新車にお得に乗ることができて、家計の管理が簡単ということから、個人向けカーリースの人気がますます高まっています。しかし、カーリースの利用によって大きなメリットがあるのは実は法人や個人事業主です。特に会計上クルマの経費のウェートが大きくなる個人事業主の場合は、むしろカーリースを利用しないことのほうが大きな損失ともいえるレベル。では、具体的にどんなメリットがあるのか?また、逆にデメリットや審査などのハードルなどはないのでしょうか。

購入したクルマを経費で
処理する場合減価償却が必要

まず、個人事業主がカーリースを利用しないことがなぜ大きな損失になるのか?それは、カーリースは節税面のメリットが非常に大きいからです。筆者のようなフリーライターを含め個人事業主でもクルマが必要という方は少なくないでしょう。しかし、カーリースを利用されているという方はあまり多くないのではないでしょうか。おそらく一括払いやローンを組んで購入されているのではないかと思います。

そのようにして購入したクルマを経費として処理する場合は、減価償却が必要となります。クルマの取得費用を全額一度に経費計上することはできないのです。そのため、数年に渡って、経費計上していきます。これが減価償却です。

減価償却できる年数は、「法定耐用年数」として決まっていて、一般用のクルマは、軽自動車で4年、その他のクルマは6年となっています。つまり300万円で購入したクルマを、6年かけて減価償却するわけです。ただし、購入金額を全額経費として計上できるわけではありません。個人事業主の場合、購入したクルマは仕事だけでなくプライベートでも使うこともありますよね。トラックやバンなどの明らかに業務用のクルマではない限り、おそらく皆さんそうでしょう。すると仕事でないシーンでも使うクルマですから、購入したクルマに関して購入費用の全額を経費にすることは税務署が認めてくれないのです。そんな場合に利用するのが「家事按分」という考え方です。この家事按分とは仕事でもプライベートでも使っている資産を、それぞれどのくらいの割合で使っているかを割り出して、必要経費をその割合で分けるというもの。

平日は仕事用として使っていて、休日はプライベートで家族の買い物に使うとなった場合、一週間のうち5日を仕事で使い、残りの2日、週末はプライベート利用なので費用のうち7分の5が経費として計上できるというわけです。

この家事按分ですが、どのくらいの割合にするのかについては明確な決まりはありません。でも、どのように分けているのか聞かれたときに、キチンと合理的な説明ができることが重要です。そのクルマを使った日数や、時間または距離など、基準を設けて説明ができる割合に按分することが必要です。適当に案分し、明らかにおかしいとなった場合、あとで税務署から指摘され、調査されるなどという危険性もないとは限りません。

カーリースならリース料金を
全額経費として処理できる!

このように個人事業主が、購入したクルマを減価償却する場合、思いのほか面倒なものなのです。もちろん必要経費としてちゃんと計上することは可能ですが、前述の通り会計処理がとても複雑(やったことがあればわかると思いますがとても面倒くさいです)ですし、一括でなくローンで購入した場合はローンの全てを経費にすることもできません。ローンの場合は借入金や未払い金として計上するのです。このような会計用語を聞いただけで、もう面倒くさい!自分には無理だ!などと思ってしまう人もきっと多いはずです。そして結果的に頑張って高額なクルマを購入したのに、思いのほか節税にならなかったというケースも少なくないのです。

しかし、カーリースであれば、毎月かかるリース料金を全て経費として処理できるのです。それはなぜか、カーリースではクルマの所有者はリースの契約者ではありません。リース会社です。カーリースではリース会社が所有するクルマをリース契約者が一定期間借りて乗るという形になっています。つまりカーリースのクルマは、リース会社の資産であるわけでリース契約者の資産にはならないのです。だから毎月支払うリース料金は、クルマの使用料として経費扱いになるのです。つまり会計上はリース料として仕訳すればいいわけですからとても簡単なのです。それにリース料金として支払う費用の全額が必要経費として計上できます。これはうれしい限り。

節税効果だけじゃない
クルマの管理も簡単になる

当然節税効果だって圧倒的に大きい。つまり、個人事業主がクルマを利用するならカーリースを使う方が、明らかにメリットが大きいということになります。むしろクルマを仕事に使っているならカーリースを使わないことがむしろ損であるといっても過言ではありません。

他にもカーリースにはいくつものメリットがあります。まず、クルマの管理やメンテナンスがとても楽であるということ。カーリースにはメンテナンスパックなどのサービスがあり、車検やメンテナンスの時期が来ればリース会社から連絡があるので、指定された場所にクルマを預け、整備や点検、車検などを任せてしまうことができます。その費用もリース料金に含まれているので、交換パーツなどがなければ基本的にお金もかかりません。クルマは普段からの管理が重要ですが、その管理がカーリースなら非常に楽なのです。クルマに費やす時間や手間が減らせればその分本業の仕事に時間をあてることができるでしょう。

また、まとまった初期費用が用意しなくてもカーリースなら新車に乗れるというのも大きな魅力です。クルマを購入するなら一括でもローンでも、頭金などまとまったお金の用意が必要です。そのため初期費用の負担が大きくのしかかります。

しかし、カーリースなら頭金も不要。さらにリース料金には登録の諸費用や税金、保険などまで含まれているので初期費用なしで新車に乗れるのです。仕事にクルマは必要だけど初期費用は抑えたいという個人事業主にはまさにぴったりといえるでしょう。

カーリースを利用するためには
審査をクリアする必要がある

このようにカーリースにはメリットが多々ありますが、気を付けなくてはいけないこともあります。その一つがカーリースは利用する際には審査があるということ。申し込めば誰でも契約できるわけではありません。これをクリアしないとリース契約はできないのです。もちろんそれは個人での利用でも、個人事業主の場合でも変わりません。

ただし、個人事業主が業務用にカーリースを利用する場合は審査に通る基準もそれなりに厳しくなっています。例えば、過去3年分の決算書を提出するなどして事業の状況を示さなくてはならないようです。さらに経営が赤字であったり、赤字の危険性が高い、という場合もカーリースの審査に不利になることもあるでしょう。

そして債務整理歴もチェックされます。自己破産や任意整理、個人再生など法的な手段を用いて、債務を整理したり免責したような債務整理歴が信用情報に載っていると審査の上で不利になります。ローンなどと同様に個人事業主の方はサラリーマンよりもカーリースの審査が厳しいということはあるでしょう。

また、カーリースの審査が通ってもあくまでカーリースの車両はリース会社の所有する財産。そのクルマを自分のものとして所有することはできないということを理解しておかなくてはなりません。カーリース会社によっては買取りが可能な場合がありますが、基本的にはリース期間が満了したらリースを延長するか、別のクルマを再契約することになります。

最終的に自分のものにならないのに、毎月リース料を払うのは抵抗があるという方もいるでしょう。でも、クルマはあくまで仕事のためのツールの一つとしてしっかり割り切れるのなら非常に賢いクルマの利用方法といえるのではないでしょうか。

カーリースならではの
気を付けなくてはいけないこと

他にも、カーリースは事故などの不可抗力などやむを得ない理由による解約の場合を除いて、原則として中途解約はできないということも知っておくべきでしょう。途中解約に対応してくれるリース会社もありますが、その場合残価分を一括で支払わなくてはならないなど大きな負担を負うことになります。

では、なぜ中途解約ができないのか? それは、そもそもカーリース会社はあなたの代わりに車両を購入して貸し出しているという形にとっているからです。そして、契約のリース年数をもとにして毎月のリース料金を算定しているので、もし途中で解約されてしまうと、カーリース会社は大きな損害を被ることになってしまうからです。ですから、どうしても解約したいという場合は、多額の解約金や違約金が発生することになります。

さらに、仕事でクルマを使用する方にとっては大きなポイントとなるのが、カーリースでは多くの場合リース期間中に走行できる距離が設定されているということ。だいたい1,000km/月~2,000km/月ほどで、この距離はリース会社や契約によって変わってきます。

もし、この距離を超過して走行してしまうとどうなるのか。クルマの返却の際にそれに応じて精算、ようはペナルティ料金の支払いが必要となります。月あたり1,000kmならば一般的なドライバーであればほぼ問題ありませんが、例えばフリーランスのカメラマンなどの場合、筆者の周りを見てもひと月2,000kmや3,000km走る方も珍しくありません。そのように仕事での走行距離が長くなってしまうという場合には残念ながらカーリースは向いていないことになります。

また、クルマに大きなダメージを負わせてしまうと、返却する際に違約金が発生します。普段からクルマを丁寧に扱わない人は注意が必要でしょう。なんといってもあくまでリース会社から借りているクルマなのですから、傷つけないように使用するのは当然のことではありますが。

節税ができてクルマの管理も楽
カーリースの利用を検討しよう

このように筆者をはじめ、個人事業主がクルマを利用するなら、なんといってもカーリースがおすすめである利用がお分かりいただけたでしょうか。面倒な減価償却が不要で、毎月のリース料金を全額経費にできるのがなんといっても魅力的ですし、会計処理が楽で節税にも非常に効果的なのですから、むしろ利用しない手はないでしょう。加えて車検もクルマの管理もリース会社にお任せできるから手間もかかりません。クルマとの付き合い方としてこんなに便利なものはないでしょう。

もちろん審査もありますし、カーリースならではの制限もありますが、カーリースが自分のクルマの利用スタイルにマッチするのであれば、個人事業主の方は是非カーリースの利用も考えてみるべきです。近いうちに新車の購入や、クルマの買い替えを予定しているならば選択肢の一つとして購入以外に新車カーリースの利用も是非検討してみてください。