トヨタのコンパクトミニバン「シエンタ」がフルモデルチェンジを実施し、3代目が発売されました。シエンタは、扱いやすいコンパクトサイズながら、3列シートを装備しファミリー層にぴったりの一台として幅広い層から支持されてきた人気車です。
パッと見で、見た目が大きく変わったことが大きな話題となっていますが、他にはどのようなことが先代と変わっているのでしょう。先代から大きく変わったポイントにフォーカスしながら、新型シエンタの特徴をご紹介していきます。
目次
歴代モデルはすべて大ヒット!
大きな期待がかかるモデルチェンジ
(引用:トヨタ公式HP)
トヨタのミニバンとしては最もコンパクト(トヨタにはルーミーもありますが、ルーミーはミニバンではなくコンパクトカーのカテゴリーです。)な、5ナンバーサイズのコンパクトミニバンが「シエンタ」です。
初代モデルは2003年に発売され、ライバルであるホンダフリード(と先代のモビリオ)とともに、3列シートの5ナンバーミニバンというジャンルを開拓してきました。
初代のシエンタは人気であったのにもかかわらず、紆余曲折あって2010年に一旦販売を一旦終了。しかし、後継車として投入した「パッソセッテ」が、市場から不評だったこともあって、翌年にそのままの形で「シエンタ」が再度投入されるなどといったなかなか波乱万丈な運命をたどっています。
そして、それ以後はトヨタの中でも上位クラスの人気を誇る、定番のコンパクトミニバンとして、多くのファミリー層から支持を集めています。
そのシエンタが2022年8月23日、フルモデルチェンジを実施。3代目が登場しました。初代が2003年登場で、それから19年。その間たった2回しかフルモデルチェンジが実施されていないということは、それだけ歴代モデルの人気が高かったという証です。それだけに3代目の新型も大きな期待が寄せられています。
とはいえ、扱いやすい5ナンバーサイズの3列シートコンパクトミニバンという、シエンタの大きな特徴は外すわけにはいきません。最近のクルマ、特にミニバン系はフルモデルチェンジのたびにボディサイズを拡大するのが当たり前になっていますが必ずしもそれを求めている方ばかりではないでしょう。
例えば、定番のMクラスミニバンのトヨタ「ノア/ヴォクシー」や、ホンダの「ステップワゴン」は新型となり当たり前のように3ナンバーサイズになりました。もはやMクラスといっていいのか迷うほど巨大化してしまっています。
その結果、従来モデルのオーナーからは「5ナンバーサイズの扱いやすさが良かったのに…」などといった声も一部であがっているのです。
では、新型シエンタのサイズはどうなったのか。また、具体的に先代とはどのような点が変わっているのでしょう。詳しくチェックしていきます。
大きくなった? 小さくなった?
ボディサイスはどう変わった
(引用:トヨタ公式HP)
まず気なるのはボディサイズです。シエンタはその絶妙な5ナンバークラスのボディサイズが多くのファンから支持されてきたポイントです。単純にボディを大型化すれば、もちろん室内スペースの拡大が可能でしょうが、安易な大型化は扱いにくくなるだけで、せっかくの良さが失われてしまいます。
実際のボディサイズをカタログでチェックしてみるとこのようになっています。
●新型シエンタボディサイズ
全長4,260mm×全幅1,695mm×全高1,695mm ホイールベース:2,750mm
●先代シエンタボディサイス
全長4,260mm×全幅1,695mm×全高1,675mm ホイールベース:2,750mm
並べてみると一目瞭然で先代とほぼ変わっていません。全高がわずかに20mm程高くなっていますがそれだけ。心配したサイズ拡大はされていません。
では室内スペースはどうなのかというと、寸法はこちらです。
●新型シエンタ室内寸法(7人乗)
室内長2,545mm×室内幅1,530mm×室内高1,300mm
●先代シエンタ室内寸法(7人乗)
室内長2,535mm×室内幅1,490mm×室内高1,280mm
わずかに新型のほうが広くはなっています。ほぼ一緒。ドアの内張がシンプルなデザインとなっており、シートも座面がフラットで広いデザインになっているので見た目の印象では新型が広く感じますが数値的にはほとんど変わっていません。
シエンタは、その絶妙なサイズ感と、サイズのわりに広い室内がその良さでもあり、多くの方から支持されている理由です。大きく変わっていないということは、むしろ喜ばしいことでしょう。
もし「もっと広いほうが良い!」というのであれば、はじめからノアやヴォクシーを選べばいいのです。むしろこの数値を見て安心したという方のほうが多いのではないでしょうか。
アクの強かったエクステリアは
シンプルでクリーンなかわいらしいデザインに
(引用:トヨタ公式HP)
ではエクステリアデザインはどう変わったのか? 先代は少しアクの強い歌舞伎の隈取風の顔が特徴的でしたが、新型はかなりソフトな印象です。
全くアクのない柔らかな表情で、ちょっとユーモラスな感じもあります。それでいて質感は高く見えますので、これならどのような年代にも受け入れられるのではないでしょうか。
ちょっとかわいらしすぎるという感じもしますが、ファミリー層をターゲットとしたコンパクトミニバンとしては、これはこれで正解なのではないでしょうか。
クルマ全体のフォルムは先代と大きくは変わっていません。ボディサイズもほぼ同じなので、当然ともいえます。
しかし、サイドウインドウの面積が上下に大きくなっており、ベルトラインが水平となり、四角い箱をイメージさせるクリーンなイメージです。これがトヨタの言う「シカクマルシルエット」なのでしょう。視界も広がり、見切りもいいのできっと運転もしやすいはずです。
さらに、コーナー部分もラウンド状の処理となり、サイドに大きなサイドプロテクションモールが装備されるなど、ちょっとヨーロッパ車のシトロエン・ベルランゴやルノー・カングー的なモダンでおしゃれな遊び心のある印象もあります。
このデザインならきっと先代以上に多くのファンの心をつかむのではないかと筆者は思います。
また、フロア地上高も低くなり(330mm)、加えて段差のないフラットなフロアが踏襲されています。そしてパワースライドドア開口部の高さを、旧型比で+60mmの1,200mmに拡大しているという点にも注目です。
後席にはお子さんや高齢のご両親を乗せる機会も多いでしょう、後席への乗降性が向上しているというのも新型シエンタの大きな魅力といえます。
ファブリックを要所にあしらい
居心地の良いインテリアに
(引用:トヨタ公式HP)
インテリアはどうのように変わっているのか。エクステリア同様にシンプルモチーフである「シカクマル」が取り入れられています。ドアポケットやレジスター、メーターなどところどこに「シカクマル」フォルムが配され、統一されたイメージでまとめられています。
エクステリア同様にとてもクリーンな印象でダッシュボードやドアトリムに使用されたファブリックがとてもおしゃれです。ボトルホルダー部分には機能を知らせるピクトグラムなどが使われていますが、実用的かどうかはともかく、ちょっとした演出になっています。
インパネは水平基調のデザインとなっておりこれが室内を広く見せてくれます。メーターパネルは一般的な位置に移動しており、液晶モニターは大型化されセンターのより高い位置に配されています。メーター類の視認性は新型のほうが明らかに高いでしょう。
シートにはメランジファブリック(霜降り糸風)のモダンな素材が使われていて、さらに使われているシート素材は消臭・撥水撥油機能も備えておりファミリーやアウトドアレジャーでもより使いやすいものとなっています。
シートの形状もクッションが厚く、座面の面積も大きくフォルムも四角いのでまるでリビングのソファのよう。車内に居心地の良いくつろぎの空間を作り出しています。
細かなことですが、USB端子が後席にも装備されたり、フロントドアポケットには1Lのペットボトルが収納可能でカップホルダーに四角いパックがおけるようになっているなど細かな部分の作り込みもとても凝っています。
このようにエクステリア以上に大きく進化したインテリアは、室内寸法的には、先代とほとんど変わっていないはずです。
しかし、モダンですっきりとしたデザインと、明るい印象の配色や価格部に配された差し色的なファブリックのせいなのかとても広くなったかのように感じさせます。細かな作りや装備も凝っていた快適性はかなり向上しています。
ハイブリッドもガソリンエンジンも
新型ユニットとなり燃費も向上
(引用:トヨタ公式HP)
パワーユニットは先代と同様に1.5Lガソリンエンジンと1.5Lガソリン+モーターのハイブリッドが設定されています。しかし、それぞれとも進化しており、新型ではハイブリッドが「ヤリス」、「アクア」と同様の次世代ハイブリッドとなっています。
先代は最高出力54kW (74PS)/最大トルク 11.3kgmのエンジンに、最高出力45kW (61PS)のモーターを組み合わせていましたが、新型では最高出力67kW(91ps)/最大トルク142Nm(14.5kgm)のエンジンに、最高出力59kW(80ps)のモーターを組み合わせシステム最高出力85kW(116PS)に向上。より力強い走りが味わえます。
もう一方のガソリンエンジンも新しい1.5Lのダイナミックフォースエンジンに変わっています。こちらは最高出力88kW(120ps)で最大トルク145Nm(14.8kgfm)です。
先代が最高出力80kW (109PS)で最大トルクが11.3kgmだったので、こちらも出力が大きく向上しています。
進化したパワーユニットを採用したことで、それぞれが世界トップレベルの熱効率を達成。WLTCモード燃費はハイブリッドが28.2~28.8km/L(2WD)でガソリンエンジンが18.3km/L(2WD)と、どちらも非常に優秀です。
ちなみに先代のWLTCモード燃費はハイブリッドが22.8km/L(2WD)でガソリンエンジンは17.0km/Lでした。特にハイブリッドの燃費向上が著しいですね。
安全装備は全グレード標準
ボタン一つで駐車もサポート
(引用:トヨタ公式HP)
装備の中でもやはり気になるのは先進安全装備でしょう。先代シエンタにももちろんトヨタセーフティセンスが装備されていましたが、新型シエンタも、もちろんトヨタセーフティセンスが全グレードに標準装備となっています。
そして、新型シエンタに装備されているトヨタセーフティセンスには具体的には以下のような機能が標準で搭載されています。
- ■プリクラッシュセーフティ:ぶつからないをサポート
- ■レーントレーシングアシスト:高速道路のクルージングをサポート
- ■レーンディパーチャーアラート:はみ出さないをサポート
- ■レーダークルーズコントロール:ついていくをサポート
- ■アダプティブハイビームシステム/オートマチックハイビーム:夜間の見やすさをサポート
- ■ロードサインアシスト:標識の見逃し防止をサポート
- ■ドライバー異常時対応システム:救命・救護をサポート
- ■プロアクティブドライビングアシスト:安全運転をさりげなくサポート
- ■発進遅れ告知機能:先行車・信号出遅れをサポート
先代にも同様のトヨタセーフティセンスが搭載されていましたが、新型はどの機能も大きく進化しているのがポイントです。
例えば衝突回避支援型プリクラッシュセーフティは先代が昼間の歩行者の検知のみだったのが、新型では昼・夜間の歩行者に加え自転車や自動二輪車の検知にも対応となっています。
また、プロアクティブドライビングアシストやレーントレーシングアシスト。ロードサインアシストに先行車発進告知。ブラインドスポットモニターといった機能が新たに追加されています。
加えて、ハイブリッドの上級グレードZのみのメーカーオプションですが、高度運転支援技術「トヨタチームメイト・アドバンストパーク」も新たに設定されました。
これは、他のトヨタ車に先行して採用されていますが、スイッチを押すだけでステアリング、アクセル、ブレーキ、シフトの全操作をクルマが支援してくれ誰でも安心してラクにクルマが停められるというもの。
カメラやソナーを使って周囲を監視しながら駐車を支援してくれる上、障害物を検知した場合には警報を鳴らして、ブレーキ制御を行って接触回避を支援してくれます。
そして、バック駐車だけでなく前向き駐車、バック出庫、前向き出庫までに対応しているというのも心強い。駐車の苦手な方にはとてもありがたいのではないでしょうか。
その他では、ドライブレコーダ機能が、エントリーグレードのXグレード以外に標準装備となっているのもトピックです。標準は前方カメラのみですが、こちらはトヨタセーフティセンスの単眼カメラを利用したもので、オプションの追加で後方監視用のカメラを装着することも可能となっています。
内蔵メモリに録画してくれるのでSDカードの故障などといった心配がないのもありがたいのではないでしょうか。
人気車ゆえに納期はすでに遅れ気味
早めに手に入れるならすぐに行動を!
(引用:トヨタ公式HP)
スタイリングが大きく変わったことが話題となっている新型シエンタですが、細かくチェックしてみると、デザインやパワーユニットから燃費、安全機能に、快適装備まであらゆる面で先代から大きく進化していることがわかりました。では肝心の価格はどうなっているのか。
新型シエンタハイブリッド価格はハイブリッドX(2WD)の238万円~ハイブリッドZ(4WD)の310万8,000。そしてガソリンエンジンは、X(2WD)の195万円~Z(2WD)の256万円となっています。
先代はハイブリッドが223万6,500円~247万3,000円で、ガソリンエンジンが181万8,500円~210万7,000円となっています。だいたい全体的に15万円ほど高くなっているという感じです。
ただ、昨今の円安による部品価格の高騰や、新型となり進化したポイントなどを見ると、相応というかむしろこの程度の価格アップで抑えられているのはむしろ驚きです。コスパ的には新型シエンタかなり優秀といえるのではないでしょうか。
新型シエンタ、このようにとても魅力的なのは間違いありません。これならすぐにでも手に入れたいという方もたくさんいると思いますが、例によって現在(2022年9月末)新型コロナの影響で生産の遅れが生じています。
エントリーグレードのXグレードに関してはハイブリッドもガソリン車も2023年4月以降の生産予定というからかなりのもの。
このような状況ですので、いち早く新型シエンタを手に入れたいというのなら、とにかく早めに手を打っておくべきでしょう。
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