大雪によるクルマの立ち往生が昨年末(2020年12月)から、年明けにかけて各ニュースメディアで大きく取り上げられました。道路管理側の見通しの甘さやドライバーの準備不足などが重なったことが原因なのでしょうが、長時間にわたって道路が封鎖となり、結果、年末年始の交通インフラに大きなダメージを与えることになってしまいました。流通にも影響が出て他の地域に商品が届かないなどということもあったようです。

今後もこのような雪によるトラブルはないとは限りません。気象現象は避けることができませんから我々にできるのは万が一を想定してできる限りの準備をしておくしかありません。

基本はスタッドレスタイヤやタイヤチェーンですが、他にもクルマのトランクに毛布やブランケット、厚手の上着やカイロ、長靴、手袋、携帯トイレにいざというときのための保存食も積んでおくのが良いかもしれません。

また、これらに加えて是非用意しておきたいものがあります。それはジャンプスターターです。なぜジャンプスターターが必要なのか?またそもそもジャンプスターターはどのように役立つのか、詳しくご紹介します。

通行止めで身動きが
できなくなったらどうすればいい?

大雪によるクルマの立ち往生は冬になると必ず日本のどこかで発生しています。天気予報で今後の雪に注意!とアナウンスされていても、大丈夫だろう、などと準備不足で出かけてしまうドライバーは必ずいるからです。そしてたった一台のクルマが道路上で身動きできなくなればそれだけで道路は通れなくなり、さらにそこに雪が降り積もって気が付けば、まわりのクルマも埋もれて何百台ものクルマが立ち往生ということになってしまうのです。

前にも進めず後ろにも引き返せない二進も三進もいかない状況に陥って大混乱という事態になってしまうのですね。もはやこういったトラブルは日本の冬の風物詩かもしれません。

自分はちゃんと高性能なスタッドレスタイヤを装着して、タイヤチェーンを用意していたとしても、このように自分以外のクルマが原因で道路が封鎖となった場合はどうにもなりません。そうなってしまったら後できるのは道路の通行止めが解消されるのを待つか、救助をされるのを期待することだけです。クルマの中でひたすら待つしかないでしょう。一酸化炭素中毒や、低体温症にならないように気を付けてできるだけ早い通行止めの解消を祈りましょう。

状況的には確かに厳しいですが、クルマにガソリンが十分あれば換気に気を付け、またマフラーが雪でふさがれないように定期的に除雪するようにしましょう。マフラーの出口が雪でふさがれてしまうと排気ガスが車体の下にたまりそれがエアコンから車内に侵入して一酸化中毒になる可能性があります注意してください。

そうならないように常に注意しつつとりあえず車内で暖を取ります。ガソリンタンクがいっぱいなら、丸一日アイドリングでエンジンをかけていても普通はタンクが空になることはありません。そしてエンジンがかかっていればヒーターによって暖を取ることができるので考えられる最悪のケース、低体温症などは避けることができるはずです。

また、長時間の立ち往生となれば、道路の管理者から食料や水などもなども提供してもらえる可能性があります。さらに一般道上なら周囲にコンビニがあるかもしれませんし、高速道路上ならSAやPAに一時的に避難できるかもしれません。トイレもそこが使える可能性があります。あとはとにかくスマホなどで情報を収集しつつ耐えること。そしていざ通行止めが解消となったらすぐにクルマが動かせるように準備しておくことをこころがけましょう。

長時間雪に低温の雪の中にいると
バッテリーが消耗してしまうことも

では、その準備とは何か?簡単です。その時(通行止めが解消されたら)が来たらクルマが確実に走り出せるように用意しておくことです。例えばようやく通行止めが解消されて、さあ、ようやくクルマを動かせる! となった時に、肝心のエンジンがかからないとなったら最悪です。せっかく通行止めが解消されても、あなたのクルマが原因で後ろに並んでいる他のドライバーに大きな迷惑をかけることになります。もちろん自分自身もすぐに脱出できず、つらい思いがさらに続くのですからたまりませんね。

ようするにバッテリー上がりに気を付けるということですね。ガソリンが十分あれば長時間のアイドリングは可能ですが、アイドリングでは実は十分な発電は期待できません。エンジンを止め、ルームランプをつけつつクルマのDC電源からスマホを充電なんてしていれば、バッテリーの放電がすすみ、気が付けばスターターを回すだけの電力が残っていなかったなどということもこういった緊急時には大いにあり得るのです。

バッテリーが新品なのであれば一日程度なら負担のかかる使い方でも問題ないかもしれません。でも、交換から2~3年経過しているバッテリーでは消耗が進み性能が落ちているケースが少なくありません。また、アイドリングストップ車専用のバッテリーなら、その寿命は1年半から2年と従来のバッテリーよりも短いのですでに消耗が進んでいる可能性があります。

何より気温の低い中でも長時間のアイドリングをしていればいずれにしてもバッテリーには大きな負担。バッテリー上がりを起こしてしまう危険性は非常に高いでしょう。

では立ち往生の現場でバッテリー上がりとなってしまったらどうすればいいのか?セオリーでいえば他のクルマに頼んで、ブースターケーブルを使いバッテリージャンプを試みるということになるでしょう。JAFや加入している自動車保険のロードサービスを利用するという選択もあります。ただいずれにしても救助してくれるクルマがなければどうにもなりません。そのような現場では交渉や手配に時間がかかるのはいなめませんね。

別の方法としては準備しておいた「ジャンプスターター」を使って自力でエンジンを始動するという方法もあります。そう、ジャンプスターターがあれば他のクルマに頼ることなく、バッテリーの上がったマイカーのエンジンを始動することができるのです。これなら時間を無駄にすることもなく周囲にも迷惑をかけずに済みます。そういったことも想定しておき是非常備をおすすめしたいのが「ジャンプスターター」なのです。

エンジンのジャンプスタートが可能な
大容量のモバイルバッテリー

ではこの「ジャンプスターター」とはいったいどういったアイテムなのか?簡単にいってしまえば、ちょっと大きめのモバイルバッテリーです。ようするにスマホなどの予備電源として多くの人が持っているあの携帯バッテリーの一種です。

スマホなどのモバイルバッテリーと違っているのは、ジャンプスターターがクルマのエンジンを始動させることのできるスペックを持っているということ。見た目は普通のモバイルバッテリーと変わりませんので、クルマのグローブボックスやセンターコンソールなどにも収納できるほどサイズもコンパクトです。

一般的なモバイルバッテリーとの違いはクルマのバッテリーにつなぐためのケーブルやクランプが本体に付属しているという点でしょうか。USB端子なども装備されていますし、普通のモバイルバッテリーとしてももちろん使用可能です。普段使っているスマホやタブレットなどの充電もできます。もし、ジャンプスタートとしての出番がなくても、車内で一晩過ごさなくてはならないというときには、クルマのバッテリーに負担をかけることなくスマホを思う存分充電できるのでその点でも大いに役立つはずです。

また、LEDフラッシュライトなどが備わっているものも少なくありません。夜間車外で何か作業(例えばチェーンの装着など)する際にも重宝するでしょう。とにかく大容量でいろいろ役立つモバイルバッテリーというわけですね。なんにせよクルマに常備しておけばいろいろと使えるというわけですね。

バッテリーにケーブルをつないで
クルマのスターターを回すだけ

製品によって多少の違いはありますがその使い方はとても簡単です。まずはジャンプスターターのバッテリー残量が十分か確認してください。ボタンなどを押すとLED表示などで充電量が確認できるはずです。充電量が十分あることを確認したら、ジャンプスターターに付属するケーブルを用意し、ボンネットを開けてクルマのバッテリー位置を確認します。

ブースターケーブルでバッテリージャンプを行う場合は、救援車のバッテリー位置を見極めてボンネットを突き合せなくてはいけないので面倒ですが、電源の供給元がモバイルバッテリーなら配線の取り回しなどにも融通が利きます。そういった点も便利ですね。

次にクルマのキーをOFFにします。そしてジャンプスターターに付属しているケーブルのクランプをクルマのバッテリーの端子につなげましょう。ほとんどのジャンプスターターはケーブルの接続間違い防止のためにクランプやケーブルなどが色分けされています。そして黒い側をマイナス端子に、赤い側をプラス端子に接続するようになっているはずです。

ケーブルをクルマのバッテリーにしっかりとつないだら、ボディなどにショートしないように注意しつつケーブルのもう一方の端子をジャンプスターター本体につなぎます。正しく接続できればLEDランプなどの表示が点灯するはずです。製品によっては通電の確認にボタン操作などが必要な場合もあるので、入手したジャンプスターターの説明書をよく読み確認してください。接続が完了し通電が確認出来たら準備はOKです

ジャンプスターターを接続した状態で、エンジンスタートボタンを押すか、クルマのキーを回してエンジンを始動させましょう。もし一度でエンジンが掛からなかった場合は続けて何度もスターターを回さずに間を20~30秒ほど空けて再度スタートを試みます。そしてエンジンが始動できたらそれでバッテリージャンプの作業は終了です。

ボンネットの側に戻りジャンプスターター本体からケーブルを抜きます。そしてケーブルのクランプをクルマのバッテリーから外しましょう。エンジンは止めずにあとは長らく閉じ込められていた雪で埋もれた路上から脱出するだけです。せっかく走れるようになったのに雪でスリップして事故などを起こしてしまっては最悪なので、慎重な運転をとにかく心がけて帰路につきましょう。

一度上がってしまった
バッテリーは必ず点検を行おう

なお、一度上がってしまったバッテリーはその後エンジン始動ができたとしてもダメージを受けている可能性があります。そのバッテリーが買ったばかりでないのなら新品のバッテリーに交換したほうが間違いありません。

もしまだ交換したばかりの新しいバッテリーなのであれば、一度ディーラーや修理工場でバッテリーの点検を受けましょう。そして場合によってはあらためて補充電してもらうといいでしょう。そして使用したジャンプスターターもいざというときのために充電を行っておいてください。またきっと役に立ってくれるはずです。

このように、ジャンプスターターを用意しておけば、大雪による立ち往生でバッテリー上がりをおこしてしまったという場合でも、自力でエンジンの始動が可能となるわけです。用意しておいて絶対に損はありません。

ただ、気を付けなくてはいけないのがジャンプスターターならなんでもいいわけではありません。排気量の大きなクルマの場合、エンジンのスタートに大容量のジャンプスターターが必要となることもあるので、自分のクルマにあったものを用意しておく必要があります。

ジャンプスターターは製品の吟味は必要(粗悪品も少なからず流通しているようです)ですが、ネット通販なら3,000円程度から購入可能ですし、ジャンプスタートに使う機会がなかったとしてもモバイルバッテリーとして使用することができます。一つ持っておいてもおそらく無駄にはならないはずです。クルマの常備アイテムとしてグローブボックスなどに是非一つストックしておくことをおすすめします。冬だけでなく夏場も電装品の使い過ぎでバッテリー上がりは起きやすいので、夏休みの帰省などの際にも一つもっておくと安心ですね。