街中でこんなクルマに遭遇したことはありませんか?いかにも昔のイギリス車的な丸っこい3ボックスボディで、フロントにはまん丸のヘッドライトと立派なクロームメッキのグリルついている、そんなちょっとユニークなコンパクトカーなのですが、どうでしょう見た覚えはないですか。

本物のクラシックカーではありません。ぱっと見はクラシックカー、なのに良く見ると、インテリアは随分と現代的で走りもスムーズ。そんなクラシックカーのようでクラシックカーではないクルマです。

別のクルマである可能性もありますが、きっとそれは光岡自動車の「ビュート」というクルマのはず。もしくは同じくミツオカブランドのクラシックカースタイルのコンプリートカー(市販車を元にカスタマイズやチューニングを施して、外観や内装を変更した完成車)でしょう。

クラシックカーは所有してみたいけれど
費用や維持に不安がある人にぴったり?

個性的なスタイリングと現代車にはないゴージャスなイメージを持つクラシックカーは、多くのクルマファンにとって憧れの存在です。でも実際にマイカーとして手に入れるかというとそれは別の話し。車両価格だって高いですし、手に入れてからの維持費用や、トラブルやスペアパーツなどのことも心配です

でも、クラシックカーの古典的な雰囲気やスタイルに大いに魅力的だし、維持が難しくないなら是非欲しい!そう思っている方もきっといるでしょう。そんな方にピッタリのクルマ、いうなればネオクラシックカーともいうべき存在が光岡自動車の「ビュート」です。

実はその誕生は1993年と以外に歴史があります。でも大メーカーのようにテレビなどで宣伝などはされていません。そのせいかかなりのクルマ通でないとその詳細は知られていないのが正直なところ。でも一目見れば気になってしまう個性抜群のクルマ、ビュートとはどのようなクルマなのでしょうか。そのメーカーである光岡自動車と共にクローズアップしてみましょう。

ユニークなクルマをラインナップ!
10番目の国産自動車メーカー光岡自動車

まずビュートを語る前に、メーカーである光岡自動車について紹介します。光岡自動車は1968年2月に富山県で創業しました。もともとは新車や中古車の販売を行うディーラーを営んでおり、現在もBUBU(ブブ)ミツオカというブランドで全国に店舗を展開しています。

1980年代には、原付免許で運転ができる、50ccのミニカー「BUBUシャトル」などを発売しており、ベテランドライバーであれば覚えているという方もいるのではないでしょうか。

光岡自動車がネオクラシックカー、レプリカ車を手掛けるようになったのは1987年ごろです。メルセデスベンツのSSKをモチーフとした「BUBUクラシックSSK」が最初のクルマでした。ちなみに、オリジナルのベンツSSKは人気の漫画・アニメキャラクターであるルパン三世の愛車としておなじみです。あの印象的な黄色いオープンカーですね。

このSSK、本物はわずか数十台しか製造されなかったという超レアカーで、市場に出れば数億円(海外オークションでは7億円以上で取引されたこともあります)の値がつく超高級クラシックカー。アニメの設定ではルパンのSSKはフェラーリのV12型エンジンに換装されているということになっているので実在すればそれ以上の価値があるということになるのでしょう。
閑話休題。

ミツオカのBUBUクラシックSSKは、200台の限定車両で1989年に製造終了しています。その完成度はなかなかのもので、見た目にはあのアニメの通り、とてもリアルにできていました。

オリジナルのベンツSSKも超レアカーですが、今となってはこのレプリカカーであるBUBUクラシックSSKも相当レア。ということで高値で取引されるプレミアムカーになっているようです。

このBUBUクラシックSSKの販売を経て、1994年、ついに光岡自動車のオリジナルのカー「ゼロワン」が発表されます。基本的にはロータス・スーパーセブンのレプリカ車ですが、フレームも自社開発であり光岡自動車制作のオリジナルのクルマです。これが同社の生産2号車として組み立て車に認可されます。

さらに1996年には新型自動車として晴れて国から型式の認証を受けることになり、光岡自動車は10番目の国産乗用車メーカーとして認可されたのです。

同じころゼロワンとともにミツオカから発売(1993年)されたクルマが、初代の「ビュート」です。そして、それに続き「リューギ」や「ガリュー」さらに「ヒミコ」や「なでしこ」といった同様のテイストを持つコンプリートカーが次々とラインナップされていきました。つまりミツオカのクラシックテイストコンプリートカーの元祖ともいうべき存在がビュートなのです。ではそのビュートとは、いったいどのようなクルマなのでしょうか。

ベースは日産のコンパクトカーマーチ。
モデルチェンジを経て最新モデルは3代目

光岡の「ビュート」は簡単にいってしまうと日産マーチをベースにカスタマイズされたコンプリートカーです。そのモチーフは、カーマニアであればすぐにピンとくるでしょう。ジャガーのMk2であることは明白です。

さすがにオリジナルのジャガーのような高級感や優雅さまでは再現されていませんが、雰囲気をうまくとらえています。元々は大衆コンパクトカーのマーチですから、それをここまでバランス良くイメージチェンジしてしまったところには光岡自動車のセンスの良さを感じます。

ちなみに現在ラインナップされているビュートは3代目。初代も二代目ビュートも日産マーチがベースになっていたという点は変わりません。ベースとなったマーチのモデルチェンジに合わせて歴代ビュートもモデルチェンジを重ねてきました。

キャビン(居住スペース)の形やルーフライン、空力を考えて寝かされたフロントウインドーなど、よく見るとマーチの面影が残っていますが、一目見ただけではまさにクラシックカー。バンパーやグリル、ヘッドライトベゼルにボディのモールなどにクロームパーツが使われており、マーチにはない、ピョコンと張り出したリアトランクもクラシカルなテイストをうまく醸し出しています。

さほどクルマに詳しくない人であれば、間違いなくクラシックカーと勘違いするはずです。こういった演出のセンスの良さはさすが長年手がけてきただけのことはあります。

でもエクステリアはこのようにとてもクラシカルな装いですが、ドアを開け、いざ乗り込んでみると、目の前に広がるのはマーチのインテリア。グレードによりますがメッキのフィニッシャーなどで加飾されてはいてもさすがに内装をがらりと変えるのは難しいのでしょう。そのためエクステリアとインテリアのイメージに違和感があります。

しかし逆にいえば、快適装備がそろった便利な現代のクルマである証明。エアバッグも効きの良いエアコンも、集中ドアロックやパワーウィンドウも当然装備されています。始動だってインテリジェントキー+プッシュボタン。クラシックカーのように気を使うこともなく、安全性も現代レベル、トラブルの心配だってほとんどないわけです。

もちろんカーナビも装着することもでき、オリジナルのオプションとしてウッドタイプインパネやアナログ時計、本革シートなどといったメニューも用意されています。違和感を減らしたいのならばこういったオプションアイテムをそれなりに装着すれば良いでしょう。

しかし、エクステリアは英国車のようにクラシックな装いでも、インテリアは現代的で使い勝手や快適な装備が充実!というそのコントラストをポジティブにとらえれば、あえてオプションなしで乗るのも悪くないかもしれません。

見た目はクラシックだけれど
その走りはもちろん現代的

ではビュートの走りはどうなのでしょう?エンジンなどには特にチューニングが加えられているわけではありません。つまりパワーユニットはマーチに搭載されている3気筒1.2リットルのガソリンエンジンそのまま。筆者はビュートそのものを運転したことはありませんが、現行のマーチには乗ったことがあります。そこから想像すれば動力性能としては必要十分といったレベルでしょうか。

でも、ノーマルのままということは信頼性も担保されているということ。それにこういったクルマにスポーティな走りを求める人も多くはないでしょう、過不足がなければ問題ないはず。アイドリングストップもついていますしトランスミッションはCVTで変速もスムーズです。

ただ、車体重量はちょっと気になります。数々の外観カスタマイズによってベースとなったマーチよりも100kg程度重くなっているので、ノーマルのマーチよりは動力性能に関しては多少割り引いて考える必要があるかもしれません。でも、ビュートは基本的に雰囲気を楽しむクルマなので、走りの貧弱さをウイークポイントとするのはちょっと見当外れですね。

なんといっても街中を走るビュートは、そのスタイルがとにかく際立ち、周囲から注目を浴びるはずです。おそらく1,000万円クラスの高級スポーツカーにも劣らないくらいに目立つはずです。それだけでも所有する価値はあるというもの。見た目はクラシカルですが中身は現代の国産車ですからファミリーカーとしても安心して使用できるというのも大きな魅力でしょう。

では肝心のビュートの価格はというと、241万9,200円~です。本革シートやインテリア、ウッドパネルなどのオプションを追加すればさらに40~60万円プラス…。ベースとなったマーチの価格が115万1,280 円~なので、軽く100万円以上の価格差となります。

ですが、内容を考えれば決して高すぎるということもないはずです。なんといってもこんなクルマ他にはありませんし、もともとクラシカルなクルマですから、時間が経っても逆に古さを感じることはないでしょう。普通に現代の新車を購入するよりももしかしたら新鮮な気持ちでずっと長く楽しめるかもしれません。

最近の国産車は、ハイブリッドカーやミニバンなどどれも似たような形のものばかりでつまらない、という方は、是非この光岡自動車のビュートや、そしてその他のコンプリートカーに注目してみてはいかがでしょう。