エントリーグレードや商用車などを除けば、今どきの新車のほぼすべてにスマートキーが装備されています。でも、カーリースで契約した車両がはじめてのスマートキーだった、という人も中にはいるのでは。そしてスマートキーを使いはじめてみて「どうにも慣れない。」、「電池が切れたらどうすればいいの?」となんとなく思っている人もいるでしょう。それに、近頃は「リレーアタック」なるスマートキーを狙った車両盗難事件も起きています。そんなスマートキーならではの疑問について調べてみました。

楽で便利なスマートキー
だけど安全性に不安も

クルマのキーにあるボタンを押すことでドアロックの施錠や解錠ができるのがいわゆる「リモコンキー」です。そして、このボタン操作も不要でキーを手元に持っているだけでドアの施錠や開錠、さらにエンジンのスタートまでできてしまうのがいわゆる「スマートキー」です。

このスマートキーは、以前は高級車の装備でしたが、今や軽自動車にも装備される当たり前のものとなっています。生まれた初めて乗った車がスマートキーだった、という若い方も今や当たり前になっているのでしょう。

ただ、ちょっとややこしいのは自動車メーカーによってスマートキーのその呼び名が少しずつ違うこと。例えばトヨタなら「スマートエントリー&スタートシステム」ですし、日産では「インテリジェントキーシステム」と呼んでいます。ほかにもホンダが「Hondaスマートキー・スマートカードキーシステム」マツダは「アドバンストキーレスエントリーシステム」などと、いろいろあってちょっと面倒です。でも、名前は少々違っていますが、これら基本的にはすべて同じもの。「スマートキー」というものだと思って間違いはありません。

このスマートキーの特徴は、クルマに近づいたりドアノブやボタンに触れたりするだけでドアロックの施錠や解除ができるということ。さらに、キーをハンドル横の鍵穴に差してわざわざ回さなくても、ポケットの中にあればエンジンスタートスイッチを押すだけで即座にエンジンがスタートします。そういった機能を持つキーなのですから当たり前なのですが、導入当初はドアノブに触れるだけで開錠され、キーを差さないのにボタンを押すだけでエンジンのON/OFFができるというのが新鮮かつちょっと不安を感じさせるものでした。もちろん今では当たり前のものですから何の違和感もないのですが。

とはいえ、はじめてスマートキーを装備したクルマを所有することになったという人にとっては、イマイチこのスマートキーシステムは信用ならん!などと考える人も中にはいるはず。目に見えないところでセキュリティが確保されていて通常のキーよりも安全なのだろうということはなんとなく理解できますが、そもそもスマートキーはなぜこのような便利な機能を実現できているのでしょう。その仕組みがなんとなくわかれば多少は不安も解消されるかもしれません。そこで調べてみました。

何で勝手にロックが解除される
スマートキーの仕組みとは

スマートキーは、キーと車体側の双方に電波をやり取りすることができる送受信機が備わっています。そしてクルマ側、スマートキー側共に常に微弱な電波を送信し続けています。しかしその電波の有効範囲は約1mととても狭く、近づかないと双方の電波は相手に受信されません。しかしスマートキーを持ったそのクルマのオーナーがクルマに近づくと、スマートキーとクルマが双方の電波を受信しあい電子IDを照合。暗号が合えばドアロックが解除され、車内のスタートボタンを押しただけでエンジンが始動できるようになるという仕組みです。

電波によって高度に暗号化されたIDや情報をやりとりすることで、特定のクルマとそのクルマのスマートキーを一致させることでセキュリティを確保しているわけです。物理的なキーなら、鍵のパターンをコピーして偽物のキーを作ってしまえばドアの開錠やエンジンスタートもできてしまいますが、スマートキーではイモビライザー機能も内蔵されており、電子IDはその都度暗号を変えていてそれが合致しないとロックは開錠ようになっています。そのため簡単にコピーされるようなことはないのです。

でも、スマートキーを持っている自分がクルマに近づくだけでドアが簡単に自動的に開錠されてしまうというのを経験していると、これって別の人が勝手に近づいてきてドアハンドルのボタンを押したら鍵が開いてしまうんじゃないか? などと不安を覚えるかもしれませんが、そのようなことは絶対にないのです。

また、車内にスマートキーを残したまま、車外からドアノブのボタンを押したらインロック(車内にキーを残したままドアロックしてしまうこと。)になってしまうのではないかという不安を持つ方もきるのではないでしょうか。これに関しては車内にスマートキーがある状態では、通常、施錠されません。そのため、キーを車内に置き忘れた状態で、車外からドアノブのボタンに触れてもクルマはロックされません。そのようにインロックのリスクに関しても対処されているのです。なので大丈夫です基本的には。

安全なはずなのに盗難事件が
「リレーアタック」とは

このように従来の物理的なキーよりも安全で便利なのがスマートキーというわけです。だからこそ多くのクルマで標準装備化が進んでいるのです。

「でも。そんなに安全だとという割にはスマートキーを搭載したクルマの盗難事件も起きていると聞くけど。」

確かにそのようなニュースがありました。物理キーに比べると開錠は難しく、物理キーがあってもエンジンスタートができないはずのスマートキーなのになんで盗難されてしまったのか不安を覚える方もいるでしょう。実際どのような方法で盗み出しているのか、そのやり口が「リレーアタック」というものです。それはどんなものなのか。

まずスマートキーを搭載した最新のクルマに目を付けた自動車窃盗グループは、そのクルマの後をつけオーナーがクルマを降りるのを待ちます。そしてオーナーがクルマを降り、レストランやカフェなど、ある程度の時間その場にとどまり、なおかつ見ず知らずの人間が近づいても怪しまれない場所に入ったことを確認したら、そのオーナーの席に近づきます。そして、テーブルの上などに置かれたスマートキーを発見したら特殊な装置を使ってスマートキーから発信されている電波を受信。そして受信した電波を特殊な装置で増幅させたうえでその電波をターゲットのクルマの近くに待機した別の仲間に送信するのです。

このように、電波をリレー(だからリレーアタック)しクルマに近づくと、クルマ側ではキーを持った人間が近くにいると誤認識してドアを解錠してしまいます。そして車に乗り込みそのままエンジンを始動させてしまえば、あとはクルマを盗難車両の保管場所まで運んでしまえばあっという間に盗難完了となってしまうのです。

リレーアタックを防ぐ
簡単な方法とは

クルマがその場所から離れればリレーされていたスマートキーからの電波も受けられなくなってしまうのでエンジンが止まってしまう気もします。しかしそうはなりません。いったんエンジンがかかると、次にエンジンを切るまではそのまま走行し続けることができます。

これは、スマートキーになんらかのトラブルが起きた場合にも走行中突然エンジンが停止などにならないよう、安全をかなえてそのような仕様になっているからです。目的の保管場所にたどり着けばあとはスマートキーの機能を何らかの手段で無力化して海外などに運び出してしまえばそれで終わりというわけですね。

組織化された盗難集団にかかれば、スマートキー装備車でもこのように盗まれてしまうリスクがあるのです。もちろんそうでないクルマならさらにリスクは高いわけですからスマートキーだから安全じゃない、などと誤解しないでください。通常のキーよりも確かに安全ですが、それでもリスクはゼロではなく注意が必要だということです。海外でも人気の高いスポーツカーや高級車が特に狙われやすいようなので、そのようなクルマを持っている、またはリースしている方は気を付けましょう。

リレーアタックを防ぐ手段は実は簡単です。スマートキーから常時発信されている電波を遮断すればいいのです。車種によってはスイッチ操作で一時的に電波の発信を止めることができるものもあるようです。そういったスマートキーでなくても最近はリレーアタック対策用の電波を遮断する専用ポーチが数百円程度で売られていなす。そちらを入手しクルマから降りた際にはそういったものにしまうという習慣をつけておけばいいでしょう。また自宅でもスマートキーを玄関近くに放置するのではなく、金属製の缶などに入れておくようにしましょう。それだけで車両盗難のリスクはグンと低くなります。

スマートキーの電池が
切れてしまったらどうなるの

スマートキーならではリスクとしてはもう一つ電池切れがあります。スマートキーは常時微弱な電波を発信しており、その電波がないとドアの開錠、施錠、エンジンスタートができません。でも小さなスマートキー内の電池ですからもちろん数年で消耗します。消耗すれば、発信される電波は弱まり、最終的には電波がまったく発信されなくなります。

そうなった場合通常のスマートキーとしての機能は当然果たせません。クルマに近づいてもロックは解除されず、ドアが開いてもエンジンはスタートできません。

じゃあどうすればいいのか、もちろんそのような時のための対処方法が用意されています。スマートキーは一見小型のリモコンにしか見えませんが注意深く観察してみると物理キーが内蔵されているのがわかるはずです。目立たないようにデザインされてはいますがスマートキーにスロット状のミゾがありませんか。そこに薄い金属製のキーが刺さっているはずです。またはスマートキーのフタをあけるとそこに組み込まれていたりする場合もあります。

「うちのスマートキーにはそんなのないよ!」という方はもっとしっかり観察してみてください。どうしてもわからないという場合はクルマの説明書に載っているはずです。こういった事態を想定して、スマートキーには必ずエマージェンシー用の物理キーが内蔵されているのです。

あとはこのキーを取り出しドアを開けて(デザイン性を重視したクルマの場合鍵穴が隠されている場合もありますがドアノブの裏などを調べてみましょう。)スマートキーをエンジンスタートボタンにくっつけた状態(イモビライザーの電子IDの照合を行うため)でスタートボタンを押せば、いつものように走り出すことができるはずです。

スマートキーからの電波がなくても、いったん走りだしたらエンジンを切るまでそのまま走行できる、ということは先ほどのリレーアタックのパートで説明しましたね。あとはディーラーなどでスマートキーの電池を交換してもらえば解決です。スマートキーが使えない!となった時にあわててロードサービスなどを呼ぶことにならないように覚えておきましょう。

スマートキーでも
インロックの可能性が

また、電池の管理に関してもさらに注意が必要なのがインロックです。先ほど“スマートキーはインロックしない基本的には”と書きましたがじつは電池が消耗しているとインロックしてしまう可能性もあるのです。電池が消耗しているとスマートキーからの電波が弱まります。すると、クルマ側で電波の受信がうまくいかず車内にキーがあるにもかかわらず、クルマのオーナーはキーをもってクルマから離れた、と誤認識されてしまう場合があるのです。

その場合勝手に施錠されインロックとなってしまうのです。スマートキーが市場に投入されてからもうずいぶんたつので、そのような誤認識はまずおこらないようになってはいるのですが、そういったトラブルはゼロではありません。そしてそうなってしまったらもうどうしようもありません。例えば自宅のガレージであれば家から予備のスマートキーを持ってくればいいですが、出先ではそうもいかないでしょう。素人がドアロックを開錠するのは困難ですからロードサービスを呼ぶしかありません。JAFでももちろんいいのですが、カーリースならたいてい無料のロードサービスがついてくるのでそちらを利用するのが賢明ですね。

スマートキーの予備電池は
日ごろから用意しておこう

スマートキーはとても便利ですが、電池に関しての管理には注意が必要です。自動車メーカーでは1~2年での交換を推奨していますが、だいたい2~3年ほどで電池切れとなってしまうケースが多いようです。電池は突然ゼロになるわけではなく徐々に消耗していくのでなんとなくスマートキーの反応が悪くなったな、などと感じれば電池交換を考えましょう。電池交換の方法はクルマの取扱説明書に必ず記載されています。また交換作業も難しくはありません。日ごろから予備の電池を用意しておきグローブボックスや自宅などにストックしておくといいかもしれません。

もし、自分は不器用で、電池交換作業が不安というならディーラー等に電池交換を依頼してください。ディーラーなら予備の電池も用意されているのでその場ですぐに交換してもらえます。いずれにしてもスマートキーはいずれ電池が消耗し交換しなくてはなりません。出先などで電池切れを起こし、あわてることがないよう、事前に物理キーの取り出し方や、交換用電池の種類電池の交換方法などは予習しておくといいでしょう。たかが電池切れですが、スマートキーの場合はそれによってインロックが起きる可能性もあるということは忘れないでください。