ドライビングテクニックにどれだけ自信があっても、常に周囲に注意を払い用心深く運転していても、起きるときには起きてしまうのが交通事故です。そもそも交通事故というのは自分だけの問題ではありません。それが、他社の運転ミスや不注意が原因なのであれば、こちらとしてはもうどうしようもないのですから。

このように避けられないのが自動車の事故なのですが、気になるのが、事故にあったクルマがカーリースの車両だった場合どのように対応するべきなのかということです。勝手に修理に出していいものなのでしょうか。また、最悪のケースでリース車両が全損となってしまった場合はどうすればいいのでしょう。

交通事故にあったときに
まずやるべきこととは

多くのクルマが行き交う公道でクルマを運転している限り、いつ巻き込まれるか分からないのが交通事故です。クルマを運転しているのは運転に慣れた慎重なドライバーだけではありません。昨日運転免許を取得した初心者もいるでしょう。また、最近話題となっている高齢者ドライバーもいますね。もちろん運転に慣れたベテランドライバーでも注意力が散漫となっている瞬間もありますし、そもそも交通ルールがわかっていない子供が自転車で走っていることだってあるのです。こう考えるととてもリスクの高い環境が公道なのです。

交通事故や交通トラブルに巻き込まれる可能性が常にあるからこそ、多くの方は万が一を考えて自賠責保険だけでなく任意保険にも加入しているのでしょう。

しかし、事故に対する備えはある程度していても、いざという時どのようにすればいいのか冷静沈着に行動することができる方はなかなかいないはずです。そこであらためて事故にあった際ドライバーはどのように行動するのが正しいのかまとめてみました。

まずは、落ち着きましょう。決してあわててはいけません。緊急事態ですから興奮して冷静な判断ができなくなっているでしょうが、とにかく出来る限り落ち着いてください。そして必要なことを順に実行します。正しい交通事故の初期対応としては、道路交通法第四章第二節第七十二条「交通事故の場合の処置」には以下のように定められています。

第七十二条
車両等の交通による人の死傷又は物の損壊(以下「交通事故」という)があったときは、当該車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

言い回しが難しいので全部読むのが大変ですが、簡単に説明すると、交通事故がおこったらただちに運転をやめドライバーとその同乗者は負傷者を救護しなくてならない。また、危険防止のために必要な措置を行って警察に通報する。そして警察官が来たら事故の内容を報告しましょう。ということです。ごく当たり前のことですね。

このようなこととあわせて、実際の事故ではこの他に自動車保険会社に連絡するというのも欠かせません。さらに加えてそれがカーリース車両ならリース会社にも必ず連絡をいれます。結構やることは多いですね。整理するとこうなります。

  • ①運転をやめケガ人を救護する

    事故起きたら直ちにクルマを停め、同乗者や相手方にケガ人がいないか確認します。可能であれば救出し、安全な場所へ避難させましょう。けが人がいればすぐに救急車を呼びます。

  • ②危険防止処置をする

    ほかのクルマの通行の妨げや二次的な事故を防ぐために、クルマを路肩など安全な場所に移動します。自走が不可能な場合はハザードを点灯させ後続車に事故車があることを知らせます。

  • ③警察に連絡

    警察に電話を入れます。軽微な事故であっても交通事故の際は警察への届出が義務付けられています。そして警察官の現場への到着を待ちます。

  • ④相手がいる場合は相手の連絡先を確認

    通報してから警察官が現場に到着するまでの間に、相手方の氏名や連絡先、保険会社、クルマのナンバーなどを確認するなど情報交換をしておきます。

  • ⑤保険会社に連絡を入れる

    加入している自動車保険会社に連絡をいれます。

  • ⑥リース会社に連絡する

    リース車両の場合はリース会社にも必ず連絡を入れてください。

  • ⑦事故現場の状況を記録する

    事故現場の状況はどうだったか、近くに目撃者はいないかなど状況を記録しておきます。スマートフォンなどで事故状況を撮影しておくのもいいでしょう。またドライブレコーダーを装着している場合は記録映像が上書きされないように本体に接続されている電源コードを抜くか、SDカードを取り出しておきましょう。後で映像が証拠になります。

事故の処理が一通り終わり、いったん落ち着いたらその時点で自覚症状がなくても必ず病院へ行き診察を受けましょう。損害賠償請求には診断書が必要ですし、むち打ちなど後日になって重い症状が出るケースもあるので自己判断はしないでください。できれば事故が起きたその日のうちに病院にいくのが良いでしょう。

事故によるクルマのダメージ
リース車を勝手に修理してもいいの?

次に気になるのがクルマのダメージですね。自分のクルマであれば保険を使うなり自費なりで修理にだせばいいですが、事故に巻き込まれたのがカーリース車両だった場合、その修理はいったいどうすればいいでしょうか。

相手がいる場合、相手と事故の過失相殺を行い、多くの場合保険によって修理費用が賄われます。自分の過失が大きければ修理費用は一部しか支払われない可能性もあります。とはいえクルマの修理が必要であれば、残りは自己負担として修理に出さなくてはなりません。しかし、リース車の場合勝手に修理を行うのはやめましょう

リース中の自動車を修理に出す場合には、事前にカーリースの会社に連絡をします。なぜならリース車両の場合そのクルマの所有者はリース会社であるからです。リース契約者はあくまでクルマをリース会社から借りている立場なのです。

カーリースの契約では、事故を起こした場合には必ずリース会社に届け出を行うように義務付けられているはずです。契約に決められていることですので、必ず従ってください。契約違反となれば最悪の場合強制的に途中解約ということにもなりかねません。その際多額の費用負担が必要となるのでそのようなことにならないよう必ず連絡をいれましょう。

クルマの修理費用はリースの料金には含まれていないので、当たり前ですが自己負担になります。相手のいない自損事故でも任意保険の車両保険に加入していればその車両保険を使うこともできるでしょう。相手がいる場合は前述したとおり、事故にあった当事者同士の過失割合によって金額などはかわりますが保険会社から支払われることになります。修理に関してリース会社から修理工場が指定されていることがあるので、その指示に従って修理を行ってください。契約者が勝手な判断で、指定工場ではない別の工場に持ち込み修理を行った場合契約違反となって、追加料金が発生する可能性もあるので気を付けてください。

事故車となったことでリース契約終了後の査定に影響はあるのか、気になるところですが、もともとリース車は契約終了後原状回復が基本です。

つまり、内装や外装の汚れやキズ、事故による損傷があれば、査定額に影響する可能性は当然あります。事故によるダメージが大きければそのクルマは事故車扱いになってしまうので、見た目は元通りになっているように見えても、追加の精算金が発生する可能性は高いでしょう。しかしそれでも、リース期間中はそのリース車に乗り続けることができるのですから全損になってしまうことに比べればましかもしれません。

全損となった場合
リース契約はどうなるのか?

では、もし事故によってクルマが全損となってしまったらカーリース車両の場合どうなるのか。リース車両とは、ざっくりといってしまえばリース会社からリース契約者が一定期間借りているもの。ユーザーの所有物ではありません。借りているクルマが全損、つまりスクラップとなってしまうのですから、同然ですがそのリース契約は強制解約となります。本来リース契約終了後に返すべきクルマもありませんのでリース契約を継続することはできなくなるのです。

事故が不可抗力の事故であっても同じです。クルマがなくなってしまうのですからどうしようもありません。ただ、契約の内容やリース会社によって変わってきますが、カーリース契約は原則として途中契約ができないとされています。もともとカーリースはリースの期間によって、月々のリース料金や総支払額などが決定されているので、例外的なケースを除いて途中で契約を解除することはできない(リース会社によっては途中解約ができるリース契約もあります)のです。

ただし、事故で全損のように特別な事情によって解約せざる得ない例外的なケースも場合は解約を認めてもらえます。というか解約せざる得ません。

しかし、リース会社はその分の損害を被ることとなるので違約金または高額な解約金を請求されます。金額はリース期間満了までに支払うことになっていたリース料金の総額から、それまでに支払ったリース料金の差額を差し引き、さらに最後に返すべきだったクルマの残存価格分も加えた金額が請求されることになります。

さらにこれとは別に事務手数料は損害金なども請求されることになるのです。そのうえこの支払は分割ではなく一括請求です。事故で大きなキズを受けクルマを失った上に莫大な解約金が請求されることになるのです。単なる交通事故以上の大きなダメージを受けることになるのです。まさに踏んだり蹴ったりですね。

カーリースはお得で便利ですが、そのメリットの面だけに目を向けるのではなく、こういった最悪の事態も起こりえるという可能性も考えておかなくてはいけません。もしすでにカーリースを利用されているなら、自分のリース契約がどのようになっているのか、あらかじめ確認しておくのが賢明です。そして任意保険に関してもカーリースに契約に特化した補償内容を持つ保険にキチンと加入しておくことが大切でしょう。

カーリース専用任意保険なら
解約のリスクに対応できる

カーリース専用の任意保険は解約時の清算金や違約金など、カーリース特有のケースに特化した保証内容を持った自動車保険です。カーリース会社によっては、はじめからこのような任意保険に加入でき、月々の支払に組み込むことができる場合もありますが、そうでない場合はユーザーが自身でカーリース専用任意保険に加入しなければなりません。

一般的な任意保険とカーリース専用の任意保険は基本的な補償内容点では大きく変わりません。「賠償責任保険」、「傷害保険」、「車両保険」といった補償が受けられるのですが、この中でカーリース向けのポイントとなるのが車両保険です。

カーリース専用任意保険の車両保険では、車両が全損となった場合にリースの解約手数料も保険でカバーしてもらうことが可能なのです。さらにカーリース専用ならではの特徴が長期の保険契約が選べるということ。そういった契約を選べば、5年や7年などリース契約期間中の任意保険の更新手続きも不要となります。

加えて事故が起き車両保険を使用しても、リース期間中は等級がダウンしません。契約時に5年や7年のプランを選べば事故で保険を使っても、その間に支払う保険料も変わらないのです。とても便利ですね。

こういったカーリース専用の任意保険は大手自動車保険会社でも用意されている場合もあります。もし以前から契約している自動車保険会社があるのなら、一度問い合わせてみてください。

いざという時にあわてないよう
準備をしておこう

交通事故はドライバーにとって常に降りかかる可能性がある大きなリスクです。いざ自分が当事者となった時に冷静に対応できるようあらかじめやらなければいけない行動を一度確認しておくべきです。また、あわてていると普段できていることができなくなる場合があります。保険会社やリース会社の電話番号、自分の契約している保険契約番号などは、すぐに確認できるよう車内にメモなどを用意しておきすぐに取り出せる場所に保管しておきましょう

さらに、カーリースを利用されているのなら万が一の全損リスクも考えてカーリース専用の任に保険に加入しておくことも本気で検討してください。今まで事故なんてあったことないから大丈夫!などと決して油断することなく常にリスクを考えて、いざという時に冷静に立ち回れるようにある程度の準備をしておくことをおススメします。