軽スーパーハイトワゴンの元祖、ダイハツの「タント」が2022年10月3日マイナーチェンジを実施しました。今回のマイナーチェンジによってラゲッジスペースの使い勝手の向上や、スマホ連携ディスプレイオーディオに音声認識機能が追加されるなど着実な進化を遂げています。
さらに、燃費も向上していますが、なによりも注目すべき点がアウトドアをイメージさせる新たなモデル「ファンクロス」が追加されたことでしょう。
クロスオーバーSUV的なディティールを持つ、ちょっとゴツめのタントファンクロス。専用バンパーや専用フロントグリルなどが装着され、ベースのタントから大幅にイメージチェンジを図った迫力のある外観となっています。
タントシリーズの中でも今後人気モデルとなりそうな、そんなタントファンクロスについて、何がベースのタントと変わっているのか、どんな魅力的な装備があるのかなど、詳しくご紹介します。
目次
軽スーパーハイトワゴンの元祖
ダイハツタントに新モデルが追加
(引用:ダイハツ公式HP)
ダイハツタントは、今や軽自動車でも最も人気の高いスーパーハイトワゴンというジャンルを生み出した元祖ともいうべき存在です。
登場は、2003年で、以来ライバルもこのジャンルに参入し、切磋琢磨しながらく様々な車種が登場。今や軽自動車の中でも最も熱い市場となっています。ダイハツでもタントを主力車種として位置づけ、販売台数ランキングでも常に上位を獲得し続けています。
タントは、なんといっても高い全高を生かした広い車内空間が特徴です。なおかつ左側後席ドアの「ミラクルオープンドア」もタントならではの装備で、これは左側(助手席側)リアの開口部にセンターピラー(Bピラー)がないため、助手席ドアとスライドドア化を開けると圧倒的に大きな開口部が得られるといったもの。
ベビーカーやたくさんの買い物の荷物などもスムーズに積み込めるので、特にファミリードライバーから高く評価されています。歴代タントはこのミラクルオープンドアを採用し続けていますが、現行モデルもそれは変わりません。
また、新モデルとなるタントファンクロスもそれは同様。ミラクルオープンドア搭載されています。それでいて、見た目のイメージを大きく変えているのが大きなポイント。
いわゆるアウトドアイメージを強めた軽のスーパーハイトワゴンとなっています。ライバルとしてはスズキ「スペーシア ギア」や三菱「ekクロススペース」になるのでしょう。
アウトドアテイストの軽モデルとしては、ダイハツにはタフトがありますが、タフトは軽のクロスオーバーSUV的なポジションで、車内の広さやラゲッジの使い勝手などはトールワゴンやスーパーハイトワゴンほどではありません。そういったことから、ファミリードライバーにとっては機能的に物足りない部分もあったでしょう。
しかし、タントがベースのファンクロスであれば、広さも、車内装備の使いやすさも、シートアレンジも多彩で、ファミリーカーとしても機能性は一級品です。
それでいて、見た目がかわいらしいタントのベースモデルや、クロームメッキのグリルがゴージャスなタントカスタムとは一線を画した、スポーティなSUV的なスタイリングがなかなか新鮮で格好いいといえます。
無塗装の樹脂パーツなども使われていて、迫力もあって、実サイズ以上に大きく見えるのも魅力的でこれは大ヒット間違いなしでしょう。それでは細かくベースモデルとの違いや、ファンクロスならではの装備などについてチェックしていきましょう。
SUVテイストのワイルドな
エクステリアが大きな特徴
(引用:ダイハツ公式HP)
タントファンクロスは、タントのバリエーションですが、タントカスタムとは違ってタントのグレードの一つというわけでもないようです。公式サイトでは独立したモデルという扱いとなっています。とはいえ、タントのバリーションの一つというのは間違いありません。
グレード構成はとてもシンプルでNAエンジンの「ファンクロス」と、ターボエンジンの「ファンクロスターボ」2つのみです。そしてそれぞれには2WDと4WDがあるので実質4グレードということになります。
最大の特徴はやはりエクステリアでしょう。ボディシェルそのものはタントと変わっていませんが、パッと見では別の車に見えるほど印象が大きく変わっています。
力強さを感じさせるヘッドランプやフロントグリル、無塗装の樹脂パーツでワイルドさを強調したフロントバンパーやサイドカーニッシュなど専用のパーツが装着されています。さらに、シルバー装飾やレジャーシーンで活躍してくれるルーフレールなども標準装備となっています。
こういったディティールの仕立てが変わるだけでずいぶんと印象が変わるものです。ホイールも専用のブラックアルミホイールも足元を引き締めていてとてもクールです。全高の非常に高いタントがベースですが、車高が高いためなのか、こういったSUV風のエクステリアが意外なほど似合っています。
最低地上高をさらに上げて、ホイールサイズも大きくすれば、さらにSUVっぽくなりそうですが、車高に関してはベースとなったタントと変わりません。
そのため、オフロード走行性能に関しては普通のタント同じなので、4WDモデルでもあまり無理はしないほうがいいでしょう。
アウトドアレジャーにぴったりの
専用装備なども満載
(引用:ダイハツ公式HP)
インテリアもファンクロスならではの演出がされています。例えばエアコン吹き出し口や内側ドア周りなどにオレンジのアクセントカラーが使用されており、アクティブな印象を強めています。
また、シートはファブリックですがカムフラージュ柄でこちらもファンクロスのイメージピッタリ。見た目だけでなくこのシート表皮や後席のシートバックには汚れに強く、ぬれても簡単に拭き取れるはっ水加工も施されています。
これなら、汚れたキャンプ道具や水にぬれたレジャー用品などを気にせず積み込むことが可能です。
さらにファンクロスの専用装備としては、暗い場所での荷物の積み下ろしに役立つラゲッジルームランプ(デッキサイド右側/天井)が装備されていたり、後席にUSBソケット(後席右側1口)も標準で備わっているという点も便利でしょう。
そして、これはファンクロスだけでなく、新型タント全車の装備ですが、ラゲッジスペースに荷室空間を上下2段に分けることができたり、後席を格納した際に荷室の床をフラットにすることができる上下2段調節式デッキボードも搭載されています。
ラゲッジスペースの使い勝手は非常に優れていて、後席の背面には、ラゲッジスペース側からのスライド調整ができるラゲッジ側スライドレバーを新設されています。これなら見た目にたがわずアウトドアレジャーにもガンガン使えるはずです。
スーパーハイトワゴンとしての
機能や使い勝手も大きく向上
(引用:ダイハツ公式HP)
ファンクロスはタントのマイナーチェンジと合わせて新たに投入された新モデルですので、その他変更点はベースモデルのタントに準じています。
例えば、インフォテインメントシステムには、新型の9インチスマホ連携ディスプレイオーディオが採用されています。さらに新たにHDMIソケットが追加されており、HDMI出力が可能な再生機器をつなげれば車内で動画を楽しむことも可能となっています。
他にも、メーター情報や警告音説明、エアコン操作に電話発信準備。そしてBluetooth®接続やディスプレイオーディオ操作などが音声でできる音声認識機能も搭載され、Apple CarPlayのワイヤレス接続にも対応。AV機能など大きくもバージョンアップしています。
電動パーキングブレーキはファンクロス全グレードに標準装備となっており、オプションでACC(アダプティブクルーズコントロール)を追加することが可能。全グレード運転席と助手席にはシートヒーターも内蔵されておりシートは左右独立式で240㎜のロングスライドが可能。
後席スライドドアは左右ともワンタッチオープン機能/ウェルカムオープン機能/タッチ&ゴーロック機能付(後席のパワースライドドアが閉まりきる前に、フロントドアハンドルに手を触れドアロック予約をすることができる)で、もちろんイージードアクローザー付きです。
快適装備としてはリヤヒーターダクトが内蔵されているのでリアシートに座る家族も満足してくれるでしょう。ファンクロスはタントにおける最上級グレード相当の装備内容となっているのでこのとおり非常に豪華なスペックを持っています。
マイルドハイブリッドの
ライバルよりも優秀な燃費性能
(引用:ダイハツ公式HP)
パワーユニットもベースのタントと変わりません。660㏄の直列3気筒KF型エンジンで、ターボの最高出力は47kW[64PS]/6,400tpmで最大トルクが100N・m[10.2kgf・m]/3600rpm。NAの最高出力が38kW[52PS]/6,900tpmで最大トルクが60N・m[6.1kgf・m]/3600rpmとなっています。
トランスミッションはCVTで、NA、ターボとも高い伝達効率と従来のCVTよりも幅広い変速比を実現したDCVTとなっているので、NAでもストレスのない走りが味わえるはずです。
WLTCモード燃費は、ターボが20.6㎞/L(2WD)でNAが21.9㎞/L(2WD)です。エンジン制御の最適化によって従来型のタントよりも燃費性能は向上しています。スズキや三菱のようなマイルドハイブリッドではないのにこの数値はかなり優秀です。
ちなみにライバルとなるスズキのスペーシアギアのWLTCモード燃費はターボが19.8㎞/Lで、NAが21.2㎞/L(ともに2WD)。さらに、同じくライバルの三菱ekクロス スペースはターボが19.2㎞/LでNAが20.9㎞/L(ともに2WD)です。比べるとタントファンクロスが一番高燃費ということになります。
ライバルとガチンコの
絶妙な価格設定
(引用:ダイハツ公式HP)
価格は装備内容が充実している上、専用パーツなども施されているためちょっと高めです。ベースであるタントよりも少し高く、エアロパーツが装着されたタントカスタムよりちょっとだけ安いという以下のような価格となっています。
グレード | エンジン | 駆動 | 価格 |
---|---|---|---|
ファンクロス | NA | 2WD | 172万1500円 |
4WD | 184万2500円 | ||
ファンクロスターボ | ターボ | 2WD | 180万9500円 |
4WD | 193万500円 |
ちなみにライバルのスズキスペーシアギアは172万5,900円~196万6,800円。グレードのラインナップがより幅広い三菱のekクロス スペースが165万5,500円~206万8,000円となっています。ほぼ同じ価格帯といっていいでしょう。まさにガチンコの価格設定。選ぶほうとしては非常に悩ましいとことですね。
タントファンクロスの投入で
念願の軽ナンバーワン獲得はなるか?
(引用:ダイハツ公式HP)
現在、軽自動車の販売台数ナンバーワンを長らく続けているのがホンダのスーパーハイトワゴンN-BOXです。これは2022年も変わらず、直近の2022年9月の販売台数ランキングでも19,411台を売り上げてのぶっちぎりの1位となっています。
ダイハツはこの状況を打破するためにタントのマイナーチェンジを実施、新たにタントファンクロスを投入しました。これによってN-BOXの牙城を切り崩そうということなのでしょうが、もともとタントの売り上げは決して悪くありません。実際、マイナーチェンジ実施直前の2022年9月の販売台数は9,879台でN-BOXに次ぐ2位となっていました。
そして10月にタントファンクロスが発売となりましたので、新たなファンを獲得することができれば念願の「軽自動車ナンバーワン」の地位の獲得も決してあり得ないことではないでしょう。
現時点(2022年10月末)では10月の販売台数は不明ですが、これから年末にかけての、タント、N-BOX、スペーシア、ekスペースによる激しい軽スーパーハイトワゴンどうしの戦いはちょっと見逃せませんね。