ヘッドライトのLED化が急激に進んでいます。最新の車種が揃うリース車のラインナップを見てみても、商用車や軽自動車他、廉価な車種、グレードを除けばほとんどのクルマがヘッドライトにLEDを導入しはじめています。
LEDの特徴は長寿命で低消費電力。従来とハロゲンランプやHIDよりも性能的に明らかに優れている。導入のコストが下がれば多くの車が取り入れる、その流れはむしろ当然ですね。
しかし、LEDランプの導入が進んだことで一部の地域では、困ったことも起きているといいます。LEDならではの特徴、低消費電力であるが上に雪道では大きな問題が起きているといいます。それはいったい何なのか?また解決する方法はあるのでしょうか?
目次
まだまだ現役のハロゲンランプ
欠点はあるがメリットもあり
車のヘッドライトといえば、以前はハロゲンランプが当たり前でした。いわゆる電球の高性能バージョンですね。それ以前はいわゆる家庭用(すでにほとんど使われていませんが)と同じような白熱電球(シールドビーム)が使われていました。しかし1960年代に白熱電球よりも明るいハロゲンランプがクルマに導入されるようになり、それが一気に広まりほとんどのクルマに採用が進みました。
ハロゲンランプは、見た目は電球と同じですが、バルブ(ガラスの管)の中には、窒素やアルゴンなどの不活性ガスとハロゲンガスを封入されています。そしてその中心にタングステンでできたフィラメントがあります。そのフィラメントに電気を流すとフィラメントが白熱し、窒素やアルゴンガスと反応して強い光を放つのです。
発光色は淡い暖色系で、いわゆる電球に近い柔らかく拡散性も高いもので、その明るさや色合いがLEDやHIDよりも自然で好きだという方も少なくありません。ただ、正直すでに過去のものとなりつつあります。
理由は耐久性と消費電力です。ハロゲンランプの発光の要となっているのはフィラメントです。電球の中にあるあのぐるぐるとまかれた細い針金みたいなやつです。このフィラメントは電気を流すと白熱して発光するのですが、使用していくと徐々にフィラメント自体が蒸発してゆき、やがて切れてしまいます。その寿命はあまり長くありません。電球と同じです。だから定期的な交換が必要なのです。
また、フィラメントは強い衝撃にもろく、寿命でなくてもオフロードなどを走行中に切れてしまうこともあります。そのうえ、消費電力が高い上に、発熱量も多いというウィークポイントもあるのです。
このようにあらためてその特徴を並べてみると、欠点は少なくありません。しかし、長く使われてきたものですので、技術も進みコストも安いというメリットもあります。万が一バルブ(電球)が切れても、交換用バルブが安いので、その点も安くつく。そのため現在も比較的お買い得の軽自動車や、コンパクトカーやミニバンの廉価グレードなどには使用され続けているのですね。
LEDやHIDに比べれば欠点はありますが、ヘッドライトとして決して問題があるわけではありません。ただ、より優れたLEDが登場したために徐々に使われなくなってきているのです。
あんなにもてはやされたHIDも
LEDの登場でもはや過去のものに
そして、HID(ディスチャージライトとも言います)は、そんなハロゲンランプに変わる、より優れたヘッドライトユニットとして登場したものです。
HIDの発光の仕組みは、従来の白熱電球やハロゲンランプとは全く違います。最大の違いはフィラメントがないということ。水銀とアルゴンガスが不入されたバルブ(ガラス管)の中には2つの電極があるのですが、この電極の間はつながっていません。離れた電極どうしの間でアーク放電を起こすことで、電子が水銀電子に衝突、そして強い光を放つのです。
イメージとしては蛍光灯に近いでしょうか。ハロゲンランプよりも2倍明るく、消費電力も比較すると2/3ほどと小さい上寿命も長い画期的なヘッドライトとして2000年前後に自動車用のライトとして登場(それ以前にもトラックなどでは使われていました)。以後高級車を中心に普及が進みました。
また、従来のハロゲンランプから交換できるHIDキットなども販売され、高価(登場当初は軽く10万円以上しました)であったにも関わらず大人気となっています。ドレスアップ目的で装着する方も多く、HIDのハロゲンランプのあたたかな明かりとはまるで違う、青白く、硬質な光線はクールで格好いいともいわれていたのです。ただ、実際問題として色温度の高い青白い光は乱反射しやすく、視界の確保という意味ではあまり優れていません。また8000K(ケルビン)など極端に色温度の高い青味の強いヘッドライトは車検にも通りませんので、そういった価値観は徐々に過去のものとなりつつあります。
一時期は大変もてはやされたそんなHIDヘッドライトですが最近はさらに性能に優れたLEDが登場したために、あまり使われなくなってきています。明るさに関してはLED以上なのですが、消費電力ではLEDの方が優れていますし、また耐久性や寿命もLEDのほうが上。さらにコストの関してもLEDは急激に量産化が進んでいますのでLEDのほうが有利。となればあえてHIDを使う意味がない。今後はほとんどの車のヘッドライトがLED化されていくのはおそらく間違いないでしょう。
明るく、低消費電力で耐久性抜群
全てにおいて理想的なLEDヘッドライト
LEDはハロゲンよりも明るく、消費電力も少ない、また切れる心配もほとんどない上にコストも年々下がっています。家庭用の照明も今やほとんどがLED。そのメリットは皆さん重々承知のはず。電球よりも優れていることはわかっていますよね。そんな優れた照明システムなのですからクルマ用として普及するのは必然といえるでしょう。
LEDが採用されはじめた当初こそLEDの光は指向性が強く、広い範囲を照らすには向いていない、ともいわれていましたが、現在はそういった欠点も解消されつつあります。
さらに、複数のLEDを使用することで照射を細かく制御することもできるというのもLEDヘッドライトの特徴。
例えば対向車を検知したら上下を自動で切り替える自動ハイビームや、対向車だけ、前走車だけを照らさないように照射範囲を細かくコントロールするアダプティブハイビームシステムなどの実現もLEDだからこそ。ハロゲンやHIDではまずできないでしょう。まだコスト的にはハロゲンにはかないませんが、採用車種が増え、量産効果が上がればいずれは廉価グレードやバンなどの商用車にも搭載されていくことになるのでしょう。
ただ、ヘッドライトのLED化によって、今までは考えられなかった問題も起きています。特に雪国ではその欠点が意外なほど大きな問題となっているというのです。それがヘッドライトに付着した雪が、ヘッドライトを点灯させても解けないという問題。なんと、LEDの消費電力の少なさ、無駄な熱を出さないというメリットが、今まで考えられなかったウィークポイントにつながっているのです。
LEDの効率の良さが欠点に!?
熱を出さないから雪が溶けない!
そのウィークポイントとは発熱です。熱をださないのはメリットだったはずなのですが、実は限られた環境の中ではそれがなんと欠点になるのです。従来のハロゲンランプやHIDは発光の際にかなりの熱をだします。特にハロゲンランプは相当の熱を出すので、点灯させてしばらくたってからレンズ表面に手を触れれば、熱い!と感じるほど。また、HIDもハロゲンほどではないですが、かなり熱くなります。
たいしてLEDの場合、点灯してしばらくしてもレンズの表面はほとんど熱くなりません。多少は温かくはなりますが、雪の降るような寒い時期ならレンズに手を触れてもぬくもりはほとんど感じないでしょう。ようするに効率よく電気を光に変えているから無駄な熱(エネルギー)を放出していないのです。
では気温の極端に低い冬場、ヘッドライトのレンズに雪が付着した場合どうなるのか。従来のハロゲンやHIDならライトが発する熱がこの雪を溶かしてくれます。もちろん完全に溶けるほどではありませんが、走行による風や振動が加われば簡単に雪を振り落とすことができる。ようするに極端な豪雪や低温でない限り、雪によってライトがふさがれ視界を遮るという問題はほとんど起こりません。
でもLEDの場合は違います。極端に気温が低い場合、LED程度の熱では雪をほとんど溶かすことができません。レンズに張り付くほどの雪となると、走行による風圧や振動でもなかなか落ちないでしょう。となれば、どうなるのか。そうヘッドライトレンズが雪でふさがれ、ライトが道路を照らすことができなくなるのです。
雪の降る夜道で、ヘッドライトが役に立たなくなれば、それがどれだけ危険か、想像するのは簡単ですね。LEDの優れた特性のせいでなんとこのような予想外の事態が起きているというのです。驚きですね。
ヘッドライトに付着した雪を解かす
フィルム状のヘッドランプヒーター
(引用:デンソー公式HP)
すでにリース車両でLEDヘッドライトを搭載したクルマを利用されている方もきっと少なくないはず。もちろん雪国でリース車に乗っている人もいることでしょう。そんな欠点あるのはきっとご存じなかったはず。気温が相当低く、なおかつよほど雪深くなければ大丈夫だとは思いますが、不安になりますよね。でも、大丈夫。実は先日こんなアイテムが発売となりました。それがこちらデンソーの「ヘッドランプヒーター」です。
参考サイト:デンソー「ヘッドランプヒーター」
トヨタのプリウスやノア/ヴォクシー/エスクァイア3兄弟に後付できるヘッドライトを温めてくれるアイテムです。このヘッドランプヒーター、ヘッドライトレンズの上に張り付ける透明なフィルム状のヒーターユニット。ウインドウの熱線に近いですが、透明でライトの明かりを遮らないというのが大きな特徴となっています。
ヘッドライトの上から貼り付けるだけで、外気温が5度以下になると自動で作動。するとフィルムヒーターが外気温+約50度に発熱してヘッドライトの表面に付着した雪を溶かしてくれるというもの。これがあれば、夜間の雪道走行でも安心して走行することができます。
透明なフィルムなので貼り付けてもほとんど目立ちませんし、ヘッドライトの明るさにも影響は洗いません。さらに、貼り付けたまま車検もOKで、なんと洗車機にかけることも問題ないといいます。かなりの優れものなのです。
対応車種のオーナーやリース車を
利用しているなら使用する価値あり
現状対応車種は前述したようにプリウス(2018年12月以降発売モデル)とノア/ヴォクシー/エスクァイア(2018年7月以降発売モデル)となっていますが、これらの車種はカーリースでも人気なので、すでに利用されている方もきっと多いはずです。これからの雪のシーズンに不安があるなら、是非導入してみてはいかがでしょう。
でも、リース車に後つけパーツの取り付けは大丈夫なのか?と心配になるかもしれません。しかしおそらく大丈夫です。こちらのアイテム販売は全国のトヨタディーラー。つまり純正のディーラーオプションと同じです。絶対とはいいませんがリース車に取り付けても問題とならないはずです。心配な方はご利用のリース会社に問い合わせてみるといいでしょう。
ちなみに価格は税込みで2万5,000円です。安くはありませんが安心を買うと思えば決して高くもないでしょう。自分のクルマ用のものはないのか?と心配なかたもいるかもしれませんが、今後おそらく他の車種用のものも発売されるでしょう。また、メーカー純正ではなく社外品などの登場も期待できます。それまでは、ヘッドライトレンズをコーティングするなどして、雪が付着しにくいような対策をとるのがおすすめです。
最新のアイテムが導入されると、今まで想像できなかった問題があらたに起きるもの。LEDライトを装着したリース車を今シーズンから乗り始めたという雪国の方は、こういったトラブルも起こりえるということを、頭に入れておいたほうがいいかもしれません。