気に入って選んだはずのマイカーのカラーリング。だけどしばらくしたら飽きてきた。それに周りに同じ色のクルマを多いし、別の色に変えてみたいな。そんなこと考えたことはないでしょうか。でも全塗装でクルマのカラーを変えるのは簡単なことではありません。
パーツを取り外し、元の塗装をはがして、下地をきれいに処理してから塗装しなおすのですから、手間も時間もお金もかかります。さらにそのクルマがリース車だったとしたら、そんなことまず不可能ですよね。
でも、カラーラッピングというものをご存知でしょうか。塗装ではなくラッピングフィルムを使ってクルマのカラーやオリジナルのデザインを施すことができるというものです。
聞いたことはあるけれど、その実態はどういうものなのかちゃんとは知っていないという方もいるでしょう。そこで今回はそんなカーラッピングについて、どんなものなのか、さらにそのメリットとデメリットなどをご紹介します。
目次
フィルムでクルマの表面を覆うという
装飾方法がカーラッピング
まずカーラッピングとはなんなのか。簡単にいえば、インクジェットプリンターで出力したフィルムを車体に貼って、クルマのボディを覆い、別のカラーに変えたり、オリジナルなデザインを施すという装飾方法です。
クルマ一台まるごとラッピングすることもできますし、ボンネットやドアパネルなど部分的にラッピングすることも可能です。また、ロゴやキャラクターなどがプリントされたフィルムを使ったデザインラッピングというものもあります。代表的なのがバスの広告やいわゆる痛車。これらのクルマもほとんどがデザインラッピングによって行われています。
カーラッピングは、もともと海外のセレブなどが、所有する高級車やスーパーカーにオリジナルデザインを施すために始まったものとされています。彼らは超高額のマイカーに自由なデザインを施して、飽きたらそれをはがして転売、また別の高級車に買い替えるというように楽しんでいたようです。
そんなカーラッピングが、手軽にクルマにデザインを施す手段として広まり、今では日本国内でも多くのショップが手掛けており、我々でも簡単に試すことができるようになりました。
日本では、バスやタクシーなどの営業車に広告をデザインするためのものとして広まりましたが、いわゆる痛車に自分の好きなキャラクターを描くための手法としても広まっています。
昔から、デコトラ(死後?)などに好きなアーティストの顔を描いて楽しむという文化はありましたが、当時はペイントの職人が手書きで描いていたので時間も費用も相当にかかっていたようです。
そのため正直出来の悪いもの(誰を描きたかったのかはわかりましたが全然似ていないものが多かった)も少なくありませんでしたがラッピングなら、パソコンのデータをインクジェットプリンターで出力するのでそのようなことはありません。緻密な写真も、複雑なデザインでも簡単かつ美しくデザインすることができるというわけです。
そのような凝ったデザインをラッピングで実現するという楽しみ方もありますし、また、DIYでマイカーの一部に自分でラッピングを施すという方も少なくないようです。
全塗装にはない
カーラッピングのメリットとは
ではカラーラッピングのメリットとにはどのようなことがあるでしょう。まず、前述したようにデザインにコンピューターを使用するので、自由かつどんな凝ったデザインでも可能なこと。
色もフルカラーを実現できますし何色使ってもかまいません。塗装で複雑なグラフィックを施すのは腕のある職人でないと無理ですが、ラッピングならIllustratorなどのソフトで作成したデータがあればどんなものでも再現可能です。
例えば自分で描いたイラストやデジカメで撮影した写真だって、クルマのボディに描くことだってできます。以前高級クーペのボディに某有名アイドルの画像を貼ったクルマを見かけたことがありますがそんな風に楽しむことも(著作権や肖像権に注意が必要ですが)できなくもないわけです。
他にも、カラーだけを変えたいという場合に、メーカーの純正色にないカラーに変えることも、他にはないオリジナル色にすることも問題ありません。いわゆるカーボン調綾織り模様や金属を粗く削った質感など、塗装では非常に難しい風合いを表現することだってできます。
最近人気のマット調(艶消し)のカラーだってラッピングなら簡単に楽しむことが可能です。全面金メッキ、クロームメッキ調なんてことだってできるのです。
フィルムで覆っているだけなので、
飽きたら元に戻すことも簡単
さらにラッピングの良さは、塗装とは違って貼ったフィルムをはがせばいつでも元に戻すことが可能なことです。塗装ではそうはいきません。そのため車の価値を下げることなく様々なデザインを楽しむことができるというわけです。
だから、いざラッピングが施された車を手放すとなっても、剥がしてしまえば下取りや買取り価格が下がることはありません。加えて、これはケースバイケースですが、通常ボディカラーを変えることはNGのカーリース車両でも、オリジナルのカラーを楽しむことができる可能性があります。
塗装をするのではなくボディをフィルムで覆うだけですので、リース満了後の返却の前にフィルムをはがしてしまえば原状復帰が可能。おそらく問題ないはずです。もちろん施工を施す前にカーリース会社に確認は必要ですが、まず問題ないはずです。
ラッピングすることで
塗装を保護する効果も期待できる
ラッピングは、クルマの表面をフィルムで覆うので塗装を保護することが可能です。デリケートな塗装表面を、紫外線や酸性雨、微細な飛来物などから守ることができ、色褪せなどを防ぐことが可能です。
ラッピングフィルムの種類には、色には影響を与えないクリアタイプで、塗装保護を目的としたプロテクションフィルムというものもあります。このラッピングフィルムは、塗装を飛び石やスクラッチ傷から守ってくれるというもので、クリアなので見た目に変化はありません。
特にカラーリングの変更などしたくはないけれど、塗装を確実に守りたいという場合はこういったプロテクションフィルムでラッピングするというのもありでしょう。
そして、フィルムで全体を覆っていれば塗装は傷みませんので、手放すとなった際には、ラッピングしていなかった車両よりも価値が高くなる可能性もあります。
塗装よりも表面がデリケートな
カーラッピングのフィルム
カーラッピングはご紹介したように非常にメリットの多い手法ですが、その一方デメリットもあります。まず最大のデメリットは全塗装よりも費用がかかるということです。
フィルムを貼るだけだから塗装よりも安いだろう、と勘違いされている方も少なくありませんが、実際にフルラッピングを施すと全塗装よりも高くなることがほとんどです。
もともと欧米のセレブの趣味が原点で、自由なデザインやカラーが楽しめて簡単に元に戻せるということが重要でしたので、施工に費用がかかるというのはあまり問題ではなかったのでしょう。
例えばクルマ全体にフルラッピングにするとなると、使用するフィルムやデザインにもよりますがその費用はだいたい60~80万円程度、高級車ならさらに100万円など高額となります。
また、いわゆる痛車のような複雑なデザインが必要となれば、そのデザイン費用も別途かかります。クルマ全体に見栄えよくキャラクターやデザインを配置するのは素人では簡単ではありません。そのため、そちらのデザイン料金だけでも別に10万円~20万円はかかるようです。
もちろん部分的なパーツラッピングならそこまでの費用は掛かりませんが、ドアやトランクなどっといったパネル一枚の相場額は3~5万円程度となっています。やはり塗装をするよりも高額です。
フィルムなので
耐久性はあまり期待できない
さらに、他のデメリットとしてはフィルムの耐久性の問題があります。塗装とは違ってカーラッピングはプラスチックのフィルムを貼っているだけですので、その耐用年数はだいたい3年程度とされています。長くはありません。もちろんこれも使用環境によって左右されます。
塗装であれば、直射日光が避けられる環境で洗車やワックスがけなども定期的におこなっていれば10年や20年は軽く持ちます。
しかし、カーラッピングの場合は、屋内保管で雨の日はあまり乗らないなど、しっかり管理していてもだいたい3年程度しか持ちません。クルマは屋外に駐車していて晴れの日も雨の日も毎日クルマを使用するとなればそれよりも間違いなく寿命は短くなると考えた方がいいでしょう。
特に最近の日本は、夏の気温が記録的な高温となることも少なくありません。そのためラッピングには厳しい環境であることは間違いありません。痛みや劣化が早くなる可能性が高いでしょう。もちろん色褪せなどがおきても完全に使えなくなるわけではありませんが見栄えは悪くなります。
さらに、あまりにも長期にわたって劣化が進んだラッピングフィルムを貼ったままにしていると、ラッピングフィルムの再剥離性の機能が落ちてしまい、はがす際に下の塗装を痛めてしまうということあるので注意が必要です。
洗車は可能だが
手入れに気を使う必要がある
他にも、ラッピングフィルムはあくまでフィルムですので表面がデリケートというのもデメリットといえるでしょう。ラッピングフィルムを施した上から、もし傷をつけてしまった場合、塗装のようにコンパウンド研磨などで補修することはできません。その部分のラッピングをはがし、新たにラッピングフィルムを貼らなくてはいけません。
また、洗車はできるのですが、洗車機の使用はNGです。また、高圧スチーム洗浄もやめてください。ラッピングフィルムが傷ついたり破れたりする恐れがあるので手洗いが基本です。
洗い方もより丁寧に行う必要があります。まずボディ全体にたっぷりと水を掛けてから、表面の汚れを洗い流しましょう。あとは丁寧に拭き上げます。
水洗いでは落ちない汚れがある場合は、中性のシャンプーを使ってください。酸性やアルカリ性のシャンプーは使わないほうがいいでしょう。中性ならラッピングフィルムへの影響も最小限で済みます。シャンプー洗いをする場合も丁寧に、フィルムを傷つけないよう慎重に行ってください。
ワックスやコーティングはやらないほうが良いでしょう。使用するフィルムによってはワックスがけができるものもありますが、フィルムの種類等によって扱い方が変わってきますので、どうしても表面をコーティングしたい場合は施工したショップにどうすればいいのか問い合わせてから作業したほうがいいでしょう。
DIYによるラッピングで
費用を抑えることはできるのか
ラッピングはフィルムを貼るだけだから自分でもできるのではないか。もちろんできなくはありません。動画サイトなどでもラッピングのやり方などを解説している動画がたくさんアップされています。
しかし、クルマ全体をラッピングするフルラッピングに関しては素人で施工するのは相当難しいでしょう。おそらくチャレンジしても皺ができたり、途中で切れてしまったり、フィルムが足りなくなるなど失敗するはずです。素人がみよう見真似で古ラッピングにチャレンジするのはおすすめできません。フィルムが無駄になるだけです。
ただし、ボンネットやトランクだけといったパーツラッピングなら、DIYでもラッピングはできなくはないでしょう。まずは曲面や凹凸が少ないパーツでラッピングに挑戦してみるのがおすすめです。
ただ、ラッピングは失敗したとしてもはがすことができますので、あまり気負わずに、まずは挑戦してみることが大切です。もしDIYでのラッピングに挑戦して「どうもうまくできない」となったら素直にプロに任せるのが正解です。
リース車両なら塗装の保護のために
ラッピングを行うという選択もあり
今回はラッピングについてご紹介しました。ラッピングは塗装に影響を与えずクルマのカラーチェンジが可能で、塗装も保護できるとても便利なものです。もちろんメリットだけではなくデメリットもありますが、原状復帰もできますし、ちょっとした着せ替え感覚で楽しむものと考えればとても魅力的ではないでしょうか。
もちろん費用は塗装以上にかさみますし、フルラッピングになると手軽に楽しむというわけにはいきません。ただ、部分的にラッピングを楽しむパーツラッピングなどは、費用もあまりかかりませんし、なんならDIYでもできないことはありません。チャレンジしてみても面白いのではないでしょうか。
それに、カーラッピングは塗装に影響を与えずにボディカラーの変更が楽しめるもの。そのためカーリース車両にも施工が可能です。ただし、カーリース会社によってはラッピングをNGとしている場合もあります。もし利用中のリース車両でラッピングに挑戦してみたいという場合は、まずはカーリース会社にやってもいいものなのか確認するようにしましょう。
もしOKとなった場合は是非ラッピングを試してみてください。塗装の保護にもなりますので、リース車用のコンディション維持にもきっと役立つはずです。どんなデザインにするか色はどうするかなど、あなたのセンスは問われますが、うまくいけばマイカーを、自分だけの特別な一台にイメージチェンジすることができるはずです。