水没した街の中を、ハザードランプを点滅させながらなんの抵抗もできずに流されていくクルマたち。非日常的なシーンですがニュースでこのような映像を見る機会は決して少なくありません。特に近年は異常気象の影響か、日本中で大規模な水害が増えた気もします。もはや絶対に安全という場所は日本にはないのかもしれません。ということはこのようなことも決して他人事ではないのです。

もしあなたがクルマで水害に巻き込まれたらいったい、どうすればいのでしょうか。その時のことを考えたことはありますか?そしてそのクルマがもしカーリース車両であったら、果たしてどのようなリスクがあるのでしょうか。

水害に巻き込まれたらどうする
どんなリスクがある?

梅雨時になると毎年のようにニュースになるのが、豪雨などによる水害です。特に近年は異常気象による影響なのか短時間に一気に雨が降り、避難する間もないままに街が水没してしまうなどの大きな被害が増えています。

そして水害のニュース映像などを見ていると必ず映るのが氾濫した水中を流されるクルマの映像です。避難途中に流されたのかそれとも駐車中のクルマが流れてきているのかわかりませんが、このようにクルマは想像以上に水害には弱い乗り物です。これくらいの水位ならまだ大丈夫だろうと思っていても水の力は巨大です。クルマなどはあっという間に流されてしまいます。

また、わずか10数センチの水位であってもエンジンはとまってしまいその場で立ち往生などということも当たり前にあるのです。では、そのような状況になったとき、いったいどのように行動すればいいのでしょうか。あなたの行動いかんによっては最悪のケースもあり得ます。

もしもカーリース車両が水害に合い、全損となってしまった場合、その後はどうすればいいのでしょう。まずするべきことはなんなのか、リース車両や違約金はどうなるのか、また保険に入っておけば水害はカバーされるのでしょうか、クルマの水害への対処方法、リース車両の水害リスクについて調べてみました。

クルマはわずかな水位でも
簡単に動けなくなってしまう

まず、道路に水が氾濫した場合、どれくらいの水深までならクルマは耐えられるのでしょう。車内に水が入ってこない限り大丈夫だろう、などと考えているかもしれませんが、そこまでいってしまうとすでに手遅れです。クルマは一定の水深以上になると簡単に動けなくなってしまいます。およその目安としてはタイヤの半分まで水位が上がってしまうと動けなくなる可能性が急激に高まります

SUVなど車高が高いクルマなら、多少は耐えられますが、スポーツカーのような車高が低いクルマであればそれよりも浅い水深でも相当危険です。その時点で車内に水が侵入している可能性もあります。

ドアの開口部より水深が深くなればエンジンルーム内に大量の水が入り、電気系統やエンジンそのものに重大なダメージを与え走行不能になってしまう可能性が高いでしょう。その時はエンジンも止まらず何とかなったとしても後日重大なトラブルを引き起こす可能性があります。道路にわずかでも水が氾濫しているのを発見したら、すぐにその場を離れできるだけ高いところに移動するべきでしょう。

そして絶対にやってはいけないのが、明らかに水たまりが深くなっているのに、スピードをあげてそこを突っ切ろうとする行為です。大きく水をまき上げることになり、水がエンジンルームの奥まで侵入して深刻なダメージを与えてしまいます。そのままエンストとなり水の中で立ち往生となったらあとは救助を待つしかない、ということになりかねません。

前述の通り、タイヤ半分よりも水深が深くなっている場合はそこを走るのを避けるのが賢明です。いざという時はクルマを捨てるという判断も必要です。その時はエンジンをOFFにしてキーを残し、車検証などは持ち出しましょう。もし、水没した道路をしかたなく避難せざる負えない場合は、スピードは上げずゆっくりと走ることを心がけてください

パニックを起こさずに
シートベルトを外し、窓を開ける

慎重に走っていたのに逃げ遅れて、ついにクルマが水没してしまった、となったらどうすればいいでしょう。まずはパニックにならず、すぐにシートベルトを外します。水位が上がりドアの半分くらいまで水没してしまうと、ドアを開けるのも簡単ではありません。水圧によってドアが開かない可能性が高いでしょう。

車内に水が浸入し、車内とクルマの外とが同じ水位になれば水圧の影響が少なくなるのでドアを開けられる可能性もありますが、パニックを起こさずそこまで冷静に待っていられるかどうかわかりません。筆者は正直自信がありません。とにかくすぐに脱出を試みるべきです。

それに悠長に待っていたら流木など漂流物などに衝突する危険もあります。とはいえドアを開けるのは容易ではないので、そうなる前に脱出口となる窓を開けておくのがベストです。しかし、今どき手動式の窓などまずありません。水没した状態で果たしてパワーウインドーは動くのか?

実はクルマが水没しても、しばらくはパワーウインドーが動く可能性があります。JAFが以前行ったテストによると、セダンタイプのクルマで水位が90㎝に達するまでパワーウインドーが作動した、という結果が出ています。まずはパワーウインドースイッチを操作して窓が開くかどうか試しましょう。窓が開いたらそこからすぐに車外に脱出します。

もちろんすべてのケースでこのようにパワーウインドーが動くとは限りません。回路がショートして開かない可能性もあります。その時はどうすればいいのか?窓が開かないなら窓ガラスを割ってしまえばいいのです。緊急脱出用のハンマーが用意されていればそれを使うといいでしょう。フロントウインドウは合わせガラスが使われているので強度が高く脱出用ハンマーでも割ることはできませんが、サイドウインドーを脱出用ハンマーで割るのは簡単です。しかし、この脱出用ハンマーはクルマに必ず装備されているものではありません。そんなもの用意していないとう時は何かかわりになるものはないでしょうか。実はおそらくほとんどのクルマに装備されている、あるものが役に立つのです。

動かなくなったウインドーを
車内にあるもので割る方法

それがシートのヘッドレストです。ヘッドレスト一体型のバケットシートでなければ、ヘッドレストは取り外しができるはず。取り外してみれば金属製の棒がついているはずです。これで窓ガラスが割れるのです。

といってもこれで叩いても容易には割れません。そうではなくヘッドレストの金属の棒部分を窓ガラスのワクの隙間に差し込みましょう。そして、強く手前に引いてテコの原理使って窓ガラスの一点に力をくわえてやるのです。そうすると一瞬で窓ガラスが割れるはずです。この方法なら女性の力でもなんなくガラスを割ることができるでしょう。いざという時のために覚えておくべき裏技です。

緊急時脱出用ハンマーがない場合はヘッドレストの金属の棒部分を窓枠の隙間に差しこみ手この力を使い手前に強く引くとガラスが割れます。隙間は狭いので無理やり差し込みます。

無事ガラスが割れたらすぐに脱出します。ガラスが割れるととたんに水が侵入してくるので、窓を破壊する前に深呼吸をして心構えをしておくといいでしょう。水が侵入してきたらあとは、クルマが完全に水没する前に割れた窓から外に脱出です。

その後水の中を泳ぐことになるので、できれば上着や靴、靴下などは脱ぎなるべく身軽になっておいたほうが良いでしょう。着衣による水泳は慣れていないと難しいため、途中でおぼれてしまう危険性があります。もし車内に密閉できるリュックやペットボトルがあれば、中身を空にして浮き輪がわりに持っていくのもいいでしょう。

水没した道路から脱出する際に気を付けないといけないのが下水につながるマンホールです。水害によって雨水が下水路を逆流して、道路上のマンホール外れて口があいている可能性があります。もし避難の最中にマンホールのトラップにはまってしまったら脱出はほぼ不可能です。絶対に避けなくてはいけません。足がつくのであれば、とにかく慎重に進みマンホールや側溝などがないかいちいち足で確かめながら、速やかに脱出します。無事クルマから逃げ出せたらあとは高いところに急いで避難です。

水害でリース車が廃車に!
途中解約となって違約金が発生!?

無事脱出でき命の危険が去ったあとは、気になるのがクルマのこと。クルマが水没してしまえば、程度はあるでしょうがそのまま全損となるケースがほとんどです。ルーフまで完全に水没とならなくても、クルマのフロアが水につかってしまうだけで、通常は水没車に認定されてしまいます。

修理は不可能ではありませんが多額の費用がかかり完全な状態に直せるとも限りません。そのため通常は全損として扱われます。中古車としても買いたたかれるはずです。ただし、任意保険の車両保険に入っていれば保険金が降りる可能性が高いでしょう。

もしそのクルマがカーリース車両だったらどうなるのか。水害、災害などでクルマが全損となってしまったら継続しての使用が不可能です。ということは残念ながらカーリースの契約は強制的に解約となります。そして強制解約なので、リースの契約者はカーリース会社に対してそのクルマの違約金を支払わなければならなくなります

では、その費用はいくらくらいになるのかというと、まず、残っていたリース期間分のリース料金が全額請求されます。災害による全損であってもリース料は残念ながら免除してもらえません。

加えてリース契約時に決めたクルマの残価の負担も必要です。これは本来クルマを返却することで相殺すべきものですが、クルマ自体が廃車となってしまうわけですから、相殺は不可能。そのため契約者がその分の全額を違約金として負担する必要があるのです。一応リースが途中で終了となるので、本来必要であった税金や車検料、メンテナンス料などの合計金額は引かれますが、それでもかなりの金額が請求されることになります。さらに厳しいのがこれら違約金は一括で支払うのが基本となっていることです。

必要なクルマがなくなってしまった上に、金銭的に大きな負担を払わなくてはいけない。もし、自宅などにも被害があれば生活そのものを大きく脅かしかねません。そのダメージは甚大です。絶対に避けたいですね。

最初に書きましたが、異常気象による大規模な水害は日本中どこでいつ起きてもおかしくありません。つまりいつ自分の身にこのようなリスクが降りかかるかわからない。であるならばばあらかじめそのような災害による被害なども想定しておき、リスクを最小限におさえる準備をしておく必要があるでしょう。ではその準備とはなんなのか?

水害などのリスクを考えて
カーリース向け任意保険に加入しよう

前述の通り、災害などでカーリースが解約になった場合、高額な違約金を支払わなければなりませんから、災害リスクに備えて任意保険の車両保険に加入しておくことが非常に重要です。特にカーリースは契約満了後に返却するものなのでクルマへのダメージに関しては極力避け、万が一の際にも保険でカバーできるように車両保険に加入しておくのは当然といっていいでしょう。

ただし、通常の任意保険の車両保険では、クルマが受けた損害に対しての補償はしてくれますが、災害などによってクルマが廃車になってもカーリースの違約金の補償はしてはくれません。ということはカーリースを利用するのであれば万が一の強制解約に対する備えも必要だということ。地震や台風、洪水や津波など近年の災害リスクを考慮すればカーリース専用任意保険の車両保険に加入しておくのが間違いありません。

もしすでに加入している任意保険があれば等級などがひきづけないというデメリットはありますが、不測の事態による全損にってリースの解約費用が発生しても保険がカバーしてくれるのです。また、カーリースの5年や7年といった長期の契約に合わせた保険契約も選べるというメリットもあります。契約期間中は更新手続きなども不要という面倒もありません。

さらに、事故によって保険を使用してもリース期間中は等級がダウンしない。ということは、リース期間中は保険料が変わらないということ。つまりトータルでの支払額も変動しないので月々の支払い計画なども立てやすくなるでしょう。リース専用の任意保険にはこういったメリットもあるのです。リース特有のリスクを考えれば、保険のリース専用のものに加入しておくべきでしょう。

その時にあわてないように
できる限り準備はしておこう

こういったカーリース専用の任意保険は、カーリース会社が自動車保険会社と提携し、あらかじめ用意されているケースも少なくありません。その場合はカーリースの契約と一緒に加入することも可能なので、よくわからないという場合はカーリース会社に聞いてみるといいでしょう。おそらくリース料金に、保険料を組み込むことも可能なはずです。

もしカーリース会社で専用の任意保険が用意されていなくても自動車保険会社が独自に「リースカー向け自動車保険」を販売していますので、付き合いのある自動車保険会社があれば問い合わせてみるのもおすすめです。

いずれにしても日本に住む限り予測のできない自然災害はいつ私たちの身に降りかかるかわかりません。その時になってあわてないように、いざという時にどう行動するべきか予習しておくべきでしょう。またカーリースを利用されているなら、カーリース特有のリスクに備えて、任意保険や車両保険の加入もしっかり検討してください。備えておけばリスクは最小限に抑えることができます。そのほうが安心してカーライフも送れるはずです。