ディーラーや展示会など屋内で管理されているものは別ですが、クルマはほとんどの場合屋外で使われています。そして使い続けていれば空気中に舞うホコリや路面から巻き上がる泥などにボディが触れ、徐々に汚れが目立つようになります。
屋根のない場所に止めていれば、なにもしなくても雨にも打たれるでしょうし、雪が積もることだってあるでしょう。また、天気が良くても、外気にはホコリだけでなく花粉、鉄粉、PM2.0などが浮遊していますし、舗装路でなく泥道を走れば足回りもドロドロに汚れますね。様々なコンディションの中で、使われるクルマですからこのように汚れることは仕方のないことです。
例外(貴重なクラシックカーなど)はありますが、クルマは飾っておくものではなく移動手段。汚れていたって走る機能に関しては大きな影響はありません。本来の機能は果たせるわけです。もちろん泥や酸性雨によって塗装が痛んだり、ボディがサビることはあるでしょうが、見た目を気にしないのであればそれも問題ないわけです。
でも、大切にしている愛車が汚れたままの状態であるのはそのクルマのオーナーとしてはあまり気分が良いものではありませんよね。だからこそ、多くの人は洗車を行いできるだけきれいな状態をキープしようとするのでしょう。
特に日本のマイカーオーナーは、クルマの汚れに対してとても気を使う傾向があります。海外からの旅行者などは、日本の道路を走っているクルマが、トラックなどの営業車を含めてどれもキレイなことを見て驚かれるということもあるそうです。
ただ、どれほどしっかりと洗車をして、徹底的にワックスをかけていても、真っ先に汚れてしまうのがホイールです。洗車をしても、ほんの1週間もすると、あっという間に足元が真っ黒になってしまいます。これはホコリや泥、雨だけが原因とは思えません。ではこの気になる汚れの正体はなんなのか? それは多くの場合ブレーキダストなのです。
ブレーキダストとは、ブレーキをかけることで削れたブレーキパッドやブレーキディスクの粉塵。これがホイールなどにこびりついてしまうとなかなか落ちにくいとても厄介な汚れになるのです。
街を走るクルマを見てみると、やはりホイールが汚れているクルマを良く見かけます。中でもヨーロッパ車のホイールに、そんなブレーキダストによる汚れが目立つ傾向にあります。日本車でも汚れているものを見かけますが、比率としては圧倒的にヨーロッパ車の汚れが目立ちます。
実はこれにはちゃんと理由があります。それは日本車メーカーとヨーロッパ車メーカーのブレーキに対する考え方が違うためなのです。では、どのように違っているのでしょうか。
ブレーキ性能を重視しているため
磨耗しやすい素材が使われている
ブレーキはドライバーの操作によって走行中のクルマを減速させたり、停止させるためになくてはならない重要なパーツです。これがなければ安心してクルマを走らせることはできません。それはヨーロッパ車でも日本車でも変りませんね。
しかし日本車、それも日本国内向けのクルマの場合、ブレーキとしての機能に加えて、汚れにくいというポイントも実はかなり重視されています。ブレーキとしての十分な機能を果たした上で、なおかつ磨耗が少なくブレーキダストを出さないこと。つまり汚れないブレーキが求められるということ。なぜかというと、日本の自動車所有者が汚れに対してとても敏感なためです。
しかしヨーロッパは日本以上にスピードレンジが高く、ブレーキへの負担も大きい。そのためブレーキは汚れにくさよりもブレーキ本来の、減速、停止のための性能が何よりも重視されます。そして汚れに関してはさほど問題視されません。その分効きが良いということでもあるからです。そのためディスクローターやブレーキパッドの素材には摩擦係数の高く、熱が出にくい柔らかめの素材が使われています。そのほうがブレーキの効きが良くなるからです。
しかし、柔らかい素材であるためブレーキを踏んだ時に磨耗しやすい。つまり、削れやすくブレーキダストも発生しやすいということです。そのためにどうしてもヨーロッパ車はホイールも汚れやすくなってしまうわけです。
でも、安全性を考えればこのほうが合理的ともいえます。
それでも最近はヨーロッパ車でも、日本仕様のものにはブレーキパッドを導入するなどしており、以前よりもブレーキダストの汚れは減っているようです。この辺は日本でのニーズに応えているのでしょう。
また、ブレーキダストの出にくいブレーキパッドなども市販品では売られています。そういったものに交換するというのも良いかもしれません。
このように、以前に比べればブレーキダストによる汚れは気になりずらくはなっていますが、それでもどうしても気になるという方は、正しい洗車方法で、定期的に洗ってやるしかありませんね。
効果的なホイールの
クリーニング方法とは
ホイールに付着している頑固なブレーキダストや鉄粉などの汚れ、どのように洗ってやるのが良いのでしょうか。
ホイールにはアルミやスチール、マグネシムなど様々な素材が使われていますが、基本はまずはシャンプーで洗浄しましょう。もちろんこれだけではブレーキダストは簡単には落ちませんが、まずは表面の油性の汚れやホコリ、泥などを落としてやります。
次に市販のホイールクリーナーを使ってください。ホイールクリーナーには、アルミホイール専用やスチール対応などあるので、自分のクルマのホイールにマッチしたものを選びましょう。中には研磨剤(コンパウンド)が入っているタイプもありますが、使い方によってはホイールの表面を傷付けてしまうこともあるので、研磨剤の入っていないもののほうがオススメです。
使い方は、洗浄したホイールに直接液剤を吹きかけるか、スポンジなどに一旦クリーナーを取り、ホイールの表面をこすりながら汚れを落とします。もし、スプレーしただけで汚れが落ちきらない場合はブラシを使用してください。ただし、ホイールの塗装やコーティングはデリケートなので、表面を傷めないように柔らかめのブラシを使いましょう。デザインの凝った細いスポークや、リム部分が深いものなどは小さめの歯ブラシ等を使うと良いでしょう。
これでも、ホイール表面に焼きついた汚れが取れない場合は、鉄粉などが除去できるホイール専用のブレーキダストクリーナーを使用します。化学的に分解洗浄するクリーナーで、ホイールの汚れに対してスプレーし3~5分ほど待つとこびりついたブレーキダストや鉄粉に反応して液剤が紫色に変色、取り除くことが可能です。
ブレーキダストクリーナーとても強力な液剤なので、使用後は液剤が乾燥しないうちに、必ず水で洗い流してください。隅々まで徹底的に洗い流しましょう。わずかでも残っているとブレーキディスクなどは簡単に変色してしまいます。またボディやホイールの塗装を傷める原因にもなります。洗剤ではなく化学反応で鉄粉を除去するものなの扱いは慎重にしてください。
また、ホイールの塗装表面にキズなどがある場合にはホイールにダメージを与えてしまうこともあるので、気になる場合は目立たない場所に一度使用して問題ないか確かめてみたほうが良いでしょう。メッキや特殊なコーティングがされているホイールの場合も、使用には十分注意してください。
汚れやブレーキダストをクリーニングできたら、仕上げとしてボディと同様にコーティングを行うのもオススメです。汚れにくくなり、後々の手入れも簡単になります。
ホイールをブレーキダストから
保護するホイールコーティング
ホイールのコーティングとは、ボディのコーティング同様に表面に薄い被膜を形成し、汚れを防ぐというもの。油性の汚れやブレーキダストも付着しにくくなり、あとあとの手入れや洗車が簡単になります。
ホイール専用のコーティング剤はカー用品店やネット通販などで簡単に入手可能です。そしてその使い方はボディ用のコーティン剤などと基本的に同じです。
まずしっかりとホイールを洗浄し、鉄粉なども除去したらホイールを乾燥させます。その後、スプレータイプの場合なら、ホイール全体に均一に適量を噴霧してください。その際液剤が垂れるほどスプレーするのはやりすぎです。注意してください。
スプレーした液剤が乾かないうちに、商品に付属している専用のクロスなどで均一に薄く塗り伸ばします。そしてよく拭き取ってしばらく乾かします。拭き残しなどがあるとムラになるので完全に拭き上げてください。これでコーティング完了です。施工直後は24時間ほど水などがかからないよう気をつけてください。そうすることでコーティングが長持ちします。
このようにとても簡単な作業でホイール表面に保護のためのコーティングの皮膜が施工することができます。さらにこの作業でホイールの輝きもグッと増すはずです。
さらに、もし可能であれば、ホイールを一旦取り外し、その裏側も洗浄、コーティングすると万全です。ただしホイールの脱着を洗車のたびに毎回やるのはさすがに手間がかかりすぎるので、例えば、タイヤローテーションを行う際や、夏タイヤとスタッドレスタイヤを交換するタイミングなど、ホイール外すついでに行うというのが良いでしょう。
コーティングを一度施工しておくと、油汚れやブレーキダストがつきにくくなるので洗車などの手入れも楽になります。もちろん効果はボディのコーティング同様徐々に落ちてきますので、汚れが目立つようになってきたら再度洗浄し、コーティングを行ってください。
おしゃれは足もとから、などとよく言われますが、それは人間のファッションだけでなくクルマのスタイリングも同様です。ホイールが汚れたままでは、どんなにボディを洗車していても全体の印象は冴えません。ちょっと面倒かもしれませんが、たまにはしっかり手間をかけて、ホイールもピカピカに磨き上げてみてください。