経済性の高さと、車種バリエーションの豊富さ徹底したスペース効率の追求によりファミリーカーとして十分な資質を備えたいまどきの軽自動車。中でも、人気が集中しているのがダイハツタントホンダのN-BOX、といった軽自動車のスーパーハイトワゴンです。

スーパーハイトワゴンは、その名前の通りルーフが非常に高く上下方向に余裕のある室内空間を持ち、子供やお年寄りもでも乗り降りのしやすい開口部の大きな後席スライドドアを備えています。小さいはずの軽自動車なのに驚くほど広い、という、相反する特長からコンパクトカーやセダンなどから乗り換えると言うパターン増えているようです。

その人気は年々高まっており2017年の自動車売上ナンバーワンは、軽自動車のスーパーハイトワゴン、ホンダN-BOXでした。これは軽自動車の売上ナンバーワンではなく、普通車を含めた自動車の売上ナンバーワンです。

そんなスーパーハイトタイプの軽自動車の中でも、いわばパイオニアともいえるのが、ダイハツのタントです。現行モデルはすでに登場から5年経過(2018年11月現在)しており、モデルチェンジ目前と言われていますが、その魅力はいまだ衰えていません。それにタントにはライバルにはない特別な装備があります。それが助手席ピラーレスドアです。

スーパーハイトワゴンの元祖は
三菱のミニカトッポ?


(引用:Wikipedia

ダイハツタントは2003年に登場した軽スーパーハイトワゴンのパイオニアです。発売当初に筆者も雑誌の企画で運転をしましたが、その極端に高いルーフ高による異様なまでに広い(天地方向に)室内空間と、重心の高い独特な運転感覚に戸惑いを覚えたものです。

しかし、同じように背の高い軽自動車ワゴンとしては、タント以前にも三菱ミニカトッポというクルマがありました。こちらはタントよりも13年も前、1990年に登場したクルマです。元祖はそちらではないのか?

確かに近いですがちょっと違います。ミニカトッポは簡単にいうと、ハッチバックであるミニカのボンネットから後ろを極端に上下方向に伸ばしたユーモラスな外観のクルマ。今のスーパーハイトワゴンのように後席は特に使いやすくはなく、ファミリーユースでの実用性を求めたものではありませんでした。イメージとしては軽ワンボックスバンにはないソフトなデザインの軽の貨物車(ワゴンもありましたが)といった印象でしょうか。

実際大ヒットにはならず、他メーカーのフォロワーも登場しなかったのでタントのように新たなジャンルを築くことはありませんでした。ただ、その見た目のキュートさから花屋さんの配達デリバリー用などに重宝されるなど一部で人気があったようです。

今のスーパーハイトワゴンは前席がスイングタイプのヒンジドアリアドアはスライドドアです。そして後席の居住性を高めた圧倒的な広さをもっています。そんなクルマがスーパーハイトワゴンなのです

ファミリーユースに便利な
後席スライドドア


(引用:ダイハツ公式HP

では、スーパーハイトワゴンの後席スライドドアのメリットとはなんなのか? まず乗り降りが楽です。一部の廉価グレードは別としてスーパーハイトワゴンの後席スライドはほとんどが電動パワースライドドアです。そのため両手が塞がっていてもボタンひとつでドアの開閉ができ、荷物を持ったままでも楽に乗り降りすることできます。また開口部も大きいのでベビーカーなどを乗せるのも楽です。

さらに、電動パワースライドドアにはイージードアクローザー機能もついているので、力の弱いお子さんや年配の方でも安全にドアを閉めることができるというのも美点ですね。スイングドアの場合は、ある程度力を入れて閉めなくては半ドアになってしまいますし、その際に指などを挟んでしまう危険もあります。そういったリスクが小さいのもスライドドアの良い点です。

また、スイングドアのように、クルマの横に大きなスペースがなくてもドアを全開にすることができるのもありがたいところ。ショッピングモールなどの駐車場で、子供がいきおいよくドアを開けて隣のクルマにぶつけてしまうという危険も低いはず。こういった点もファミリーカーとして見逃せないポイントですね。

デメリットももちろんあります。それはドア自体が重く車体重量が増してしまうこと。構造が複雑でコストがかかってしまうこと。電動でないスライドドアの場合、坂道などではドアが重くて開け閉めがしにくいといったことです。しかし、それを上回るメリットがあるからこそ、これだけ売れているのは間違いありません。

そして、ライバルのひしめくスーパーハイトワゴンの中でも、後席スライドドアの使い勝手が最もすぐれているといわれているのがダイハツのタントです。では、どのような点がライバルと違っているのか?

開口部の幅は最大1490㎜!
圧倒的なミラクルオープンドア


(引用:ダイハツ公式HP

同じ後席スライドドアを備えながら、ダイハツタントがライバルと違っている点が助手席側にセンターピラーがないミラクルオープンドア」を備えているということです。

ピラーとは日本語で柱の事です。ルーフとボディを繋ぐ柱のことクルマではピラーと言い、フロントウインドウの両端にある柱がフロントピラーまたはAピラーです。そして前席と、後席の間にあるのがセンターピラー、またはBピラーといいます。さらにサイドガラスとリヤガラスの間の柱がリヤピラーもしくはCピラーです。

タントは、助手席型の真ん中の柱、つまりこのセンターピラーがないのです。

センターピラーがないと何がいいのか? まず、後席と前席のドアを開けることで圧倒的な開口部が広がります。その幅は最大でなんと1490mmです。約1.5mの広い開口部があれば、例え子供を抱っこしながらでも楽に後席にアクセスすることができます。

センターピラーがなくなっても、助手席シートが出入りのじゃまになるから、結局使える広さは変わらないのではないか? と思うかもしれませんが、タントは助手席シートが前方に大きくスライドし、さらに背もたれを水平に倒すことが可能です。その広い開口部を最大限に生かす工夫がされているのです。

そのためライバルに比べさらに楽に助手席側からベビーカーなどの大きな荷物を積み下ろしすることもできます。ピラーのあるスライドドアではこうはいきません。

さらに、じゃまなピラーがないのでTVのCMなどでも紹介されていましたが傘を差したまま車内に乗るこむこともできますし、組み立て家具などの長い荷物などもスムーズに積み込むことができるのです。小さなお子さんを持つファミリーにとってタントのミラクルオープンドアは何よりも大きな魅力と映るはずです。

センターピラーレスであることの
デメリットはあるのか?

ではセンターピラーレスであることにデメリットはないのか? 例えは他のクルマにはあるセンターピラーがないので強度的に弱いという意見があります。ピラー(柱)のない大きな開口部を見れば、確かに不安を覚えるかもしれませんね。

しかし、タントはセンターピラーレスと言いましたが、正確にはセンターピラーはリアのスライドドアに内蔵されています。フロントドア後端部とリヤスライドドア前端部に、通常鋼板の3倍以上の強度を持つ「超高張力鋼板」が使用され、ドアのこの部分がピラーの役割を果たすのです。

そのためピラーのある運転席側と同等の強度と剛性を確保しており、加えて、フロントドア、リヤスライドドアの内部には強度の高いインパクトビームを内蔵することで、衝撃を受けた際にも緩和するような設計になっています。

ですからセンターピラーレスだから安全じゃないというわけではありません。十分考慮した上で設計されているので必要以上に不安に思う必要はありません。

ただ、センターピラーのあるクルマよりもこういった工夫が必要なためどうしてもコストがかかってしまうというのがデメリットかもしれません。そのため他のメーカーではセンターピラーレスのスーパーハイトワゴンをラインナップしていないのかもしれません。

他にはデメリットというわけでありませんが、その特長をあまり使う機会がないという話もあります。普通に使用していて助手席ドアと、後席スライドドアを同時に開けるというシーンがないというのです。あれば便利だけど、そうそう使わないということですね。必要な人、そうでない人を選ぶということかもしれません。

また、ピラーがないことで、助手席のシートベルトが使い勝手悪いという意見も聞かれます。タントの助手席シートベルトを見てみると、シートベルトはシートの背もたれに内蔵されています。

通常のピラーに内蔵されているシートベルトよりも脱着がわずらしいと感じられることがあるのだそうです。しかしこれは慣れの問題でしょう。気なる場合は、ディーラーなどで確認してみたほうがいいでしょうね。

時期モデルにもミラクルオープンドアが
引き継がれるのか?

センターピラーレスのスーパーハイトワゴンというのは、現状ダイハツのタントシリーズだけ(ホンダN-VANは商用車が基本なので別物)の個性です。その機能が活躍する機会は多くないかもしれませんが、必要な人にとっては便利この上ない物となってくれるはず。

ライバルを含めスーパーハイトワゴンの購入を現在検討中という方は、センターピラーレス車とそうでないクルマがどう違うのか、実際にディーラーなどでタントに試乗して確認してみてください。多くの方にタントが支持されている理由もきっとわかるはずです。

ちなみに現行のダイハツタントは、原稿執筆時点(2018年11月)で次期モデルへのモデルチェンジの可能性が噂されています。現行モデルが2013年登場なので、2018年時点ですでに5年が経過しています。2019年はモデルチェンジのタイミングかもしれません。

ただ、次期モデルがフルモデルチェンジなのか? またはマイナーチェンジなのかは分かっていません。また、その個性であるミラクルオープンドアがどうなるのかも不明です。現行タントのミラクルオープンドアに魅力を感じているなら、モデル末期の今こそ買い時かもしれません。現行タントを購入対象とするならそういったことも考慮しておく必要があるかもしれませんね。