ここ数年、人気が急激に上昇しているカテゴリーがクロスオーバーSUVです。クロスオーバーSUVとは、SUVでありながらハードなイメージの本格派オフロード4WD車ではなく、多くの場合シャシーやパワートレーンなどを乗用車モデルなどと共有した、スタイリッシュなSUVです。
乗用車的な快適さと、高い車高を持ち、使い勝手の良さと本格派のSUVほどではありませんが、4WDタイプならある程度の走破性も期待できるというクルマ。オフロードのイメージはあまりなく、むしろ都会に似合うスタイリッシュなスタイリングが特長であり、そのような点も人気となっている一つの要因です。
代表的な国産車がマツダのCXシリーズや、ホンダのヴェゼル、トヨタのCH-Rなどです。自動車メーカー各社は次々と新型モデルを投入し、どれもが大ヒットを飛ばしています。
また、ホンダのCR-VやトヨタのRAV4のように、一度ラインナップから外れてしまったものが、再び復活(RAV4は復活予定)するなど、各社のクロスオーバーSUV車種ラインナップはまだまだ拡大していきそうです。
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マツダはクロスオーバーSUVの
ラインナップが充実
そんなクロスオーバーSUVに、特に熱心なメーカーと言われているのがマツダです。国内向けモデルだけでもCX-3にCX-5、CX-8といった、デザインに共通性を持たせた、スタイリッシュな大中小のSUVシリーズをラインナップしています。そして、これらはどれもが高く評価され、その販売も絶好調です。
また、先日は新たにCX-30というCX-3とCX-5の間に埋めるような、新型モデルも発表(2019年3月)となりました。幅広いニーズにこたえるSUVを隙なく揃えてきており、マツダが今後もクロスオーバーSUV分野で攻勢をかけていく姿勢が見て取れます。
そんなマツダのCXファミリーの中で、国内におけるフラッグシップモデルがCX-8。このCX-8は、CX-5とシャシーを共用しながら、余裕あるロングボディを採用し、一層伸びやかなスタイリングと、広々とした室内空間を実現した人気の大型SUVです。前日のマイナーチェンジでエンジンのバリエーションが追加されるなど、ますますその魅力を高めています。
そして、そんなCX-8ですが、昨年(2018年)度の、国内3列シートSUV市場における販売台数第1位(3万679台)を獲得したとマツダが発表しました。
ランドクルーザーやレクサスのRXといった、より大型で、同じような3列シートを備えたSUVもあるなか、マツダのCX-8が見事にナンバーワンに輝いたというのです。これは凄いこと。それも、ただ一位になっただけでなく、国内3列シートSUVジャンルの中では圧倒的な人気となっているのです。
3列シートSUVは、徐々にその人気が高まりつつあり2018年の販売台数は2017年に対してなんと180%を超える成長を遂げました。そして、その中でもCX-8なんと約50%の割合を占めている(マツダ発表によると)というから驚きます。
でも、なぜCX-8がライバルを差し置き、一番人気を獲得することができたのでしょうか。もちろん、それだけ魅力や実用性がCX-8にあるということなのでしょうが、その理由を筆者なりにあらためて考えてみました。
本当に実用的な3列目シート
搭載モデルは意外に少ない
ミニバンでは3列シートは決して珍しくありませんが、SUVやクロスオーバーSUVのジャンルでは、あまり多くありません。前述したCX-8や日産のエクストレイル、三菱のアウトランダー、そしてトヨタのランドクルーザーと、ランドクルーザープラドくらいでしょうか。
そうそう、復活したホンダのCR-VやレクサスのRX450hLにも3列シートのグレードが用意されていますね。用意されているということはニーズがあるということですが、選択肢は限られています。
そもそも他人数乗車が出来るクルマが欲しいのなら、それにふさわしいクルマであるミニバンを選ぶ方が合理的です。Mクラス以上のミニバンなら、余裕ある室内スペースや、開口部の大きなスライドドアがあり、そしてフラットで低いフロア高によって乗降性にも優れています。
しかし、それでもクロスオーバーSUVを選ぶ人が増えているのはなぜなのでしょうか。
恐らくですが、クルマ選びの際3列目シートは欲しいけれど、全ての人がその3列目シートの実用性に対してプライオリティを置いているわけではないということなのだと思います。
つまり、多人数乗車の頻度が低く、使用するのはせいぜい帰省した際に実家の家族を乗せる程度なら、そこまで3列目シートの実用性にこだわる必要はない。それよりも、もっと格好が良く、また趣味性も高い、3列シートを搭載したクロスオーバーSUVのほうが良い!とあえてミニバンを避けるという方が徐々に増えてきているということなのではないでしょうか。
なんといってもクロスオーバーSUVなら、ミニバンよりもずっとスタイリッシュです。武骨なオフロードイメージは低く、クーペ的な分かりやすい格好よさがあります。また、今やこのジャンルは世界中で大ブームですから、高級車メーカーも必ずラインナップの揃えており世間的にもかっこいいクルマというイメージが定着しつつある。
また乗用車ベースのモデルなら軽量でハンドリングもスポーティですし、4WDグレードならある程度の走破性が期待でき、アウトドアに出かけるにもぴったりです。
それに加えて3列目シートもあれば、ピープルムーバーとしての実用性も期待できる。こういった点が3列シートを持つクロスオーバーSUVの人気が高まっている理由なのだと筆者は考えます。そして、そんな中、国内モデルで最も高い人気を誇っているのがマツダのCX-8なのです。
4.9mの長い全長を生かして
大人でも快適なスペースを確保
(引用:マツダ公式HP)
ここでようやく本題です。CX-8がなぜこのジャンルで一番の人気なのか。まず理由の一つがライバルを上回る3列目シートの実用性の高さです。簡単にいえば広く、快適だということ。
例えばエクストレイルやアウトランダーの3列目シートは、あくまで緊急用といったレベルでしかありません。子供や小柄な人なら乗ることはできても大人が長時間乗車できるスペースとはなっていません。膝が大きく持ちあがり、足元狭い。靴を納めるスペースを確保するのにも2列目シートを前にスライドしないといけない。
ホンダの新しいCR-Vは、この2車よりもまだ余裕がありますが、同じく緊急用レベル。そもそもCR-Vの全長は4.6m。エクストレイルとアウトランダーでも4.7m弱ですから、そこに3列シートを組み込むのはやはり無理がある。
ではランドクルーザーやプラドなどそれよりも長いSUVどうなのか。これらはFRベースの本格派のクロカンSUVです。フレームを持ちフロア高も高く、リアには大型のデフを備えています。そのためシートの座面と床の距離に余裕がなく、体躯座りのような姿勢を強いられてしまうのです。
これは乗員スペースよりも走破性が重視されるクルマですから仕方ありません。やはり普段は畳んでおき、いざという時には人も(一応)乗せることができるといった緊急用レベルのシートなのです。
対してCX-8はどうか。まず全長は4.9mとランドクルーザーに次ぐ長さを確保しています。ライバルたちよりもなんと20㎝も長い。また、FFベースのモノコックボディを持つクロスオーバーSUVなので、フロアも比較的低く室内スペースにも天地方向に余裕があります。そのため、シートバックや座面の大きさも十分なものが搭載でき、このクラスとしては余裕ある3列目シートスペースを確保することができるのです。
また、3列目シートの作りは畳みやすさ重視の簡易的なものではなく、座面のクッションもしっかりした座り心地の良いものが用意されています。シートの座面と、フロアの高さはミニバンにように余裕がないので、膝もそれなりに持ちあがりますがそれでもライバルほどではない。
WEBで実際のオーナーによる感想などを検索してみましたが、ライバルと比較して間違いなく実用性が高かったのでCX-8を選んだという意見が多いようです。ライバルと比べても単に広いだけでなく、リアドアの開口部が大きく、フロアも低いので乗降性も高い。
また、2列目シートが簡単に倒せ3列目シートに乗りこみやすくなっているのもよくできていると評価されています。このように他のクロスオーバーSUV が緊急用レベルなのに対して、CX-8なら大人がそれなりに快適に過ごせるだけのしっかりとした3列目シートがある。だから選ばれているということなのです。
見た目も格好良く実用性も高い
加えてコストパフォーマンスも優秀
加えて価格面のお得さも、人気の理由と考えられます。CX-8は全グレード3列シートが搭載されており、6人乗りと7人乗りが選べます(価格は同じ)が、最もベーシックなグレード、FFで2.5Lエンジンを持つ25Sなら289万4,400円です。トヨタのノア/ヴォクシーや日産セレナなどMクラスミニバンとだいたい同じくらいです。大型クロスオーバーSUVと考えると非常にリーズナブル。
全長4.9mクラスの大型クロスオーバーSUVで、迫力満点。さらに躍動感のある伸びやかなデザインは実にスタイリッシュかつ高級感もあります。インテリアもデザインが凝っていて上質で、装備も充実。その上に実用的な3列シートを持っているのですから、人気があるのも当然と言っていいのかもしれません。
この3列目シートを見せることで、ミニバンじゃなくてこっちのほうが良いよ!と奥さんを説得できるかもしれません。売れているのはこのような明確な理由があるということなのですね。
ただ、気をつけなくてはいけないのが、CX-8はかなり大型だということ。全長 4,900 mm ×全幅 1,840 mm×全高 1,730 mmですから、全高以外はアルファードなどとほとんど変わりません。それに、CX-8の3列目シートはあくまでクロスオーバーSUVとしては快適だということ。最大限に乗員スペースを確保したハイルーフのミニバンと比べてしまうと、快適性や広さでは決してかないません。当然ですね。
そもそも、ミニバン自体がたくさんの人を乗せるためのクルマですから比べること自体がナンセンス。たくさんの人を乗せる機会が多いのであれば、素直にミニバン、それもMクラス以上のルーフの高いミニバンを選ぶのが賢い選択でしょう。
それでも、ちゃんと使える3列目シートを持ったCX-8はやはり魅力的。そのことが多くの方にキチンと理解されてきたということです。それが2018年の国内3列シートSUV市場において販売台数第1位を獲得できたことに対しての筆者が考えた理由です。納得いただけたでしょうか。