いまどきの呼び方であるSUVよりも、むしろクロカン車と呼びたいクルマ、それがトヨタのランドクルーザープラド(以下プラド)です。サイズも大きく街中では決して扱いやすいとはいえませんが、今も根強いマニア人気を誇り、また、世界中でその高いオフロードの走破性と信頼性が認められ辺境の地で大活躍しています。

いまどきのオシャレなSUVも魅力的だけれど、そんなプラドの持つワイルドなイメージや武骨さに実は憧れを抱いている、という方もきっといるのではないでしょうか。

しかし、プラドの購入をいざ考え始めると意外に悩みどころなのがグレードの選択です。エンジンは2種類しかなく、グレード体系自体はとてもシンプルなのですが、価格帯は350万円~530万円台と結構幅広い。

その中でどれが正解なのかが非常に分かりにくいのです。そこで、本気でプラドの購入を検討している方のために、そのヒントとなるよう、筆者が考えるプラドのおススメグレードをその理由とともにご紹介します。

グレードは全部で9つ。
どれを選択するのが正解なのか?

プラドはSUVというよりクロカン車、と前述しましたが、もちろんカテゴリーとしてはSUVに入ります。このクロカン車という呼び方ですが、略さず言うと、クロスカントリー車またはCCV(Cross Country Vehicle)となります。クロスカントリー、つまり舗装されていないオフロードを走る車の事を指したものというわけです。

だったらSUVと同じでは?そうですね、その通りです。ざっくりと言ってしまえばクロカン車とはいまどきの都会派SUVよりも、よりオフロード向けの本格SUVといえばいいでしょうか。軍用4WD車であるジープをルーツに持つ、無骨でいかにもオフロード車っぽい四輪駆動車の事です。

代表的な車種はトヨタのランドクルーザーやプラド。また三菱のパジェロやベンツのGクラスなどでしょうか。乗り心地や快適性、燃費などではモノコックボディを持ついまどきのSUVにはかなわないので車種数は以前に比べると随分減りましたが、世界的なニーズは高く決してこの手のクルマがなくなることはないでしょう。

なんといってもフレーム構造を持つこういった本格SUVはオフロードでの走破性や耐久性に関しては圧倒的な信頼性を持っています。アフリカのサバンナや紛争地、広大な砂漠などクルマの故障がそのまま死につながるような厳しい環境ではこういったクルマがなくてはならないのです。

そして国産ブランドの本格SUVの頂点がトヨタのランドクルーザー(ランクル200)で、その弟分ともいえるのがランドクルーザープラド(プラド)となります。

そのプラドの現行モデルは2009年にフルモデルチェンジし、直近では2017年にマイナーチェンジを受けました。兄貴分であるランクル200よりも一回り小さいですが、それでも全長4825mm×全幅1885mm×全高1850mmで車重は2トンオーバーなので十分大きいです。

本格SUVらしい無骨なデザインが特長で、エンジンも2.7Lのガソリンエンジンと、2.8Lのパワフルなクリーンディーゼルエンジンが設定されています。

グレードは最上級グレードでディーゼルエンジン専用のTZ-G、そしてベーシックグレードのTX、さらにTXに装備を追加したTX-Lパッケージに大きく3つに分かれます。TZ-Gは5人乗り専用ですが、TXやTX-Lパッケージは5人乗りと7人乗りが選べ、エンジンもディーゼルとガソリンが用意されています。つまり、特別仕様車を除くと全部で9つのグレードがあるというわけです。

グレード名 エンジン 乗員数 価格(税込)
TZ-G ディーゼル2754cc 7名 536万3,280円
TX Lパッケージ ディーゼル2754cc 7名 482万2,200円
TX Lパッケージ ディーゼル2754cc 5名 466万7,760円
TX ディーゼル2754cc 7名 430万7,040円
TX ディーゼル2754cc 5名 415万2,600円
TX Lパッケージ ガソリン2693cc 7名 420万2,280円
TX Lパッケージ ガソリン2693cc 5名 404万7,840円
TX ガソリン2693cc 7名 369万2,520円
TX ガソリン2693cc 5名 353万8,080円

安全装備などの重要な装備は
全グレードほぼ標準化


(引用:トヨタ公式HP

グレードによる違いですが、まず見た目に関しては基本的にはあまり変わりません。以前はヘッドライトがベースグレードと最上級グレードでLEDとハロゲンといった差別化がされていましたが、最新モデルではどのグレードもオートレベリング機能付きLEDで統一されています。

違いはホイールがTZ-Gのみ19インチで、他は17インチが標準(TX-Lパッケージはオプションで19インチの装着が可能)となっていること、またクロームのドアモールがTZ-GとTX-Lパッケージのみ装備となっています。ただ、選べるボディカラーなどは同じなのでよほど詳しい方でない限り違いはほとんどわからないでしょう。

次に内装に関してですが、ここは外観以上の差があります。シート表皮がTXのみファブリックで他は本革。またシートの電動パワー機能や快適温熱シート+シートベンチレーション機能もTXだけが装備されません。さらにオーナメントパネル(インテリアの装飾パネル)がTXのみブラックで他は木目調+金属調加飾となっています。豪華さや快適性という意味では差別化がなされているので、この違いは人によっては大きいかもしれません。

もし高級感を求めるならTX-LパッケージかTZ-Gが欲しいところです。TXはオプションでもこういった装備を追加することができませんから。ただ、プラドに対して高級感よりもワイルドさを求めるならあえて黒内装のTXというのも武骨で良いかもしれません。

気になる安全装備はトヨタセーフティセンスPが全車に標準装着されています。グレードによる差別化はありません。車間距離を自動制御できるレーダークルーズコントロールも全車標準です。電動センターデフロック機能もガソリンディーゼルとも全車標準です。

また、VSC(ヴィークルスタビリティコントロール)やアクティブトラクションコントロール、DAC(ダウンヒルアシストコントロール)やHAC(ヒルスタートアシストコントロール)といった安全運転やオフロード走行を手助けしてくれる装備もディーゼルモデルには全グレード標準装備です。残念ながらガソリンモデルにはアクティブトラクションコントロールなどが装備されません。この辺はディーゼルとガソリンで差別化されているので、ディーゼルエンジン搭載車のほうが魅力的に映ります。

本格的なオフロードの走行時に力を発揮するマルチテレインセレクト+クロールコントロールは最上級グレードのTZ-Gのみがオプション装着可能となっています。これは路面状況に応じた走行支援を、5つのモード(MUD & SAND/LOOSE ROCK/MOGUL/ROCK & DIRT/ROCK)から選択できるというシステム。

モードごとにスロットル特性やアクティブトラクションコントロールのブレーキ油圧を最適に制御して高い走破性を発揮してくれるというもの。どんな悪路にも対応できるとても凄い機能ですが、そこまでのオフロードを走る予定がないという方には持て余してしまいそうですね。

また、自分の腕で悪路を走破してみたい!という方にも余計な装備となるかもしれません。こうして各種装備を並べてみると、TX、もしくTX-Lパッケージのディーゼルエンジン搭載モデルのバランスの良さが光ります。

燃費パフォーマンスとも
ディーゼルエンジンが魅力的


(引用:トヨタ公式HP

では、肝心のエンジンに関してはどうでしょう。装備面ではディーゼルエンジン搭載車が魅力的でしたがパワーユニットそのもの魅力の点ではどちらが優れているのか?まずパフォーマンスです。
2.7Lガソリンエンジンのパワーは120kW(163PS)/5200rpmでトルクは246N・m(25.1kgf・m)/3900rpmです。対して2.8Lのディーゼルエンジンのパワーは130kW(177PS)/3400rpmでトルクは450N・m(45.9kgf・m)/1600~2400rpmとなります。

パワーの差はそれほどでもありませんが、トルクの差は圧倒的です。また最大トルク発生回転数もディーゼルは1600rpm~と低いのでオフロード走行では間違いなくディーゼルの勝ちでしょう。

そして気になる燃費に関してはガソリンエンジンが9.0km/L(JCO08モード)で、ディーゼルが11.8 km/L(TXおよびTX-Lパッケージ JCO08モード)となっています。

つまりディーゼルのほうが力もあって燃費にも優れているということ。燃料代も軽油のほうがガソリンよりも安いので経済的でもあります。このようにスペックで比較する限り、プラドの本命エンジンはディーゼルエンジンという結果になるでしょう。

オススメグレードは
TXディーゼルの5人乗り

ここまで装備やエンジンパフォーマンス、価格などを比べてみましたが、これらを総合的に考えた上で筆者がオススメするグレードはズバリ『TXディーゼルの5人乗り』です。グレードとしては最もベーシックなグレードです。

その理由は、まず見た目に最上級グレードと差がほとんどないこと。また必須の安全装備や走破性にかかわるメカニズムなどもほぼ標準装備されていて、価格も比較的手ごろ(プラドとしては)で非常にバランスが良いからです。

確かに装備満載のTZ-Gは魅力的ですが540万円近い価格はさすがに高すぎる。オススメのTXディーゼルの5人乗りより120万円も高い。これならクラスが一つ上のランクル200にも十分手が届くので、よほどこだわりがない限りはオススメできません。

そして7人乗りでなく5人乗りの理由はSUVの3列シートは荷室が狭くなるだけで実用性があまり高くないからです。緊急用として小さな子供くらいなら乗せられるでしょうが快適とはほど遠いスペース。なのでシンプルに5人乗りがベターでしょう。

エンジンは、パフォーマンス的にも燃費的にもディーゼルのほうが優れているのでおのずとこうなります。ディーゼルエンジン搭載車のほうが装備も充実していますし当然の選択です。

真ん中のグレードであるTX-Lパッケージも捨てがたいのですがその価格差は50万円以上。結構な差額です。それでもその装備に魅力を感じるなら、TX-Lパッケージのディーゼル5人乗りという選択もありでしょう。

唯一の懸念は、ディーゼルモデルはガソリンモデルよりも価格が高いということ。最も安いTXディーゼルの5人乗りですが、それでも415万2,600円です。同じTX5人乗りのガソリンモデルなら353万8,080円ですから約60万円の差。これは悩みどころかもしれません。

それでも、筆者は、プラドは本格SUVだからこそディーゼルモデルを選ぶべきだと考えます。ガソリンよりも人気も高いので手放す際のリセールバリューの面でも期待できますから。もちろん最後の決断はオーナーとなる方の好みや予算にもよるでしょうが、こういったことを、是非購入の際の一つの参考としてみてください。