猛暑日が続く今年の夏。こんなに暑いとついついおでかけも徒歩や自転車ではなくエアコンの効いたクルマを使いがちです。近くのスーパーまでお買い物ぐらいなら歩きでいいかな? なんて家を出てみたらまるでサウナのような暑さ、こんな灼熱のなか歩くことを考えるとやっぱりエアコンが使えるクルマにしようかな、なんて気持ちになってしまうのも理解できます。

猛暑日がもはや当たり前という昨今のとんでもない気温の高さを考えると、夏にクルマの使用頻度が高くなってしまうのはもはや仕方がないことでしょう。ただ、気温の高いなかクルマの使用頻度が高くなるということは、クルマにも相当なストレスがかかっているということも理解していますか。特に気を付けるべきなのがタイヤです。タイヤの空気圧や磨耗度合いの確認、していますか? 

夏休みシーズンは、近所への買い物などのほかにも実家への帰省やキャンプなどのためにドライブに出かけるなどといったクルマで長距離を走行する機会もきっと増えるはずです。でも、そんな特に限って起こりがちなのがトラブルです。もし出かけた先でタイヤになんらかのトラブルがあったらどうでしょう。それでパンクであった場合非常にそれもかなりのピンチですが、それ以上に危険なのがタイヤバーストです。タイヤバーストとはタイヤが突然風船のように破裂してしまうというトラブルのことです。

めったに起きるものではありませんが、もしそれが高速道路の走行中などに発生してしまうと非常に危険です。走行中いきなクルマのりコントロールを失い、ほかのクルマや側壁に衝突するなどといった重大な事故につながりかねません。そんなタイヤバーストは気温の高い夏に起こりやすいといわれています。ではなぜタイヤバーストが起きてしまうのか、タイヤバーストを起こさないようにするにはどうすればいいのか、詳しくご紹介します。

タイヤバーストとは
どういったものなのかなぜ危険なのか

タイヤバーストとは

そもそもタイヤバーストとはどういうものなのか。簡単にいってしまうと、クルマが走行中に突然タイヤが破裂してしまう現象です。タイヤは皆さんご存じだと思いますがタイヤは内部に圧力がかかった空気が満たされています。ちょうど風船などと同じように。つまり常に内部から外側に向かったタイヤには圧力がかかった状態です。その空気がクッションとなって路面からの衝撃を吸収し、快適な乗り心地と静粛性を我々に提供してくれています。

タイヤは風船のようなものと書きましたがタイヤは単にゴムでできた袋ではありません。その骨格は金属(ピアノ線など)でできたビードワイヤーや、タイヤの骨格に当たるポリエステル、ナイロン、レーヨンなどで補強されたカーカスで形成されています。つまり非常に高い強度を持っています。そのため内部から高い圧力がかかっても空気が漏れることもなくタイヤの形を保っていられるのです。

しかし、なんらかの問題でその骨格であるカーカス部が損傷を受けてしまうとどうなるか。タイヤは構造を保てなくなりまるで風船が破裂したかのように粉々に破裂してしまうのです。つまりそれがタイヤバーストです。

タイヤのトラブルといえば、パンクがまず頭に浮かびますがタイヤバーストとパンクの違いは、パンクが徐々にタイヤの空気が抜けていくのに対して、タイヤバーストはタイヤが破裂してタイヤが原形を保てなくなり一気に内部の空気がすべて抜けてしまうことです。バーストが起こると大きな破裂音がして、いきいなりコントロールを失います。タイヤが粉々になっているので当然ですね。

高速道路走行中にタイヤバーストが起きれば
命にかかわる重大な事故になる可能性も

高速道路走行中にタイヤバースト

ちなみに筆者は過去にタイヤバーストの経験があります。それはクルマではなくスクーターでしたが、走行中にバンッ!と大きな音が響き渡り、いきなりスクーターが大きく左右に振られ転倒しそうになりました。その時は速度が低かったため事故にはつながりませんでしたが、運が悪かったら命に係わる重大な事故になった可能性もあります。それ以来タイヤの空気圧やコンディションのチェックは常に念入りに行っています。

筆者の場合は速度の低い一般道でのバーストだったので大事に至りませんでしたが、もし、それが高速道路の走行中などに起きれば、いうまでもありません。命に係わる重大な事故になる可能性があります。例えば先日の7月8日、大阪と和歌山を結ぶ阪和道でトラックが単独事故を起こし、車体がさかさまになるという大きな事故がありました。その原因はタイヤのバーストだったそうです。幸いドライバーの命に別状はなかったとのことですが、状況によっては死亡事故となってしまう可能性もありました。とても危険なのです。

タイヤバーストは外的要因で起きることもありますが、ドライバーの不注意が原因で起こることも少なくありません。特に気温の高くなる夏場に発生しやすいとされています。この夏やシミのシーズンに万が一でもそんなことにならないようにドライバーは常にタイヤに注意しておかなくてはいけないのです。注意してタイヤの点検を行っていれば防げるタイヤバースト事故もあるのです。

タイヤバーストはなぜ起きてしまうのか
夏に起きやすいというその理由とは

夏に起きやすいタイヤバースト

ではそんな危険なタイヤバーストはなぜ起きてしまうのでしょう。また夏場に発生しやすいというその理由は何なのでしょうか。タイヤバーストの原因とされていることにはいくつかあります。それが、タイヤの空気圧低下、気温の極端な上昇、タイヤの劣化、タイヤの傷そして荷物の積みすぎです。それぞれの要因を詳しく解説しましょう。

タイヤの空気圧の低下が
タイヤバーストの原因になることも

タイヤの空気圧の低下

タイヤの亀裂や磨耗状態、溝の深さや空気圧などといったことを点検(日常点検や定期点検)することはドライバーに義務付けられています。タイヤの空気圧不足は、乗り心地の悪化や燃費の低下などにつながりますし、定期的に点検していれば磨耗や傷といったリスクを引き起こしかねないトラブルを未然に防ぐことができます。そしてタイヤの空気圧の低下はタイヤバーストを引き起こす原因にもなりますので、特に注意が必要です。

なぜ空気圧が低下したタイヤはバーストが起こりやすくなるのか、それは空気圧の低下したタイヤで、高速道路などタイヤへの負荷が大きくなるような条件での走行をした場合に、タイヤの表面が波状に変形する「スタンディングウェーブ現象」が発生することがあるからです。

タイヤは路面と設置しており常にクルマの重量を支えています。そのため車両重量分の負荷がかかっており、空気圧が正常値でも通常は少し潰れた状態にあります。もし、タイヤの空気圧が低下していると、その潰れた部分のたわみが必要以上に大きくなりそのような状態で高速道路など高い速度を出して走行を続けると、そのたわみが多重に起こって、タイヤ表面が波打った状態になってしまうのです。

その状態で走り続けるとタイヤが加熱されて、タイヤコードと呼ばれるタイヤの補強材が破損、タイヤは構造を維持することができなくなりバーストを引き起こしてしまうことがあるのです。タイヤ空気圧の低下は非常に危険なのです。

夏場の気温の急激な上昇も
タイヤバーストの原因になる

タイヤバーストの原因

また、タイヤの空気圧をキチンと正常値に管理していても、バーストが発生することがあります。その原因の一つとされているのが夏場の高温です。空気は温度が高くなると膨張する性質があります。今年の夏のような気温が極端に高い状況で、高速道路などタイヤのへの負荷が大きくなる走行を続けると、高い気温に加えて、地面との摩擦熱によってタイヤ内部の温度が急激に上昇してタイヤ内部の空気が膨張、そして、タイヤ内部から過剰な圧力がかかり、その圧力に耐えられなくなってタイヤがバーストしてしまうこともあるのです。

高速道路を走行する際は、以前は空気圧を少し高めにしておくと燃費が向上しスタンディングウェーブ現象も起きにくくなるので良い。と以前は言われていました。しかし、現在はタイヤの品質が向上したこともあって、空気圧は指定された数値に保つのが正しいとされています。タイヤの空気圧が高すぎると、夏場の気温が高い状況ではタイヤ内の圧力が過剰に高くなりバーストなどのトラブルの危険性があるので、高速道路を走行する前も空気圧は適正値に保つようにしましょう。

タイヤの亀裂やコンパウンドの劣化も
バーストが起きる原因の一つ

タイヤの亀裂やコンパウンドの劣化

タイヤの劣化もバーストの原因になります。タイヤコンパウンドが劣化していれば強度が当然落ちるので、圧力に耐えられなくなりバーストが起こりやすくなります。そもそもタイヤはゴムでできているので、紫外線や熱の影響などによって徐々に劣化していくものです。劣化すると本来のゴムの持つ弾力性は低下していき、表面にひび割れが起きて亀裂などが入りやすくなってしまいます。

タイヤは風船と同じですので傷のある風船を膨らませれば割れてしまいますよね。タイヤに亀裂がある状態で走行を続ければ言うまでもありませんが、そんな風船と同じでタイヤが破裂してしまうタイヤバーストが起きる可能性が高まります。

また、目に見る亀裂や傷がなくてもタイヤの使用年数が長いと内部で劣化が進んでいる可能性もあります。タイヤの耐用年数は最長で10年とされているので、溝が残っていてもタイヤが古くなっていたら早めに交換しておくことが賢明です。

縁石などに乗り上げてタイヤにダメージがあると
バーストが起きやすくなる

縁石などに乗り上げてタイヤにダメージ

劣化だけでなくタイヤに外部からのダメージがあった場合もタイヤバーストは起こりやすくなります。路上の落下物を踏んだり、路肩の縁石などにタイヤを激しくぶつけたりするようなことがあるとタイヤは損傷を受け、走行中にタイヤがバーストすることがあります。

タイヤへのダメージは受けた直後には問題が発生しないこともあります。縁石などに接触した直後は問題なく走行がでても、ダメージがタイヤ内部にまで伝わりカーカスなどを損傷してしまっていた場合、徐々にタイヤ内部の空気圧によってダメージがタイヤに広がり、サイドウォールの一部がこぶのように膨らみはじめる最終的にバーストとなってしまうこともあるのです。

走行中にタイヤが何かしらダメージを受けた場合は、しっかり点検を行いましょう。できればタイヤショップやディーラーなどで、プロの目によって点検を受けるのが良いでしょう。

荷物の積みすぎも
タイヤの負荷が大きくなりトライブルの原因に

荷物の積みすぎ

業務用のトラックではない、マイカーではなかなかないでしょうが、過積載もタイヤへの負荷が高くなりタイヤのバーストを引き起こす原因になります。例えば夏場、キャンプなどでラゲッジスペースに道具を満載し、乗車定員いっぱいまで人を乗せて走行するという場合にはトラブルがおきる可能性はあります。

これも原因はわかりやすいですが、重すぎる荷物によってタイヤに強い圧力が加わることでタイヤがたわみ、空気圧が低下しているときと同じようにタイヤが発熱して、結果バーストにつながるというのが理由です。そういったケースはなかなかありませんが、タイヤの空気圧が減少している状態で過積載を行うとトラブルの可能性はあるので注意しましょう。

タイヤバーストが発生してしまったら
その時どうすればいいのか

タイヤバーストが発生

では、走行中にもしタイヤバーストが発生してしまったらドライバーはどのように対応すればいいのでしょうか。まずこれはすべてのトラブルの基本ですがパニックを起こさないことです。バーストするとタイヤがグリップを失うのでクルマのコントロールが効きづらくなります。バーストしたことに気づいたらまずはハンドルをしっかり握って、ブレーキを踏んで減速しましょう。

バーストしたタイヤが操舵輪であればハンドルが左右にとられるかもしれませんが、落ち着いてクルマをコントロールしましょう。とにかく周囲のクルマに被害を出さないことが重要です。速度がそれほど高くなければ大事故になる前に減速できるはずなので、クルマが減速したら路肩など安全な場所にクルマを寄せてハザードランプを焚いて停車します。

そして、クルマに積んでいる三角表示板(高速道路および、自動車専用道路上で自動車を停止させる場合は、三角表示板の表示義務があるので装備が義務付けられています)を取り出して、クルマから50m以上後方に展開して置きます。さらに、発煙筒にも点火をしてクルマの後方に起き、後続車が追突するなどの二次被害を防止するようにしましょう。

安全が確保出来たら、JAFや自動車保険のロードサービスに連絡して救助してもらいます。高速道路上でのスペアタイヤへの交換は危険なので避けましょう。スペアタイヤがクルマに積まれていて交換がしたいという場合はロードサービスで一旦SAやPAに移動させてもらいそこで作業するようにしてください。

ただ最近のクルマはスペアタイヤをほぼ積んでいません。その代わりにタイや修理キットやエアーポンプが積まれています。パンクの修理であればそういったパンク修理キットが役立ちますが、タイヤバーストの場合、パンクと違ってタイヤ自体が破裂している状態なので小さな穴をふさぐパンク修理キットは役に立ちません。素直にJAFや自動車保険のロードサービスに連絡をしてディーラーや修理工場までレッカーしてもらいそこで修理してもらうのが良いでしょう。

バーストしたクルマがカーリース車だった場合、リース会社のほうでロードサービスを提供している場合もありますので連絡してリース会社が提供しているロードサービス利用するのが良いでしょう。また修理の際も正規自動車ディーラーで行うか、リース会社指定の修理工場があればそちらで行ってください。

そのリース車の契約がメンテナンスリースだった場合、修理費用もリース代に含まれている可能性があります。ただし、契約がファイナンスリースだった場合は、修理費用はリース代に含まれていないので実費修理となります。

いずれにしても修理を行う前に必ずリース会社へ連絡して、どのように対応するべきか必ずリース会社に問い合わせましょう。自己判断で修理した場合、リースの契約内容によっては契約違反となってしまう可能性があるので注意が必要です。

タイヤバーストを防ぐには
日ごろからの点検がとにかく大切

タイヤバーストを防ぐには

タイヤバーストは突然起きるものですが、日ごろからタイヤの管理をしっかり行っておけばある程度は防ぐことが可能です。定期的にタイヤの点検や空気圧の管理を行い、空気圧は最低でも月に1回は点検する習慣をつけておくといいでしょう。手元にエアゲージがなく空気圧チェックができないという方は、ガソリンスタンドなどにいけば空気圧のチェックと空気の注入が行えますのでガソリンを入れるついでにチェックしてもらってください。

セルフのガソリンスタンドでも、空気を入れるためのエアキャリーというツールが置かれているはずなのでそちらを使用すれば簡単に空気圧チェックと空気の注入が可能です。ちなみに指定空気圧は、クルマの取扱説明書に記載されていますし、またクルマの運転席ドア付近などにもステッカーが貼られているのでそちらで確認しておきましょう。

とにかくバーストを防ぐにはタイヤの定期的な点検が欠かせません。気温が高くなる真夏は、暑くてついついタイヤの点検を怠りがちですが、高い気温によってバーストトラブルもおきやすくなりますのでタイヤの管理にはくれぐれも注意してください。