故障やダメージなどといったクルマのトラブルを未然に防ぐのにとても有効とされているのが洗車です。ただクルマを洗うだけなのですが、自らの手でクルマ触れ、普段よりも細部に注目することで細かな傷やオイルのにじみ、塗装の浮きなどといったトラブルの予兆が発見できます。

だからこそカーリース車両は、自らの手で洗車することをおススメします。なぜならカーリース車は最終的にクルマを原状回復して返却するべきものだからです。そのため特にコンディションの管理にはシビアにならなくてはいけません。ですから洗車が重要なのです。

しかし、洗車は正しい方法で行わないとかえってクルマのボディに傷をつけ、サビを発生させてしまう原因にもなります。では、そもそも正しい洗車とはどのように行えばいいのでしょうか。また、便利で簡単な洗車機は使用していいのか使うべきではないのか。知っているようで意外に間違っている人も少なくない洗車の基本についてご紹介します。

リース車返却時原状回復が原則
こまめな洗車でダメージを防ごう

カーリースは月々定額を支払うだけで、好きなクルマをマイカーのように使うことができるとても便利なサービスです。オートローンなどと違って頭金が不要なうえ、月々の料金には税金や自賠責保険料なども含まれていて、ほかに費用はかかりません。家計の管理もしやすく、また、オートローンでは手が届かない上級のクルマに乗ることもできるなどというメリットも大きな魅力となっています。

ただ、気を付けなくてはいけないのが、契約時に定めた契約期間が終了したのちには、クルマをリース会社に返却する必要(一部返却不要のカーリースもあります。)があるということ。クルマの所有者名義はリース会社なので当然ですね。そして、原則として返却時には原状回復をすることがルールとなっています。

そのため、改造は基本的に禁止(ドレスアップ程度なら許されている場合もあります。)されていますし、クルマのコンディションは極力良い状態をキープし続ける必要があります。もし返却時にクルマに目立つようなダメージがあれば、その分の違約金が発生することもあります。せっかくお得にクルマに乗りたいからと新車カーリースを選んだのに、そうなってしまっては最悪ですよね。

そうならないためには日ごろからクルマのコンディションに気を配っておかなくてはいけないのです。とはいえ、なにも自分でオイル交換や簡単な修理をしましょうということではありません。定期的に自らの手で洗車をしてあげるだけでいいのです。それだけでもクルマのコンディション管理になりますし、重大なトラブルとなる前に対処も可能でしょう。また、汚れを落としワックスやコーディングをかけておけば塗装の保護にもなります。

さらに潮風や融雪剤などによるサビの発生を防止するにも洗車は有効です。海の近くや降雪地にお住まいの方はなおのこそ洗車が重要といえるでしょう。確かに洗車は面倒で大変です。特に真夏や真冬など快適とは言えない気温の中、屋外で作業するのは肉体的にもつらい。しかし、そのような季節はクルマにとってもダメージがたまりやすい時期。むしろ積極的に洗車を行うべきなのです。いかがでしょう、皆さんはどれくらいの頻度で、どのように洗車を行っているでしょうか。

洗車機はボディにキズが
付きやすいというのは誤解

まず、洗車についてその正しいやり方はご存じですか。中には一度も自分の手で洗ったことがなく、いつも機械洗車で簡単に済ませてしまっているという方もいるでしょう。機械洗車ももちろんダメではありません。しかし、5年や7年といった長いリース期間、クルマのコンディションをキープし続けるには手洗い洗車を行ったほうが良いのは間違いありません。

ただ、機械洗車が手洗いよりもキズがつきやすいというのは誤解です。機械洗車は門の形をした機械にクルマが侵入すると、まず水が吹き付けられでボディ全体を濡らします。そして次に洗剤を噴射され、続いて回転するブラシによってボディ全体が洗われます。洗い終えたら、ブラシと水で洗剤を洗い流し、ブロワーで水滴を吹き飛ばし乾かすというプロセスになっています。

この中でキズが付きやすいといわれているのがブラシを使ったシャンプー洗いの工程です。回転するブラシがボディにこすれることで塗装面にキズがつくというわけですね。でも、実はブラシそのものでボディにキズがつくことはあまりありません。なぜなら最近の洗車機のブラシは、柔らかなスポンジやゴム、布などの素材でできているからです。そうはいっても、実際にキズがついてしまったことがあるという話も聞きます。それはなぜなのか?

原因は、ブラシそのものではなく、クルマの表面に付着した砂や泥なのです。ボディの上に硬い砂粒などが残ったまま洗車機のブラシをかければ、当たり前ですがその砂粒がボディ表面こすり引っかきます。その時に細かい洗車キズがつくというわけなのです。

泥や砂を水で流しておけば
洗車機でもキズは付かない

ならば、それを防ぐにはどうすればいいのか。事前に高圧の水で十分な水洗いをして、砂粒や泥を落としておけばいい。そう、汚れたままいきなり洗車機にかけるからキズがついてしまうのです。ちょっとひと手間かけるだけで仕上がりが大きく変わるので、もし洗車機を頻繁に使用しているのなら、先に砂や泥などを洗い流しておきましょう。その際スポンジなどでごしごしとこするのは厳禁です。コイン洗車場などにあるスプレー洗車機や、TV通販などでおなじみの高圧洗浄機などの水流で洗い流すのがおススメです。

洗車機で洗ったあとは洗い残しがないかチェックし、シャンプーや汚れが残ったところを手洗いします。そして丁寧に拭き上げ、仕上げにワックスやコーティングなどを行えば良いでしょう。一度しっかりボディをコーティングしておけば、あとは定期的に水洗いするだけで汚れが落とすことができます。ポイントは事前の水洗いと、洗い残しのチェック、そして2週間に一度、月に一度など定期的な洗車習慣をつけることです。

洗車機の使用は決してNGではありません。ただ頻繁に使用している方は先に水洗いをするということを忘れないでください。しかし、さらに完璧な仕上がりを目指すならやはり手洗いに挑戦するのが一番です。

水洗いの際は水分が
自然乾燥しないように注意

手洗いで洗車を行う場合、まず重要なのが洗車用品です。ボディクリーナーやシャンプー、ワックスなどは専用のものを用意してください。シャンプーが無いから台所の食器洗い洗剤を使う、などということは絶対に避けましょう。食器洗い洗剤は、界面活性剤やほかの成分が塗装に影響を与える可能性があります。また泡が残りやすく水洗いに余計な手間がかかるので使わないのが正解です。

拭き上げや磨き用のウエスは、専用の人工セームや拭き取りクロスなどを用意しましょう。使い古したタオルなどは硬くなった繊維が塗装面に傷つけたり、繊維くずがボディに付着するのであまりおススメできません。さらに鉄粉取り用の粘土やコンパウンド、樹脂パーツ用のツヤだし剤や、ホイール専用クリーナー、タイヤワックスまで用意すると完璧です。

洗車を行う際は天気にも注意です。ベストは曇り空。なぜならば、晴れた日に直射日光下で洗車を行うと、シャンプーをしている間に日差しでボディが自然乾燥してしまうからです。シャンプーや水道水など不純物の入った水分がボディの上で自然乾燥してしまうと、その不純物がボディに残りウォータースポットや異音デポジットなどといわれる醜い跡になってしまいます。

これらは洗車では簡単に落ちてくれません。できてしまったらコンパウンドやボディクリーナーなどを使い削り落とすしかないのです。コンパウンドは表面を削り取っているだけなので頻繁に使用するとボディ表面のクリア層が薄くなってしまいます。また慎重に作業しないとかえって磨きキズをつけてしまうことも。クリア層が薄くなると大切なその下の塗装面にダメージや色褪がおきてしまうこともあります。注意してください。

とにかく水を使ったら自然乾燥は避け、シャンプーを流し落としたら速やかに水分をふき取ります。作業中自然乾燥してしまいそうになったら、その部分に真水をかけて濡らし、あらためてウエスで水分を拭き取りましょう。

先にホイールハウス内の
泥を落としておく

最初に行うのは水洗いです。クルマの洗い方の基本は、上から下ですがその前に泥がこびりついたホイールハウス内やフロア下を洗浄します。最後に洗うと汚れが飛び散りやすいからです。その後、ルーフからボディの下に向かって水を吹き付けて汚れを下に流します。隙間やパーツの取り付け部分などもしっかり洗いましょう。

水洗いを終えたら、その水分が乾かないうちにボディを上から下へシャンプーを使って洗っていきます。シャンプーはスポンジには直接つけず空のバケツに適量のシャンプーを入れ、その上から水道水を勢いよく流し水流で泡立てます。この泡で汚れを包み込み、流し落とすようにやさしく洗ってください。全て洗い終えたら、水で完全にシャンプーを流し落とします。

シャンプーが完全に落とせたら水分を拭き取ります。ドアやトランク開口部の隅やフューエルリッド(給油口のフタ)の中も丁寧に拭き取りましょう。ふき取りは人工セームや吸水クロスなどが手早く拭き取れるのでおススメです。

ボディ表面がざらついていたら
鉄粉取りもしよう

シャンプーが終わりしっかりと水分を拭き取ったら次はワックスがけもしくはコーティング作業です。その前に、ボディの表面を指でなで、ザラザラとした感触があれば、鉄粉取り粘土などで鉄粉も除去しておいてください。新車であれば不要ですが、近くに鉄道や工場、交通量の多い幹線道路などがある場合鉄粉やブレーキダストがボディ表面に付着し、熱によってクリア層に食い込んでしまっている場合があります。こういった鉄粉は洗車では取ることができません。

また、鉄粉がボディ表面に残っているとワックスをかけても本来のツヤが得られないばかりか鉄粉がサビてクリア層にダメージを与えてしまうことがあるので気を付けましょう。鉄粉取り粘土や鉄粉取りクリーナーの使い方は商品の説明書に従って丁寧に行ってください。

塗装面の汚れ、鉄粉を除去したらボディ表面の保護とツヤ出しのためにワックスがけもしくはコーティングをおこないます。ワックスとコーティング剤の目的は塗装面の保護と撥水(もしくは親水・疎水)、ツヤ出しで同じです。ですから好みで選んで構いません。ただし、耐久性ではコーティング剤のほうがすぐれているのでボディ表面の保護が主な目的であればコーティング剤を使用したほうが良いでしょう。

コーティング剤は成分や製品によって使用方法が違います。スプレーするだけでコーティングができるという簡単なものもありますが、耐久性を重視するならより効果の高いものを選ぶべきです。コツは一度にボディ全体に一気に施工するのではなく、ボンネット、右ドア、トランクなどエリアを区切って作業をするということです。そのほうが効率よく、コーティングムラなども起きにくいはずです。乾燥や拭き上げなどの作業は購入したコーティング剤の説明書をよく読み、正しく行ってください。

ワックスは小さく面積を区切り
完全に乾く前に拭き取る

コーディング剤ではなくツヤに優れたワックスを使用したいという場合は、その塗り方にコツがあります。一般的な固形や半ネリタイプの場合は、まずたくさん使わないこと。厚く塗ればそれだけワックスの膜が厚くなると勘違いされている方もいますが、塗装面にできるワックスの被膜はまったく変りません。むしろ拭き取りが大変になるうえ、作業途中にホコリなどが付着しやすくなるなどデメリットしかない。使うのは極少量でいいので丁寧に塗り広げましょう。

いきなりワックスをスポンジに取るのではなく、まずはバケツに水を用意して、スポンジをその水に浸してから水分の残しつつ軽く絞ります。そしてワックスの上にそのスポンジを乗せクルと半周回すとかすかにスポンジにワックスが付着するはずです。これで十分です。

塗りかたは円を描くのではなく、30㎝~40㎝四方の面積を区切って、それぞれのエリアを直線状にタテ・ヨコ・タテと塗っていきます。ヨコ・タテ・ヨコの順でも構いませんが最後はボディにかかった水の流れる方向で終えるのがポイントです。

いくつかのエリアにワックスを塗りおえたら、ワックスが半乾き状態となったエリアからウエスで拭きとります。いくつかのエリアを塗っては拭きを繰り替えしてボディ全体にワックスをかけたら終了です。ポイントはワックスを完全に乾かさないことです。乾いてしまうと拭きとりが大変になりますし、長時間ワックスがボディに乗った状態にするとホコリを呼んでしまいます。最後に仕上げとして乾いたウエスで乾拭きすれば完了です。

最後に返却するリース車
だからこそ丁寧な洗車を

洗車の際、絶対にやってはいけないのがワックスを塗ったままで長時間放置することです。最近はさすがに見かけませんが、以前はワックスを塗った真っ白いボディで街中を走っているクルマがありました。ちょっと考えればわかりますが、そのような状態では砂やほこり、ブレーキダストがワックスにくっついて拭き取る際にボディの表面を傷つけるだけ。意味がないどころかクルマにダメージを与えているのです。絶対に避けましょう。

このような洗車のセオリーを守り、定期的な洗車心がければクルマのボディは良い状態を長期間キープできるはずです。リース車はどうせ最後は返却するのだから…、といい加減に扱っていると重大なダメージを見逃し最後に無用な違約金を払う羽目になるかもしれません。無用なトラブルを避けるためにも、カーリース車両だからこそより丁寧な洗車を心がけるべきではないでしょうか。