クルマのカスタマイズ、ドレスアップの手法の一つとしてローダウンというのがあります。ローダウンとは、ノーマルの状態よりもクルマの車高を下げて、視覚的な安定感を演出するというもの。ようはそのほうがかっこよく見えるのですね。また、クルマの重心を下げることによってコーナーでの安定化が増し、ハンドリングが向上するといった機能面でのメリットも生まれます。

そんなローダウンですが、確かに格好はいいのですが自分の所有者ではないカーリース車の場合、さて手を加えていいものなのでしょうか?改造だから当然ダメ?でも、調べてみると絶対にNGとは限らないようなのです。条件や注意することもありますが、車種によってはローダウンが可能なケースもなくはない。でも、それいったいどのようなケース?またローダウンする際、気を付けなくてはいけないことは何なのか、調べてみました。

ドレスアップ、カスタマイズの
第一歩はホイール交換

クルマのドレスアップの第一歩といえばホイールの交換です。純正にはないスタイリッシュな大径アルミホイールをクルマに履かせることで、クルマのルックスは大きく変わり、大きな満足感が得られます。そのため多くのクルマ好きがわざわざ純正から高価なアルミホイールへと交換を行っているのですね。

でも、本来アルミホイールを装着する目的はドレスアップではなくチューンナップでした。バネ下(クルマのバネ、コイルスプリングなどの下に付いているパーツのこと。サスペンションアーム、ブレーキキャリパーやローター、ホイール、タイヤ他)の軽量化が本来の目的だったはずです。純正の重い鉄ホイールよりも軽量なアルミホイールやマグネシウムホイールなどを装着することで、バネ下の重量が軽くなりサスペンションが動きやすくなって、路面への追従性も上がり乗り心地やハンドリングが良くなるからです。その効果は同じ重量をボディで軽量化するより、4~10倍も効果的だともいわれています。そのためクルマをカスタマイズするならまずはホイールといわれているのですね。

とはいえそのように機能面での性能向上よりも、多くの人はやはり見た目の変化、ドレスアップを目的として交換するケースがほとんどでしょう。やはりスタイリッシュなホイールはクルマの足元を引き立ててくれますからやってみたくなるもの。特にドレスアップが基本許されていないカーリースでも、ホイールの交換だけは基本楽しむことができます。カーリース利用者にも許された数少ないドレスアップの一つなのです。

でもカーリース車なのにホイールは交換していいのか?断言はできませんが、すべてのリース会社ではないとはいえ保安基準に適合するホイールであれば基本OKと判断されているようです。そもそも冬場にスタッドレスタイヤに交換する際、社外品のホイールが使われることも多いですよね。それがOKで夏タイヤだけホイール交換NG(限度はありますが)とするほうがむしろ不自然ですよね。

ホイールを交換すると
次にやりたくなるのがローダウン

ただ、クルマに一つ手を加えると、さらに一歩進んでドレスアップしたくなるのがカスタマイズの沼。特にホイールを交換すると、次に気になりだすのがフェンダーとタイヤの隙間です。この隙間を埋めてもっと格好良くしたい。どうせならローダウンもしてみたい。なんて気になってくるものなのです。

でも、ホイールの交換はホイールを入れ替えるだけなのでカーリースでも許されているのでしょうが、チューニングパーツである車高調などサスペンションを交換して、車高を下げるのはさすがにダメな気もしませんか。ドレスアップの範疇を超えて、本格的なカスタマイズやチューニングになってしまうのではとも思えます。実際のところどうなのか?やっぱりローダウンは一切NGなのか調べてみました。

リース車でローダウンを
楽しむことは不可能じゃない


(引用:トヨタ公式HP)

結論からいいます。すべてのローダウンが絶対にNGというわけではありません。一部のクルマではローダウンも可能なケースもあるのです。もちろんカーリースで利用できる車種全部ではなく、車種も限られます。でも、条件次第では不可能ではないのです。ではその条件とはなんなのか?

それは、純正オプションパーツにローダウンサスペンションが用意されているかどうかです。車種はごく限られていますが、例えばトヨタのC-HRなどはその一台。

C-HRには純正のディーラーオプションパーツとしてTRDパーツの「GRサスペンションキット」が用意されています。その価格は13万2,000円とちょっとしたパーツメーカー製の車高調並みですが、純正のディーラーオプションであるというのが重要なポイントです。ちゃんとディーラーオプションカタログにも掲載されているのです。

つまり、トヨタディーラーで購入、装着することができ、1年間2万km保証もついているのです。そしてこれを装着すればC-HRの標準グレードならオリジナルより約20mmダウン。そしてGR SPORTならオリジナルより約17mmダウンとなります。

ローダウンの20㎜は決して多くはありませんが、それでも印象は大きく変わります。タイヤとフェンダーの隙間も相当小さくなり、低重心でスポーティなイメージをしっかりと演出できるでしょう。それになんたって新車購入時に純正のオプションパーツとして装着できるのですから純正オプションのアルミホイールを装着するのと基本的には変わらないわけです。

あくまで自動車メーカーが用意した純正のオプション。部品そのものは1年2万キロ保証ですが、装着したからといって改造と判断されることもなく、クルマの保証が受けられなくなる、などということもないのです。それでいて、カスタムカーらしいローダウンが可能となるのですからこれは大きな魅力ではないでしょうか。

初めからローダウンされている
純正コンプリートカーもある


(引用:トヨタ公式HP)

前述したとおり、このような純正オプションとしてローダウンサスペンションが用意されているのはごく一部の車種だけです。ほとんどの車種には用意されていません。メーカーとしてはノーマルの状態がいわば完成形なので仕方がないといえば仕方がありませんが。

ただしパーツではなくコンプリートカーとしてなら用意されている場合も少なくありません。例えばトヨタのGRスポーツ、ホンダのモデューロXシリーズなどがそうです。これらはメーカー純正のコンプリートカーで、メーカーが自ら手を加えたカスタマイズモデル。特に走りの面を強化したアップグレードバージョンというイメージでしょうか。

例えばステップワゴンのモデューロXなら、専用のエアロパーツやアルミホイールに加えて専用チューニングのサスペンションが組み込まれています。そして車高はベースのノーマルステップワゴンから15㎜のローダウンとなっているのです。これならあとからローダウンする必要もありませんね。それにGRスポーツやモデューロXシリーズなら、コンプリートカーといっても、いわばグレードの一つとして設定されているクルマ。なので、購入するのではなくカーリースであってもおそらく選ぶことができるはずです。

トータルでカスタマイズされているので後から装着した車高調などよりもバランスが良く、信頼性などの面でも安心です。ただしその分ちょっとお高くなります。例えばトヨタのアクアなら、Gグレードのベース車が212万6,300円に対して、GグレードをベースとしたコンプリートカーG“GR SPORT・17インチパッケージ”は261万300円です。その差は50万円ほど。でも、その手間や完成度を考えると決して高くはない。むしろ賢い選択かもしれません。

もし、ローダウンがしたいのならこのように純正パーツとしてローダウンサスペンションが用意されているクルマを選ぶか、またはメーカーの手によってローダウンされたコンプリートカーを選ぶというのがおすすめです。

でも、自分の欲しいクルマにそういった純正ローダウンサスペンションやコンプリートカーが用意されていなかった場合はどうすればいいのか?カーリースの場合は残念ですがあきらめた方が賢明かもしれません。あきらめきれないからといってくれぐれも勝手に改造するのはやめてください。「パーツを交換するだけだし、あとでちゃんと戻せばいいんでしょう?」などと安易に考えるのはNG。なぜなら車高を下げるという行為には大きなリスクも伴うからです。

先進安全機能カメラやソナーに
悪影響を与えてしまうことも

そのリスクとは安全機能への影響です。今クルマを選ぶなら優先すべきはなんといっても先進安全機能でしょう。レーダーやカメラを使用した衝突被害軽減ブレーキに不注意による事故を防いでくれる急発進抑制機能。そして踏み間違い事故防止機能に加え運転を支援してくれる車線逸脱警報にACC(追従クルーズコントロール)などもそうですね。おそらくこれから新車を購入するのであれば、最も重視するべきスペックといっていいでしょう。

そんな先進安全機能ですが、ローダウンすることで悪影響を与える可能性があるのです。なぜなら、先進安全機能を備えたクルマには、周囲の状況を検知するためにレーダーやカメラセンサーなどが備わっています。

中でもカメラはより遠くまで見渡せるようにクルマの一番高い位置、フロントウインドウのルームミラー裏などわざわざ高い位置に設置しています。そのほうが遠くまで検知できるからですね。それなのに車高を下げてしまえば肝心のセンシング能力をスポイルしてしまうかもしれません。本来の機能が発揮できず、防げていたはずの事故につながってしまう危険性もあるのです。

カメラやレーダー、センサーのセッティングは非常に緻密に行われているのでクルマのセッティングがわずかに変わっただけでも大きな影響を与えてしまいます。

例えば前述したC-HRの純正サスペンションキットですが、もし装着した場合、別に用意されているメーカーオプションの「インテリジェントクリアランズソナー」との同時装着ができなくなります。理由は障害物などを検知してくれるソナーが本来の機能を果たせなくなる可能性があるからです。

格好良くしたいからと安易に大幅なローダウンを行えば、いざというときに肝心の先進安全機能が働かず、重大な事故につながってしまうかもしれないのですね。せっかく最新のクルマを選んだのに、そんなことは絶対に避けたいですよね。ですから安易に車高調などを装着するのは避けるべきなのです。

特にカーリース車の場合は、クルマに手を加えるカスタマイズそのものがそもそもNGとなっていることがほとんど。もし、それがわかればリース満了後のクルマを返却の際に、査定が大幅に下がったり、違約金が発生してしまう可能性があります。勝手にローダウンして、自分や家族の安全を犠牲にして見た目を格好良くしても、得られるものは自己満足だけ。最後には高額な違約金を払うことになるかもしれません。そんなの絶対に嫌ですよね。

ローダウン車が欲しいなら
メーカー純正を選ぶのが間違いなし

とはいえローダウンは絶対にダメということではありません。メーカー純正のコンプリートカーでも15㎜~20㎜程度のローダウンは行われているので、そのレベルであればセンサーのキャリブレーションなどによって補正可能で、先進安全機能への影響もほとんどないのでしょう。コンプリートカーならそういったことの検証されているはずなので、もしローダウンがしたいのであれば、やはり自動車メーカーの“純正“を選ぶのが間違いありません。

ただし、その車種にコンプリートカーが用意されていても、カーリース会社によってはグレードの選択が限られている場合があります。メーカー純正のローダウンが選べるコンプリートカーをリースで利用したいなら、そういったリクエストにも対応してくれるカーリース会社探してみるといいでしょう。

本来用意されているクルマでない場合、多少割高になる可能性はありますが、リース期間は5年や7年など長くその間付き合っていくリース車です。多少負担が増えても安全で、なおかつ自分の好みに合ったクルマを選ぶのが一番ではないでしょうか。