トヨタのシエンタといえば、トヨタ最小クラスのミニバン(ルーミーはカテゴリーとしてはコンパクトになります)です。扱いやすいコンパクトなサイズに、最大7人乗ることができる3列ソート車を設定。そして、ハイブリッドによる優れた燃費も持つトータルバランスに優れたファミリーカーとして子育て世代にも、広い室内を求めるアウトドア好きにも大人気のクルマです。

そのシエンタが2021年6月マイナーチェンジを実施しました。シエンタはロングセラーなのですでに次期型の登場も噂されている中でのマイナーチェンジ。

変更点は多くありませんが、トピックはあります。それは新しい特別仕様車の設定です。

過去に設定された好評だった2つの特別仕様車を集約したような仕様で、これがなかなか注目すべき内容となっています。ではどんな点が魅力なのか、また、買いのクルマなのか詳細にチェックしてみましょう。

登場から6年経っても
販売台数ランキング12位をキープ


(引用:トヨタ公式HP)

原稿執筆時(2021年6月)の直近の販売台数ランキングで12位。登場から6年経つロングセラー車としては異例なほど売れ続けているミニバン、それがシエンタです。

トレッキングシューズをイメージしたというエクステリアがユニークで個性的なため、いまだに古さは感じませんが、すでにモデル末期ともいわれています。2022年にはおそらく新型にフルモデルチェンジするのではないかと思われます。

でも、それなのに、いまだに売れ続けているというのは凄いこと。しかし、シエンタの何がそんなに多くのドライバーの心をつかんでいるのか。

一番はやはりそのゆとりの室内空間でしょう。全長わずか4.26mの中に、3列シート(2列シートも有り)を配置した高効率なパッケージング。3列目シートは決して広くはありませんが天地方向の余裕もあるため、大人でも座ることのできるスペースを確保しています。

その優れたパッケージを生かして、シエンタをベースに開発されたのがJPNタクシーです。シエンタに乗ったことがなくてもなんとなく広さが想像できるのではないでしょうか。そんな広さや快適性が重視されるタクシー車両のベース車にされるくらいシエンタは広くて余裕のあるスペースが確保されているということですね。

それに3列目―シートを使わないときはシートをたたむことができ広々とした荷室として使用できます。ドライブに買い物に、アウトドアの趣味にとマルチに使うことができる。また、はやりの車中泊仕様にするにもこの広さはもってこいです。

それでいて車体が非常にコンパクト。当然のように5ナンバー枠に収まる幅1695㎜で、全長もわずか4260㎜です。5人乗りのプリウスやカローラスポーツなどよりも圧倒的にコンパクト。ですから運転もしやすいですし、狭い道でも、窮屈な駐車場でも扱いやすいわけです。

さらに、リアドアはスライドドアですから、開口部が大きく小さなお子さんやお年寄りの方でも乗り降りしやすい上に助手席側リアドアは全グレードパワースライドア。開閉に力もいりません。このようにその特徴をあげてみるとファミリーカーとしてこれ以上ぴったりなクルマはない!といいきっていいほど。長く愛されてきたのにはちゃんと理由があるのです。

改良点はオートライトが
全車に標準となったこと


(引用:トヨタ公式HP)

そんなベストセラーコンパクトミニバン、シエンタにマイナーチェンジが実施されて何が変わったのか。改良点としてはコンライトが全車に標準装備となったというもの。コンライトとはいわゆるオートライトのこと。周囲の明るさを感知して、自動的にヘッドライトをON・OFFしてくれるという機能です。

これがあればヘッドライトの点け忘れや、消し忘れなどが防止できるとわけです。オートライト自体新型車は2020年4月から標準装備化が義務付けられていますし、継続生産車も2021年10月からは義務化となっています。これに対応するために一部改良という形でシエンタに導入されたということなのでしょうか。

ということは、2021年10月以降も、現行のシエンタは生産継続ということなのかもしれません。新型へのフルモデルチェンジは、2021年中なのか、2022年になってからなのか自動車メディアでも予想が二分していますがこれを見る限り2022年というのが本命っぽいですね。

ちなみにオートライトは、以前は各自動車メーカーによって点灯、消灯のタイミングなどがまちまちでしたが、義務化によってルールが定めらました。それがこちらです。

  • ■周囲の照度が1,000ルクス未満になると、ヘッドライトが2秒以内に点灯する
  • ■周囲の照度7,000ルクス以上になると、ヘッドライトが5秒から300秒以内に消灯する
  • ■走行中は手動による消灯はできない(駐停車状態は消灯可能だが走行で自動点灯)

安全な運転には有効な装備なのでしょう。今後は全てのクルマにこういった機能が搭載されます。今回の一部改良で目立った変更点はこれだけでなく。あとはハイブリッド車とガソリン・2WD車が2030年度燃費基準優良車となったこと。さらに、ハイブリッド車が「2030年度燃費基準90%達成車」となり、ガソリン2WD車は「2030年度燃費基準65%達成車」となった点がマイチェン前との違いです。

むしろ、トピックは新しい特別仕様車が設定されたということでしょう。ではそれはどのようなシエンタなのか。

好評だった「Safety Edition」と
「GLAMPER」の仕様を一台に集約


(引用:トヨタ公式HP)

シエンタに新たに設定された特別仕様車が3列シートの「G “Safety Edition Ⅱ”」2列シートの「FUNBASE G“Safety Edition Ⅱ”」です。ハイブリッドとガソリンエンジン、2WDと4WD(3列シートのガソリンモデルのみ)が用意されています。

「セーフティエディション」はこれまでも設定されていた特別仕様車ですが、そのバージョンアップ版という位置づけ。

内容的には簡単にいうと「Safety Edition」と、同じく特別仕様車の「GLAMPER」の仕様を一つにまとめたという形になっています。「GLAMPER」も人気の特別仕様車だったので双方の特徴を一つにまとめたSafety Edition Ⅱはかなりお得で魅力的な一台といっていいでしょう。

では、具体的にはどのような仕様となっているのか、さらに細かくチェックしてみましょう。

パーキングサポートブレーキが
標準装備のセーフティエディション

まず、セーフティエディションというくらいですから、目玉は安全機能です。窓ガラスや壁などの静止物を検知して、衝突被害を軽減してくれるインテリジェントクリアランスソナー[パーキングサポートブレーキ(静止物)]が特別装備として標準搭載されています。

これはベースモデルではオプション(2万8,600円)の装備。それがはじめからついてきます。

ようするに最近多い(ニュースで取り上げられる機会が増えた)アクセルやブレーキの踏み間違いなどによる店舗への飛び込み事故などを防いでくれる安全機能がオプション追加不要となっているということです。

どのような機能かというと、クルマに装備されたクリアランスソナーが、静止物への接近を検知すると表示とブザーでまず知らせてくれます。それでもクルマが停まらない場合はエンジンやハイブリッドシステムの出力を抑制(15km/h以下)してくれます。

さらに、停まらず障害物に接近していると検知すると自動ブレーキが作動して危険を回避してくれるというものです。

家族でクルマを共用していて奥さんやお子さんなど複数のドライバーがそのクルマを運転するというご家庭なら絶対に欲しい機能ですね。

ちなみにそのほかの安全機能、「プリクラッシュセーフティ」や「レーンディパーチャーアラート」、「オートマチックハイビーム」はベース車両にも元々標準装備となっています。

バックカメラがセットとなった
NAVIレディパッケージも標準装備

機能面ではそんなインテリジェントクリアランスソナーの装備がメインで、あとは後方の映像を表示して車庫入れをサポートしてくれるバックカメラが含まれた「NAVIレディパッケージ」も標準となっています。

こちらもベース車両ではオプションとなっているものでそれが標準化されている。ベース車両の場合は追加で3万6,300円が必要。つまりお得ということです。

ただしNAVIレディパッケージは、バックカメラとステアリングスイッチ、6スピーカーがセットとなったものですが、カーナビ自体はついてきません。つまり別途ディーラーオプションの純正ナビが必要(社外品のカーナビを別途装着した場合はこれらの機能は搭載されていても使えない)ということなのでその点は注意が必要。

その他は内外装に施された特別装備が特徴となっています。採用されている多くの仕様は以前あった特別仕様車「GLAMPER」のものが踏襲されています。

黒をデザインのアクセントにして
シックな印象にドレスアップ


(引用:トヨタ公式HP)

まず、ブラック塗装のホイールキャップやドアミラーが装着されており、さらにインテリアにもブラックインテリアが採用されています。具体的にはベース車両ではアクセントカラーとしてオレンジが使用されているところ、このSafety Edition Ⅱではブラックが使用されているというもの。ちょっとした違いなのですが、ノーマルのポップなイメージから、落ち着いたシックな印象に変わっています。黒いホイールやドアミラーなどとのマッチングもよくなかなかおしゃれではないでしょうか。

さらにボディカラーにも特別設定色が用意されています。それが「グレイッシュブルー」。落ち着いたトーンの上品なブルーで、ブラックのとのマッチングもよくベースモデルの明るく華やかなイメージとはちょっと違っていてとてもシック。カラーでも特別感が味わえるわけです。

ちなみにこのグレイッシュブルーというボディカラーも以前設定されていた特別仕様車「GLAMPER」で採用されていた特別色です。GLAMPERが欲しかったのにタイミングがあわず買い逃してしまった、という方には朗報かもしれませんね。

そして気になる価格ですがこのようになっています。

シエンタG“Safety Edition Ⅱ”、FUNBASE G“Safety Edition Ⅱ”
G“セーフティーエディションII”(ガソリン・7人乗り) 215万1000円
G“セーフティーエディションII”(ガソリン・6人乗り) 229万5000円
ハイブリッドG“セーフティーエディションII”(ハイブリッド・7人乗り) 251万7000円
ファンベースG“セーフティーエディションII”(ハイブリッド・5人乗り) 211万円
ハイブリッド ファンベースG“セーフティーエディションII”(ハイブリッド・5人乗り) 247万6000円

 

特別仕様車ならではの追加装備はさほど多くはありませんが、ベースとなったグレードの“G”に対して、プラス8万5,000円ほどなのでお得度はかなり高いでしょう。なんといってもかつての人気特別仕様車である「Safety Edition」と、「GLAMPER」2つの魅力を持った特別仕様車ですから、これはなかなかお買い得と言っていいと思います。

モデル末期なのは間違いないが
クルマの完成度や魅力は今も一級品


(引用:トヨタ公式HP)

コンパクトミニバンにおけるベストセラーといっていいシエンタも現行型はもうモデル末期。いずれにしても近いうちにフルモデルチェンジが実施されることになるのでしょう。

ただ、次期モデルが現行モデル同様の魅力を持ったクルマになるかどうかはわかりません。もしかしたら、大型化するかもしれませんし、価格が高くなってしまうかもしれません。ヒットモデルの新型が期待はずれとなった例は過去にも多々あります。

であるならばちょうどいいサイズで運転もしやすく、広くて使いやすい室内スペースも確保され、魅力あふれる個性的なデザインを持っている。そんな現行シエンタをあえて今選ぶというのもありなのではないでしょうか。

手ごろなミニバンの購入を考えているというなら、シエンタは間違いなく検討に値する一台です。そしてシエンタの中でも「Safety EditionⅡ」は安全装備も充実していてお得度の高いグレード。是非注目してみてください。