梅雨に夏のゲリラ豪雨、そして秋の長雨に冬の豪雪。クルマの装備の中でも何かと活躍する機会の多いのがワイパーです。そんなドライブには欠かせないワイパーですが、一年に一回は交換した方がよいということをご存じでしょうか。交換自体はとても簡単です。消耗品ですのでカーリース車でもDIYによる交換はOK。いつもクルマのメンテは整備工場やディーラー任せという人も一度チャレンジしてみてはいかがでしょう。そのやり方をお教えします。

100年以上前から基本的な
仕組みは変わらないワイパー

あらためてワイパーの仕組みを説明しましょう。といっても非常にシンプルです。雨などによってウインドウガラスに水滴や汚れなどが付着したら、薄いゴムのブレードのついたワイパーアームをガラス面に密着させ、左右に振って拭うというものです。特に複雑な部分はなく、100年ほど前にはほぼ現在の形と同じようなものがあったといいます。

動力こそ人力から電気にかわりましたがその基本的な原理は登場時以来ほとんど変わっていません。実に原始的というか劇的な進化というものは正直ないのが不思議ですね。

そのせいかこんな都市伝説もあります。それはもし、今のワイパーに変わる画期的な技術を発明することができれば、ノーベル賞が受賞できる!というもの。確かにそんな画期的なものが発明できれば雨天のドライブも劇的に変わるでしょう。クルマのデザインの自由度も増します。しかし、そのようなものが登場していないということは残念ながら、未だそれを成し遂げた人はいないようです。

シンプルですが、ワイパーゴムで窓ガラスの雨粒をぬぐうというその仕組みはおそらくフロントウインドーにガラスを使用している限り、大きく変わらないのかもしれません。EVやハイブリッド、コネクテッドカーなど進化著しいクルマですが、ワイパーだけはいまだに原始的なままなのですね。もしかしたら、自動運転が当たり前となって、ドライバーが前方を見る必要がなくなるまでワイパーは使い続けられるのかもしれません。

とはいえ、ワイパーは現状でも十分に役立つ装備ですしなくてはならないものであることは間違いありません。それにワイパーはただ水滴を拭き取っているのとはわけが違います。ガラス面に付着した水滴をぬぐいつつ水滴をフロントウインドーのガラスの上に均一に伸ばして、薄い水の膜を作ることでクリアな視界を確保しているのです。

さらに、雨だけでなく積もったホコリや落ち葉、衝突してつぶれてしまった虫の死骸といった付着物をぬぐい取るという役割も果たしています。雨だけでなくドライブ中の視界確保のためにとても重要なものなのです。

ワイパーの構造は昔からほとんど変わっていないと書きましたがワイパーブレードのゴムの材質や、ウインドーにブレードを押しつけるためのワイパーアームの設計などは着実に進化しています。均一にガラス面に押し付けつつ、ビビり音なくスムーズにガラス面を拭き取れるような特別な材質が使われています。

また、ワイパーそのものだけでなく、雨滴感知機能やウォッシャー液を吹き付ける機能などより効率的にワイパーを利用できるような装備もクルマに搭載されるなど、細かな部分では着実に進化しているのです。

雨の中のドライブ。視界の確保には
ワイパーが欠かせない

そんなワイパーですが、クルマのパーツの中でも特に消耗が激しいものであるということをご存じでしょうか。多少摩耗しても、とりあえず雨は拭えるからと放っておかれがちです。おそらく、雨が降らない限り使用することがないからなのでしょう。特にウイークデーにはあまり乗ることがなく基本クルマは週末や長期の休みの時にしか乗らないという方は、ちょっとくらいワイパーが劣化していてもあまり気にしないという方が少なくありません。

「今日は面倒だから次の機会に交換すればいいか…」などと考えているのではないかと思います。また週末に雨が降るようなことがなければ、その劣化に気が付いていない可能性もあります。

しかし、いざゲリラ豪雨に遭遇した際にワイパーを作動させたらまともに拭き取りのできない、というようでは危険です。豪雨で視界が確保できない中ワイパーなしで走行するなどそれこそ自殺行為でしょう。安全なドライブのためにはワイパーのコンディションには常に気を付けておくべきなのです。ある程度劣化や摩耗していることに気が付いたら極力早めに交換しなくてはいけません。

その頻度ですが、最低でも1年に1回です。ワイパーはゴム製品であり、摩擦による負荷や紫外線や大気の影響によって徐々に劣化が進んでしまうもの。ゴムとしてのしなやかさが失われれば、たとえ摩耗が進んでいなくても本来の役割を果たすことはできないのです。

交換を忘れていて、ある日使ってみたら激しいビビり音がしてまともに拭き取れなかった、では困るでしょう。さらに最悪は作動させてみたらワイパーゴムがちぎれてしまったなどというケースです。ワイパーとして役目を果たせないだけでなく、ワイパーブレードでフロントウインドーを傷つけてしまうかもしれません。そうなれば最悪はガラス交換なんてことも。リース車ならそれが原因で、クルマ返却時に違約金が発生してしまう可能性だってないとはいえません。そんなことにならないように、ワイパーは定期的に交換する習慣をつけておくべきなのです。

1年に一回はワイパーを
交換する習慣をつけよう

しかしそれがリース車だった場合、勝手に自分でワイパーを交換していいものなのでしょうか?メンテナンスリースでカーリースを利用されていれば、整備もカーリース会社に任せてしまうことがほとんどでしょう。パーツ交換なんてしたことがないかもしれません。そもそもそれがメンテナンスリースのメリットですから。

でもワイパーゴムやワイパーブレードの交換程度でわざわざ整備工場やディーラーにクルマを持ち込むのは大げさだとは思いませんか? その手間や時間もばかになりません。じゃあ自分でやっていいのか?カーリースは整備に関しても利用者が勝手に行うのは基本的にNG。どうなのか。

それに関してはワイパーブレードやワイパーゴムは消耗品の一つです。広い意味でウォッシャー液やエンジンオイル、エアクリーナーエレメントなどと同じはずです。こういった消耗品の交換は、ユーザーレベルで行っても特に問題となる可能性は低いでしょう。それこそタイヤの空気圧が低下したからエアを補充したというのと変わらないでしょう。

ただ、もしかしたら、カーリース会社によって、ワイパーのメンテナンスもリース会社の指定する整備工場で行ってください!としていることもあるかもしれませんが、そうであってもDIYで交換しても問題となる可能性は低いはず。気になるようなら一度リース会社に聞いてみるといいでしょう。

1年間で東京ドーム6~7個分の
面積を拭き取っている!?

ワイパーを交換するにあたってまずはワイパーの構造を確認してみます。ワイパーは大きく3つの部位に分けることができます。1つがボンネットの手前側の端から延びるワイパーアーム部分。さらにその先にあるのがガラスにワイパーを密着させているワイパーブレード。そして、そのブレードに装着されているのがワイパーゴムです。クルマによって多少形状の違いはありますが、主にこの3つの部位に分かれています。

ワイパーアームがワイパーゴムをウインドーの表面に均等に押しつけモーターの力で左右にスイングして雨などを拭き取っているわけです。つまりワイパーゴムは雨が降っている限りずっとガラスにこすり続けられていることになります。一般的な使用環境で一年平均9万往復もしているといわれています。思った以上に多くないですか?

その年間の総拭き取り面積は、東京ドームの6~7個分の広さに匹敵するともいわれていますから、あらためて知ると驚きます。ワイパーは1年で交換が必要といわれますが、その拭き取り面積を考えるとむしろよく1年ももつものだな、と思えます。なんといってもワイパーゴムの先端、実際に雨をぬぐい取っている部分はわずか数ミリの厚さしかないのですから。

ではワイパーが劣化してしまうとどのような症状が現れるのでしょう。それは次のようなことです。

  1. ウインドー上に白く細かな筋が残る
  2. 作動のたびにビビり音が発生する
  3. 水滴がにじんだように残ってしまう
  4. 拭きムラができる
  5. ワイパーゴムがちぎれている

一つでも思い当たる節があるならすぐにワイパーが交換するべきでしょう。交換作業自体はとても簡単です。交換用のワイパーブレードやワイパーゴムはカーディーラーやカー用品店。ホームセンターやネット通販などで簡単に入手可能です。カー用品店、自動車ディーラーなどでもやってもらうことができますが、比較的簡単な作業なのでDIYで行っても良いでしょう。

交換用のワイパーは
カー用品店などで簡単に入手可能

ワイパーの交換といってもDIYで簡単に替えることができるのはワイパーブレードとワイパーゴムです。ワイパーアームの交換になると修理になるのでDIYで行うのではなく、リース会社指定の修理工場やディーラーで行うべきでしょう。

おそらくカーリースではそういった作業をユーザーレベルで行うのは推奨されていないと思いますし、部品もメーカーにオーダーしないと手に入りません。ホームセンターやカー用品店で手に入るのはワイパーブレードとワイパーゴムです。

簡単なのはワイパーゴムが装着されたブレードごと交換するやり方です。使用に伴い摩耗するのはワイパーゴムですが、ワイパーブレードも3年も使用すれば金属パーツがサビたり劣化もするのでまとめて交換してしまった方がよいでしょう。ただ価格はゴムだけの方が安いです。

クルマによってワイパーの形状や長さが違うので確認してください。先にワイパーメーカーのホームページなどで確認するといいでしょう。また、カー用品店など品ぞろえの豊富なお店なら車種別の適合表などが用意されているので、そこから探してみいいでしょう。タイプとしてはゴムを支えるパーツがまるでトーナメント表のような形をしたトーナメントタイプと、空気抵抗の少ないエアロタイプなどがあります。

国産車はこのどちらかが多いですが輸入車の場合特殊な形状の物もあるので、カー用品店では手に入らないこともあります。その場合はディーラーで入手するかネット通販で購入することになります。

ワイパーブレードごとでなく、先端のワイパーゴムだけを交換することも可能です。こちらも適合するものを選んで購入します。もし自分のクルマに適合するものが店舗になかった場合は汎用のワイパーゴムを買い古いワイパーゴムの長さを測って同じ長さに切断して交換することも可能です。

交換は古いワイパーブレードを
新しいものに差し替えるだけ

ワイパーを交換する手順を説明します。まずは簡単なワイパーブレードごと交換する方法を説明しましょう。

交換作業をするにあたって、タオルを用意しておいてください。これはワイパーブレードを外したワイパーアームでフロントウインドーのガラスに傷をつけないため、下に敷くためです。準備ができたらワイパーブレードの接続部分を確認します。U字型のフックになっているはずです。エアロタイプワイパーにはカバーがありますがカバーを開けると通常のもの同じU字型フックがあるはずです。

U字部分とワイパーアームの接続部には固定のためのツメやボタンあるので、それを解除しブレードごとスライドさせ引き抜きます。外した古いワイパーブレードと用意した交換用ワイパーブレードを比べて間違いがないか確認しましょう。フロントワイパーは左右で長さが違っているので間違えないようにしてください。確認出来たらU字型のフック部分にワイパーアームの接続部分を引っかけて、カチっと音がするまで差し込みましょう。確実にロックできているか確認します。左右とも交換できたら作業は完了です。

ワイパーゴムだけの
交換なら費用が節約できる

次にワイパーゴムだけを交換する方法を説明します。ワイパーブレードに特に問題なければ先端のゴムの交換だけでOKです。そのほうが交換費用も節約できます。

まずは先ほど手順と同様にワイパーブレードを取り外します。ゴム部分だけの交換なのでワイパーブレードを外さなくても作業はできますが、作業中にワイパーアームでフロントウインドーに傷をつける可能性があるので、外してしまったほうがいいでしょう。

ワイパーブレードを取り外せたら、古いワイパーゴムを確認します。ワイパーゴムには溝があるはずです。そしてその溝の一部にはワイパーブレードの爪が抜けないよう出っ張った部分(ストッパー)があります。この部分から爪を先に外しましょう。爪がストッパーを超えればあとはワイパーゴムを引っ張るだけでスムーズに抜けるはずです。

外したワイパーゴムにはブレード状の金属フレームが付いています。これは流用するので曲がらないように丁寧に取り外しておいてください。

次に交換用に用意したワイパーゴムに先ほど取り外した金属フレームを取り付けたら、ワイパーゴムの溝をブレードの爪に通しながら差し込んでいきます。爪が溝からはずれないように丁寧に作業してください。

奥までしっかり差し込んだら最後にワイパーブレードのすべての爪がワイパーゴムの溝にキチンとはまっているか確認しましょう。問題なければ新しいワイパーゴムを装着したワイパーブレードをクルマのワイパーアームに戻して完了です。

ワイパーは運転席側、助手席側の左右に二本と、リアウインドー用(セダンやクーペなどではないものもあります)があります。リアウインドー用は使用頻度が低いので、劣化が進んでいないようなら別に機会に交換しても構いません。しかしフロントウインドー用は必ずまとめて交換しましょう。片方だけ交換すると拭きムラになったり、抵抗のバランスが崩れ動作の妨げになるので一度に交換するのがベストです。

すべて交換し終えたら最後に動作をチェックします。ビビり音がぎこちない動きをするようであればワイパーゴムがキチンとはまっているか確認しましょう。ウインドーコーティング剤を施工しているとビビり音が発生する場合があります。ウインドーコーティング剤を落とすか、ウインドーコーティング剤に対応したグラファイトの入ったワイパーに変えると良いでしょう。これで交換作業はすべて終了です。

クルマのお手入れ入門として
ワイパー交換に挑戦してみよう

ワイパーはさほど使用していなくても経年によって劣化が進んでしまうものです。特に日本のような寒暖差や湿度の変化の大きな地域では、ワイパーに使われているゴムが傷みやすく、1年もすれば拭き取り性能は落ちてしまいます。長持ちさせるためには水に濡らし、固く絞ったウエスなどで定期的にワイパーやウインドーの汚れを拭き取ってあげるだけでも劣化の進行は遅らせることができます。

しかし、前回のワイパーの交換からすでに一年以上経過しているのであれば、すぐにでも交換するのが間違いありません。交換はDIYで行えるので、クルマのメンテナンス経験がないという方でも決してむつかしくありません。ワイパー交換などちょっとしたことでも自分の手でお手入れを行えばカーリース車であってもマイカーとしての愛着は増すはずです。ぜひ挑戦してみてください。