2019年11月トヨタからコンパクトクロスオーバーSUV「ライズ」が発売となりました。全長4m、5ナンバーサイズのエントリーモデルで、そのオフロードテイストを感じさせながらもどこかかわいらしいデザインも相まってか注目が集まり、発売開始から約1カ月で、約3万2,000台を受注するなどメーカーの予想を超える大ヒットとなっています。しかしなぜ小さなSUVがこれほど人気となったのか、その特徴やスペック、人気に秘密に迫ってみました。

2019年12月の販売台数
ランキングで2位を記録!


(引用:トヨタ公式HP)

トヨタの「ライズ」と兄弟車であるダイハツの「ロッキー」が発売直後から驚異的な大ヒットを記録しています。ライズの発売は2019年の11月ですが日本自動車販売協会連合会の自動車販売台数ランキングでは発売開始月である2019年11月の登録台数は7,132台で4位です。

そして、年末の2019年12月のランキングはさらに台数伸ばし9,117台でなんと2位! 兄弟車であるダイハツロッキー(3,514台/16位)と合わせると、合計販売台数では1位であるトヨタカローラ(9,186台)を抜き1位となります。現在(2020年1月25日)トヨタの公式ホームページを見ても、納期は三カ月となっています。つまり、現在もそれだけ注文が殺到しているということです。

経済性を重視したコンパクトカーでもミニバンでもないクロスオーバーSUVがここまで大ヒットするとは誰が予想したでしょう。おそらくトヨタやダイハツでさえここまで売れることは期待していなかったのではないでしょうか。

小型のSUVというと、確かに今ブームが起きています。そのブームの立役者といえばもちろんスズキのジムニーです。シンプルかつ武骨なデザインに、圧倒的なオフロードの走破性を誇るリジッドサスペンションとパートタイム4WDを搭載した小さいながら本格派のクロカン4WDというそのストイックさが新鮮で、ほかにはない独自の魅力を際立たせ、今や世界中で大ヒットしています。その見た目のかわいらしさも人気の要因ですが、やはり特にアウトドア好きから圧倒的な支持をうけています。

では、そのような本格派の小型SUV人気が、このライズのヒットを後押ししたのでしょうか?おそらくそれは違うでしょう。スペックを見る限りライズはジムニーの直接的なライバルではありません。あれほどストイックなクロカン4WDではなく、あくまで街乗りに徹したクロスオーバーSUVです。直接的なライバルとなると、スズキの「クロスビー」でしょうか。

ただクロスビーは小型ワゴンにオフロードテイストを盛り込んだクロスオーバーであり、軽自動車の「ハスラー」の拡大版という印象。ライズとは比較検討の対象とはならない気もします。むしろ同じトヨタのクロスオーバーSUV、「RAV4」の弟的な位置づけでというのが正しいでしょう。

ライズは一目で分かりやすいSUVスタイルながら、小型で、なおかつ実用性も高く、加えて経済性にも優れているということが、この大ヒットにつながったのではないかと筆者は思います。確かに細かく見てみると、売れるのは当然とも思える様々な魅力を備えています。それでどのような点がライズの魅力なのか詳しく解説していきましょう。

SUVながら5ナンバーサイズ
日本の道路事情にピッタリ


(引用:トヨタ公式HP)

まずはなんといってもその手ごろなボディサイズが特徴的です。ライズは最新の普通自動車としては非常にコンパクトにできています。従来のクロスオーバーSUVというと3ナンバーサイズ、全長も5m近いものも珍しくありませんでした。SUVならボディが大きいのが当たり前、という風潮はクロスオーバーSUVのメインマーケットが海外であるのである程度仕方がないとも言えます。

海外マーケットで海外の自動車メーカーと闘わなくてはならないSUVに、日本独自の規格である5ナンバーを採用するのは意味がありません。むしろ足かせでしょう。グローバルマーケットではある程度の大きさが必要なのです。

とはいえ、そのような大きなボディのクロスオーバーSUVを、日本の狭い交通環境で使用するのは決して快適だとは言えないでしょう。大型SUVに乗ったことがあるという方はスーパーの駐車場やコインパーキング、狭い路地などで不便を感じた経験がきっとあるはずです。

ライズの具体的なボディサイズは全長3,995㎜×全幅1,695㎜×全高1,620mmでホイールベースは2,525mmとなっています。さらに車量は、なんと980kg。軽自動車ではなく普通車で1t切りというのは今どきのクルマでは非常に珍しいです。それもがっちりとしたデザインのクロスオーバーSUVなので、よくこれだけ軽量にできたものだと感心します。最小回転半径は4.9m。全長4mのコンパクトカーと思うとちょっと大きいですが、SUVとしてはかなり小回りが利きます。これなら日本の狭い道路でも取り回しに不自由はないはずです。

さらに注目は1tを切った980kgという軽量さ。安全装備満載の軽スーパーハイトワゴンの中には1tを超えるものも珍しくないので、普通車、それもSUVでこの軽さを実現したのは驚きでしかありません。軽ければ排気量が小さくてもきびきびとした走りが味わえますしもちろん燃費もアップします。さらに1tを切れば重量税も安くなるというのも魅力的。さらに小さく軽い設計でありながら居住性や積載性に優れているのもライズの大きな特徴でしょう。

小さいくせに中身は大きい
居住性も一級品


(引用:トヨタ公式HP)

全長4mのコンパクトクロスオーバーSUVとなると、その車内スペースは厳しいかな?と思ってしまいますが、ライズはいい意味でその予想を裏切ってくれます。運転席はアップライトな姿勢となりますが、頭上空間に十分な余裕があり窮屈感は一切ありません。また車高が高い分見晴らしも良く視界も良好シートサイズも決して小さくなくクッション性も高いので座り心地もなかなかのもの。

そして、後席ですが、こちらもボディサイズからは想像できないほど広く、大人がゆったり足を組んで座ることができるほど余裕があります。シートバッグも高く自然な姿勢でゆったりとくつろぐことができ、前席シート下に十分な空間が確保されているので足先も窮屈感がなく快適です。これならファミリーカーとして使っても家族から不満が出ることはおそらくないはずです。

全長4mで居住スペースにそれだけ余裕があるならその分荷室は…、と一瞬思ってしまいますがこちらもいい意味で予想を裏切ってきます。後席使用時でも775mmの奥行きがあり、幅は1,000mm、高さも865mmと広々としたスペースが確保されており、容量は369Lでこれは同じトヨタのC-HR(318L)よりも大きい。荷室のデッキボード(床板)の下にもスペースが確保されており、デッキボートを上段にした場合で145L、下段にしても80L(ともに2WDモデル)もの大容量トランクを備えているので積載性も非常に優れているといっていいでしょう。これだけスペースがあれば、4人家族でお買い物に出かけても不満を覚えることはないはずです。

装備も充実。1Lエンジンは
パワフルで経済性も◎


(引用:トヨタ公式HP)

室内は広いだけでなく質感も決して低くありません。インパネまわりは、装飾こそ少なめですが、デザインはシンプルで乗用車的でありつつ直線基調の造形パーツを配置しSUVっぽいワイルドさも醸し出しています。また、上位グレードのZとGグレードにはレッドとシルバーのアクセントカラーが使用されておりスポーティな印象も強めています。

メーターもユニーク。ZとGグレードでは、LEDデジタルスピードメーターと7インチTFTカラー液晶ディスプレイがメーター内にまるでフルスクリーンディスプレイのように配置されており、ユーザーの好みに合わせてステアリングスイッチから「先進」「ワクワク」「シンプル」「アナログ」の4つのパターン選ぶことが可能。エントリーグレードのX“S”とXでは、シンプルな2眼タイプですがオプティトロンメーターなので視認性も高く比較しなければ不満を覚えることはないはずです。

残念なのはディスプレイオーディオが全グレードメーカーオプションとなっているということ。スピーカーは付いていますが基本オーディオレスなので何かしらナビなりオーディオは必須です。設定されているメーカーオプションのディスプレイオーディオはバックカメラやパノラマミックビューカメラなどがセットとなっているので価格は最低でも9万7,900円~とちょっと高価なのも気になります。

カーリース車でライズを選ぶ際は、リース会社が用意するセットオプションのナビなどもチェックしておくとナビやオーディオをお得に装着できるかもしれません。忘れずにチェックすることをおススメします。

エンジンは直列3気筒DOHCターボの996ccです。ようはリッターターボ。性能的には最高出力98ps/6000rpmで最大トルクが14.3kgm/2400-4000rpmと決してパワフルではありません。しかし、新型タントなどにも採用され、その性能が高く評価されているトランスミッション「D-CVT」を組み合わせ、さらに980kgの軽量ボディですから、性能的には十分。というかすでにいくつかアップされているインプレなどを見ると、むしろパワフルで気持ちの良い加速が味わえるようです。

また、クロスオーバーSUVなので4WDの性能はどうなのかというと、ライズは見た目にはハードな印象もありますが、基本的にはFFをベースとした4WDモデル。搭載されるシステムはダイナミックトルクコントロール4WDです。

通常時には2WDで走行しており、スリップなど路面状況が変化したときや、滑りやすい路面での発進時に4WDに切り替わり後輪にも駆動力を伝えるというもの。これはいわゆる生活四駆などともいわれるオンデマンド4WDです。

パートタイム4WDを採用したジムニーのようなオフロードでの優れた走破性…、というのはさすがに期待しすぎですが、最低地上高は185mmも確保されていますし、前後のオーバーハングも小さいので、軽さを活かしてある程度の悪路走破性能は発揮してくれるはずです。
気になる燃費はJC08モード燃費で23.4km/L(2WD)。WLTCモードでは18.6km/Lと経済性に関してもとても優秀なものです。

価格はエントリーグレードのXが
167万9,000円からとリーズナブル


(引用:トヨタ公式HP)

そして、最新のクルマなら気になる安全装備ですが、「衝突回避支援ブレーキ機能(対車両・対歩行者)」や、「衝突警報機能(対車両・対歩行者)」、「車線逸脱警報機能」と「車線逸脱抑制制御機能」がエントリーグレードであるXを除いて全グレードに標準装備。

前方車両の追従走行を支援する「全車速追従機能付アダプティブクルーズコントロール」や駐車時に音声案内やモニターガイドとステアリング操作でユーザーをサポートする「スマートパノラマパーキングアシスト(駐車支援システム)」などの運転支援システムはZとGグレードにオプション設定と充実した内容になっています。

基本となる安全運転支援機能に関しては、できれば全グレード標準装備としてほしかったところですが、カタログ上の価格を低く見せるためにこのような仕様となっているのでしょうか。この点だけはちょっと残念ですね。そして肝心の価格は以下になります。


(引用:トヨタ公式HP)

最も安いXグレードは167万9000円と非常にリーズナブルです。ただし、このX、装備がかなり簡素なうえ、今や必須の予防安全装備が搭載されておらず、またオプションでも追加できません。となれば選ぶべきは最低でもX“S”となるでしょう。

これなら2WDで174万5,000円。4WDでも200万円を切るのでとてもお買い得です。こちらを選択し、あえてメーカーオプションではないカーAVメーカー製のオーディオ一体型ナビやバックカメラなどを選択すれば、必要な装備をそろえてもお得に乗ることができるはずです。

ただ、いくら安いからといって予防安全装備が搭載されていない、Xグレードを選ぶのは、筆者はおススメしません。新車で予防安全装備の搭載していないクルマを選ぶなんて、今どきあり得ませんよね。

ライズは人気モデルなので現時点(2020年1月25日)で納車待ちはすでに3カ月。今注文しても手元に届くのは春先となります。しかし、改めてその魅力を探ってみると待つだけの価値は十分ありそうです。もし購入すればSUVの人気モデルですから将来的なリセールバリューも期待できるでしょう。ライズをこれから購入、もしくはリースしようと検討されている方は、そんなリセールバリューやリースの設定残価なども考えたうえで、駆動方式やグレード選びを慎重に行うべきです。カタログなどを慎重にチェックして、自分にぴったりな一台を賢く選んでみてください。