フロントガラス、サイドウインドー、リアウインドー、クルマの室内は周囲をガラスで囲まれています。つまりサンルームや温室のような日差しが差し込む空間というわけです。ガラスですから当然可視光線だけでなく紫外線や赤外線なども通します。だからこそ周囲の様子が見えるしまた温かな日差しが室内に差し込むわけです。

サンルームや温室は、そのような差し込む日差しを効率的に取り入れることで温かさを保っています。だから、気温が低く、日差しの少ない冬場にでも、太陽の日差しの恩恵を受けることができ、日光浴が楽しめ、洗濯物も乾き、植物だって育つわけです。

つまり、室内に日差しが差し込むという点ではクルマも同じわけです。暖かな日差しが車内に差しこみ、ぽかぽかとしたぬくもりが感じられるわけです。寒さの厳しい冬場はそんな日差しがとてもありがたく感じられます。

とはいえ最近のクルマに装備されているウインドウガラスは、サンルームや温室のような、効率的に日差しを取り入れられる素通しのガラスではありません。赤外線や紫外線の遮断効果を持つプライバシーガラスが主流になっています。でも、その効果は完全かというと、クルマに乗っているかたは重々承知でしょうがそうでもありませんよね。日差しが差し込めば車内の温度も上昇しますし、日焼けもします。赤外線も紫外線も、ある程度は遮断しているのでしょうが、完全に防げるわけではありません。それぐらい日光のパワーというのは強烈なものなのです。

そして冬が終わり、春となると、それまでありがたかった日光のパワーが逆に不快なものに一気に変ります。強烈な日差しが車内の温度を急激に上昇させるわけですね。外は心地よい温かさなのに、クルマのドアを開けたら真夏のような暑さに辟易。そんな時に活躍してくれるのがエアコンです。もはやエアコンなしで春~秋まで過ごすなんて考えられません。熱中症になってしまいます。もはや死活問題です。

でも、カーライフにはなくてはならないエアコンですが、あなたの愛車のエアコン、コンディションは大丈夫ですか。どこか調子が悪くなっていませんか? 例えばエアコンを使用していて、家族から臭い!と文句を言われたり、以前よりもなんだか効きが悪くなってきたな、などと感じたことありませんか。

それってもしかしたら、エアコンに不具合がおきている、もしくは、エアコンのフィルターに何か問題が起きているのかもしれません。

フィルターのつまりを放っておくと
エアコンの効果が低下する

エアコンのスイッチを入れて、設定温度を下げ、しばらく待ってみてください。もしまったく冷たい風が出てこないという場合は、エアコンの冷媒ガスが抜けている可能性があります。

また、エアコンの心臓部であるコンプレッサーなどが重大なダメージをうけているのかも。冷媒ガスの抜けであればガスを補充することで解消する場合もあります。しかし、エアコンからガスは基本的に漏れるものではありません。漏れたということは何かしら機械的な不具合などの原因があるはずですから、そのような場合はすぐに修理に持ち込みましょう。DIYで修理できるレベルではありません。明らかに故障です。

そうではなく、なんだかカビ臭いとか、効きが以前より悪くなっているように感じられるというレベルであれば、故障ではなくエアコンのフィルターに汚れが溜まっている可能性が高いです。

そもそも、あなたは、エアコンのフィルターをいつ交換しましたか?もし記憶にないようならそれが原因の可能性が高いでしょう。そうクルマのエアコンのフィルターは定期的に交換する必要があるものなのです。

クルマのエアコンも住宅用のエアコンも基本的な仕組みは同じです。ですから同じようにフィルターが装備されています。クルマ用のエアコンのフィルターの役割も住宅用のエアコンのフィルターと同じです。

エアコンが車内や車外の空気を吸い込み、ブロアファンによってエパポレーター(ここで冷媒ガスが気化し熱を奪っています)に送る際、余計なホコリや粉塵、花粉などの汚れを一緒に吸いこんでしまわないように空気をろ過しているのです。

また、これはクルマ用のフィルターならではなのですが、活性炭などを使って排ガス臭などの嫌な臭いを吸着し、さらに抗菌効果によってカビなどの繁殖も防いでいます。

つまり、フィルターは、ホコリなどからエアコン熱交換器など重要なパーツを守り、嫌な臭いなども防いでいるというわけですね。

そのような役割を担っているわけですからどうしても使用に伴い徐々にフィルターにはホコリや粉塵が付着してしまいます。そして試用期間が長くなればやがてフィルターがつまってしまうわけです。フィルターがつまれば空気の吸い込む際に抵抗となり、また臭いの吸着や防カビ性能も落ちて嫌な臭いの原因になります。そうならないためには定期的にフィルターのメンテナンスが必要なのです。

もしクルマを購入して以来、長らくエアコンのフィルター交換した記憶がないという場合は、本格的な暑さがやってくる前に早めに交換するのが賢明でしょう。

1年、もしくは1万~1.5万キロ
走行ごとの交換が推奨されている

クルマの説明書などをキチンと読んだことはあるでしょうか。そこにはエアコンのフィルターに関して交換を推奨する頻度や走行距離などがキチンと記載されているはずです。そこまで細かくチェックされている方は多くないかもしれませんが、どのメーカーでもおよそ1年に一回、もしくは1万~1万5000km走行ごとの交換が推奨しています。

もちろんこれはあくまで目安なので、粉塵などが多い地域でクルマを使用されている場合これよりも短いサイクル&距離で交換したほうが良いでしょう。

自分で交換するのが面倒という場合は、クルマを買ったディーラーにお願いするか、大手のカー用品店などにいけばすぐに変えてくれるはずです。

参考までに大手の自動車用品店の交換工賃は、国産車で1,080円(税込)/作業時間 10分~値度。輸入車はこの3倍で工賃が3,240円(税込)/作業時間は現車確認※一部車種作業不可だそうです。

でも、交換作業自体は難しくはないのでDIYでやってもいいでしょう。これらの作業工賃が節約できます。エアコンフィルター自体はカー用品店で売られていますし、アマゾンや楽天などでも購入できます。デンソーやボッシュなど純正の電装部品メーカーとしておなじみのブランドからも交換用として様々な機能を持ったエアコンフィルターなどが発売されています。

エアコンフィルターは車種によって適合品番が異なりますがこちらのサイトなどで確認可能です。

値段はだいたい1,500円くらいから5,000円ほどです。純正タイプでも最近は機能性の高いフィルターが用意されていますが、純正以外では、さらに高機能な、活性炭入りや抗菌機能付き、PM2.5対応、アレル物質抑制機能付きなどがあります。もちろん、高機能なものほど価格も高くなりますが、花粉やウイルスなどに悩まされている方は、交換のタイミングでそのような高機能なタイプに変えてみるのも良いかもしれません。

交換作業は簡単
新しいものに変えるだけ

エアコンフィルターの交換はとても簡単です。クルマによって交換方法に細かな違いはありますが多くの場合グローブボックス(助手席前にある小物入れ)の奥や、エアコン操作部の裏側などにフィルターがあり、これを新しいものに変えるだけです。DIYなどが得意でないという方でも、難しくありません。その作業は大体以下のようなプロセスになります。

①まずエアコンを内気循環に切り替えた後に、スイッチをOFFにしてエンジンを停止させます。
②グローブボックスを開けてエアコンフィルターの場所を確認する。多くの場合、グローブボックスの奥、もしくはエアコン操作部の裏などに装着されています。
③グローブボックス内の荷物を取りだしグローブボックスの蓋、もしくは本体を作業しやすいように取り外し(取り外しが不要な車種もあり)ます。固定している樹脂製のツメなどを破損しないように注意してください。
④フィルターが収納されているスペースの蓋を取り外します。つめなどを外すだけで取り出すことのできる車種、またドライバーなどが必要な車種があります。
⑤汚れた古いエアコンフィルターを手前に取り外す。その際、フィルターには裏表があるので取り付けられていた方向を確認しておく。
⑥新しいフィルターの向きを確認して正しい方向に装着する。正しい方向で取り付けないとフィルターは本来の効果を発揮できないので注意しましょう。
⑦フィルターのカバーを取り付け、グローブボックスをもとに戻したら完了です。交換後はエアコンを作動させて異常がないことを確認してください。

エアコンフィルターは基本的に使い捨てです。掃除をして再使用ができるというものもありますし、またその掃除方法などが紹介されているサイトなどもありますが、メーカーは再使用を推奨していません。

たとえどれほど念入りに掃除してもホコリや粉塵、花粉などは取りきれませんし、フィルターとしての本来の機能は取り戻せないでしょう。そもそもそれほど高価なものではありませんので、潔く交換することをオススメします。

交換作業には、工具などもほとんどいりませんし、難しい工程もありません。これで1000円以上かかる工賃が節約できるのですからわざわざディーラーやショップなどにお願いする必要はないかもしれません。

1年に一度、たったこれだけの作業で効果が得られるのですから、やってことがないという方も、この機会に是非チャレンジしてみてはいかがでしょう。