2021年11月8日、マツダの主力車種「CX-5」がマイナーチェンジを実施しました。その内容はいわゆるマイナーチェンジを超えたビッグマイナーチェンジともいえるレベルの変更です。

では何がどう変わったのか? 既存のCX-5オーナーは気になるはず。そこで新型CX-5の変更点についてマイチェン前のCX-5と比較しながら詳しくチェックしてみましょう。

マツダのクロスオーバーSUV
ラインナップにおける主力「CX-5」


(引用:マツダ公式HP)

古くからのクルマ好きであれば、マツダといえばRX-7やRX-8、コスモ、ロードスターといったスポーティなクルマのイメージがあると思います。

しかし、それも過去の話。現在のマツダの主力車種といえば間違いなくSUVのCXシリーズです。もちろんコンパクトカーやセダンなどもラインナップにそろえていますが、人気なのは圧倒的にSUVのCXシリーズ。これは疑いようがありません。

もちろんSUVに人気が集中しているというのは何もマツダに限ったことではなく、世界的な傾向ではありますが、マツダのSUVへの力の入れ方はライバル以上といっていいでしょう。

マツダは決して大きな自動車メーカーではありません。上から下まであらゆるタイプの車種をそろえ、すべてに均等に力を入れるというのは規模的に難しい。ですから人気のあるSUVというジャンルに注力するというのは当然であり、ミニバンを捨ててまで(マツダの現ラインナップに売れ線のミニバンはありません)一つのジャンルに力を入れていくというのは、ライバルと戦うための戦略としては正しいといえるでしょう。

実際その舵切りは正解でマツダのCXシリーズが世界で高く評価され売れていることから見てもそれは証明されています。そして、そんなマツダのSUVラインナップの中でも、最も重要で、いわばマツダの屋台骨ともいうべき車種といえば何か。それはミドルサイズのクロスオーバーSUVであるCX-5です。ではCX-5とはあらためてどんなクルマなのか。

CX-5は年次改良によって
毎年細かくアップデートされてきた


(引用:マツダ公式HP)

マツダのCXシリーズが誕生したのは2006年。最初のCXは、今はラインナップにないCX-7でした。CX-7はスポーツカーのようなルックスを持つクロスオーバーSUVとして話題を集め、主に北米マーケットに投入されました。その後日本にも投入されましたが、残念ながら日本では必ずしもヒットとはなりませんでした。

クロスオーバーSUVといえば今では大人気のジャンルですが、当時はまだ日本ではそこまでのブームが起きていなかった上、そのワイドボディ(1,870㎜)が受け入れられず、正直大ヒットとはならなかったのです。結果、残念ながら現在CXシリーズのラインナップに7はありません。

そのCX-7の国内向け販売が終了した翌年の2012年に投入されたのがCX-5です。こちらは世界的なクロスオーバーSUVの人気が高まりつつある中の登場でした。また、この頃になるとコンパクトカーでも3ナンバーが当たり前になりつつあったのでCX-5のワイドボディ(1840㎜)もすんなり受け入れられたのです。

そして、CX-5はそのマツダらしいスタイリッシュで躍動感あるデザインに、質感の高いインテリア、ちょうどいいサイズに実用的な室内空間、さらに走りも良いことからあっという間に人気車種となります。

ディーゼルエンジンを設定したという点も高く評価されたようです。そして2017年に現行モデルであるKF形にモデルチェンジ。ボディサイズはほぼ踏襲されデザインもキープコンセプトながら、より洗練されたデザインや高級感あるインテリア、質感のある走りなど大幅なアップデートによって先代以上の人気車種となっています。

さらに、この2代目CX-5をベースとして、いわばCX-5のロングボディ版ともいうべきCX-8(KE型)も同年に登場3列シートのミニバン的にも使えるクロスオーバーSUVとしてこちらも人気車種となっています。そしてこれらKF型CX-5、KE型CX-8はヨーロッパ車のように毎年年次改良を受け、アップデートが繰り返されその商品力を磨き続けています。

マイナーチェンジの範疇を超えた
フレームにまで手を入れた大幅改良


(引用:マツダ公式HP)

マツダ車オーナーはご存じでしょうが、現在マツダはラインナップする各車を年次改良によって毎年マイナーチェンジしています。ヨーロッパ車などと同じですね。

もちろんCX-5も毎年細かく(エンジンが変わるなど大きな改良もありました)アップデートされてきたのですが、2021年11月8日発表された、マイナーチェンジは今までのマイナーチェンジのレベルを超える大幅なマイナーチェンジとなっています。いわばビッグマイナーチェンジと言えるもの。

現行のKF形CX-5は登場から4年経過しているのでそろそろフルモデルチェンジか?と言われていたタイミングでこのビッグマイナーチェンジですので大きな話題となっているのです。

ではどのような改良が施されたのか。まず新しいマツダ3などに採用されている次世代車両構造技術「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE(スカイアクティブアーキテクチャー)」を導入しています。つまりフレーム構造から改良が施されているということ。

この「スカイアクティブアーキテクチャー」というのはマツダのプレスリリースを読んでみてもどういうものか抽象的でよくわからないのですが、シートからボディ・シャシー・タイヤまでトータルでクルマの構造として有機的な連携させることで、長時間運転しても疲労感の少ない運動性能を高めたのだそうです。加えて快適性や静粛性も向上させているというのが大きな特徴と説明されています。

具体的には、車体に減衰制御構造を導入。クロスメンバーの剛性を強化しつつ構造用接着剤を併用して路面から伝わる振動の入力を素早く収束。その結果クルマからのインフォメーションがより明確になりドライバーの感覚とクルマの動きがより一致してスムーズに走ることができるようになっている。

そして、シートやフレームなどの構造も見直してドライバーがシートに座った際に脊柱がS字カーブの形状で維持されるようにクッション形状などを最適化。理想的な運転姿勢を取ることができるようになり、車酔いなども低減してよりリラックスして運転が可能になった。

さらに、しなやかなサスペンションによって乗り心地もよくなり振動を低減し、静粛性も高くなるとのこと。要するにクルマのシートや構造、フレーム、サスペンションなどを改良して、乗り心地も走りも、質感も静粛性もすべてにおいて向上させたということです。

オフロードの走破性を向上させる
「Mi-DRIVE」を新採用


(引用:マツダ公式HP)

さらに、シフトレバー横のレバーひとつで走行モードを簡単に切り替えることができる「MAZDA INTELLIGENT DRIVE SELECT(略称Mi-DRIVE/ミードライブ)」を新たに採用したという点も注目点でしょう。

これはいわゆるドライブモードの切り替えスイッチで特に目新しいものではありません。従来のCX-5に搭載されていた「ドライブセレクション」をバージョンアップした物と思えばいいでしょう。

新しいのはモードとして、オフロードモードが加わったということです。このスイッチをオフロードモードに切り替えると後輪へのトルク配分が最大化されトラクション性能が向上。さらにトラクションコントロールやG-ベクタリング コントロールもオフロード用に最適化。AT制御もオフロード走行用に切り替わる(ガソリンエンジン車のみ)など、本格的なオフロード走行が可能になります。これならキャンプやウインタースポーツなどトラクションのかかりにくいシチュエーションでも安心して走ることができるでしょう。

ただし、Mi-DRIVEのオフロードモードは今回新たに設定された特別仕様車のフィールドジャーニーのみに搭載となります。その他グレードの4WDモデルでは、従来のCX-5と同様に、オフロード・トラクション・アシスト機能が搭載されています。

これは4WDとトラクションコントロールシステムを協調してタイヤの空転を抑制し、トラクションを引き上げるというもの。オフロードモードほどではないですが、オフロードの走破性を向上させてくれるものなので、本格的なオフロード走行をしないのであればこちらでも十分でしょう。

ビッグマイナーチェンジによる特徴的な機能面の変更点をざっと上げてみましたが、そのほかにも荷室フロアボードを改良しフラット化を実現。ワイヤレス充電(Qi)やハンズフリー機能付きパワーリフトゲートの新採用アダプティブ・LED・ヘッドライトのバージョンアップなど改良点は多岐にわたっています。さらに、エクステリアに関しても進化しているポイントは少なくありません。

フロントグリルやバンパーも変更
立体的な造形で高級感が増している


(引用:マツダ公式HP)

まず先代モデルと比べて大きく変わったのがフロントグリルです。グリルの下側から左右のヘッドランプへとつながる翼のようなラインシグネチャーウイング(クロームメッキ部分)の形状が明らかに変わっています。

形状としてはむしろシンプルになりましたが力強いフレームのような造形はSUVらしさが強調されました。また立体感も増し奥行きを感じさせる精緻な造形は高級感を感じさせます。メッシュ部分にボディカラーに合わせた差し色が入っているのもおしゃれ。

ヘッドライトは、レンズ部分に関して変更がないように見えますがよく見ると発光部が左右との2つの横長楕円形を組み合わせたLEDになっています。

さらにリアのコンビネーションランプもヘッドランプに合わせて横長楕円形を左右に2つずつ並べ、ワイド感を強調するようなデザインとなっています。

バンパーもデザインが変わりました。マイチェン前は複雑なキャラクターラインを組み合わせた開口部を持つスポーティな形でしたが、変更によってよりラインがすっきり整理され、立体感が強調された張りのあるシンプルなフォルムとなっています。高級感も格段に増しているように感じられます。

このようにエクステリアの変更点は多いですが、ボディシェル自体には大きく手は入っていません。グリルやバンパー、ライト類といったディテールの変更が主。おそらくマイチェン前後で何が変わったのかはCX-5オーナーでないと気づきにくいはずです。

あくまでビッグマイナーチェンジの範疇でガラッとは変わってはいないのでマイチェン前のCX-5オーナーも自分のクルマが旧型に見える、などという心配はないでしょう。その点はちょっと安心ですね。

価格はマイチェン前とほぼ同じ
変更内容を考えるとかなりお買い得


(引用:マツダ公式HP)

マイナーチェンジに合わせて新たな特別仕様車も設定されました。それが「Exclusive Mode」と「Sports Appearance」そして「Field Journey」です。特にアウトドアテイストを高めた「Field Journey」は注目の一台なのですが、こちらに関してはまた別の機会に詳しくご紹介しましょう。

気になる価格に関してですが、ガソリンモデルが、20SSmatEdition(FF)の267万8,500円~25S Exclusive Mode(4WD)の375万6,500円となっています。そして、ディーゼルモデルはXD Smart Edition(FF) 299万7,500円~XD Exclusive Mode(4WD)の 407万5,500円となっています。

ちなみにマイチェン前のCX-5の価格はガソリンの20S(FF)の267万8500円~ディーゼルのXD 100周年特別記念車(4WD)の414万1500円となっていたので比べてみると価格的にはほぼ変わっていません。結構な改良点があるわりに価格はキープというのはかなりお買い得と言えるのではないでしょうか。これはうれしいですね。

原稿執筆時点ではまだ発売となっていませんが、半導体不足もあって納車の遅れも予想されますので気になる方はすぐにでもディーラーにチェックしに行ってみてください。一歩の遅れで納車が大きくずれる可能性もあります。できるだけ急いだほうがいいかもしれません。

さらに、カーリースで新型CX-5を狙っているという方も同じです。新しいCX-5に乗りたいのであればとにかくできるだけ急いでリース会社に相談してみるのがベストです。