冬となれば雪が降るのは日本では当たり前のことですが、今シーズン(2022年末)は、例年以上の大雪となっています。日本全国で記録的な大雪となり、停電などによって社会生活に大きな影響が出ています。そして、その雪のせいで数多くのドライバーも大きな被害を受けています。

例えば、走行中の道路が通行止めとなって長時間にわたる立ち往生に巻き込まれたり、普段通勤や通学に使っている生活道路が使えなくなったり。中には急な大雪で駐車スペースが雪に埋まり家からクルマが出せなくなってしまったという方もいるようです。

さらに、停電で自宅の暖房が使えなくなった方が、クルマの中で一晩過ごそうとした結果、一酸化炭素中毒にとなってしまうという不幸な事故も起きています。雪は見た目にはきれいなものですが、極端な大雪はこのように様々な被害をだしてしまう危険なものなのです。

今シーズンは降雪地域でない場所でも大雪となっているので、私たちも、油断しているといつそのような雪による被害にあうかわかりません。ウインターシーズンは雪によるトラブルへの備えをしておいた方が良いでしょう。

では、どのような対策を取っておけばいいのか? 用意しておくべきものは何なのか、今回はそんな雪道を走る際の心得についてご紹介します。

ホワイトアウトで前が見えない!
そんなときどうするのが正解?

ホワイトアウト

走行中に天候が急変し、雪が吹雪となって視界がホワイトアウト。そして身動きができなくなり、渋滞が発生、立ち往生となってしまう。そんなことが今シーズンすでに様々な場所で起きています。2022年12月20日には新潟県の国道8号線で、記録的な大雪による立ち往生が発生しています。新潟県は県内では、この影響で2人が死亡し、5人の重軽傷者が出たと発表していますからかなりの被害です。

これらの被害は、立ち往生していたクルマの車内で起きたものではないようですが、停電となり暖を取るためにクルマのヒーターで一晩過ごした方が、一酸化炭素中毒によって命を落とすという被害も出ています。

つまり、立ち往生に巻き込まれたドライバーたちも同じような危険にあったことには変わりありません。こういったことはいつ何時私たちのみに降りかかるかわかりません。特に今シーズンは普段雪の降らないような地域でも記録的な大雪となっています。油断はできません。

では、クルマを運転中にこのような突然の吹雪や大雪に巻き込まれてしまったら、どうすればいいのでしょうか。そもそも運転中に吹雪が発生した場合、そのまま走行し続けてもが良いものなのでしょうか。

避難する場合は吹き溜まりなどに
突っ込まないように慎重な運転を

避難する場合

もし、まだ通行止めとはなっておらず、ノロノロでも車の列が動いているようならできるだけ早く移動でして避難するべきです。しかし、前が全く見えないようなひどい吹雪であれば、そのまま無理して運転を続けるのは避けたほうがいいでしょう。ハザードランプを付けてクルマを停めましょう。

吹雪が収まるのを待って周囲にホームセンターやコンビニやガソリンスタンド、道の駅などがあればそういった場所にクルマ移動させて、しばらく天候が回復するのを素直に待つのが得策です。その際、周辺の施設に移動する際に吹雪のよって雪の吹きだまりなどができていますし、側溝なども見えなくなっているはずなので、不用意にそういったものに突っ込まないように慎重な運転が必要です。

無事避難できたけれど、雪がやまない、となったらクルマを降りどこか別の場所に避難したほうが良いかもしれません。しかし、それはある程度吹雪が収まり視界が確保できる場合です。吹雪が続いているなか、視界の悪い車外に出るのはかえって危険な場合もあります。その場合は車内で待機するしかありません。

車内に待機となった場合ですが、気を付けなくてはいけないのが車内に閉じこめられてしまわないようにすることです。極端な大雪の場合、クルマが雪で覆われドアが開かなくなってしまうなどということもないとは限りません。いつでも脱出できるよう、周囲を確認しながら救援を待ちましょう。

雪の中の立ち往生では
一酸化炭素中毒に注意しよう

雪の中の立ち往生

救援を待つとなったとき注意しておかなくてはいけないのがクルマの排気ガスです。クルマが雪に覆われ、マフラーが雪でふさがれると、排気ガスが車内に逆流して一酸化炭素中毒になってしまうこともあるのです。毎年それが原因で死亡事故も起きています。

クルマには排気ガスから一酸化炭素などの有害物質が発生しないようにマフラーに触媒が取り付けられています。しかし、気温が低い状態が続くと熱を必要とする触媒が正しく機能しなくなり一酸化炭素が発生してしまうのです。

マフラーからの一酸化炭素は、開けた場所であれば問題はありませんが、クルマの周囲が雪で囲まれていればクルマの隙間から車内へ入り込むことがあります。そして車内に充満し最悪ドライバーが一酸化炭素中毒となってしまうのです。

雪の中、車内で救援を待つ場合、雪でマフラーがふさがれていないか定期的に確認しましょう。もし雪で出口がふさがりそうなら、すぐに掘り返して排気できるスペースを確保します。そして、これを雪の状態を見ながら定期的に行います。また、ヒーターを使い車内の温度が下がりすぎないようにしましょう。

マフラー付近の雪を取り除くのはもちろん重要ですが、1時間に1回は窓を全開にして換気することも心がけましょう。一酸化炭素だけではなく、呼吸によって発生した二酸化炭素をクルマの外に出すのです。

さらに、長時間エンジンをかけたままにしておくのであれば、ガソリンの残量にも注意が必要です。アイドリング状態でヒーターを使っているだけでもガソリンは時間とともに減っていってしまいます。では実際のところアイドリングだけでどれくらいガソリンを消費するものなのでしょうか。

アイドリングをしているだけで
10分で約130㏄のガソリンが消費される

10分で約130㏄のガソリンが消費

省エネルギーセンターによると、2000ccのクルマが10分間アイドリング(エアコンオフ状態で)した場合130ccのガソリンを消費するということです。これはエアコンOFFのデータですので、エアコンをONにすればさらに多くのガソリンを消費することになるでしょう。

クルマには何十リットルものガソリンがあるはずだから、130ccならたいしたことない、と思ってしまいますが、そのアイドリングが何時間も続くとなればどうでしょう。例えば、前述の2000㏄のガソリンエンジン車が、一晩(12時間)、アイドリングし続けると、計算では15リットル以上のガソリンが消費されてしまうことになるのです。

満タン状態であれば、まだ大丈夫かもしれませんが、燃料タンクは常に満タンであるとは限りません。一晩エンジンをかけ続けていた結果、ガソリンがなくなり吹雪がおさまっても身動きができなくなってしまったでは困りますよね。

こういったケースでは、常にガソリン残量に気を配っておくことが必要です。アイドリングをし続けるのではなく、我慢できるならエンジンを切ってガソリンの消費を抑えるということも必要でしょう。

なかなか難しいですが、雪道の走行をしなくてはならないとなった際にはガソリン携行缶(セルフのガソリンスタンドでは給油できないので今は簡単に用意するのは難しいかもしれません)や、ガソリンの缶詰(https://gaso-can.com/)など、別途燃料を確保しておくべきかもしれません。

車内の防寒対策に防寒具や
毛布などを用意しておく

車内の防寒対策に防寒具や毛布などを用意

車内で救援を待っている間、クルマの暖房が使えればいいですが、もしすでにクルマの後部が埋まりきってマフラーが雪でふさがり、取り除くのが難しいとなったらエンジンは停止するしかないかもしれません。

エンジンを切ると暖房が使えないので車内の温度も急激に下がってしまいますが一酸化中毒のリスクを考えると、命の危険にはかえられないでしょう。ただ、今度は車内温度の低下が大きなリスクとなります。

吹雪となっているような低温の中、エンジンを停止させると、車内の温度は想像以上に急低下します。JAFの実験では、外気温が約-10℃で車内温度が約25℃の場合、エンジン停止と同時にヒーターを停止させると、わずか1時間後には車内温度は約15℃も低下し、3時間を経過する頃には氷点下にまで下がったとのこと。

そんな状態の車内で、長時間過ごせば、体温が急激に下がってしまいます。人間は約35℃まで体温が低下すると「低体温症」となる可能性が高まります。さらに体温が約30℃まで下がると身体の血液が滞る「末梢循環不全」が発生し命を落としかねません。大変危険なのです。

しかし、一酸化炭素中毒のリスクや、燃料の節約を考えると、エンジンを切らざるおえないこともあるでしょう。そのようなこともあり得るので、エンジンを切った状態でも体温の低下を抑えることができるように防寒具や身体に貼り付けるタイプの使い捨てカイロ、毛布や寝袋(できれば人数分)などを車載しておくと安心です。

いざというときのために飲み物や
食べ物なども用意しておくのがベスト

飲み物や食べ物なども用意しておくのがベスト

長時間車内で救援を待たなくてはならないとなったら、防寒対策だけでなく、飲み物や食べ物のことも考慮しなくてはいけません。狭い車内に長時間いると、エコノミークラス症候群の危険もありますが、こまめな水分補給はエコノミークラス症候群の予防にもつながります。車内には少なくとも水は確保しておくべきでしょう。

周囲にコンビニなどがあればいいですが、そうでない可能性もあります。クッキーやチョコでもいいですがちょっとした食べ物などもあると助かるはずです。また、最近はクルマ用の防災セットというものも売られています。

Honda純正アクセサリー防災安心セット:https://www.honda.co.jp/ACCESS/emergency/bosai_anshin/

こういったものには飲料や保存食も含まれているのでそれを常備しておくというのが賢明かもしれません。

さらに、意外な盲点がトイレです。大雪で立ち往生するような環境であれば、周囲に公衆トイレがあるという可能性は正直あまり高くないでしょう。簡易トイレもあると助かります。防災セットに含まれていますが、人数分別途準備しておくことをおすすめします。

他にもモバイルバッテリーも必須です。車内で情報収集するにはスマホが欠かせませんが、バッテリーには限りがあります。クルマのバッテリーからスマホに充電することも可能ですが、クルマのバッテリーに負担をかけるといざクルマを発進させるとなったときにスターターが回らなくなってしまう可能性があります。スマホ用の電源は別途確保しておいた方がいいでしょう。

おすすめはモバイルバッテリー型のジャンプスターターです。バッテリーが上がってしまった場合、これをつなぐとエンジンを始動できるというアイテムですが、普段はモバイルバッテリーとして使用できるので、こちらを用意しておくのがベストでしょう。大容量ですし、バッテリー上がりの際にも非常に役立ちます。普段からクルマに常備しておいて損はありません。

念のため、ブースターケーブルも用意しておくと安心です。ジャンプスターターのバッテリーを使い切ってしまう可能性もありますし、ブースターケーブルがあればそんなときにも周囲のクルマに救助してもらうこともできます。また、逆にバッテリー上がりで困っているほかのクルマを助けることもできるでしょう。

牽引ロープもあるといざというときに役立ちます。スタックして動けなくなったときに他のクルマにけん引してもらって脱出ができます。また、他のクルマを助けることができるかもしれません。牽引ロープですが、できれば、どこに装着するのか、正しい使い方はどうなのかなど使い方の予習もしておきましょう。雪の中作業がもたつくと体力が奪われるので気を付けてください。

冬場のドライブで大雪に備えて
用意しておくべきものは

冬場のドライブで大雪に備えて用意しておくべきもの

では、雪の中でも立ち往生など様々なリスクに考えて、ウインターシーズンの車内に、備えておいた方が良いものとは具体的にどのようなものなのか、以下にまとめてみました。

■雪道走行と脱出に役立つもの

  • ●タイヤチェーン
  • ●牽引ロープ
  • ●ブースターケーブル
  • ●ジャンプスターター(モバイルバッテリー)
  • ●スコップ
  • ●スノーブラシ
  • ●スノーヘルパー
  • ●軍手や手袋
  • ●長靴

■防寒に役立つもの

  • ●防寒着
  • ●毛布
  • ●寝袋

■車中泊となった場合役立つもの

  • ●使い捨てカイロ
  • ●飲料
  • ●食べ物
  • ●簡易トイレ

全てのアイテムを積んでおくのはスペースを取ってしまいますが、タイヤチェーンは必須として、軍手と長靴、ジャンプスターター、飲料くらいは積んでおいた方が安心です。

降雪地域にクルマで出かける予定があるなら
立ち往生に巻き込まれないように準備を欠かさずに

降雪地域にクルマで出かける予定

今回は大雪のせいでクルマが動けなくなる立ち往生について、解説してきました。こういったトラブルはいつ自分に降りかかるかわかりません。また、その立ち往生の原因が動けなくなってしまった自分のクルマだったら最悪ですね。そうならないように備えは欠かさないようしてください。

さらに冬場の運転はこういったリスクがあるということも頭に入れておき、気象情報や交通情報に注意し、大雪が降る日は、できるだけクルマでの外出を控えるという決断も必要です。最悪のケースも考えて、冷静な判断と行動を心がけてください。