日本の自動車市場は近年、軽自動車やコンパクトカー、ハイブリッドやEVなどといったいわゆるエコなクルマばかりに人気が集中しています。直近の2018年上半期の販売台数ランキングを見ても、上位はプリウスにノート、アクアやフィットといったエコカーばかり。かつてはスポーツクーペやセダンなどにも一定の人気があり販売台数ランキングのトップ10には1台や2台は入っていたものですが、今や見る影もありません。
しかし、趣味性の高いクルマという意味ではかつてのクーペに変わって人気を集めているクルマもあります。それがいわゆるコンパクトSUVです。
今どきのSUVは武骨なオフロード4WDではなくスタイリッシュで快適、なおかつ燃費も優秀。サイズも手ごろで扱いやすく、室内も広いのでファミリーカーにも使えなおかつ見た目も格好良い。そんなコンパクトSUVの中でも人気の筆頭とされているのがトヨタのC-HRです。
C-HRは2016年に登場すると個性的なスタイルが注目を集めあっという間に人気モデルとなりました。ただ、C-HRはライバルのホンダヴェゼルやマツダのCX-3に比べると少し価格設定が高めなのが欠点とされていたのですが、2018年5月、マイナーチェンジで手ごろな価格設定のFFの1.2リッターターボのグレード、S-Tが追加となりました。そのスペックや装備内容を見るとなかなか魅力的。ではどのような点が従来のグレードと違っているのか、詳しくチェックしてみましょう。
目次
コンパクトSUVの一番人気
C-HRの唯一の不満点とは?
C-HRは、2017年度のSUV新車販売台数ランキングで第1位を獲得するなど今やライバルを圧倒する人気を誇るコンパクトSUVです。その人気の理由はSUVながら扱いやすいコンパクトなサイズ(全長4360mm×全幅1795mm)であること、また居住性も良く、経済的なハイブリッドモデルが用意されていること。
さらに、なんといってもライバルよりも個性的なスタイリッシュなデザインであることが大きいでしょう。全体に張りがあり、前後に絞り込まれたスピード感を感じさせるフォルム。まるで彫刻のようなメリハリのある造形。さらにディテールの作りこみも凝っていて、特にデザインにこだわりを持つSUVファンから高い評価を得ています。
発売当初から人気はうなぎのぼりで、多くのファンを獲得しました。その人気を裏付けるようにカスタマイズのためのドレスアップパーツなども豊富にそろっており、ドレスアップの専門誌などでも数多く取り上げられています。
ただ、そんなC-HRの唯一の不満点がグレード構成。ハイブリッドには4WDの設定がなく、1.2LターボにはFFの設定がない。それでいてハイブリッドと1.2Lターボの価格差が小さい。そのため全体的にはライバルに比べると価格設定の割高感が強かったのです。
どうせ割高なら、ということでしょうか、人気はハイブリッドモデルに集中し、一時はプリウスユーザーがC-HRに乗りかえるという例も少なかったようです。まあこれにはプリウスのスタイリングが不評だったうえ、その操縦性などにも不満が多かったということもあるでしょうが。
しかしそんなC-HRにも、2018年5月7日、待望の1.2LターボのFF・2WDモデルが追加となりました。合わせて装備やボディカラーに変更も加えられたことで選択の幅も広がりその人気にさらに拍車がかかっています。
C-HRが229万円で手に入る
新グレード人気となること必至か
(引用:トヨタ公式HP)
そんなC-HRのFFモデルにも採用となった1.2Lターボエンジンはどのようなパワーユニットなのでしょうか。まずこのエンジンはオーリスや、カローラスポーツにも搭載されている直噴ミラーサイクル4気筒DOHCターボエンジンです。いわゆるダウンサイジングターボで排気量は1.2Lながら、パワーは85kW(116ps)/5200~5600rpm、トルクは185nm(18.9kgf・m)/1500~4000rpmと十分なパフォーマンスを発揮します。
特にトルクは1500~4000rpmという幅広い回転域で1.8リッターエンジン並みの力を発揮するので約1.7トンというC-HRの重めの車重でもまず不足は感じないでしょう。うれしいのはオーリス用のエンジンとは違ってガソリンが無鉛レギュラー指定になっているということ。より経済的になっているというわけです。
燃費は、4WDモデルが15.4km/Lだったのが、2WDのFFでは16.4km/Lへと少し向上しています。これは4WDから2WDとなり車重が約70kg軽くなっているということが大きいのでしょう。ハイブリッドの30.2km/Lに比べればこれでもかなり見劣りしますが、低排気量のターボエンジンで約1.7トンのC-HRを走らせるのですから十分優秀な数値と言っていいと思います。
そして、従来4WDしか設定のなかったグレードS-TとG-Tにこのエンジンを搭載するFFモデルが追加となることで価格帯は229万円~292万9200円と広がりました。もちろん229万円と最もリーズナブルなグレードとなったのはS-Tの1.2Lターボ搭載FFモデルです。
C-HRはその性格上
FFモデルで不足なし
C-HRの登場時、ラインナップの中で一番リーズナブルだったのがS-Tの4WDモデルでした。その価格は251万6400円(現行のS-T 4WDモデルは248万4400円)でした。そもそもスタイリッシュなコンパクトSUVであるC-HRですから、何も燃費の悪い4WDを選ぶ必要はありませんでした。でもC-HRの一番安いグレードが4WDしかなかったのですから仕方なくこのS-Tの4WDを選んでいたという例もきっとあったでしょう。
しかし、S-TのFFなら4WDの同グレードより22万6400円も安いのです。この差は小さくありません。
価格が250万円オーバーだとちょっとお高いな、と感じますが229万円ならかなり現実的な価格に感じられます。いまどき軽自動車でも最上級モデルなら200万円オーバーもざらなのでこれはかなり魅力的です。ちなみに装備に関しては2WDも4WDも全く同じです。
違いは当たり前ですが2WDか4WDかの差だけ。SUVなら4WDじゃなくちゃ!という方も、もしかしたらいるかもしれませんが、もともとC-HRは本気のオフロード走行を考えた本格SUVではありません。
4WDのメカもフルタイム4WDではなくいわゆる高度なオンデマンド式。後輪が滑った時だけ駆動力が伝わり4WDになるというもの。これはオフロードでの走破性を高めるというよりは雪道など滑りやすい路面で安定した走行をサポートするといったタイプの4WDです。本気のオフロード走行を考えるなら別の本格SUVを選ぶべきでしょう。
そもそも一番人気だったハイブリッドモデルはFFしかありませんでしたし、1.2LターボでもFFモデルがラインナップしていなかったことのほうがむしろ不自然でした。これでようやくC-HRのグレード構成が完成したといってもいいかもしれません。
グレード名 | エンジン | 乗員数 | 価格(税込) |
---|---|---|---|
S-T | 1.2Lターボ | 2WD | 229万円 |
4WD | 248万4,400円 | ||
S-T“LED Package” | 2WD | 234万6,000円 | |
4WD | 254万400円 | ||
G-T | 2WD | 260万5,200円 | |
4WD | 279万9,600円 | ||
S | ハイブリッド | 2WD | 261万4,000円 |
S“LED Package” | 2WD | 267万円 | |
G | 2WD | 292万9200円 |
FFモデル追加で要注目グレードは
S-TのLEDパッケージ
(引用:トヨタ公式HP)
C-HRに1.2LターボのFFモデルが新たに加わったことで、C-HRの人気はさらに加速しています。従来は価格の面でライバルよりも割高感があるといわれていましたがこれで盤石のラインナップになったわけです。
C-HR人気グレードは今まではハイブリッドの最上級モデルであるGだったようですが、よりお買い得感の強いFFモデルが加わったことで、今後はこのS-TのFFモデルにも注目が集まるのは必至でしょう。
ただこのFFモデルのS-Tは非常に魅力的な価格設定ですが、実際に購入するとなるとこの一つ上のパッケージモデルのほうが現実的かもしれません。筆者的にもこの最廉価グレードではなくLEDヘッドライトを装備したS-TのLEDパッケージをオススメします。
その理由は装備の違いです。S-TのLEDパッケージの価格は234万6000円。つまり、S-Tと比べてたった5万6000円アップするだけで、オートレベリング機能付きのBi-BeamLEDヘッドランプ(ハイビーム、ロービームが共にLED)に、流れるウインカーことLEDシーケンシャルターンランプ、さらにLEDデイライトやLEDリヤコンビネーションランプが装備されるのです。これはお得。
このLEDランプ類は、S-Tにはオプションで追加もできませんし、社外パーツであとからフルLED化するには5万6000円ではとてもすみません。せっかくならはじめからLEDが装着されているS-TのLEDパッケージを選ぶのがベストだと思います。これならお得な価格でフルLEDのC-HRを手に入れることが可能です。
今まで、C-HRのライバルよりもちょっと高めの価格設定に、購入を躊躇していたという方も、この1.2LターボのFFモデルなら、かなり現実的なチョイスになるのではないでしょうか。気になる方はあらためてカタログや公式WEBサイトなどをチェックしてみてはいかがでしょう。