手ごろなサイズにクーペのようなスタイリッシュなデザイン、そしてミニバンに匹敵する広々とした室内空間を持った使い勝手の良いコンパクトSUV。それがホンダのヴェゼルです。デビューは2013年ですから、すでにロングセラーの域ですがその人気はいまだに衰えていません。コンパクトSUVのライバルであるトヨタC-HRと共に日本におけるSUV人気を今もけん引し続けています。
そんなヴェゼルに2019年2月、以前から噂されていた待望のターボモデルが追加となりました。FFなら1.2t弱と比較的軽量のため、131PSのノンターボエンジンでも必要十分パワーがあり、きびきびとした走りを味わえましたが、新たに、余裕あるパワーユニットを手に入れたことでさらに走りに磨きをかけたのです。
ロングセラーだからゆえに、ライバルのC-HRと比べると人気の面では少し水を開けられていた感がありますが、これでその人気が再び盛り上がる可能性が高そうです。
目次
ヴェゼルには実は
先代に当たるモデルがあった
そもそもヴェゼルはどのような車なのか?過去に同じ名前のクルマがなかったことから突然現れた新しいコンセプトのSUVというイメージをお持ちの方も少なくないかもしれません。
しかし、そうではありません。直接的な繋がりはありませんが実は先代に当たるクルマがありました。覚えている方は多くないかもしれませんが、それが、2006年までラインナップされていたHR-Vです。ルーフが低いホンダ車らしい、シンプルなラインで構成された乗用車然としたコンパクトなSUVです。
このHR-Vは、今のSUVブームの流行りを先取りしたようなクーペスタイルが特長でした。しかし、日本においてはまだクロスオーバーSUVの人気に火がついていなかったこともあって、残念ながらヒットは叶わず、惜しくも一代限りで消えてしまった悲運のクルマです。
しかし、日本とは違いヨーロッパや中東などではこのHR-V、人気は決して低くなかったそうです。それが証拠に実はヴェゼルの海外での車名はHR-Vです。つまりヴェゼルはHR-Vの新型でもあるのです。人気があり、知名度も期待できるからこそその車名を引き継いだのでしょう。
HR-Vの基本はコンパクトハッチバックであるロゴ(FITの先代モデルにあたります)をベースにしてクーペ風のコンパクトSUVに仕立てたというクルマ。FITをベースとしたヴェゼルと成りたちは似ています。しかし、直接的なつながりはありません。またデビュー直後から大ヒットとなったという点でもHR-Vとヴェゼルは大きく違っています。
優れた実用性とクーペのような
スタイリングを持つコンパクトSUV
(引用:ホンダ公式HP)
ヴェゼルはその優れた燃費と特長的なデザインに加え、高い実用性によって幅広い層から支持を受けました。そして2014年と2015年にはSUV販売台数ランキングで1位を獲得しています。
コンパクトカーであるFITがベースですが、車体は一回り大きく、ホイールベースなども延長されているのでイメージはかなり違います。デザインも非常にスタイリッシュです。それでいてFITに匹敵する余裕ある室内空間と広々とした荷室を備えています。インテリアなども上質で高級感が感じられるものです。
でもよくスペックをよく比べてみれば、サスペンション形式などは変わりませんし、FITの広々とした室内空間を実現するセンタータンクレイアウト(樹脂製の薄型燃料ガソリンタンクを車体中央、前席の下に配置して、居住空間や荷室を広く確保することができるホンダの技術)なども同じ。さらに、ハイブリッドシステムも1.5Lガソリンエンジン+モーターでFITのほうが燃費志向、ヴェゼルの方がよりパワー志向になっていますが基本は同じです。
コンパクトカーながら広く、燃費も抜群でフットワークに優れ、なおかつデザイン性も高い、そんなFITを基本とした優れた実用性を持ちながらそれでいて高級感ある人気の高いSUVスタイルを持つのですからヴェゼルが人気となったのもいわば当然といえるでしょう。
2019年1月31日、ヴェゼルの
ラインナップにターボモデルが加わった
そんなヴェゼルは登場から5年以上(2019年2月現在)経過した現在も十分高い人気をキープしています。しかし、コンパクトSUVのライバルであるC-HRの人気はそれを上回っています。
2018年の乗用車販売台数ランキングでもC-HRが12位なのに対してヴェゼルは14位。2013年発売のヴェゼルが2016年発売のC-HRにこれだけ肉薄しているのですから十分凄いのですがその差は1万7127台と決して小さくありません。しかし、2019年1月31日、そのヴェゼルに新たに1.5LのVTECターボエンジンを搭載した「ツーリング・ホンダセンシング」が追加となりました。
ラインナップの中で、もっともスポーティなヴェゼルです。ライバルのC-HRに対して動力性能の面では圧倒するレベルのパワーユニットです。さらにエンジンだけではなく、内外装にも専用の装備が用意されるなど、ヴェゼルのラインナップ中にあってトップグレードとして魅力を満載した新モデルであり、注目は必至です。
そんなヴェゼルのターボモデル「ツーリング・ホンダセンシング」ですが、いったいどのようなクルマなのか、詳しく見てみましょう。
パワーユニット意外に
装備などはどのように変わったのか
(引用:ホンダ公式HP)
ラインナップの最上級グレードとなるターボ搭載のヴェゼルツーリングは、まず見た目にも特別感があります。ブラック塗装のヘッドライトガーニッシュとフロントバンパーロアーグリルはツーリング専用装備となっています。
さらに、クロームメッキのフロントグリル、左右2本出しのエキパイフィニッシャーにグレーの18インチアルミホイールなども装備され、よりスポーティな装いとなっています。
また、インテリアもシート地にはツーリング専用としてウルトラスエードが用いられたダークグレーとブラウンの上品なコンビシートを装備。本革巻きステアリングやステンレス製ペダル、運転席と助手席のシートヒーターなど上級グレードらしい装備が充実しています。
加えて、パワーのアップしたことに対応してシャシーも強化されました。ボディ剛性を上げる専用仕様のパフォーマンスダンパーの装備と、ヴェゼル初となるアジャイルハンドリングアシスト(ハンドル操作に応じて、4輪それぞれに軽いブレーキをかけ車両の動きを滑らかにし、安定したコーナリングを可能にするシステム)も採用g>。より一体感あるスポーティでとしなやかな走りが味わえるようになっているのです。
また、ボディカラーにはプレミアムクリスタルブルー・メタリックとスーパープラチナグレー・メタリックという新色が設定されています。他のグレードとの違いがより明確になるのでオーナーとなる方にとってはうれしいポイントでしょう。
肝心のパワーユニットの
パワーや燃費は?
(引用:ホンダ公式HP)
そして、一番気になるのはもちろんそのパワーユニットのスペックですね。こちらはシビックハッチバックと共通となる1.5L 直列4気筒VTECターボエンジンが搭載されています。上級車種であるCR-Vとその基本は同じですが、プレミアムガソリン仕様ではなく、レギュラーガソリン仕様となっています。その分経済性で勝りますがスペック的にはちょっとだけ劣っています。
とはいえそのパワーは127kW(172ps)/5,500rpmと非常に強力。トルクも220Nm(22.4kgfm)/1700-5500rpmですから2.5L級の自然吸気エンジンに匹敵するレベルです。
従来からラインナップされている1.5L自然吸気ガソリンエンジンのスペックは96kW(131ps)/6600rpm、155Nm(15.8kgfm)で、ハイブリッドは、エンジンが97kW(132ps)+モーター22 kW (29.5ps)ですからそれらと比べても大幅にパワーアップしています。
車重は1,360kgとハイブリッドモデルよりも重くなっていますが、その分シャシーが強化されており剛性もアップしているのですから間違いなく余裕のあるパワフルでスポーティな走りが味わえるはずです。
ターボモデルはFFのみの設定
その分価格はアンダー300万円
ただし、一点残念な点もあります。それはこのヴェゼルツーリングには4WDの設定がないということ。選べるのはFFモデルのみです。このパワフルなエンジンが4WDモデルに搭載されればさらに魅力が増すはず。SUVらしい走破性の向上にも貢献するのではないかと思います。
とはいえFFとしたことでプロペラシャフトやデフなど4WD化に必要なメカニズムは床下に必要ありません。そのためそれらが荷室スペースを圧迫することもなく荷室や室内の広さはそのまま。また、スペースに余裕があるのでガソリンタンクの容量も40L→50Lと他のグレードよりも大きくなっているのも美点(燃費悪化への対策?)でしょう。
パワーアップに伴って気になるのが燃費ですが、ヴェゼルツーリングのJC08モード燃費は17.6km/Lです。1.5L自然吸気の21.2km/L(FF)やハイブリッドの27.0km/L(FF)と比べると当然ですが劣ります。とはいえ、172psのターボエンジンを搭載していることを考えれば十分に優秀といえるでしょう。その分余裕ある走りを味わえると思えば不満はさほど感じないはずです。
また「TOURING・Honda SENSING」には、その名前の通り先進の安全装備「ホンダセンシング」が標準装備(これは全グレードですが)です。前走車、対向車、歩行者との衝突回避を支援する衝突軽減ブレーキや、急発進を予防する誤発進抑制機能、さらに車線のハミ出しを防いでくれる路外逸脱防止機能に前走車との距離を保つアダプティブ・クルーズ・コントロールなども装備されており早いだけでなく安全機能も充実しています。
スペック、装備内容とも全グレードのトップとなるだけあって一切隙がない。そして気になるのはその値段ですが、「TOURING・Honda SENSING」の税込価格は290万3040円です。
かろうじてハイブリッドの4WDモデル「HYBRID Z・Honda SENSING」の292万6,000円よりは安いですがFFとしては一番高いグレードとなりました。それでもアンダー300万円なので、内容を考えれば十分お買い得といっていいでしょう。
ターボによるパワフルな走りと優れた実用性、さらに充実した装備と専用アイテムがおごられたスタイリッシュな外観。ツーリングが大人気グレードとなるのはおそらく間違いないでしょう。
C-HRとヴェゼルを比較してどちらにしようか迷っていたという方にとっては、この新しいターボを搭載したヴェゼルツーリングうれしくも悩ましい存在となるかもしれません。もし本気で購入を検討中なら、一度ディーラーなどでその走りを味わってみるのが良いかもしれません。