差別に撮影され続けるので、その撮影データは膨大なものとなります。そのデータは一定期間蓄積され、あとから手配中の車がどういったルートを走行したのか、ということも調べることができるというわけです。

Nシステムはすでにいくつもの犯罪の捜査に成果を上げています。容疑者の車両がNシステムによって検知され、逮捕につながったケースも数多くあります。我々の安全な生活を守るために大いに役立っているのです。このようにNシステムは犯罪抑止や捜査に有効であることから、今後もその設置件数はふえていくことになるのではないでしょうか。

うちの近所にもあるのかな?
Nシステムどんな場所に設置されている

Nシステム設置場所はどこ

Nシステムは、主には国道や高速道路、インターチェンジ付近などに設置されています。また、それ以外にも一般道や、都道府県庁。さらに、安全の確保が欠かせない原子力発電所や火力発電所、空港に自衛隊、在日米軍観戦施設、宗教関連施設周辺にも設置されています。気が付かないうちにしっかり監視されている(あくまで車のナンバーだけのはずですが)のですね。

門型や逆L字型の、路上の構造物だけでなく、可搬式のNシステムというのもあるようです。そのような構造物を近所の道路で見かけたことがあるという方は、一度詳しくチェックしてみてもいいでしょう。

本当に犯罪捜査以外に
撮影データは使われていないのか?

Nシステム撮影データ

Nシステムの撮影データはあくまで犯罪捜査の使用するのが目的となっています。そのため、無差別に収集されたナンバーの撮影データも、違法性のないクルマのナンバーであれば消去されるとのこと。警察はそのように発表しています。

しかし、行動を走行するクルマのナンバーのデータはとても価値のある情報であり、犯罪捜査だけでなく違反車両の発見などにも利用は可能です。そして、実はそのナンバーのデータが車検切れ車両の検知にも使われているのです。こちらを見てください。

◆ 参考サイト:https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha09_hh_000199.html

国土交通省が平成30年に発表した報道資料ですが、内容はこうです。

「 国土交通省では、全国で行う街頭検査に可搬式の「ナンバー自動読取装置」を導入し、公道を走行する車検切れ車両を把握し、当該車両のドライバーに直接指導・警告する対策を今月より開始します」というものです。

つまりは車検切れの車を自動的に検出、検挙するためにNシステム(ナンバー自動読取装置)を使用しているということですね。平成30年の資料ですからすでにかなりの期間利用されており、これによって発見された車検が切れた車両を運転しているドライバーに対して警告書を交付するということも行われています。

車検切れのクルマを公道で運転する、というのは違反行為ですので、確かに有効な使い方です。ただ、いつの間にかNシステムがこのような目的にも使われていたというのはちょっと怖い面もあります。

例えば、他の目的にもNシステムのデータが使われないとも限りません。犯罪者ではなく警察がマークしている人物の行動監視にNシステムが使われている可能性もなくはないでしょう。もし心当たりがないのに、自分がそのように警察に疑われている立場で、Nシステムでいつの間にか自分の行動が監視されていたら、ちょっと怖いですよね。Nシステムは我々の税金で設置されているものですし、それが警察の都合の良いように乱用されてしまうのではあればちょっと問題です。

事故や事件などのトラブルを未然に防ぐにはたしかに役立つのかもしれませんが、一方でプライベート侵害にもなりうるのではないかという声も上がっています。我々国民としては収集された情報がどのように使われていくのか、しっかり監視していく必要があるかもしれません。

見間違え安いNシステムと
速度取り締まりに使われるオービスの違いは何

Nシステムとオービスの違い

Nシステムと、速度取り締まりをするオービスは非常によく似ています。その違いを知っていないと見間違えることも多く、Nシステムを路上に発見して、急にブレーキを踏んで速度を落とすなんてドライバーを見かけることも稀ではありません。

カメラで路上を走行するクルマを自動的に撮影する、という点では双方変わりませんが、制限速度をオーバーしたクルマだけを撮影するオービスと違って、Nシステムは通過するすべての車両を対象に無差別に撮影をしています。

撮影時には赤外線カメラを用いているので、もし光っていても私たちが撮影されているかどうかを目視で確認することはできません。ただ赤外線は、デジカメのセンサーには映るのでドライブレコーダーの撮影画像を確認してみるとNシステムが発光している様子が映っているかも(映らないセンサーもあります)しれません。試しに確認してみても面白いでしょう。

Nシステムと間違えられやすいのが、オービスの中でもLHシステム(ループコイル式Hシステム)と呼ばれるものです。オービスは走行中のクルマを自動的に撮影しますが、Nシステムと違って速度違反車を取り締まるための撮影をしています。そのため速度違反をしてなければ特に反応することはありません。

NシステムもオービスのLHシステムも、大型のものは道路を横断するような門型の構造物の上に、センサーやカメラが設置されているので、一見よく似ています。走行中に瞬時に判別するのは、違いのポイントが良くわかっていないとちょっと難しいかもしれません。ではどのように見分ければいいのでしょう。

実は簡単。Nシステムと
オービスの確実な見分け方とは

Nシステムとオービスの見分け方

実は見分けるのは簡単です。速度取り締まりに使われるオービスは、ドライバーのプライバシー侵害の回避のために速度取り締まりのポイントよりも手前に、必ず事前警告板を設置するという決まりがあるからです。

ドライバーなら必ず見かけたことがあると思いますが、青い四角い標識看板に白い文字で“自動取締機設置路線”と書かれた看板を見た覚えはないでしょうか。その看板の先にあるのがオービスです。非常に大きな看板で、目立つように設置されているのでちゃんと周囲に注意を払っていれば見落とすことはないはずです。

その看板は、オービスの手前約1kmから3kmあたりに、最低2か所は設置されています。そんな青い看板を発見したら、その先にLHシステム式のオービスがあると覚えておきましょう。看板がなかったのに門型の路上構造物を見かけたらそれはNシステムです。

他にも見分け方があります。それはオービスのLHシステムにはパトランプ(赤色灯)が必ず設置されているということ。また、速度取り締まりのため走行中の車のスピードを測定するために路面に、速度の測定と撮影ポイントを示す白線マーカーが必ず引かれています。道路上に不自然に短い白線が短い間隔で引かれていたらそこで速度の計測がされているということ。そしてそのすぐ先にあるのもオービスのLHシステムです。

Nシステムを見かけてもあわてないよう
制限速度を守り常に安全運転を心がけよう

常に安全運転を心がけよう

Nシステムとオービスですが、上記のようなポイントを抑えておけば意外に見分けるのは簡単ですね。覚えておくとNシステムを見て、急ブレーキを踏み速度を落とした際に後続車を慌てさせるなんてことをしなくても済みます。役立ててください。

というか、そもそも速度オーバーで公道を走ること自体NGなので、クルマを運転する際は常に安全運転を心がけるのが正しいドライバーの姿ですね。くれぐれも気を付けましょう。