春になるとやっかいなあいつがやってきます。そう花粉です。筆者もそうですが花粉症持ちにとっては憂鬱な季節が到来してしまいました。

正確な数はわかっていませんが、日本人の2人に1人が花粉症とも言われています。もはや国民病といっても過言ではありません。目に見えない小さな花粉が、あの長期間のつらい症状を引き起こすのです。

ただつらいだけでなくもしドライブ中に花粉症の症状がひどくなったらどうでしょう。重大な事故にもつながりかねません。甘く見てはいけない非常にやっかいなものなのです。

そんな花粉に対抗するには、車内の花粉対策が必須。地味で地道な努力こそがその症状を和らげてくれるのです。そこで今回は、花粉症なら是非やっておきたい簡単にできる車内の花粉対策について紹介します。

自宅で行っているように
クルマでも徹底的に花粉対策を

2021年は例年比で花粉は少な目とは言われていましたが、実際そのような実感はありません。筆者は比較的軽めの花粉症ですが、2021年も花粉症シーズンが始まってみるとやはり、しっかりと症状がではじめています。新型コロナのせいでマスクの常用が当たり前となっているため、多少はましとはいえやはりつらいものはつらいですよね。結局は季節が過ぎるのを待つしかないというのも厄介なところです。

花粉症の症状をできるだけ抑えるには、当たり前ですが花粉を極力取り除くことが肝心です。そのため、花粉症の方は家の中では加湿器や空気清浄機などを使用し、こまめに掃除をするなどして対策をしていることでしょう。シンプルですがそれが一番効果的ですから。

でも、意外に忘れがちなのが車内の花粉対策です。屋外から何もケアせず車内に乗り込めば当たり前ですが、密閉された車室内にたくさんの花粉が持ち込まれることになります。その花粉のせいで、もしドライブ中にひどい花粉症の症状がでて、続けざまのクシャミなどが出てしまえば、前が見えず最悪運転に支障をきたし事故につながることもあるでしょう。花粉症でない方には理解されませんが、花粉症というのは想像以上にやっかいなものであり運転するうえでは注意しなくてはならないものなのです。

そのようなことにならないために、やるべきことが車内の花粉対策です。車内に極力持ち込まず、また持ち込んでしまった花粉は素早く取り除く。また空気清浄機や加湿器などのアイテムを効果的に使用することも大切です。では具体的にどのようなことを行えばいいのか次のパートから詳しく解説していきましょう。

花粉症の原因は花粉!
自分が何の花粉症なのか把握している?

花粉症対策を実行する前に、まずは自分が何の花粉にアレルギー反応を起こすのか理解しておくことも重要です。花粉症の原因となる花粉にはいくつもの種類がありますが、中でも代表的なものが次の三つですが。それがスギ花粉、ヒノキ花粉、イネ花粉です。

やっかいなのは飛散時期がそれぞれ異なるということ。花粉症を引き起こす春の花粉の代表ともいえるスギの場合、その飛散時期はだいたい2〜4月ごろです。

そして、似たような時期に飛散するのがヒノキです。その飛散時期は3〜5月ごろ。スギとヒノキにアレルギー反応を持つ方は2~5月まで長い期間花粉症に悩まされることになります。

さらにイネ花粉の場合は飛散のピークが5~6月。スギ、ヒノキ、イネの花粉に対してアレルギー反応があると夏まで花粉症に悩まされることになるわけです。

周りに比べて自分は花粉症の症状がやけに長引くな? と疑問をお持ちの方はちゃんと調べると別の花粉にもアレルギー反応を起こしている可能性があります。一度病院でしっかりと調べてもらった方がいいでしょう。

●スギ花粉

日本中に植樹され多くの花粉症患者を悩ませているのがスギ花粉。だいたい2月から3月までが花粉のピークで大量に花粉を飛散させます。花粉の飛散距離が長い上に、関東地方では夏前の6月ごろまで花粉が飛散するので、関東に住む、症状の重い方は長期に渡って花粉症に悩まされることになります。症状はくしゃみや鼻みず、鼻づまりが中心で、目のかゆみや充血、皮膚が荒れることもあります。

●ヒノキ花粉

春になると飛散する花粉でピークは3月から5月となっています。特徴は花粉の量が多く、アレルギー反応を起こす方も多いということ。そして、スギ花粉症をお持ちの方の7割がこのヒノキ花粉にも反応するといわれています。

花粉症の症状が長く続く場合は、両方のアレルギー反応を思っていると思っていいでしょう。症状はスギ花粉症と同様ですが、スギとヒノキの花粉飛散が重なる時期に症状が特に重くなることがあるので注意が必要です。

●イネ科花粉

お米の稲の花粉ではなく、カモガヤ、ハルガヤ、オオアワガエリなどといった海外から輸入された牧草の花粉が花粉症を引き起こす原因です。雑草として日本全国に広がっているので日本全国で注意が必要です。

ただ、イネ科花粉はスギやヒノキと違って草の花粉のため、遠くまで飛ばないという特徴があります。飛散範囲はだいたい数10m程度です。近づかなければあまり影響をうけないとされています。

5月から夏前にかけて多く飛散するという特徴があるので、イネ科花粉にアレルギー反応を起こす方は、雑草の生えている野原などに極力近づかない方が良いでしょう。また庭に雑草が生えているなら、除草など早めに処理しておきましょう。

新型コロナの問題があるし、花粉症ぐらいなら…。と病院に行くのをためらっているという方もいると思いますが、微熱やくしゃみなどの症状は新型コロナが原因となることもあります。そのため症状がひどくなった際にどちらなのか判断できないということが起こるかもしれません。そのせいで正しい処置が遅れて重症化してしまったら最悪です。早めに病院で検査を受けるようにしてください。

花粉症によるくしゃみや目のかゆみで、無意識に鼻や目を触れば、かえって新型コロナウイスに感染してしまう危険性があります。早めに検査をして、アレルギーであれば症状を軽減するためも適切な治療を受けるのがベストです。

クシャミが原因で事故が起きた例も
甘く見ずに早めに対策を行おう

花粉症の方が、シーズン時期にクルマを運転する際、気を付けなくてはいけないのがクシャミです。クシャミは花粉症の代表的な症状の一つ。そして我慢しようと思ってもふいに出てしまうものです。

もし運転中に、クシャミが出てしまったらどうなるか。ほとんどの人がその瞬間に目をつぶってしまうでしょう。そしてそんな時にもし前のクルマがブレーキを踏んだらどうなるでしょうか。また車道を渡る人がふいに現れたら。いうまでもなく事故につながってしまうでしょう。

クシャミが原因で交通事故? なんて思うかもしれませんが、過去にくしゃみが原因とされる死亡事故が実際に起きています。2017年4月、愛媛県今治市で男性が運転する乗用車が花粉症による連続したクシャミなどが原因で対向車線にはみ出し、軽乗用車と正面衝突。軽乗用車の男女3人が死傷したといった事故です。たかがクシャミですが、クルマの運転中は非常に危険なものなのです。

特に花粉症のクシャミは出はじめると止まらなくなることも少なくありません。もし、車内の花粉ケアが十分でなく、そのクルマの車内に花粉が舞っていればそのようなことが起きる可能性は間違いなくあるでしょう。

では、車内の花粉対策はどのようなことを行えばいいのか。それは次の3つです。

  • ●花粉を車内に持ち込まない
  • ●車内への花粉の侵入を極力防ぐ
  • ●侵入してしまった花粉を除去する

非常に単純なことですが、やるとやらないでは大きな違いがあります。

エアコンのクリーンエアフィルターは
1年に1回は交換しよう

まず「花粉を車内に持ち込まない」ためには車に乗り込む前に、衣服に付着した花粉を乗り込む寸前に極力落とすようにしましょう。花粉が付着しやすいとされているウール製の衣服はさけたほうがいいかもしれません。

また衣服にあらかじめ静電気防止スプレーを吹き付けておくと落としやすくなります。さらに、上着などを花粉が付着しにくく、落としやすいナイロンやポリエステル系にしておくのもオススメです。

落とし方は手で丁寧に叩き落とすだけです。粘着テープ型のホコリ取りをクルマに用意しておいてそれを使うのもいいでしょう。

次に「車内への花粉の侵入を極力防ぐ」方法は、運転中は極力窓を開けないようにするだけです。自然の風ではなくエアコンで車内の温度をコントロールして下さい。

トヨタ車やレクサスなどの車両のエアコンには花粉除去モードスイッチが搭載されているものもあります。このスイッチをONにすると、クリーンエアフィルター(後述)を通った花粉のないきれいな空気を顔の付近に吹き出して、ドライバーの顔の周囲に付着した花粉を除去してくれます。もし搭載されている車両の乗られているのならこちらも積極的に使いましょう。

エアコンを使用する際は、以前は花粉対策には内気循環で使用するのが良い、とされていましたが、今はエアコンに花粉をろ過してくれるクリーンエアフィルターがついているので外気導入のままで構いません。

外気を車内に入れないように長時間内気循環のままにしていると車内の空気が汚れ、酸素も不足し眠気をもよおすこともあります。内気循環のままエアコンを使い続けるのは花粉の時期でなくても避けた方が良いでしょう。

気を付けなくてはいけないのがフィルターの詰まりです。クルマのエアコンのフィルターも家庭用のエアコンと同様経年で徐々に詰まってきます。すると、ろ過機能も低下してしまいますので、定期的に交換しましょう。できれば一年に一度、花粉シーズンに突入する前に交換するのがおすすめです。

エアコンフィルターはディーラーなどで購入可能ですがネット通販でも簡単に購入できます。社外品の中には強力な花粉フィルター機能をうたったものもあるのでそちらをつかうのもよいでしょう。

フィルターの交換は簡単なのでDIYでの交換がおすすめです。消耗品ですのでカーリース車であってもDIYで交換することに問題はありません。ただ交換の際にグローブボックスなどを破損してしまった場合はその限りではありませんので自信のない方はディーラーやカー用品店にお願いしてください。

花粉対策はマメに掃除をすることが肝心
隅や荷室、天井も見逃さずに!

「侵入してしまった花粉を除去する」方法は簡単です。掃除をすればいいのです。どんなに気を付けていてもスギやヒノキ花粉は直径30~40μm(1μmは1mmの千分の1で0.001mm)と非常に小さいため、車内に侵入してしまうものです。目には見えませんがフロアマットやシート、ダッシュボードや天井のファブリックの奥にやっかいな花粉は入り込みます。これを掃除によってしっかりと取り除きます。

車内用のマイクロファイバーモップなどでまめに拭き取るというのも有効ですが、花粉は粘着力があるうえペクチンと呼ばれる成分を含んでいるため張り付きやすいという特徴があります。そのため取り除くには強力な掃除機で花粉を吸い取るのが一番です。

使用する掃除機は、近くにコイン洗車場などあればそちらの業務用のものを使うのがいいでしょう。ない場合は家庭用の掃除機を使ってください。最近は充電式でもパワフルな掃除機があるのでそちらを使うのがいいでしょう。ただし、車載用の安価なシガーソケット式掃除機はおすすめしません。吸引力が弱く花粉を効果的に吸い取ることはできません。

掃除機は、シートやシートの隙間、フロアマットだけでなく、ダッシュボードやドアポケットの隙間、また天井部分にもしっかりかけてください。また、ミニバンやSUV、コンパクトカーなどのハッチバック車は荷室とキャビンスペースがつながっているのでラゲッジスペースもしっかり掃除しましょう。

掃除機をかけた後は固く絞ったウエスで水拭きをするか、車内用のお掃除シートなどを使って残った花粉を拭き取るようにしてください。できるだけまめに掃除することでかなりの花粉を取り除くことができるはずです。

花粉対策に合わせて除菌対策として
専用クリーナーで拭き掃除

掃除した後は、新型コロナ対策の一環として、ついでにハンドルなどのよく手の触れる部分を消毒用アルコールなどで拭いておきましょう。また、最近はクルマ専用のカーケア用品で除菌効果も期待できるものなども販売されていますのでそちらを使うのもいいでしょう。それがこちらソフト99の「ルームピア ウォッシュミスト」です。

参考サイト:https://www.soft99.co.jp/products/detail/02182/

スプレータイプのインテリアクリーナーで、スプレーして拭き取るだけで手アカやタバコのヤニ汚れ、花粉などを落とすことができるというものです。

また、この製品は新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性が確認されている界面活性剤が配合されているので、新型コロナ対策にも役立ちます。レザーシートなどには使用できませんが、手軽に使えて汚れが落ちてなおかつ除菌効果も期待できるので車内に常備しておくのもよいでしょう。

ただし、保管の際は直射日光が当たる場所や凍結する場所、温度が40度以上になる場所避けてください。暑い時期は車内でなく自宅で保管するようにしてください。

空気清浄機やナノイー発生機で
車内の空気をきれいにする


(引用:パナソニック公式HP)

さらに万全を期すなら、クルマ用の加湿器や、空気清浄器などを使うのもいいでしょう。ディーラーオプションなどで空気清浄機が設定されている場合はそちらを装着するのもいいでしょう。購入後やリース車の使用開始後であれば、カー用品店などで販売されている市販の空気清浄機や加湿器を購入して車内に設置することも可能です。

また車載用エアコンへの搭載も進んでいる、ナノイーも花粉に効果的ともいわれています。ナノイーは水に高電圧をかけることで生成されるナノサイズの帯電微粒子水のことでこれを空気中に放出すると花粉やウイルス、においのもとに吸着してその働きを抑制することができるといいます。そのため車内浮遊する花粉に対しても効果的で、花粉アレル物質のタンパク量を低減させる効果があるそうです。

もしご使用のクルマのエアコンにナノイー機能が搭載されていなくても車載用のナノイー発生機というものが売られているのでこちらを使ってみるのもよいかもしれません。パナソニックナノイー発生機「F-GMK01」です。

参考サイト:https://panasonic.jp/nanoe_h/products/f_gmk01.html

車載専用のものなのでコンパクトサイズで、カップホルダーなどに設置することができます。また電源もシガーソケットからとるだけなので簡単。ナノイーは花粉だけでなくウイルス等を抑制する機能もあるそうなので、車内の除菌対策の一環として使用するのもよいでしょう。

ここまで気を配れば花粉症の症状もある程度抑えることができるはずです。それでもクシャミや鼻水が止まらない! という場合は素直に薬を飲むしかないかもしれません。

アレルギーを抑える薬を飲んだら
クルマの運転は極力避けるべし

ただし、花粉症のアレルギー症状を抑える薬を飲んだ際は、運転を極力避けるようにしてください。花粉症は花粉などのアレルギーの原因物質が体に入ることで体の中で「ヒスタミン」という物質がつくられ、それが鼻などの粘膜にある「H1受容体」に結合しクシャミや鼻水、鼻詰まりといった症状を引き起こします。つまりこのヒスタミンの働きを抑えればアレルギー症状を軽減できるということになります。そのため花粉症の症状を抑える薬としてヒスタミンの働きを抑える「抗ヒスタミン薬」がよく用いられます。

抗ヒスタミン薬はとても効果的なのですがその副作用として眠気があり、人によっては服用することでかなり強い眠気を生じることがあるのです。

さらに抗ヒスタミン薬は脳の活性化を抑える働きももっているため運転中は判断力が低下してしまう可能性もあります。眠気があって判断力の落ちた状態で運転することの危険性は説明するまでもありませんね。過去に抗ヒスタミン薬を服用して眠気に襲われた経験があるなら、薬を飲んだら運転をしないのが賢明でしょう。

最近は眠気を抑えた抗ヒスタミン薬などもありますが、それでも眠気の発生をゼロにできるわけではないので、くれぐれも気を付けてください。

花粉症のシーズンでもどうしても運転が必要という場合は、抗ヒスタミン薬を飲むのではなく、症状が強い時だけクルマを停め、症状を軽減してくれる点鼻薬や点眼薬を使うのがおすすめです。もしくは家族に運転を変わってもらったり、素直に公共交通機関を使うのが間違いないでしょう。

たかが花粉症ですが、アレルギー症状がひどい場合、花粉症が原因で前述したような大きな事故やトラブルに見舞われることもあります。くれぐれも甘くみず、症状がひどい場合は早急に病院で検査を受けるようにして下さい。