最近TVのCMなどでもよく見かけるトヨタの新しいサービス「KINTO(キント)」。サブスクのクルマバージョンだ!として画期的な最新のサービスであるかのようにテレビなどでも盛んに宣伝されています。でもクルマのサブスクていっても中身はカーリースと同じじゃないのか?本当に便利でお得な仕組みなら使ってみてもいいけれど、などと気になっている方もいるはずです。
実際のところはどうなのでしょう。一部の報道ではKINTOは、トヨタが宣伝に力を入れた割にはあまり利用者が増えていない、などともいわれています。だったら利用するのは避けたほうがいいのか?それとも今後の主流になるのか?
そんな気になるKINTOについて、その特徴や、何が画期的なのか、またカーリースと何が違うのかなどあらためて調べてみました。カーリースとKINTOどっちにしようかと検討中の方は是非参考にしてみてください。
目次
KINTOは本当にサブスクなのか?
「KINTO(キント)」はクルマのサブスクであるとトヨタは盛んにアピールしています。でも、クルマのサブスクとはどんなものなのでしょう。サブスクはよく聞きますし、すでに多くの方が利用されているでしょう。きっとこのコラムを読まれている方も、音楽や映像ソフトなどのサブスクサービスを利用されているのではないかと思います。
でも、サブスクとはいってもクルマのサブスクってなると一体どんなものなのでしょうか。音楽ソフトや映像ソフトとは違って実態のあるものですし、税金や保険、登録など細かな手続きなども必要なものです。それに月々定額でクルマに乗れるって、ようするにカーリースと同じような気もします。
どうも、「サブスク」というワードが独り歩きしていて、いかにも画期的なものであるかのようにいわれていますが、筆者を含め多くの方がそのサービス内容をキチンと理解していないように思えます。
それにKINTOは華々しく打ち上げられた割には利用者が予想以上に伸びず大苦戦中、などという報道もあります。こうなると本当のところこれから伸びていくものなのか、それとも、今手を出すのは避けたほうがいいのか判断が難しいところです。やはりその中身をしっかりと理解する必要がありそうです。
音楽や映像のサブスクとは
ちょっと違うKINTO
そもそもクルマのサブスクってどのようなものなのでしょう。サブスクについては、すでに多くの方が利用しているでしょうが、あらためてどのようなものか簡単に説明します。
まずサブスクとは、サブスクリプション(subscription)の略で定額の料金を支払うことによって、一定期間サービスを使う「権利」を得られるサービスを差します。ネットやスマホの普及によってはじまった新しいもののように思われていますが、サブスクリプションには「予約購読」や「年間購読」という意味もあって、昔からある雑誌の定期購読なども実はサブスクの一種です。
音楽や動画のサブスクの場合コンテンツを購入するのではなく会員となり、会費なりを定額払って一定期間利用します。手元にはCDやDVDなどの実体は残りませんが、膨大なアーカイブの中から音楽や動画をどれでも自由に楽しむことができるというもの。リーズナブルな利用料金で膨大なコンテンツが自由に利用できるのですから、これは流行るのも当然ですね。
ではクルマのサブスクは?クルマはデータ化できませんから実体があります。ですから会員となり、月々定額をはらってクルマを借り一定期間利用するという形になります。雑誌の年間購読がサブスクならこれも確かにサブスクといえますね。
でも、借りるものがクルマだけあっていろいろと制限があります。会費を払えば自由にクルマを使えるというものではありません。だからといってカーリースとはちょっと違います。ではKINTOならではの特徴とはなんなのか、見てみましょう。
一台を一定期間自由の乗るプランと
期間中の乗り換えが前提のプラン
まずKINTOのサブスクリプションサービスには「KINTO ONE(キント・ワン)」と「KINTO FLEX(キント・フレックス)」があります。KINTO ONEは、トヨタ車やレクサス車の新車の中から一台選び、その一台を3年間自由に乗ることができるというもの。サブスクといいながら契約期間中に選べるクルマは一台のみです。
そして、もう一つが「KINTO FLEX(キント・フレックス)」。こちらは、3年の契約期間中に3台、もしくは6台のレクサス車を乗り換えのタイミングは限定(半年、もしくは12カ月のサイクル)されますが自由に乗り換えることができるというもの。3年で最大6車種のレクサスに乗り換えることができるので、こちらのほうがサブスクリプションサービスのイメージには近いかもしれません。
ちなみにKINTO FLEXは、以前は「KINTO SELECT(キント・セレクト)」という名称でしたが2020年2月に名称が変更されています。また、名称の変更に合わせて3年で3台乗り換えるプランが追加されました。その他それぞれの細かな特徴をまとめると以下のようになります。
KINTO-ONEとKINTO FLEXの
違いと特徴とは
KINTO ONEは一台のクルマを選び、契約期間中そのクルマに乗り続けるのが前提なので、いわゆる新車カーリースに似たプランとなっています。それに対してKINTO FLEXは定額を払うことで期間中に別のクルマ(設定されているレクサス車のみですが)に乗り換えができる(一定期間で乗り継ぐことが前提)というものなのでクルマのサブスクといわれるとこちらのほうがイメージに近いかもしれません。その他細かな違いを見てみましょう。
「KINTO-ONE(キント・ワン)」
●対象車種
トヨタ車15車種、レクサス車6車種の全21車種(2020年5月現在)
●契約期間
契約期間は3年、5年、7年の3つのプランを設定。※5年プラン、7年プランは2020年5月8日から開始。
●料金
KINTO ONEの利用料金は車種によって変動。もっともリーズナブルなプランではパッソ7年プランでボーナス併用(11万円)とした場合に1万1,220円/月~。もっとも高額なプランでは、レクサスLS500h EXECUTIVEの月々均等払いで34万6,500円(追加オプションなし)/月。 KINTO ONEの3年プランは毎月均等払いのみ。5年プラン、7年プランはボーナス併用払いも選択可能。
●諸経費
料金には、メンテナンス費用(3年プランにはタイヤ交換サービスが追加)や任意保険等を含む。また5年、7年プランは車検費用も含まれる。
●期間の延長
3年プランから5年プランや7年プランに変更が可能。しかし買取はできない。契約満了時にはクルマを返却することが条件。
●愛車ポイント
運転スコアや定期メンテナスの実施によってポイント付与。運転スコアはコネクテッド機能でチェック。たまったポイントはグルメ、グッズ、体験ギフトなどに交換可能。
※ポイント付与は一部車種(2020年5月現在9車種)限定。
●のりかえGO
契約期間中に別プランに乗り換えが可能となる審査0ビス「のりかえGO」。2020年4月9日よりスタートした新サービスで契約期間中に別プランに乗り換えが可能となる。3年プランは契約から1年半後、5年/7年プランは契約から3年後以降の6か月ごとのタイミングで、中途解約時の解約金よりもリーズナブルな手数料を支払うことで乗り換えが可能。この対象月以外で乗り換えを希望する場合は、規定の中途解約金が必要。
「KINTO-FLEX(キント・フレックス)」
●対象車種
KINTO-FLEXの対象車種はレクサス車6車種(2020年5月現在)のみでトヨタ車は設定されない。
●契約期間
契約期間は3年のみ。3年6台プランでは半年ごとに、3年3台プラン12カ月ごとにクルマを返却し乗り越えることが条件。
●プラン
3年間で6種類のレクサス車を乗り継ぐ「KINTO FLEX 3年6台プラン」と、3年間で3種類のレクサス車を乗り継ぐ「KINTO FLEX 3年3台プラン」から選択可能。
●利用料金
3年6台プランが19万8,000円/月。3年3台プランが17万6,000円/月。寒冷地パッケージは3年3台プランにのみ設定され22万円/月。毎月均等払いのみ。
●諸経費
料金にはメンテナンス費用や任意保険等を含む。
●プランの変更
3年3台プランと3年6台プランは相互に変更も可能で、その際の中途解約金は不要。さらに、KINTO FLEX→KINTO ONEレクサス車への変更時も中途解約金は不要。※KINTO ONEレクサス車からKINTO FLEXへのプラン変更時は中途解約金が発生。
それぞれのサービスとも、KINTOに申し込みをするだけで任意保険がついてきます。面倒な保険加入の手続きは不要で、保険の内容は基本的な無制限の対人対物だけでなくフルカバーの車両保険もつきます。全年齢対応で車両保険の免責は5万円となっており、万が一の際にも負担は最小限ですみます。また事故などによって保険を利用しても保険契約者はKINTOなので保険料の変動はありません。
また、KINTOの申し込みはネットのみで完了できるというのも大きな特徴。KINTOの契約だけでなく任意保険の契約まで一括で契約できます。さらに定期メンテナンスの管理もKINTOに任せることができるので手間ひまがかかりません。いちいち販売店に赴き、車種を選んでから様々な書類に記入して契約。任意保険は別途自分で契約。などという面倒がないというのは、非常にありがたいといえるでしょう。
サブスクの大きなくくりの中に
KINTOとカーリースがある
また、一部地域限定ですが、中古車を利用した「U-Car KINTO ONE(ユーカー・キント・ワン)」というサービスも用意されています。こちらはKINTOのサービスが軌道に乗り、返却された中古車両が増えれば拡大していくのではないでしょうか。
このようにKINTO、特にKINTO ONEについては、そのサービス内容を見る限り、どうやらカーリースとほぼ同じと考えてよいでしょう。むしろサブスクリプションサービスという大きなくくりの中に、カーリースとKINTOが含まれるといったほうが正しいかもしれません。違いはありますが非常に近いサービスということです。
実際、調べてみるとその違いは大きくはなく、ポイントとしてはKINTOが申し込みから契約まですべてWEBで完結するという手軽さがあるということ。さらに、トヨタの正規販売店でメンテナンスなどが受けられるということ。加えて、任意保険などの費用も月々の支払いにすべて含まれ、保険加入のための手間も一切いらないということでしょうか。
KINTOの任意保険には
メリットとデメリットが
KINTOの特徴の中で筆者が気になったのが任意保険の部分です。WEBサイトでも大きくアピールされていますが実はこれKINTOだけのものというわけではありません。カーリース会社によっては、同じように任意保険をリース料金に含めて契約できるプランもあります。ですから任意保険がワンパッケージなのはKINTOだけだからKINTOを選ぶ、というのは早計です。
それにベテランドライバーにはこのKINTOの任意保険にそもそもメリットがないかもしれません。その理由はKINTOでは任意保険がワンプライスだからです。例えば善良なベテランドライバーなら任意保険の等級もある程度上がっており、割引きの恩恵を受けているはず。最高の20等級なら最大で63%の割引きです。
しかし、KINTOではその等級がひきづけません。ワンパッケージとして保険料金が含まれているから、別途今加入している保険会社の任意保険は利用できないのです。長年の安全運転でせっかく上がった保険の等級、つまり割引もつまりは無駄になるということ。これは残念です。
逆に任意保険に加入しても低い等級からスタートしなくてはならない若年層にとっては、定額で任意保険に加入できるのはお得ということになります。また万が一事故などを起こしても保険料の変動がない(等級が下がらない)というのも大きなメリットでしょう。
ただし、無事故であっても等級が上がることもないので割引はありません。定額が売りなので当然ですね。でもそのことは理解しておく必要があるでしょう。確かに任意保険料が変わらないというのは非常に魅力ですが、安全運転を続けても決して安くならないというデメリットもあるということも理解しておく必要があります。
どんなに気に入っても
クルマを買い取ることはできない
またKINTOではクルマの返却が原則。買取はできません。カーリースの場合、リース契約終了後にそのクルマが気に入ったら買い取ることが可能ですがそれができないのです。KINTOはサブスクなので、確かにそれでいいのですが、中にはそのクルマが気に入ったらできたら購入して手元に残しておきたいというケースもあるでしょう。そういった選択が用意されていないのが気になります。
KINTOはカーリースよりも手軽でサービス内容も充実、なおかつあのトヨタが提供するものですから安全感もあります。でも、皆さんがイメージするサブスクとは必ずしも同じではありません。またカーリースとも細かな違いがあります。手軽であることが特徴ですが、決して安易に利用すべきものではないかもしれません。
お得かどうかは
慎重に検討する必要あり
それに、トヨタ車、それも指定された車両のみしか借りることができないという点もデメリットといえるかもしれません。加えて月々の料金も他のカーリースよりもお得であるとも限りません。もしKINTOの利用を検討しているなら他のカーリース会社と月々の料金やサービス内容などをキチンと比較するべきです。
KINTOはまだスタートしたばかりのサービスなので色々と気になる点もあります。またプランやサービス内容に関しても今後細かく変更されていく可能性が(つい先日も新プランの導入があった)あります。一つ言えることはユニークなサービスであることは確か。ただお得かどうかは別のこと。もしあなたがKINTOの利用を検討しているなら、必ず他のカーリースのサービスと比較してみるべきです。むしろKINTOを基準として、他のカーリースや残価設定ローン、さらにカーシェアリングなどと比較したほうがよいでしょう。そのほうがよりお得で合理的なクルマとの付き合い方を見つけられるかもしれません。