大はCX-8から、小はCX-3まで大中小合わせて現在国内向けのSUVでは6車種(CX-30EVを加えて)をラインナップするマツダ。そんなCXシリーズの中でもマツダのグローバル販売台数では4分の1を占めるというマツダにとっての重要な主力モデルCX-5が2020年12月にマイナーチェンジを実施しました。
マイナーチェンジなので大きな変更はありませんが、ディーゼルエンジンのパワーが10PS(7kW)アップしたことが注目すべきポイントでしょう。その他何が変わったのか? また既存ユーザー向けに、CX-3のようなプログラムアップデートは実施される可能性はあるのか調べてみました。
目次
スポーティカーのマツダから
プレミアムSUVのマツダへ
(引用:マツダ公式HP)
現在、国内ブランドとしては屈指のSUVラインナップを誇っており、一部ではSUV王国とも言われているマツダ。かつてはRX-7やRX-8などちょっとやんちゃでスポーティなモデルがマツダのアイコンだったのですが、今やその面影もありません。
ロードスターを残してくれているところは偉いと思いますが、古くからのマツダファンとしてはさびしくもあります。ですが、SUV全盛の今の時代、こういったマツダの姿勢はおそらく正しいのでしょう。
そもそもマツダがミニバンを廃止し、SUV路線に大きく舵をきったきっかけ的なクルマが2012年に発売された初代CX-5です。躍動感あるスタイリッシュなフォルムに国内でも扱いやすいサイズそして、ディーゼルエンジンを設定した幅広いパワーユニットのラインナップが高く評価され、あっという間に人気車種へと躍り出て、マツダにとっては非常に重要な車種です。
現行モデルは2017年に発売となった二代目で、キープコンセプトながらさらに洗練し磨き上げたデザインと、より高級感あるインテリアや乗り味によって現在もマツダにとっての主力車種となっています。
ちなみにマツダのSUVは現在いったい何車種あるのか。整理してみると、まず一番小さいのがCX-3で、そのCX-3よりも少し大きいのがCX-30。そして、主力車種のCX-5にCX-5のロングモデルともいうべきCX-8があります。これらに加えてSUVクーペともいうべきMX-30とそのEVモデルのMX30EV。数えてみると、国内向けには現在全部で6車種ものSUVをラインナップしています。
さらに、かつてはCX-7もありましたし海外ではさらに大きなCX-9や、中国向けのCX-4なんてクルマもあります。単純に数字が大きいほど車体が大きくなると思えばいいのですが30だけは例外です。しかしここまでくるともはやマツダはSUV王国といってもいいかもしれません。
もちろんコンパクトやセダン、ロードスターなどスポーツカーもラインナップしていますが、主力は間違いなくSUV。それもプレミアムなSUV。だからでしょうマツダは特にSUVのCXシリーズの商品力強化に特に力を注いでいます。
例えば毎年行われるマイナーチェンジなどもその一環です。大きな変更ではなく細かくバージョンアップを実施することで、新鮮な魅力を提供し続けているのです。
そんなバージョンアップ的マイナーチェンジが2020年の12月、CX-5に実施されました。その内容はどのようなものなのか、次のパートから詳しく紹介しましょう。
SKYACTIV-D 2.2Lディーゼルエンジンを
制御プログラムの変更で10PSパワーアップ
(引用:マツダ公式HP)
CX-5に今回の実施された主な変更をプレスリリースより抜粋すると、以下のようになっています。
①SKYACTIV-D 2.2: ディーゼルエンジンらしいパワフルな走りを強化
2.2Lディーゼルエンジンを140kW(190ps)/4,500rpmから147kW(200ps)/4,000rpmへとパワーアップ。高速道路での合流や追い越加速シーンでのパワフルな加速を持続的に発揮可能に。また、アクセルペダルの操作力を最適化(20%ほど重くなっている)することで、SKYACTIV-D 2.2の強力なトルクを精度よく、加減速コントロール性をより意のままにコントロールできるように改善。
②SKYACTIV-DRIVE(6AT): (SKYACTIV-G2.5Tを除く)応答性の向上
6速オートマチック(AT)「SKYACTIV-DRIVE」の制御プログラムを変更し、素早くアクセルを踏み込んだ時、「ドライバーは早く加速をしたい」とクルマが判断し、これまでよりも素早く変速することで、ドライバーが欲しい加速力を瞬時に発揮するようにサポート。
③快適装備:快適性の向上
センターディスプレイのサイズを大型化(8インチ→8.8インチor10.25インチ採用)。またマツダコネクティッドサービスを導入。
④特別仕様車「Black Tone Edition(ブラックトーンエディション)」の設定
PROACTIVEグレードをベースとして、黒で引き締められた外観と、赤の差し色を取り入れた内装、さらに専用のシートなどを組み合わせスポーティさを演出した特別仕様車を設定。
⑤100周年特別記念車に25Sを追加設定
CX-5の100周年特別記念車に、新たに低速から高速域まで滑らかな走りが特徴のSKYACTIV-G 2.5を追加で設定。マツダがマイナーチェンジではなく商品改良とうたっている通り、大きな変更点はありません。既存のCX-5オーナーもこれならマイカーに古さを感じるようなことはないでしょう。
しかし、気になるのは2.2Lディーゼルエンジンのパワーアップです。10PS(8kW)という数値は決して大きくはありませんが、190PSが200PSになったというのは結構なインパクト。従来型のディーゼルエンジンでもパワーは十分だったといわれていますがやはり200PSと190PSでは数字から受ける印象が大きく違います。これだけはちょっと悔しいかもしれません。
ちなみにこのパワーアップは、エンジンそのものに手を加えたのではなくエンジンの制御プログラムのバージョンアップによって実現しているとのこと。ハードウエアの変更を行ったのではなくプログラムを変えるだけでパワーアップが可能というのはチューニングに詳しい人だったらご存じだと思いますが、それをメーカー自身が実施したのですね。ようするにもともとこの2.2Lディーゼルエンジンにはそれだけのマージンがあったということなのでしょう。
だったらはじめから200PSで出したほしかった気もしますが、190PSモデルの実走行データを収集した結果、200PSでもOKとなったからこのパワーアップが実施されたということなのだと思います。
6ATの応答性を向上
思いのままの加速が可能に
(引用:マツダ公式HP)
また、ディーゼルエンジンのパワーアップにあわせて6速ATの制御プログラムにも手が入っています。アクセルを踏み込んだ時の応答性を向上させている、とプレスリリースに書かれています。ドライバーがアクセルを速く踏んだ際に、クルマが「このドライバーは素早く加速が欲しいのだな」と、意図を組んでくれ、改良の前のCX-5よりも素早く変速して加速することができるというわけです。歯切れのよいシフトチェンジを可能としてことで、より思うままに加速をコントロールすることができるようになっているということでしょう。
ちなみに、この6ATの改良に関しては、ディーゼルエンジンモデルだけでなく2L、2.5Lの両ガソリンエンジン車にも反映されているということです。
このような改良を受けた結果、その走りはどうなったのか? CX-5の各種自動車メディアのインプレッションを見る限り10PSのパワーアップによって、その走りは確実に変わっているようです。プレスリリースで「高速道路への合流や追い越し加速シーンでのパワフルな走りを強化」といっているように特に高速域での伸びが良くなったと評価されています。
またアクセルペダルの改良のよって、少し重くなっているとのことですが、これによってタッチが上質になりコントロール性も高まっているという評価もされているようです。
ただ、これらの改良に関してですが、その変化の度合いは劇的な進化というほどではなく、新旧を乗り比べてみると追い越しや合流といったシーンでよりスピーディな加速ができるようになった、と気が付く程度とのこと。明らかに速くなっている、となれば、改良前モデルのオーナーとしては納得いかないでしょうが、その程度の進化ならたいして気にならないのではないでしょうか。
ワイドディスプレイに車載通信機も標準化
またスマホアプリとの連携も可能に
(引用:マツダ公式HP)
その他気になるポイントとしてはセンターディスプレイのサイズが8インチから8.8インチまたへ10.25インチへと大型化したことでしょう。さらにマツダコネクティッドサービス(マツダコネクト)の最新バージョンが導入されたことですね。
ディスプレイは見た目にもかなり変わっています。大きくなったことよりも横長タイプのワイド画面となったことのほうが違いは大きいでしょう。
ナビ画面を表示した際にも詳細地図と広域地図を表示しても狭苦しさがありません。また、360度モニターが全グレードに標準化されたので、このワイドモニターと合わせて周囲を広く一目で見渡せるようになっています。
また、CX-5すべてのモデルにDCM(車載通信機)が標準設定となり、コネクティッドサービスとスマートフォンアプリ「MyMazda(マイ・マツダ)」との連携によるサービスが提供されるようになりました。
では、どんなことができるようになったのか? 例えば、メンテナンス部品の交換時期やパーツのコンディション、燃料の残量や走行距離、ドアの施錠状態などが自宅に居ながらアプリで確認することが出来ます。
またドアやトランクの締め忘れやハザードランプのつけっぱなしなどがあった場合はアプリで通知してくれるという親切機能も。さらに、DCMが標準化され24時間マツダエマージェンシーサービス(緊急通報サービ)が利用できるようになったことで、エアバッグの作動や衝突などを検知すると自動的にオペレーターに通知して救急や警察の手配をしてくれます。24時間ドライバーをサポートしてくれる充実したサービスが利用できるようになっているのですね。
ちなみに車載通信機は標準装備ですが、このコネクティッドサービスを利用するには別途店頭などで契約手続きとサービス開始手続きが必要です。費用に関しては購入車両の初度登録日から3年間は無償。つまりタダ。4年目以降の料金や支払い方法は今のところ未定とのことですが、とりあえず今のところタダなら使わない手はないですね。
こういったまるで高級車に提供されるような充実したサービスが提供されるというのは、マツダがプレミアムブランド化を目指しているからなのかもしれません。
ハードではなくソフトのアップグレードなら
既存車で改良は可能なのでは?
(引用:マツダ公式HP)
CX-5の改良は新しいオーナーにとって非常に魅力的ですし、それでいて従来のオーナーにとっても見た目が大きく変わったわけではないので、ある程度納得できるような内容となっています。
ただ、ちょっと気になるのがディーゼルエンジンのパワーアップと6ATの改良に関してです。今回行われたこの改良、ハードウエアの変更ではなく制御プログラムのアップグレードによって実現したとされています。つまり、改良前のCX-5にもこのアップデートプログラムをインストールすれば、パワーアップが可能なのではないのかという疑問です。
「そんなの、今まで実施されたことなかったし絶対無理でしょ!」と、多くの方は思うかもしれません。でも、筆者は決してあり得ない話ではないと思います。なぜならつい先日、同じマツダのCX-30とマツダ3に制御プログラムなどを最新化するサービス「MAZDA SPIRIT UPGRADE(マツダ スピリット アップグレード)」が提供開始すると発表されたからです。
マツダ スピリット アップグレードは
CX-5にも実施されないのか?
(引用:マツダ公式HP)
このマツダ スピリット アップグレードはマツダ3とCX-30初期型モデルを対象にしたもので、制御プログラムのアップデートによって、エンジンとATトランスミッション制御プログラムを最新化するというものです。
CX-30は2020年12月にCX-5同様商品改良が実施されています。この改良によってSKYACTIV-X 2.0ガソリンエンジンのエンジンパワーを10PS(8kW)アップ! さらにSKYACTIV-D 1.8ディーゼルエンジンも14PS(10kW)パワーアップをしています。
そして、マツダ スピリット アップグレードを受けると、この改良モデルと同等の性能が従来のCX-30やマツダ3でも得られるようになると発表しているのです。露骨にパワーがアップする、とはアナウンスされていませんが、おそらく同等のパワーが実際には得られることになるのでしょう。
でも、なんでこのような後からプログラムを書き換えることで性能を変更するということが可能となったのか?それは2020年11月に道路運送車両法の一部が改正されたためです。これによって使用過程時の車両へのソフトウェアアップデートで性能変更や機能追加(改造)することができる(ゆるされる)ようになったからなのです。
法律が変わったことによって、こういった制御プログラムによる性能向上は今後他のメーカーでも実施される可能性も高いでしょう。そうなると、プログラムの書き換えだけで最新スペックが手に入るようになるわけです。これはぜひとも期待したいですね。
CX-5でマツダ スピリット アップグレードが
実施されるかどうか今のところアナウンスなし
(引用:マツダ公式HP)
でも、ということは、CX-5でも同じように既存のオーナー向けにマツダ スピリット アップグレードが提供される可能性もあるのでは? これに関してマツダはまだ実施するともしないとも発表していません。(2021年2月末現在)
ただ、可能性としては期待できるのではないかと筆者は考えます。なぜならマツダ3とCX-30のマツダ スピリット アップグレード実施の発表の際、このアップグレードが第一弾であるとも発表されているからです。つまり第二弾、第三弾もきっとあるということなのでしょう。
もしかしたらすべての年式ではなく、対応年式が限られるかもしれませんし、また無償ではなく有償となるかもしれません。期待してみてもいいかもしれません。改良前のCX-5オーナー、またカーリースで利用されている方もちょっと期待してみてもいいかもしれません。