トヨタの「KINTO」、ホンダの「ホンダ・マンスリー・オーナー」、そして日産の「ニッサン・クリックモビ」など、個人向けのカーリースサービスの一種、クルマのサブスクに自動車メーカーが次々と参入しています。

そして2020年10月、これらに続き三菱自動車が「ウルトラ マイカープラン」という個人向けのカーリース、クルマのサブスクサービスへ参入しました。これでクルマのサブスク市場はますます活気づきそうです。

ただ、気になることもあります。それはどのサービスも月々定額でお得!をうたっていて、細かな部分で何がどう違っているのかがわかりにくいこと。それぞれのサービスが競い合い、内容がより充実するのはありがたいのですが、利用する方としては迷ってしまいます。

そこで、以前KINTOやホンダのホンダ・マンスリー・オーナーを紹介したので、今回は新しくスタートする三菱自動車の「ウルトラ マイカープラン」について注目してみました。その特徴や他のサービスとの違いを探ってみましょう。

クルマの「サブスク」=カーリース?

まず、クルマのサブスクについて整理してみましょう。トヨタのKINTOホンダのホンダ・マンスリー・オーナー、そして日産のニッサン・クリックモビですが、これらはサブスクであると大きくうたっています。従来のカーリースとは違う月々定額でクルマが利用できる新しいクルマの乗り方であると大きくアピールしているのです。

しかし、月々利用料を払ってサービス会社から一定期間クルマを借り、契約が満了したらクルマ返却する。その基本的な仕組みを見ればその実態はカーリースの一種であることは間違いありません。

というかサブスクリプションサービスとは定額の料金を支払うことによって、一定期間サービスを使う「権利」を得られるサービスのこと。つまりカーリースはこのサブスクという大きなくくりの中にあるものなので、クルマのサブスクサービスの中に、従来からあるカーリースサービスやトヨタのKINTOなりホンダ・マンスリー・オーナーがあるというのが正しい認識でしょう。

わざわざサービスに格好良いブランド名を付けていることからしても新車購入にはハードルが高い、若い世代を狙ったものでもあるのでしょう。だからカーリースというよりも、スマホ世代にはなじみやすいサブスクというワードを使ってアピールしているではないかとも思われます。

とはいえどちらにしても基本は月々定額をはらってクルマを借りて一定期間自由に利用するというもの。大きくは変わらないといっていいでしょう。ただ、クルマのサブスクの場合は、それぞれが従来のカーリースとは違う独自のサービス内容を提供しているというのが大きな違いでしょうか。

ちなみに三菱自動車の月額定額サービス「ウルトラ マイカープラン」はサブスクとはうたっていません。三菱自動車に問い合わせて確認しましたが、このサービスはカーリースだという認識で間違いないとのことでした。それがちょっと他のメーカーとは違っていますね。

丁寧に乗られたリース落ちのクルマは
コンディションの良い中古車に

今こういった個人向けカーリースやクルマのサブスクがなぜ注目を集めているのでしょうか?それは筆者が思うに新車が売れないからではないでしょうか。売れない理由は簡単です。クルマの価格はどんどん高くなっているのに対して、所得はさほど増えていない。それなのに逆に税金や社会保障費、公共料金は上がるばかり。これでは簡単に新車を買うなんてできません。特に収入の少ない若い世代にとっては新車を買うのは相当に高いハードルといえるでしょう。

しかし、自動車メーカーとしては新車が売れてくれないと市場がどんどん冷え込み、やがて中古車市場に流れるクルマまでも減少してしまう。クルマが必需品の地方はまだしも、都市部ではクルマを所有する理由はもはやありません。それならリース(サブスク)という形でクルマを提供し、月々定額の負担だけで多くの人に手軽に自社のクルマに乗ってもらおう!と、こういったサブスクサービスに力を入れはじめているということなのではないでしょうか。

リース(クルマのサブスク)なら、契約満了後そのクルマはメーカーに戻ってくることになります。そしてそのクルマたちは丁寧に乗られている(返却が基本のカーリースゆえに)ことがほとんど。ということは、新車で販売されたクルマ以上にリースやサブスクなら高品質の中古車が手に入るわけです。そしてその程度の良いリースアップ車(リース満了車)を中古車市場で販売でき市場は活気づくわけですね。

それに、サブスクやリースでそのメーカーにクルマに乗ったドライバーはその自動車メーカーに好印象を持つってくれるかもしれない。そして余裕ができれば、同じメーカーの新車を買う可能性も期待できる。このサイクルは自動車メーカーとしても大きなメリットではないでしょうか。

このように、メーカー自身がカーリースやクルマのサブスクを提供することで単に新車を販売する以上に利点のある循環の仕組みを構築することができるわけなのです。さらに、リースアップ車は単に中古車として販売するだけでなく中古リース車として再度サブスクサービスで提供することも可能です。このようなメリットがあるのであれば次々と自動車メーカーがこの市場に参入するのもむしろ当然といえるのではないでしょうか。

ではこの市場に新たにスタートする三菱自動車の「ウルトラ マイカープラン」がどのような特徴を持っているのか詳しく見ていきましょう。

現状ラインナップは7車種
頭金やボーナス併用払いもOK


(引用:三菱自動車公式HP)

まず「ウルトラ マイカープラン」は三菱自動車のサービスですので言うまでもありませんが利用できるクルマのラインナップはすべて三菱車です。とはいえ三菱車のすべてではありません。現状は以下のクルマになります。

  • ・ek X
  • ・ek Wagon
  • ・ek XSpace
  • ・ek Space
  • ・アウトランダーPHEV
  • ・デリカD:5

軽自動車が中心のラインナップとなっており、人気のミニバンと、プラグインハイブリッドSUVの6車種となっています。どれも三菱車の売れ筋ですが、ラインナップがちょっと少ない気はします。とはいえこれはあくまでスタート時点のラインナップなので今後車種は追加されていく可能性が高いでしょう。

では肝心のシステムについてどのようなものなのか?「ウルトラ マイカープラン」は月額定額サービスで車両本体代金や車両登録時の初期費用、車検・メンテナンス費用に加え、購入後の各種税金、自賠責保険料、さらに自動車保険料を一つにまとめたもの。月額定額の支払いで、一定期間(利用期間36ヶ月・48ヶ月・60ヶ月)クルマを利用できるというとてもシンプルなカーリースです。定額サービスなのでクルマのサブスクともいえるわけですが、ようするにトヨタのKINTOやクローズドエンドの個人向けカーリースと同じような仕組みとなっています。

さらに月々の支払いを抑えることができる初回おまとめ払い(頭金)や、ボーナス併用払いも設定可能と支払い方法が幅広いのが特徴といえるでしょうか。そして、その月々定額の利用料に含まれる費用ですが、新車登録時は以下になります。

  • ●車両本体価格(除く残価)
  • ●メーカーオプション/ディーラーオプション費用
  • ●登録(届出)諸費用
  • ●自動車税(軽自動車税)
  • ●環境性能割
  • ●重量税
  • ●自賠責保険料

そして登録後に必要となる以下諸費用も含まれます。

  • ●自動車税(軽自動車税)
  • ●重量税(36ヶ月プランを除く。※車検前に契約満了となるため)
  • ●自賠責保険料(36ヶ月プランを除く。※車検前に契約満了となるため)
  • ●車検費用(36ヶ月プランを除く。※車検前に契約満了となるため)
  • ●メンテナンス費用

こういった諸費用も月々の支払いに含まれるというのは一般的な個人向けカーリースと変わりません。しかし、これらに加えて「ウルトラ マイカープラン」の場合、自動車保険(任意保険)も月々の利用料に含まれるというのが大きな特徴(トヨタのKINTOも同じですが)といえるでしょう。

若いドライバーにはメリット大!
自動車保険も月々の支払いに含まれる

通常のカーリースではいわゆる任意保険は利用者が別途契約することがほとんど(セットで契約できる場合もある)です。そのためリース料金の月々の支払いに加えて自動車保険料が別途かかることになります。安全運転を続けてきたベテランドライバーであれば自動車保険も等級があがっており割引率も高くなっているでしょうから、その負担はさほど大きくないかもしれません。

しかし、年齢の若い方の場合、自動車保険の負担は想像以上に大きなもの。せっかくお得にカーリースでクルマを利用しようと考えていたのに、自動車保険分を加えたら思いのほか月々の負担が大きくなってしまった、などということもありえるというか、ほとんどそうなるはずです。

しかし、「ウルトラ マイカープラン」なら使用者の年齢関係なく月々の支払いは一緒。つまり、「ウルトラマイカープラン」の自動車保険がすべての契約者に適用され別途契約しなくても自動車保険(任意保険)がついてくるということになります。それも対人賠償・対物賠償・人身傷害のトリプル無制限の上に年齢によって保険料が変わるということもありません。

さらに、もし事故などでこの自動車保険を使うことになっても等級などに影響はありません。つまり月々の支払い額に変動もない。個人で契約するわけではないので等級の概念自体がないと思っていいでしょう。

廃車など万が一のケースでも
利用者側の負担はなんとゼロ!

そして「ウルトラ マイカープラン」の自動車保険はカーリース向けの補償内容となっている点もポイントです。これって当たり前とも思えますが、実は一般的な自動車保険(任意保険)ではカーリース特有のリスクをカバーしていないことがほとんどなのです。

カーリース向けのリスクに備えた補償というのはどういうものか。例えば「ウルトラ マイカープラン」や個人向けカーリースは、あくまでリース会社から借りているクルマを契約期間自由に使うことができるというもの。そのため契約期間が満了となればそのクルマはリース会社に返却するのが基本です。しかし、リース契約期間中に大きな事故でクルマを全損させてしまった場合はどうなるでしょうか。全損で修理不能となれば返却はできませんね。ということはそのクルマは廃車にせざるを得ません。

クルマがなくなるのですからリース契約も強制的に解約となります。その際クルマ全損に関しては通常の自動車保険でも車両保険である程度補償されます。しかし、その金額は車両の価値に応じた金額でしかありません。当然ですね。

でも、カーリースの場合、クルマが全損となると、リース契約の解約に係わる費用の負担も求められます。残りの契約期間のリース料金と契約終了時の予想残存価格に加えて、リース契約中途解約費用をリース会社に支払はなくてはならないのです。この金額が非常に大きい。たとえ不可抗力でクルマが全損となっても、リース契約者がこういった違約金を払はなくてはいけないのです。

今までマイカーで加入していた自動車保険を、リース車にも継続していた場合、こういったものの補償がない。クルマが廃車となり、リース契約が強制解約となった上に、高額な中途解約費用を別途支払わなくてはいけないのです。それも一括で、です。

もし月々3万円、5年60回のプランで、クルマが廃車となったときに残り2年、24回分のリースが残っていた場合どうなるか?まず、単純に残っている24回分のリース料金だけで72万円です。これにさらにそのクルマの残存価額も加わるのでかなりの高額を一括で支払わなくてはならないわけです。これは相当なダメージでしょう。簡単に払える金額ではありません。

全損となっても解約手数料や
違約金などの負担は一切なし!

しかし、「ウルトラ マイカープラン」の自動車保険はこういったカーリース特有のリスクもキチンとカバーしてくれるのです。ちなみに「ウルトラ マイカープラン」のWEBサイトには、現状自動車保険の補償内容について詳細は記載されていませんが、筆者は気になったので直接三菱自動車に取材しました。そして全損となり解約となっても解約手数料や違約金は発生しないということをキチンと確認しています。これなら安心して利用することができでしょう。

さらに保険を使用してクルマの修理を行った場合でも免責額は5万円で次年度から保険料(月々の支払)が上がることもありません。契約時の月々の支払いは一定というのは変わらないのです。これなら若い人も安心して利用できるはずです。もちろん若くなくても、しばらくクルマを所有していなかった(自動車保険の等級割引がない)という方にとってもメリットは大といえるでしょう。

また、ほかにも充実したサービスがついています。その一つが、自動発報機能付ドライブレコーダー費用が無料でついてくる(契約時に外すことも可能)こと。これは事故の際に自動で事故連絡を行ってくれる高機能なドライブレコーダーが標準で装着されているというものです。

もはやドラレコはクルマを運転する限りなくてはならない装備なので、あって当然(カーリースサービスのほとんどで無料もしくはセットオプションで装着が可能)のもの。でもそれが、単なるドラレコではなく自動連絡機能つきという高機能タイプになっているのはうれしいポイントでしょう。

さらに、通常は3年36カ月の新車保証を、さらに2年延長できる延長保証(つく2保証)も無料でついて(利用期間36ヶ月の場合は、付帯されない)います。

事故による修復で査定が下がっても
10万円までは補償してくれる

そして、これもカーリースならではのリスクを軽減してくれるものですが、事故修復歴補償というサービスも標準で付帯しています。「ウルトラ マイカープラン」はリースなので契約満了後クルマを返却しなくてはなりません。その際クルマは設定していた残存価値があるかどうか査定されます。これは他のカーリース同じです。その結果が設定残価格通りなら何も問題ありません。そのまま返却してリースは終了です。

でも、事故のよる修復歴が原因で査定落ち(当初設定した残価よりも査定が下回った)場合はどうなるのか? 通常はリース利用者がその差額分を補填しなくてはなりません。しかし、「ウルトラ マイカープラン」なら、その査定落ち金額のうち10万円までは補償してくれるのです。返却時に査定額が当初の予定よりも下回ったらどうしよう…。というカーリースの利用者の不安感を軽減してくれる素晴らしいサービスといえるでしょう。

このように三菱自動車の「ウルトラ マイカープラン」の特徴を調べてみると、後発だけにクルマのサブスクに対して利用者がどのようなことを求めているのかしっかり研究されている様子がうかがわれます。飛び道具的な独自のサービスはあまりありませんが、その内容はとても堅実で、コスパもよいカーリースといえるのではないでしょうか。

自動車保険がついているのが魅力
ラインナップは今後の充実に期待

「ウルトラ マイカープラン」はまだ始まったばかりのサービスなので選べる車種が少ないうえにどれも残価の設定がかなりきびしくなっています。そのため、月々の支払額は他と比べてそれほど安くなるわけではありませんが、なんといっても保障の充実した自動車保険がついているというのは大きなメリットでしょう。

もし三菱車のファンもしくは、現在のランナップの中に、狙っているクルマがあるのであれば、「ウルトラ マイカープラン」の利用を本気で検討してみる価値はあると思います。ただし、カーリースやクルマのサブスクは、リースナブルをはじめとして非常に数多くのサービスがそろっています。

どれも魅力的な内容となっているので実際はどれが自分のカーライフにあっているのか、できればいくつかのカーリースサービスを比較して、月々の負担額、オプションのサービス、補償内容、自動車保険(任意保険)の負担のことも考慮に入れて、慎重に検討することをおすすめします。