冬の朝、いつものように出かけようと駐車場のマイカーに近づくとなぜかフロントウインドーが凍り付いて真っ白に。そう真冬にありがちなフロントガラスの霜です。東京など冬でも雪がほとんど降らない地域でもまれに冬の朝フロントウインドーが凍結し、霜によって視界が遮られてしまうということがあります。そのような状況になった場合どうすればいいのでしょうか。霜で視界が遮られた状態で運転するのは当たり前ですが大変危険です。事故につながるリスクがあるので絶対に避けなくてはいけません。

方法としては熱湯をかけ溶かす、ヒーターで車内を暖めゆっくりと溶かすなどというのもありますが、どちらも忙しい朝には時間や手間がかかりすぎて遅刻は必至。それにうまくやらないとトラブルの原因となるなどという話もあります。

では、どうすればいいのでしょう。実はそんなやっかいな問題を解決してくれる画期的な装備が新型カローラセダン、カローラツーリングに採用されたという話題が先日ニュースで発信されました。その装備とはどのようなものなのでしょう。フロントガラスの凍結、霜取りの定番対策などと合わせてご紹介します。

雪国でもないのに
なぜフロントガラスは凍結する?

雪国など冬場気温が氷点下まで低下する雪国であればわかりますが、東京など雪などめったに降らないような地域でも、晴れた日の朝、クルマのフロントガラスが凍って霜で真っ白になってしまうことがあります。

降雪地にお住いのドライバーであれば、日常的にそのようなことが起きるのであらかじめフロントガラスにカバーをするなど対策をとっているでしょう。しかし、そうでない地域のドライバーは、いきなり朝駐車場に行ってみたらクルマのフロントガラスが真っ白になっている現場に遭遇することになるわけです。それは戸惑いますし突然にことだと対処にも困ります。朝であればすぐにでも出かけなくてはいけないのにそのままではクルマを運転することができない!大ピンチです。でもそもそも前日雪や雨が降っていたわけでもなくむしろ快晴だったのにいきなりフロントガラスが凍結してしまうのはなぜなのでしょうか。実はその理由は放射冷却にあります。

放射冷却とは、地面の熱が放射によって奪われ、気温が急激に下がることです。では晴れた日に放射冷却が起きるのはなぜか。それは、昼間に地面が太陽から受け取った熱(赤外線)が、夜間雲などに遮られことなく宇宙へ放出され続けてしまうためです。雲があればある程度空気が保温されることになるのですが、快晴だと、雲など赤外線を遮るものはありませんから熱が一気に宇宙へと放出され気温が急激に下がってしまうのです。その際、地面とともに周りの空気も一緒に冷やされます。そして気温が下がったことで空気中の水分が凍り付き、それがフロントガラスに降り注いで張り付くと、ガラス面で凍結し霜となってしまうのです。

フロントガラスが霜で白く凍りついてしまった状態では当然視界が確保できないのでそのままでは運転できません。ではどうすればいいのでしょう。

凍結を防ぐのには
ウインドーを覆うのが効果的

凍結を防ぐのにもっとも簡単な方法はフロントガラスをカバーなどで覆ってしまうことです。ガラスに冷えた外気が触れることで熱が奪われて温度が下がってしまうのですから、外気が直接フロントガラスに触れないようにカバーしてしまえばいいのです。カバーで覆っていれば空気中の凍結した水蒸気がフロントガラスに降り、張り付くこともありません。

そのためのアイテムはディーラーオプションやカー用品店などでフロントガラスカバーとして売られています。しかし最近SNSなどで雪国の方が実践している方法として話題になったのはそういったカバーを使うのではなく緩衝材のエアキャップ、いわゆる「プチプチ」でフロントガラスを覆うという方法です。これが思いのほか効果的なのだそうです。プチプチの空気のカプセルが冷えた外気をしっかりと遮るので凍結した水蒸気がフロントガラスに張り付くのを防ぐだけでなく、ガラスの冷却も抑えてくれるので凍結対策として非常に効果的なのだといいます。雪国の方がそういうのですから確かなのでしょう。

ただ、こういった方法はとても効果的なのでしょうが、めったにそのようなことが起きない地域では、冬場毎日それを実践するのは面倒です。ついつい忘れてしまった朝に限っていきなり凍結していたということもあるでしょう。かといってあらかじめ霜が降りるのを予測してクルマをプチプチで覆っておくなどという対応はちょっと難しいかもしれません。

むしろ凍結を予防する方法よりも、霜で真っ白なってしまった後の効率的な対処方法を知っておくほうが重要かもしれません。

デフロスター機能を使って
フロントガラスの霜を溶かす

とにかく何の準備もないという時は、エンジンを始動してデフロスターを付けその熱によって、霜を溶かすという方法がもっとも簡単です。デフロスター、使用したことはあるでしょうか。そんなのクルマについていたっけ?などという方はさすがにいないと思いますが、どんなクルマにもデフォッガーとペアで必ず装備されているはずです。

どのスイッチがデフロスターなのかわからないという方は、扇型の枠に3つの波線矢印が描かれたアイコンのあるスイッチを探してみてください。それがデフロスタースイッチです。ちなみに四角の枠に3つの波線矢印の入ったアイコンが描かれているのはデフォッガーです。デフロスターはフロントガラスの曇りや霜を取り除くもので、デフォッガーはリアガラスの曇りを取り除くものといった違いがあります。

そしてデフロスタースイッチを入れると、高温のエアコンの風がフロントガラスに吹き付けられます。この熱風によって曇りや霜を取り除いてくれるというわけです。ただし、外気温や凍結の程度によっては15分以上待たないと視界を確保できないこともあります。忙しい朝の15分は貴重なもの、それでは間に合わないという場合もあるでしょう。

あなたがリモコンスターター(遠隔リモコンによって離れた場所に停めたクルマのエンジンを始動できるアクセサリー。)を使用しているのであれば、家を出る前にエンジンを始動して、あらかじめクルマを暖めておくという手もあります。ただ、長時間のアイドリングは燃費の悪化につながりますし、排気ガスによる環境への負荷が気になるかもしれません。

解氷スプレーは
自作することも可能

カー用品店やディスカウントストアなどに売られているスプレー式の解氷剤などをトランクなどに入れておくのも良いかもしれません。解氷剤の主成分はアルコールです。アルコールは水に比べると凝固点が低く(-114.4℃)、濃度が50%以下でも-35℃くらいまでは凍りません。

凍結したフロントガラスに水を吹き付けてもすぐに凍ってしまって溶かすことはできませんが、液体となったアルコールなら凍ることなく氷を溶かし流し落とすことが可能です。さらに残ったアルコール成分は-35℃まで凍らないので再び凍結することもないというわけです。

比較的軽い霜であればスプレーするだけでもガラスに張った霜を溶かすことが可能です。またスプレー式の解氷剤はキャップ部分がスクレーパーになっているので、スプレーしつつ、スクレーパーで霜や氷を削り取る作業を行えばスピーディに視界の確保ができるでしょう。

寒い中の作業は大変ですが、急ぐのであれば、解氷剤+スクレーパーというのがおススメです。ちなみに解氷剤は薬局などで入手できる無水エタノールなどでも代用できます。そのほうが費用もかからないので、自作解氷剤を作って使用されている方もいるようです。

作り方はとても簡単です。入手しやすい除菌用アルコール液や燃料用エタノール、無水エタノールと水道水を混ぜるだけです。割合はアルコール濃度の高い無水エタノールや燃料用エタノールならアルコール1に対して水道水を3の割合。除菌用アルコール液ならアルコール2に対して水を1の割合で希釈し、あとはスプレーボトルに入れるだけです。とても簡単ですが市販の解氷剤と変わらない効果が期待できます。費用も安く済むので興味がある方は自作にチャレンジしてみてください。

熱いお湯で霜を溶かすのは
ガラスにヒビが入るリスクがある

このほかに霜を取り方としてフロントガラスに直接熱湯をかけるという原始的な方法もあります。確かに短時間で霜を取ることができるのですが、冷えたガラスに熱湯をかけるのは実は危険です。最悪ガラスにヒビが入る可能性があります。

最近のクルマのフロントガラスは樹脂などでできた中間膜を持つ合わせガラスなので割れにくくなっていますが、気温などの状況によってはヒビが入る可能性があります。冷えて縮んだガラスに、熱湯をかけるとガラスが一気に膨張してヒビが入ってしまうのです。ですから適温のお湯ならまだしも、熱湯をかけるのは避けておいた方が賢明です。

50℃ほどのお湯ならヒビが入る可能性は低くなるので、どうしてもすぐに霜を取りたいという場合は50℃以下のお湯を使用するようにしてください。ただ、気を付けないといけないのはガラスにキズやヒビが入っている場合です。そういったガラスの場合は50度以下のお湯でもヒビなどが拡大してしまう可能性があるので注意が必要です。

ただ、そのようなちょうどよい温度お湯を急いでいる朝に用意するのは大変です。駐車場が家から離れている場合はすぐに温度も下がってしまいます。簡単に実施できる方法とは言えないかもしれませんね。

カローラにオプション設定の
最新ヒーテッドウォッシャーとは


(引用:トヨタ公式HP)

でも、実はお湯を使うという最もシンプルな霜取り方法を、最新の技術を使ってより使いやすく進化させクルマにオプションとして設定してしまったクルマがあります。それが、2019年9月にフルモデルチェンジを行ったトヨタカローラセダンとカローラツーリングです。なんと世界初となる『ヒーテッドウォッシャー』機能が導入されました。

このヒーテッドウォッシャーとは、その名前から想像がつくと思いますが、ウォッシャー液を温めてお湯にしてフロントガラスに噴射するというもの。温められたウォッシャー液を噴射すると霜は約20~30秒で溶けるというのでこれがあれば、面倒な霜取り作業から解放されます。

その構造はとてもシンプルで、ウォッシャータンクとウォッシャーノズルの間に魔法瓶などと同じ貯湯式の加熱&保温装置があり、一度温められたウォッシャー液をそのタンク内に貯めておき温度を長時間キープするというもの。これを開発したのは「村上開明堂」というミラーなどの製造を主力とした会社です。

参考サイト:「村上開明堂」ニュースリリース

使用するたびに温めるのではなく、前回の走行時にウォッシャー液を温めておき、それを魔法瓶構造の貯湯式加熱&保温装置で保温しておくというとても効率的な装置で一度温めたウォッシャー液は約12時間、霜取りに最適な温度に保つことが可能といいますからかなりの優れモノ。ちなみにこの保温装置の容量は250㏄で、使用した分のウォッシャー液はウォッシャータンクから供給され、走行すると再び加熱と保温を繰り返えされます。

温められたウォッシャー液の温度はだいたい60℃ほどでそれが12時間くらい保温できるということ。装置内では60℃ですが、ウォッシャーの配管やノズルを通過するとちょうどよい50℃ぐらいになるので、霜をとかしつつガラスのヒビも防ぐことのできるちょうどよい湯温となるわけです。これがあれば凍結したフロントガラスの霜を効率よく取り除くことができるわけですから非常に便利ですね。

過去にフロントガラスの霜で怖い思いをしたという方は是非とも装備しておきたいところですね。とはいえこの装備は新型カローラに世界で初めて装備された最新のもの。残念ながら新型カローラセダンとカローラツーリングにしか現状は設定されていません。メーカーオプションではなくディーラーオプションで名前は『霜取りウォッシャー』。そして価格は3万800円(税込)です。

この霜取りウォッシャーは、単体でも装着することができますが、リモートスタート(リモコンスターター)とのセットオプションも設定されています。併せて使用すれば冬場の快適度が確実にアップするでしょう。そちらのオプション価格はスマートキー一体式のタイプとのセットで9万4,600円(税込)、別体リモコンのベーシックタイプとのセットで7万4,800円となっています。

ちょっとお高めに感じますが、毎冬霜にフロントガラスの悩まされてきたという方にとっては十分価値のある装備といえるでしょう。新型カローラセダンや、カローラツーリングの購入、新車カーリースを検討中の方は、この装備に注目してみてはいかがでしょう。なんといっても世界初の装備ですから、他のドライバーに対してちょっとした優越感も得られるかもしれません。