クルマに取り付けた電装品が急に動かなくなった! そんな経験はないでしょうか。それまで動いていたものが急に動かなくなってしまった場合、取り付けた機器そのものが故障した可能性もあります。しかし、それが電装品、それも後つけだった場合はそれよりも先に疑うべきはヒューズです。なんらかの原因でクルマのヒューズが飛んだ(切れた)のかもしれません。

では、そんなときどうすればいいでしょう。そもそもヒューズがどこにあるのか? 切れたヒューズはどうすればいいのか。知っている人にとっては当たり前のクルマのヒューズですが、今まで見たことも触れたこともないという方もきっといるはず。

でも、いざというときに対処できるようヒューズに関して知っておいて損はありません。そこでそんなヒューズに関して、どこにあるのか、どうやってチェックすればいいのか、さらに切れた場合の正しい対処方法などについてご紹介します。

そもそもヒューズとは何なのか?
どんな役割があるのか

ヒューズと言われてもいったいそれって何? なんていう方もきっといるかもしれません。ヒューズは英語ではfuseと書き、電気回路内に設置される安全装置(部品)のことを指します。

電装品や電気製品の回路でショートなどのトラブルが起き、本来設定されている定格以上の大電流が流れてしまった場合に、電気回路や電装品が発火や溶解といった大きな故障となる前に、このヒューズが飛ぶ(切れる)ことで電流を遮断して電装品や電気回路を保護してくれるというものです。

ヒューズは通常は回路の中で導体(つまり電気が普通に流れている)として振る舞っていて、何らかの異常がおきて電気回路に大きな電流が流れた際に熱によってヒューズ内の合金部品が溶断(ようだん。ようするに溶けて切れる)して、回路を開いて(切れて)電流をストップします。

昔や住宅の分電盤などにもこのヒューズが使われていたので、家の電気が停電したと思ったらヒューズが切れていた、などということもよくありました。

そして、父親などが懐中電灯を片手に分電盤を照らしながらドライバーを使い器用にヒューズを交換する。幼いころにそんなシーンを見ていたという記憶があるという方も、ある程度の年齢以上であれば間違いなくいるはずです。少なくとも筆者にはそんな記憶があります。

ただ、最近の住宅用の分電盤の主流はスイッチ式であり、ヒューズは使われていません。電化製品のトラブルで分電盤に大きな電流が流れても、ヒューズが切れるのではなくブレーカーのスイッチ作動することで電気を遮断してくれるのです。

そのためもしブレーカーのスイッチが作動してもそのスイッチを切り替えるだけで再度電流が流れてくれる。わざわざヒューズのように交換する必要はありません。便利ですね。

そのため今ではヒューズそのものがあまり身近なものではありません。もちろん古くからの住宅ではいまだに使われている場合もありますが、今では少数でしょう。そのためヒューズ自体を知らない、どんな役割のものなのかわからないという方がいても不思議ではありません。

ただ、家庭では使われなくなったとしても、DIYでクルマに電装品の取り付けなどを行ったことがある方であれば、さすがにヒューズは知っているでしょうし、見たことも触れたこともあるはずです。知らなければ電装品の取り付けなど危なくてできませんから。

もしヒューズ切れたら
新品に交換するしかない

クルマのヒューズも、一定の以上の電力が流れた時に溶ける性質を持った金属片などで作られています。多くの場合がブレード型で、プラスチックでできたプレートの中に、金属片でできたヒューズが内蔵されています。ブレードは透明でヒューズが透けて見えるので取り外して目視すれば切れているのかどうかは一目で確認できます。

そして一度切れたヒューズは、再利用する事は出来ません。そのため切れてしまったら新しいものに取り替える必要があります。切れたヒューズを交換するまでは、電気が流れないのでその回路につながった電装品なども動かないことになります。ですので速やかに交換してしまいましょう。

でも、そもそもクルマの電装品のヒューズはどこにあるのでしょう。そして、どのように交換すればいいのか。というかその前になんでヒューズが切れるのか、その原因を突き止めることも重要です。

ヒューズが切れるということは何かしらトラブル起きているということですから、ただヒューズを交換してもまたすぐに切れてしまう可能性があるのです。

ハーネスのショートや
電装品につなぎすぎが原因?

クルマのヒューズが切れる原因ですが、まずハーネスなど配線のショートが考えられます。 ショート(short circuit/ショートサーキット)とは、日本語では短絡といい、正しい回路や電装品などを介さずに直接プラスとマイナスの配線がつながり電気が流れてしまうことです。

通常クルマの電装品などに使われているハーネス(配線)は銅線が被膜に覆われ絶縁(電気を通さない物質で電流を遮断すること)されています。そのためハーネスどうしや金属端子、ボディなどの金属部分にハーネスが触れてもショートするようなことはありません。

しかし、例えば振動などによってハーネスの被膜に繰り返し摩擦や衝撃が加わるとどうなるか。被膜から銅線が露出してしまい、それが別のハーネスや金属端子、ボディに触れてショートしてしまうこともあるのです。

そしてショートが起きるとそのハーネスに繋がっているヒューズに過大な電流が流れて結果ヒューズが切れてしまうということになるわけです。

ヒューズが切れることで電流が遮断されるので電気系に大きなトラブルや火災などが起きることを防いでくれるというわけですね。何もしていないのに急にヒューズが切れたという場合はこのようなクルマのハーネスや端子などに問題が起きている可能性があるので原因を突き止め、ハーネスや端子などの修理や交換を行わなければなりません。そして修理を終えてからヒューズを交換します。電気系統のトラブルは判断が難しいので素直にプロに任せるのがいいでしょう。

また、DIYでカーオーディオや追加ランプ、ドライブレコーダーなどの取り付けをされている場合にヒューズ切れたおきる原因として、ありがちなのが作業中にショートさせてしまうということ。

例えば電装品をクルマの配線につなごうとしてドライバーでプラス側の端子とマイナス側の端子に同時に触れてしまいショートとさせてしまう。その結果ヒューズが切れてしまった。そんなトラブルはありがちです。その場合は原因が明らかですので切れたヒューズを交換し、注意しながら続きの作業を行えばいいでしょう。

他には電装品を追加するためにシガーソケットなどの配線からいくつもの電源を取ってしまっているという場合なども注意が必要です。いくつもの電装品を同じシガーソケットの配線から電源を取るということになればシガーソケットの配線に過大な電流が流れることになります。

そして、シガーソケットのヒューズの容量を超えた電流が流れてヒューズが切れてしまうというパターン。こういったケースも少なくありません。

このような場合も単にヒューズを交換するだけではだめです。なぜなら電気の取り方を変えないと、また電装品の電源を入れた途端にヒューズは切れてしまうからです。電源の取り方自体を見直さないといけません。シガーソケット配線とは別の配線から電源を取り出して、電装品の電源配線を分散させるべきでしょう。

ヒューズはヒューズボックスの中に
まとめられている

ヒューズが切れた場合交換すればいいと書きましたがそもそもクルマのヒューズがどこにあるのかご存じでしょうか。ヒューズは、通常さまざまな電装品用のヒューズを一つにまとめたヒューズボックスの中にあります。ヒューズの交換の前に、まずヒューズボックスの位置を確認しましょう。

ヒューズボックスはどこにあるのかというと、クルマによって多少違いがありますがたいてい運転席の右下や運転席側のドアの下、またボンネットの中などにあります。

わからない場合はクルマの説明書などをチェックしてみてください。場所が判明したら、クルマのエンジンを必ず止めてからふたを開けてみましょう。ヒューズボックスは特に工具など不要で開けることができるはずです。

ふたを外したら、ヒューズボックスのふた裏を見てみましょう。ヒューズボックスにあるたくさんのヒューズがどの電装品用のものなのか回路図や説明図で書かれています。それを確認しながら切れたヒューズを探してください。

そしてヒューズ切れを起こしているであろう電装品に対応するヒューズを抜き取って、目視でヒューズが切れているかどうか確認します。ブレードの中の金属片が切れていればヒューズ切れです。ヒューズは素手ではなかなか抜けませんが、ヒューズを抜くためのピンセットタイプの工具がボックス内にあればそれを使います。ない場合はラジオペンチなどを使うといいでしょう。

切れているヒューズが見つかったら、新品のヒューズと交換します。なお交換するヒューズは、同じタイプで、同じアンペア数のものを使用してください。アンペア数の違うものを使用すると、簡単にヒューズ切れを起こしてしまったり、場合によっては電装品が正常に機能しなくなることもあるので注意してください。

クルマに使用されているヒューズは
主に低背型のブレードタイプ

ヒューズを交換するにあたって注意しなくてはいけないのがヒューズにはいくつか種類があるということです。クルマに使用されているヒューズのほとんどはブレードタイプですが後付けの電装品のシガーソケット電源などにはガラス管型が使われています。

さらにブレード型には、平型やミニ平型や低背(ていはい)型などのタイプがあり、どれも背にあたる部分に数字でヒューズの容量、アンペア数が書かれています。古いクルマや輸入車などの場合は平型タイプのものが使われている事が多いですが最近の国産車は主にコンパクトな低背型が使われています。

そして、ヒューズの容量の規格は、1アンペアから40アンペアまで数多くの種類があります。ヒューズに直接数字でアンペア数が書かれていますが、ヒューズの色でもアンペア数を見分けることができます。以下が色によるアンペア数の違いです。

 

  • ●3A:紫色
  • ●5A:橙色
  • ●7.5A:茶色
  • ●10A:赤
  • ●15A:青
  • ●20A:黄
  • ●25A:無色
  • ●30A:緑色

 

ヒューズを新しいものに交換する際は、正しいアンペア数のものを用意し、ヒューズの電極を垂直に差すようにしてください。それだけでOKです。新品に交換したらヒューズボックスのふたを戻します。そしてエンジンを始動し、ヒューズ切れの原因となった電装品の電源を入れ、正常に作動するか確かめてください。

もしスイッチを入れた途端にまた電源が落ちてしまうという場合は再度ヒューズを確認します。そこでヒューズ切れが起きていたという場合は、電装品の接続方法が間違っているか、もしくはハーネスに不具合がおきているのかもしれません。その場合は修理が必要になります。ディーラーなどに相談しましょう。

また、DIYで取り付けた電装品の消費電力が大きく、想定以上の電流がその配線に流れたことでヒューズが切れてしまった可能性もあります。その場合は電装品を取り外してから再度ヒューズを交換し、その状態でヒューズが切れないか確認します。ヒューズ切れがないようなら電源の取り出し方が問題ということです。配線を変更した方がいいでしょう。

繰り返しヒューズ切れを
起こすようなら修理を依頼しよう

ヒューズはとても小さなパーツで、チェックや交換なども非常に簡単です。でもヒューズが切れたということは、何かしら電気系統に問題が起きているということでもあります。

作業中のミスなどで、ヒューズが飛んだ時の対処に関しては紹介したようなやり方で問題ありませんが、何もしていないのに繰り返しヒューズ切れがおきたという場合には電気系統や電装品にトラブルが起きている可能性もあります。

速やかにディーラーや修理工場にクルマを持ち込み点検してもらってください。放っておくと重大な故障に繋がることもないとは言えません。くれぐれも気を付けてください。