その姿が発表された直後はSNSで物議をかもしたホンダヴェゼル。フロントのデザインはマツダのCXっぽいとか、リアはトヨタのハリアーみたいだとか、デザインに賛否両論(というよりは否のほうが多かったようですが)ありましたがいざ発売されてみるとこれが大ヒット。実車を見てみるとむしろ個性的でスタイリッシュと好評も高く、気が付けばフィットよりも売れているくらいです。
そんなヴェゼルですが人気なのはやはりハイブリッド。比率としては9割以上の方がハイブリッドを選んでいるようです。売りがハイブリッドだとはいえこの比率はちょっと極端ではないでしょうか。
ヴェゼルのガソリンエンジンモデルはそんなに良くないのか? でも、スペックや装備内容、さらに価格をチェックしてみると一概にそうではないように思えてきます。そこで、実際のところとてもヴェゼルのガソリンエンジングレードのGは、お得なのか、それともコスパ的に選ぶべきではないのか、じっくり検証してみました。
目次
新型ヴェゼルがホンダの
期待を超えて大ヒット中!
(引用:ホンダ公式HP)
ホンダのヴェゼルが売れています。直近の2021年7月の販売台数は7,573台で軽自動車を除く新車販売台数ランキングでは堂々の第6位となっています。ホンダ車でランキングトップ10入りしているのはこのヴェゼルだけ。ホンダの量販車種であるフィットを超えています。
登場時のSNSでの評価を思えばこの大ヒットはホンダとしても期待以上と言えるのではないでしょうか。いろいろと言われていたエクステリアに関してですが、確かに画面で見る限りライバルにとても似ていました。
「これじゃCXハリアーだ!」などと悪口を言われたりもしましたが、実際に発売されて実車が街中を走りだすとそんな評価はどこ吹く風。似ているなどと言われたハリアーよりもCX-5よりも売れているのですから、多くの方が新しいヴェゼルは格好いい! と高く評価したということなのでしょう。筆者もそう思います。
流行りのSUVスタイルともいえますが、ヴェゼルは十分個性的ですし高級感もあります。間違いなく先代のヴェゼルよりも格段に上質感があって、クーペ的なフォルムですがルーフがストレートに後方に伸び、全長4.3mとは思えないほど堂々としていて立派。とても200万円台のSUVとは思えません。
それにキャビンもいかにも広そうに見えます。格好良くて広くて価格も手ごろ。とても魅力的な一台になっています。これなら売れるのも当然でしょう。
ヴェゼルのグレード選びは
ハイブリッドがベスト?
(引用:ホンダ公式HP)
そんな今や大人気の新型ヴェゼルですが、スタイリングが高く評価されているだけではありません。その先進性も話題です。新世代コネクテッド技術「ホンダコネクト」が搭載されスマホでドアロックやエアコンのオン・オフ操作が可能なほか、スマホが鍵がわりにもなるデジタルキー機能も搭載。さらに、車内Wi-Fi機能もホンダ車としては初採用。
また、ホンダ自慢のハイブリッドもかなり好評です。2モーターを使用したホンダのハイブリッド「e:HEV」は、いわばモーターとエンジンの良いとこ取りのシステム。
発進時や街なかなど定速で走行するときにはバッテリーに溜められた電気を使ってモーターで走るEVドライブで走り、そこから加速するとエンジンが発電用モーターを回してその電気をモーターに供給してハイブリッドで走行(エンジンは発電のみで駆動力としては使われません)。
さらに、高速道路を走る際には、モーターを使わずに、高速走行で効率に優れたエンジンの動力のみで直接タイヤを駆動(モーターは使われません)して走ります。走行シチュエーションに合わせて、適した動力を使用し細やかな制御を行うことで力強い走りと優れた燃費を実現しているというわけです。
ホンダはヴェゼル(というか今後のホンダ車は全てでしょうが)に関してこのハイブリッドグレードを強く打ち出しているので人気はやはりハイブリッドに集中しています。なんと受注の9割以上がハイブリッドに偏っているといいますから圧倒的。もしかしたらヴェゼルにも純ガソリンエンジンのグレードが設定されているということを、知らない方もいるのかもしれません。ということは、やはりヴェゼルを購入、もしくはリース契約するとなった場合は、ハイブリッドを選ぶのがベストというか無難ということになるのでしょうか。
ガソリンエンジングレードは
Gのワングレードのみ
(引用:ホンダ公式HP)
確かにリセールバリューなどを考えるとハイブリッドの方が有利でしょう。また、当たり前ですが燃費に関してもハイブリッドの方が優秀です。ということはちょっと価格が高くても長い目で見ればコスパ的にもハイブリッドを選ぶのが正解ということになるのでしょうか。
実際のところハイブリッドとガソリングレードを比べてみて車両価格や燃費、装備などに関してどのような差があるのか。また、参考としてカーリースで利用するとした場合の価格差も検証してみます。
ではまず車両価格です。ヴェゼルのガソリンエンジングレードは一つだけ。“G”グレードがそうです。このGにはFFと4WDが用意されていますが、4WDで249万9200円。FFで227万9,200円となっています。200万円台の前半は今どきのSUVとしては結構お買い得感が高いですね。
対して、ハイブリッドモデルの、最もリーズナブルなグレードe:HEV Xの価格は4WDが287万8700円でFFが265万8,700円です。装備内容はほぼ同じとなっていて、その価格差は4WD、FFとも37万9,500円ということになります。では、燃費が良いハイブリッドを選べばこの価格差分をとりもどすことはできるのか? 計算してみました。
双方のFFモデルのWLTCモード燃費はガソリンエンジンのGが17㎞/Lでハイブリッドのe:HEV Xが25㎞/Lとなっています。1L当たりハイブリッドの方が8㎞多く走ることができるという計算となります。
そして年間8,000㎞走るとするとGは1年で470Lのガソリンを消費し、e:HEV Xは320Lのガソリンを消費する。ガソリン1Lあたり150円で計算すると、Gは7万500円/年でe:HEV X 4万8,000円/年。年間2万2,500円の差。
ということはガソリンエンジンのGの燃料費代は5年で35万2500円。ハイブリッドのe:HEV Xは24万円。差は11万2,500円。ざっくりとした計算ですがこうなりました。これでは車両価格差は埋められません。
計算してみると、13万キロくらい走ってようやく車両価格の差額分を燃料代で取り戻せるくらいです。つまり、ハイブリッドの燃費性能だけで車両価格差は取り戻すのはかなりハードルが高いということ。ハイブリッドは燃費がいいから車両価格が高くても、結局は安くつく!という理屈は成り立ちません。
でも、まあ燃費の良いクルマに乗れば環境に与える負荷を減らせるわけですし、懐的にはメリットはなくても環境にはプラス。ハイブリッドカーを使う意味は、排出ガスを減らして環境負荷を低減するというものですので、環境に配慮したクルマ選びをしたことに対しての満足感は得られるでしょう。
燃費で車両価格差がうまらないからといって、即じゃあハイブリッド意味ないじゃないか、と考えるのは短絡的ですね。
ハイブリッドは2.5L
ガソリンエンジンなみのハイトルク
(引用:ホンダ公式HP)
ガソリンエンジンとハイブリッドの大きな差は、燃費だけではありません。動力性能にも大きな差があります。Gのパワーユニットは1.5Lの直4ガソリン。パワーは118PS、トルクは14.5kgf・m。先代ヴェセルのガソリンエンジンよりも11PSパワーダウンしています。1.3tの車重を考えるとちょっと物足りないかもしれません。
対してハイブリッドに搭載されているガソリンエンジン(発電および動力用)は同じく1.5L直4ですがパワーは106PSでトルクは13.0 kgf・m。発電機としての効率を高めているのでしょう。そしてモーターのパワーは131PSの25.8 kgf・mです。エンジンよりもパワフルです。
ホンダのe:HEVはトヨタのようにエンジンとモーターのパワーと足したシステム出力とはならないので、最高出力としてはモーターの131PS、25.8 kgf・mとなるわけですね。Gグレードよりも力があるのは間違いありません。
何より大きなのはトルクの差。モーターの最大トルク25.8 kgf・mは一般的な2.5Lガソリンエンジン並みのトルクです。さらに電気モーターは発進直後からこの大きなトルクが利用できるのでフィーリング的にはかなりの差が感じられるはず。余裕ある加速が得られるはずです。
じゃあ1.5Lガソリンエンジンは非力なのかというと、118PS/14.5kgf・mなのでパワーは必要にして十分。比べれば差を感じるはずですが、比べなければ大きな不満を感じることはおそらくないはずです。車重も軽いですし。
ガソリングレードのGとハイブリッドの
e:HEV Xの装備内容はほぼ同じ
(引用:ホンダ公式HP)
その他装備に関してはGとe:HEV Xの差はほぼなし。ただ、ハイブリッドの場合はフル液晶メーターとなっているのに対してガソリンのGはシンプルな2眼式のメーターを採用しているというのはちょっと残念かもしれません。
当然車内のスペースなども同じですし、実用性も変わりません。ルーフがちょっと低いので頭上の空間はさほど余裕はありませんが、ルーフがボディの後端までまっすぐに伸びているためでしょうか、前後のスペースに余裕があって足元のレッグルームはとても広くとられています。また、リアドアも長いため、乗り降りも不便はないでしょう。
そして、ホンダ自慢のセンタータンクレイアウトによって荷室のフロアも低く、後席の背もたれをダイブダウンすると、広々とした荷室を得ることができます。テールゲートの開口面積も大きくなっているのでかさばる荷物、例えばキャンプ道具などの出し入れもきっとやりやすいはずです。
残念な点は、内装が黒一色と地味な点。でもこれはe:HEV Xも同じなのでガソリン車だからというわけではありません。ベーシックグレードなのでこういう仕様だということ。ハイブリッドを選んでも、e:HEV Xグレードなら全く同じです。
こうやって比較してみると、動力性能の差が納得できるならガソリンエンジンのGグレードでも十分満足が得られるのではないでしょうか。少なくとも燃費によって価格差の37万9,500円は埋められないということは確かです。
ガソリンGグレードは装備内容も
十分でお買い得度高し
(引用:ホンダ公式HP)
長々と検証してきましたが、新型ヴェゼルは経済的な負担を考えるとガソリンエンジンのGグレードでも決して悪くはないということになりました。
先進安全装備のHonda SENSINGはハイブリッドグレード同様標準装備ですし、ヘッドライトはLED。話題のHondaCONNECTにもオプション対応。エアコンもフルオートですし、16インチですがアルミホイールも標準装備。それで価格はFFなら227万9,200円。とてもお買い得と言っていいでしょう。
ただし、ヴェゼルを選ぶならガソリンエンジンがベストだ! といっているわけではありません。なるべくお得にヴェセルを手に入れたいのであれば、ガソリンエンジンのGでも十分に満足できるはずだから選択肢として考えてみるべきだということです。
トータルバランスはリセールバリューを考えればやはりハイブリッドの方が魅力は高い。また、年間走行距離が1万キロを超えるような方の場合も、ハイブリッドの方が燃料費もかからず結果的にお得となる可能性もあります。
実際ヴェセルの販売比率は、ハイブリッドグレードが93%と人気は圧倒的です。特に装備の充実したe:HEV Zグレードの人気が非常に高いようです。
リースナブルで新型ヴェゼルを
リース契約する場合の費用は
(引用:ホンダ公式HP)
ちなみにリースナブルでもヴェゼルが用意されていますが、リースナブルでカーリース契約する場合、参考までにその費用は以下になります。
VEZEL G(ガソリンエンジン)
VEZEL e:HEV Z(ハイブリッド)
ボーナス加算の差はありますがどちらも最安18,000円/月で最新のヴェゼルに乗れるわけです。
ちなみに定額払いで5年間の支払額の差を比べてみると。Gが196万6,800円でe:HEV Z は240万9,000円です。その差は44万2,200円。
車両価格では、両車に61万9,300円の差があるので、リース料金でみると装備が豪華なハイブリッドの人気グレードe:HEV Zのほうが割安ということになります。
これはリース満了後の残価を考えれば当然ですね。リセールバリューが期待できる人気グレードの方が高値の付く可能性が高い。その分残価も高く設定できるから結果的に月々のリース料金の割安感が高くなるというわけです。
とはいえ、割安とはいってもトータルの支払額でいえばガソリングレードのGの方が間違いなく毎月の負担額は軽くなるのは間違いありません。
どちらにするべきかなかなか悩ましい所ではありますが、確かなのはヴェゼルのガソリンGグレードも検討に値する一台ということでしょう。
もし、あなたが今、新型ヴェゼルの購入、またはリース契約を検討しているなら、年間走行距離や自分の使用環境、また月々の負担額などじっくりと検討したうえであなたにベストなグレードを選んでみてください。ハイブリッドの方が、燃費がいいから経済的なはず…などと単純に考えてグレードを選ぶと期待外れになる可能性があるのでくれぐれも注意して下さい。