軽自動車市場の中でも激戦区といわれているのがスーパーハイトワゴンのジャンルです。国内における全乗用車の中でも最も人気のジャンルでもあり、そのラインナップも充実しています。そんな注目のジャンルに日産が新たに投入したのが「デイズルークス」からフルモデルチェンジを果たした「ルークス」です。2020年2月25日に発表となり発売は3月19日。おなじみとなっていた車名を変更し、さらに日産らしい様々な装備やスペック備えた「ルークス」とはいったいどんなクルマに仕上がっているのか、その魅力をチェックしてみました。

激戦区スーパーハイトワゴン市場に
日産が送り込む渾身の一台!


(引用:日産公式HP)

小さな車体ながら特に天地方向に余裕のある広々とした室内。走りにも不足はなく自動ブレーキやアクティブクルーズコントロールなどの安全装備も満載しており、なおかつ便利なユーティリティスペースも充実して使い勝手も最高。それになんといってもかつ手放す際のリセールバリューも期待ができる。そんなクルマが今最も人気のジャンル軽のスーパーハイトワゴンです。その人気は登場以来現在までまったく衰えることがありません。

気が付けば普通乗用車を含めた国内の全乗用車販売台数ランキングでナンバーワンが軽スーパーハイトワゴンのホンダN-BOXなのですから本当に驚くばかりです。ほかにも魅力的な車種がそろっており、前述の絶対的な王者ホンダN-BOXに対してこのジャンルの先駆者ともいえるのがダイハツのタント。そして派生車種であるアウトドアイメージを演出したスペーシアギアが大好評のスズキのスペーシアが主に人気の中心となっており、長い間ライバルとしてしのぎを削ってきました。

そして、この激しい争いに中に、2014年新たに参入したのが日産の「デイズルークス」です。先代モデルはスズキからのOEMだったので日産オリジナルのスーパーハイトワゴンとしては、このデイズルークスが、日産オリジナルでは初のスーパーハイトワゴンでした。日産と三菱の合弁会社NMKVによって開発されたスタイリッシュなデザインクラストップとなる1400mmの室内高に加え、260mmという後席のロングスライド機能を搭載し後発ブランドながらスーパーハイトワゴンに求められるものをすべて搭載し、さらに両側オートスライドドアなど上級ミニバンなどと同様の便利な装備を備える予想を超える大ヒットモデルになっています。

そんな日産のデイズルークスが2020年2月25日、新型へとフルモデルチェンジすることを発表しました。車名も「デイズルークス」からシンプルな「ルークス」へと戻し(初代ルークスはスズキのOEMでしたが)、新たな出発です。とはいえこの激戦区で強力なライバルと闘うためには強力な武器が必要です。果たして新登場の日産ルークスはどんな武器を手に入れ、いかに魅力的なクルマに仕立てられているのでしょうか。

日産らしさにあふれた
アグレッシブなデザインを採用


(引用:日産公式HP)

まずデザインが大きく変わりました。フォルム自体はスーパーハイトワゴンなのでライバルの似たものになるのは仕方ないとして、フロントフェイスには大きく日産のアイデンティティでもあるVモーショングリルを採用。そして人気グレードであるドレスアップバージョンのハイウェイスターは、ヘッドライトからメッキのVモーショングリルにつながるアグレッシブなデザインで、ちょっと強面なインパクトのあるものになっています。先代は少しソフトな印象だったのでこのデザインの大幅変更は多くのファンに喜ばれることでしょう。

また、フロントだけでなくリアのデザインも個性的です。ボディ後部のサイドパネルがリアウインドウに向かって鋭く跳ね上がり縦型のテールランプにつながっています。横から見たときにちょっとGTウイングのようにも見えとてもスポーティ。リアクォーターウインドウの面積が小さく斜め後方の視界的にどうなのか気になりますが、見た目のインパクトはやはり絶大です。このようにディテールのデザインに凝ったことでルークスは日産らしい、スポーティでクールな印象を与えることに成功しているのではと筆者的には思います。

広さと先進安全性能は
クラストップレベル


(引用:日産公式HP)

そして、日産によると新しいルークスの特徴はそんなデザインだけでなく、「広さ・使い勝手」そして「先進安全技術」の2つにあるといいます。スーパーハイトワゴンにとって最も重要なポイントを強化したというわけですね。

中でも広さのポイントとなっているのは旧型のデイズルークスと比較してホイールベースを65mmも拡大したことにあります。その数値は2,495㎜です。ちなみにライバルを調べてみるとホンダのN-BOXが2,520㎜で、スズキのスペースアが2,420㎜。そしてダイハツのタントは2,460㎜なので、N-BOXよりはちょっと短いですが、クラストップレベルのホイールベース長となっているわけです。

ただ、これはルークスならではの特徴、というよりは、すでに発売となっているハイトワゴンのデイズのプラットフォームをそのまま使っているため。しかし、先代に比べて65㎜もホイールベースが伸びたおかげで、明らかに後席の快適度は上がっています。例えばニールームは795mmと、先代モデル比で80㎜も拡大しており、大人4人が座っても後席では余裕で足を組むことができるほど。

さらに、前後320mm(先代デイズルークス比で60㎜伸びています。)のスライド量を確保しており。めいっぱい後席を前に移動させれば荷室床面長は675mmまで拡大が可能です。これは48Lのスーツケースを同時に4個、積載することができるほどの広さ。つまり後席を使用しながらも実用的なスペースが利用可能というわけです。

また、後席のスライドとシートバッグを倒すのは後席側からでも荷室側からでもレバーによってワンタッチで操作でき、乗る人や荷物の量に合わせて素早く自由にアレンジ可能です。さらに後席を前方に倒すと、27インチサイズの自転車も積み込める(公式サイトを見る限りかなりぎりぎりのようですが)ほどのスペースがあるので、ファミリーカーとしては十分以上な実用性があるといっていいでしょう。

広さというスーパーハイトワゴンでは特に重要となるポイントで、ルークスはナンバーワンのN-BOXをはじめとした強力なライバルにも一歩も引けは取りません。

さらにBピラー(前席と後席を分ける柱)を従来よりも17mmほど前に移動させスライドドアの開口部が大きくなったうえ、オプションで小さなお子さんや高齢者の乗り降りをサポートしてくれる助手席側「オートステップ」をオプション設定することで乗降性も高めています。広くなり、乗り降りもしやすくなったので後席に座ることになる家族にはとても歓迎されること間違いないでしょう。

インテリアのデザインや
質感は軽とは思えないレベル


(引用:日産公式HP)

後席だけでなく、室内が広くなった分フロントシートも快適度が増しています。先代モデルに比べてシートのヒップポイント(床からシート座面までの高さ)が60㎜も高くなっており、より見晴らしがよくなっています。1,400㎜という天井までの高さの余裕が十分に生かされることになり、ロングドライブでのストレスもおそらく軽減されているはずです。

そして、これは先代モデルにも設定されていたのですが、後席の電動スライドドアには両側に「ハンズフリーオートスライドドア」を設定しています。廉価グレードのSを除き助手席側は全車に装備で、運転席側は上位グレードの一部に標準、中間グレードにメーカーオプション設定となっています。これは荷物で両手がふさがっていても、車体の下に片足をかざすだけでスライドドアを開けることができるという便利な機能。もちろんなくても困りませんが買い物などで多くの荷物を積み込まないといけないときにはとても重宝するでしょう。

インテリアのデザインも上質な仕上がりです。ドアの内張りなどは限られたスペースの中でも立体感ある造形を実現しており、ダッシュボードへとデザイン的につながり包まれ感のある洗練された雰囲気が味わえます。またエアコンの操作部も質感の高いピアノブラックのパネルを採用しており質感が高く、さらに小物入れなどのスペースも多数用意されているので実用性も十分でしょう。

インテリアカラーはベーシックなアイボリーやハイウェイスターのスポーティなブラックのインテリアカラーも悪くないですが、注目したいのはオプションのブラックとモカのコンビインテリアです。明るいベージュ系とブラックのコンビネーションの配色は一見高級車のようで、インパネ部分に施されたダブルステッチなどと相まって軽自動車とは思えないほど高い質感を演出しています。

これなら普通乗用車からの乗り換えでも十分に満足いくはず。というか、ベーシックなコンパクトカーやセダンに比べればむしろより上質な空間となっているといってもおそらく過言ではないでしょう。画像ではなく、是非実車で確かめてみたいところです。

プロパイロットは
ベースのデイズよりもさらに進化


(引用:日産公式HP)

そして今どきのクルマでは絶対に外せない先進安全技術で注目すべきポイントは「インテリジェント FCW(前方衝突予測警報)」です。これは目視できない前方2台前を走る車両の車間、相対速度をミリ波レーダーでモニタリングして状況を検知、減速が必要と判断した時にはディスプレイ表示とブザーによってドライバーに注意を促してくれるというもの。なんと軽自動車としては初搭載です。

さらに対向車や先行車を照射しないよう自動でハイビームの照射範囲を切り替えてくれる「アダプティブLEDヘッドライトシステム」や、フロントカメラによって車両進入禁止や最高速度、一時停止の3つを検知し、警告表示で注意を促してくれる「標識検知機能」のほか、「インテリジェントDA(ふらつき警報)」や「先行車発進お知らせ」などを搭載しています。

そして、走行中に前方の車両や人を検知して衝突回避をアシストしてくれる「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」はミリ波レーダーを採用することで夜間の検知性能を高めました。またこのミリ波レーダーは「踏み間違い衝突防止アシスト」機能の検知性能も向上させて安全性を高めています。ほかにもSRSニーエアバッグシステム(運転席)や高強度安全ボディなど万全の安全装備を満載。

そして、日産といえば運転支援技術ですが、ルークスに装備された「プロパイロット」はベースとなったデイズから、さらに一段階進化したものを採用しました。ミリ波レーダーによってより遠くを走る先行車の状況をセンシングできるようになり、制御がよりスムーズになっているとのことです。運転支援技術に関して日産はライバルよりも先行しているイメージがありますが、軽自動車でもその優れた技術の恩恵にあずかれるのは非常にありがたいことです。是非試乗してその性能を確かめてみたいところです。

全車マイルドハイブリッド搭載
優れた燃費性能を発揮


(引用:日産公式HP)

ここまでしっかりとした作りだけにその車重は最も軽いベースグレードでも940kg(車両重量)。ほぼ1tです。ちょっと重いですね。さらに「ハイウェイスターGターボプロパイロットエディション」になると軽く1t越えの1,060kgとなります。これはコンパクトカーのノートのXグレード(車両重量1,040kg)よりも重いので走りや燃費はどうなのか気になりますね。

まず、パワーユニットに関しては、デイズと同じ「B06型」でこれをルークスに合わせたセッティングとしたもの。パワーはNAで52PS/6400rpm、最大トルクが60N・m/3600rpm。ターボで64PS/5600rpm、100N・m/2400-4000rpmとなっています。この数値では、NAは特にさすがに余裕ある走りは想像できませんが、おそらくターボなら不満のない走りが味わえるでしょう。

肝心の燃費ですが、NA、ターボ全車にモーター(2.7PS/1200rpm、40N・m/100rpm)とリチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッドを搭載しています。そしてNAのSグレードで27.2km/L(JC08モード燃費)。車重1,060kgのターボの最上級グレードハイウェイスターGターボプロパイロットエディションでも、21.2km/L(JC08モード燃費)を達成。これはライバルと同等でとても優秀な値といえるでしょう。さすがにターボの燃費は落ちますが、車重を考えればやはり動力性能に優れたターボを選びたいところです。しかし、リッターあたり6kmという燃費の差を考えるとNAを選ぶという選択もありかも。非常に悩ましいところです。価格に関しては以下になります。

駆動 エンジン グレード 価格
2WD NA S 141万5,700円
X 154万6,600円
ハイウェイスター X 173万4,700円
ハイウェイスター Xプロパイロットエディション 184万3,600円
インタークーラーターボ ハイウェイスター G ターボプロパイロットエディション 193万2,700円
4WD NA S 154万9,900円
X 168万800円
ハイウェイスター X 186万8,900円
ハイウェイスター Xプロパイロットエディション 197万7,800円
インタークーラーターボ ハイウェイスター G ターボプロパイロットエディション 206万6,900円

 

ほぼライバルと同じ価格帯です。とはいえルークスは充実の先進安全装備や最新スペックのプロパイロットなどの機能面でのアドバンテージがありますし、デザイン面でも日産らしいアグレッシブさを感じさせるものがあります。スーパーハイトワゴンというと、どちらを向いてもN-BOXだらけでつまらない、そんな風に感じている方は、このルークス、とても魅力的な一台になってくれるのではないでしょうか。特にハイウェイスターはミニバンのドレスアップを得意としてきた日産らしさにあふれた魅力的なデザインとなっていますので、一見の価値はおおいにありなのではないでしょうか。