コンパクトカーのデミオと共に、現在のマツダを支える主力ともいえる車種がクロスオーバーSUVの「CX-5」です。最新のモデルは2017年2月2日にフルモデルチェンジを受けて発売されたKF型となります。

現在国内に投入されているマツダのCXシリーズはCX-3、CX-5、CX-8(海外向けでは中国向けのCX-4や北米向けのCX-9もあり)の3車種(海外では中国向けのCX-4や北米向けのCX-9もあります。)です。その中でもCX-5は日本国内でも扱いやすいサイズかつ、スタイリッシュなデザインを持ち、スペック的にも充実したコストパフォーマンスの高いSUVとして高い人気を誇っています。そんなCX-5が新型投入からわずか1年しかたっていない2018年3月8日に、驚くことにエンジンのラインナップが刷新されるという大幅なマイナーチェンジを受けました。

まだまだ新型として人気を維持していたこのタイミングで、なぜそのようなことが行われたのか? また刷新されたエンジンはどのように進化したのか? 発売直後にCX-5を購入した人も、またこれから新型のCX-5を手に入れようと狙っている人もきっと気なるはず。そこでは、マイチェン後のCX-5がどのように進化したのか、詳しくチェックしてみましょう。

3種のパワーユニットを
全てバージョンアップ

 

CX-5は国内だけでなく、実は海外でも高く評価されているSUVです。それを裏付けるのが2018年3月28日にニューヨーク国際自動車ショーの会場で結果が発表された「2018 ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」。この国際的な自動車賞で、マツダCX-5は日本車としては唯一、トップ3のファイナリストに選出されました。

残念ながらグランプリの受賞は逃しましたが、最終選考の3車種にまで選ばれた(ちなみにグランプリはVolvo XC60)のですからとても名誉なこと。それだけ高く評価されているということの証明でしょう。

でも、このワールド・カー・オブ・ザ・イヤーの対象となったのは、当然ですが最新のCX-5ではなく、マイナーチェンジ前のCX-5です。つまり先代モデルでもそれだけ完成度が高く魅力的なクルマであったということ。それなのに、たったの1年で搭載パワーユニットのガソリンエンジンも、ディーゼルエンジンも変更が実施されたのです。ではどのように変わっているのか?

 

まず2リッターのガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.0」ではピストンのスカート形状や排気ポートの形状が見直され、さらに新ノズル付き拡散インジェクターを採用することで実用燃費やトルクの改善、さらに静粛性や環境性能も向上が図られました。

カタログ上のパワーは155PS/6000rpmから156PS/6000rpm、トルクが196 N・m〈20 kgf・m〉/4000 rpmから199 N・m〈20.3 kgf・m〉/4000 rpmへとわずかにアップしています。こうみると数値上のスペックには大きな差がありませんが、改良点を考えると実燃費では十分な向上が期待できるはずです。 

 


(引用:マツダ公式HP)

 

またガソリン2.5リッターの「SKYACTIV-G 2.5」ではピストンや排気ポートの改良以外に、さらに大きな変更が加えられています。それが「気筒休止」の採用です。気筒休止とは高速道路などエンジンの負荷が低い一定速度での巡航時も4気筒のうち2気筒を休止させるというもの。

つまり低負荷の巡航時には2.5リッター4気筒エンジンが1.25リッター2気筒エンジンになるというわけです。排気量が減るのですから当然実用燃費は向上します。スペック的にはパワーが従来と同一で、トルクが251 N・m〈25.6 kgf・m〉/3250 rpmから252 N・m〈25.7 kgf・m〉/4000 rpmへとわずかに向上しています。カタログスペック上の燃費の数字はほぼ変わっていませんが、実際に高速道路などを走行した際の実燃費では大きな差が得られるはずです。

ただ走行中に4気筒が2気筒エンジンになってしまうというと、いわゆるハーレーのエンジンのようなドコドコという鼓動感や振動があるのではと思ってしまいます。しかしそれもトルクコンバーターに振り子式の重りをつけることで振動を低減することに成功しているとのこと。ネット上の試乗レポートを読む限り、4気筒と2気筒の切り変わりはドライバーがほぼ気づけないレベルといいますから、どうやらそういった心配もいらないようです。

ディーゼルエンジンはCX-8と
同様の新世代スペックに進化


(引用:マツダ公式HP)

さらに大きな変更があったのが2.2リッターディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D 2.2」です。こちらは簡単にいってしまうと、上級モデルであるCX-8に先行して投入されていた新世代の2.2リッターディーゼルエンジンがそのままCX-5に新投入されたというもの。

排気量は変わっていませんがレスポンスが向上し、燃費性能もアップ静粛性や環境性能も向上しています。気になるパワーは175PS/4500rpmから190PS/4500 rpmへと15PSアップ。さらにトルクも420 N・m〈42.8 kgf・m〉/2000 rpmから450 N・m〈45.9 kgf・m〉/2000 rpmへと+3.1kgf・mもアップしています。

トルクが45.9kgfというのは、ガソリンエンジンなら4000ccクラスに匹敵するレベル。もともとトルクフルで走りに定評のあったディーゼルエンジンですが、より力強くなった上に、レスポンスや静粛性も向上しているというのですから、先代モデルを購入した人は悔しい思いをしているかもしれません。

ただ、それも比較しなければ分からないレベルでしょう。先代のディーゼルエンジンも性能的には十分に最新スペック、走りに不満を覚えることはないはずです。

今回のマイナーチェンジでは、このようにパワーユニットの変更が主で外観デザインにはほとんど手を入れられていません。つまり見た目にはほぼ変わらないということ。マツダはライバルに比べると頻繁にマイナーチェンジを繰り返す傾向がありますが、マイチェン前に購入したオーナーに配慮して、できるだけ外観上の変更は少なめにしているのかもしれません。あくまで筆者の想像ですが。

パワーユニット以外にも
細かなマイナーチェンジを実施


(引用:マツダ公式HP)

その他の変更点としては、これはLパッケージのみですが、フロントドア/リアドアのパワーウインドーに「自動反転機構およびワンタッチ&タイマー付」を新採用しています。さらにフロントドア/リアドアのパワーウインドースイッチにもイルミネーションが追加されています。

他にはある一定の速度以上に達したらオートでドアをロックしてくれる車速感応式オートドアロック(衝撃感知ドアロック解除システム付)が、全グレードに標準装備となりました。

さらに、こちらはメーカーオプションですが最新の「360度ビュー・モニター」を新たに設定しています。まるでクルマを真上からカメラでとらえたような表示が可能となり、死角や障害物との距離を目視しながら安全に駐車などが行えるようになりました。もともとCX-5はバックカメラとサイドカメラが全グレード標準装備でしたが、狭い駐車場ではこの機能があればさらに安心ですね。

また、リモコンのボタンやラゲッジの脇のタッチセンサーでリアゲートの開閉が行えるパワーリフトゲートのセットオプションの設定グレードを拡大しています。SUVは背が高いので、身長のあまり高くない女性ドライバーにとってリアゲートの開閉は思いのほか大変。これがあれば荷物の出し入れも楽になります。お手頃グレードでも選べるようになったのはうれしい変更といえるでしょう。

他にはマツダコネクトのナビ機能に、自車位置演算ユニットを搭載することで安定した高精度測位を実現しています。これで、高層ビル街や高速道路の高架下でも自車位置の検知が可能になっています。地味ですがこれも案外重要なポイントではないでしょうか。

価格もマイナーチェンジに合わせて一部改定されています。こちらが価格表です。

 

グレード名 駆動方式 価格(税込) JC08モード燃費
20S 2WD 2,494,800円 16.0
20S PROACTIVE 2WD 2,689,200円 16.0
25S 4WD 2,721,600円 14.2
25S PROACTIVE 4WD 2,916,000円 14.2
25S L Package 2WD 2,986,200円 14.8
25S L Package 4WD 3,213,000円 14.2
XD 2WD 2,808,000円 19.0
XD 4WD 3,034,800円 18.0
XD PROACTIVE 2WD 3,002,400円 19.0
XD PROACTIVE 4WD 3,229,200円 18.0
XD L Package 2WD 3,299,400円 19.0
XD L Package 4WD 3,526,200円 18.0

 

ベースグレードはである20Sなどは、246万2400円から249万4800円へとわずかにアップしていますが、PROACTIVEや、Lパッケージなどの人気グレードは価格据え置きです。マイナーチェンジの内容から考えるとお得度が増したといっていいでしょう。特にXD PROACTIVEやXD Lパッケージは、性能が大きく向上した新型のディーゼルエンジンを搭載した上に装備も細かく進化しているのに価格据え置き。もともとこのグレードを狙っていた方にとってはより魅力的になったというわけですね。

今後のマイナーチェンジ情報も要チェック

登場からわずか一年でのマイナーチェンジで、パワーユニット全てを刷新という驚くほど大胆なテコ入れ。そもそも、現行型のCX-5は、登場以来評価も高く、また十分に売れていました。それにパワーユニットに対するネガティブな反応もほとんどありません。まだまだ新型車両として十分な魅力を備えていました。

それなのに、このような短いサイクルでパワーユニットの刷新という、マイナーチェンジというにはあまりにも大きな変更を実施した理由は、群雄割拠のSUV市場の中でライバルよりも頭一つ抜け出すには、魅力を磨く地道な進化が必要であるというマツダの判断なのでしょう。

また、新型ディーゼルエンジン投入に関しては、上級モデルと共通化することで合理化を図るとった意図もあったのだとい思います。決して大メーカーではないマツダにとって、同排気量で別スペックのエンジンを複数製造するのは無駄でしかありませんから。ただ、そのおかげでCX-5はより高性能なパワーユニットを手に入れたわけですからありがたい限りです。

しかし、こうなると、2017年に発売された直後にCX-5を購入して肩を落としている方もいるかもしれません。でも先代(というには新しすぎるたった一年前のモデルですが)のCX-5も完成度は高く、クルマそのもの魅力は現在も失われていません。それに、見た目にはほぼ変わりませんから、まだまだ自分は新型車に乗っているんだ! という優越感も味わえるはずです。ですからオーナーの方もがっかりする必要もありません。

ただ、今後CX-5の購入を考えている人にとっては、より魅力の増したCX-5が手に入ることになったわけですから新型にすぐに飛びつかなかったのは賢明な判断だったかもしれませんね。

でも一つ注意点があります。現在のマツダの姿勢では、CX-5は次のフルモデルチェンジまでの間にもさらに細かくマイナーチェンジが施されていくはず。実際すでに新グレードとして2.5リッターのターボエンジンモデルが追加されるという噂(2018年8月現在)もあります。

マイナーチェンジを受けたばかりの現在のCX-5も非常に魅力的ですが、今後どのような変更があるかわかりません。もしかしたら見た目が別のクルマのようになってしまったり、欲しかったグレードがなくなってしまうかも。CX-5ファンは、マツダの情報を随時チェックしておいたほうがいいかもしれません。