マツダのフラッグシップSUVとして2017年12月にデビューしたのが『CX-8』です。そのスタイリッシュなデザインと、トルクフルなディーゼルエンジンによる力強い走り、さらにSUVながら実用的な3列シートを備えた優れた居住性から、登場以来メーカーの予想を超える大ヒットとなっています。
今や国内モデルのラインナップにミニバンを持たないマツダにとって、この3列シートで6人乗りと7人乗りを用意したCX-8は、単なるSUVのフラッグシップではなく、ミニバンオーナーのニーズにも応えられるSUVであり、非常に重要なポジション。そんなCX-8が、2018年11月末に発売から1年で、マイナーチェンジを受けた新型モデルが登場しました。一体どのようなマイナーチェンジなのでしょうか。
目次
細かなマイナーチェンジを
短いサイクルで行い商品力をアップ
一年もたたずにマイナーチェンジというのは意外と思うかもしれませんが、最近のマツダは、2年ごとのマイナーチェンジという従来のサイクルを一新し、細かなマイナーチェンジを短いサイクルで頻繁に行い、ラインナップの商品力を高めていくという姿勢です。こういったことは他の車種でも行われておりCX-8だけではないので、決して意外ではないのです。
このマイナーチェンジは、いわゆる従来の国産車のマイナーチェンジというよりも、ヨーロッパ車のような、2019年度のイヤーモデルが投入された、と捉えるべきなのかもしれません。しかし、このマイナーチェンジは細かなマイナーチェンジを超えるかなり大きなものでした。
ただ、先代モデルオーナーにとって一番気になる外装などのデザインに関しては、大きな変更はありませんでした。何よりも注目すべきはパワーユニットです。既存のディーゼルターボに加えて、待望のガソリンエンジンが2種も新投入されたのです。また、そのほかにも細かな点でバージョンアップの数々が実施されています。そんなCX-8のマイナーチェンジの内容に関して、多岐にわたっているであらためて整理して詳しく見てみましょう。
ディーゼルに加えて
ガソリンエンジン2種を新投入
(引用:マツダ公式HP)
もっとも大きな変更点は、やはり既存のクリーンディーゼルエンジンに加えて、2種類のガソリンエンジンが新設定されたことでしょう。その新エンジンとは、2.5リッター直噴ガソリンターボエンジンの「SKYACTIV-G 2.5T」と、NA(自然吸気)の2.5リッター直噴ガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.5」です。
排気量はNA、ターボとも2.5リッター(2488cc)です。そしてNAのSKYACTIV-G 2.5の最高出力は140kW(190ps)/6000rpm。最大トルクは252Nm(25,7kg-m)/4000rpmを発生します。
さらにターボエンジンのSKYACTIV-G 2.5Tの場合は、最高出力169 kW(230 ps)/4,250rpmを発揮し、最大トルクも420 Nm(42.8 kg-m)/2,000rpmとなります。どちらも十分以上にパワフルです。ちなみにトランスミッションは共に電子制御6速ATのみとなります。
トルクフルで静粛性も高く、振動も少ないという、既存のディーゼルターボの評価も非常に高かったのですが、昔のイメージがあってディーゼルエンジンはどうも苦手、という方もいたはず。CX-8は魅力的だけど、ガソリンエンジンがないから…、と躊躇していた方にとっては待望のパワーユニット追加なのではないでしょうか。
すでに多くのサイトで、ガソリンエンジン搭載の新型CX-8の試乗レポートが公開されていますが、NA、ターボとも非常に高評価。燃費などの面ではディーゼルエンジンにはかないませんが、スムーズさや静粛性、クリーンなイメージなどガソリンエンジンならではの特長には、ディーゼルエンジンをしのぐ魅力があります。
それになんといっても2.5リッターNAを搭載する2WDのグレード「25S」なら価格は289万4,400円です。マツダのフラッグシップSUVがアンダー300万円で購入できるのですからこれは非常にお買い得だと思います。
マイナーチェンジ前のCX-8の場合、最も安かったグレードは2.2ディーゼルエンジン搭載の2WDグレードであるXDでした。そしてその価格は319万6,800円。これに比べると30万円も安く購入可能です。
ちなみにこの2WDのXDというグレードはマイナーチェンジによって廃止となりました。そのため現行モデルのディーゼルエンジン最安グレードは4WDのXDに変わり、その価格は360万7,200円~です。ディーゼルを狙っていた方にとってはお買い得グレードがなくなってしまったのはちょっと痛いですが、CX-8が安く変えるようになったという点は喜ばしいことでしょう。
グレード名 | 駆動方式 | エンジン | 価格 |
---|---|---|---|
25S | 2WD | 2.5L NA | ¥2,894,400 |
25S PROACTIVE | ¥3,256,200 | ||
25S L Package | ¥3,758,400 | ||
25T PROACTIVE | 4WD | 2.5L ターボ | ¥3,742,200 |
25T L Package | ¥4,244,400 | ||
XD | 4WD | 2.2L ディーゼルターボ | ¥3,607,200 |
XD PROACTIVE | 2WD | ¥3,693,600 | |
4WD | ¥3,925,800 | ||
XD L Package | 2WD | ¥4,228,200 | |
4WD | ¥4,460,400 |
機能が進化したG-ベクタリング
コントロール プラスとは?
(引用:マツダ公式HP)
エンジンの他にも様々な改良点があります。その一つが「G-ベクタリングコントロール・プラス」の新採用です。マイナーチェンジ前のCX-8にも「G-ベクタリング コントロール」が採用されていましたが、それが“プラス”にバージョンアップしたわけです。
そもそもこのG-ベクタリング コントロールとはどのようなものかというと、ドライバーのステアリング切る操作と車速から、クルマの走行状況を検知し、エンジンの出力(トルク)を人が感じ取れない程度に微妙にコントロールするというもの。これにより車両の横方向と前後方向の加速度(G)やタイヤへの荷重を調整してスムーズかつ違和感なく、クマの挙動を安定させるという技術です。
従来はあくまでステアリングを切る、という操作に対してトルクを制御するだけだったものを、G-ベクタリングコントロール・プラスでは、ハンドルを戻す際にも制御を追加。さらに出力だけでなく、ブレーキも合わせて制御することでステアリングを戻す操作時のクルマの挙動の収束性を高めてくれます。
つまりはハンドルを切った時でも、また戻す時にもクルマの挙動が安定して意識せずスムーズに走ることができるということです。おそらく、雪道など、より滑りやすい路面では、その効果が発揮されるでしょう。
他には、衝突回避軽減ブレーキには夜間時の歩行者認知機能が追加され安全性能もアップしています。そして、最上級グレードのL Packageには、大型の7インチマルチスピードメーターの採用や、インテリア照明の色味、配光のも変更となり質感が向上。また、360度ビュー・モニターを各グレードのL PackageとXD PROACTIVEに標準設定し、他のグレードにもメーカーオプションで装着できるなど装着対象を拡大しています。
他にはマツダコネクト(7インチモニターを持つラジオや音楽、映像の再生から車両のインフォメーションモニターになるコネクティビティシステム)がApple CarPlayとAndroid Autoに対応しました。
マツダコネクトはそのままではカーナビとしては機能せず、ナビゲーション用SDカードPLUSオプション(4万8,600円)を追加しないと、ナビとしては使用できませんでした。しかし、これならオプションのSDカードを追加せず、別売りのケーブルさえつなげば、車内のモニターで、いつも使っているスマホのナビアプリが利用できるわけです。
最近は車載カーナビよりもGoogleマップなどスマホのナビアプリの方が慣れていて使いやすいという方も多いでしょうから、これはうれしいポイントでしょう。費用も余り掛からないというのも魅力ですね。
質感や機能をアップしながら
お買い得度を高めたマイナーチェンジ
それ以外には、エアコンパネルやスイッチ、ダイアルのデザインやインテリアの照明なども一新。加えて車内の静粛性のアップに、アルミホイールの塗装が新色になるなど全体的に質感が向上しています。
また、L Packageには専用装備として前席シート両側に、不快な熱気を吸い出すシートベンチレーション機能が搭載。車内の快適性に関しては大幅にレベルアップしているといっていいでしょう。
SUVながら実用的な3列シートを持つCX-8だけに全ての乗員が快適に過ごせるような、こういった装備の充実やインテリアの質感向上のリクエストが多かったのかもしれません。エクステリアの変更はほとんどありませんでしたが、中身は相当にバージョンアップしています。
それでいて、ガソリンNAエンジンがラインナップに加わったおかげで、価格は289万4,400円~と、お買い得度が大きく増しています。CX-8ならではのスタイリッシュなデザインと実用性の高さに魅力を感じていたけれど、最安グレードでも300万円オーバー、というその価格に躊躇していたという方も、このマイナーチェンジで、CX-8がぐっと身近な存在になったのではないでしょうか。あらためて購入を検討してみてはいかがでしょう。