2022年9月15日、マツダの新世代クロスオーバーSUVである「CX-60」が発売となりました。国内向けのCXシリーズとしては5車種目となるCX-60です。このCX-60、かなり好評のようなのですが、そのポジションがイマイチ分かりにくいという声もあります。

単純にCX-5とCX-8の間ということでいいのでしょうか。とはいえ車格的にも価格的にも特にCX-5、CX-60、CX-8は非常に近いものがあり、なかなかややこしいものがあります。

そこで今回は新しく投入されたマツダの新世代SUVCX-60について、その特徴やCXシリーズにおけるポジショニング、CX-5やCX-8との違いなどについて検証してみましょう。

直列6気筒エンジンを搭載した
CXシリーズ新世代ラージ商品群の第1弾が登場

CXシリーズ新世代ラージ商品群の第1弾が登場
(引用:マツダ公式HP)

CX-60は、マツダによると新世代ラージ商品群の第1弾であり、今後マツダは同じくラージ商品群として今後CX-70、CX-80、CX-90が発売(国内投入は未定)するとのこと。またスモール商品群としてはCX-50がすでにアメリカで発売されています。

ただ、そこまでクルマに詳しくない方からはCX-60がどんなクルマなのかよくわからない。CX-5のモデルチェンジ版? CXシリーズが高級車になるってどう変わるの? などという声も聞こえてきます。

確かに、現在国内向けのマツダCXシリーズとしてはすでにCX-3、CX-30、CX-5、CX-8があって、さらにSUVシリーズとしてはMX-30やMX-30(EV)などもあります。

CXシリーズだけでもすでに5車種。加えてCX-5とCX-60、CX-8は車格も価格も近いものがあり、新しいCX-60はポジション的にはどのような扱いなのか、わかりにくいという気持ちもよくわかります。

従来のCX一桁シリーズと、新世代のCX-60の大きな違いとしては、従来のCXシリーズがFFベースのクロスオーバーSUVだったのが、CX-60をはじめ新世代のラージ商品群となるCXシリーズは、全く新しいFR(後輪駆動)プラットフォームやパワーユニットを採用する高級路線のクロスオーバーSUVであるということらしいです。

そのため、エンジンレイアウトも高級車の証ともいうべき縦置レイアウトを採用しており、さらにエンジンにはコストのかかる直列6気筒エンジンを搭載しています。

既存のFF(前輪駆動)大衆車プラットフォームを生かしてクロスオーバーSUVに仕立てるというパターンから脱却して、輸入車の高級SUVやレクサスなどともわたりあえる、本格的な高級車路線にかじを切ったわけです。

とはいえ、FRだ、直6エンジンだといわれても、それで何が高級車なのかわからないという方のほうが多いのではないでしょうか。そこで、そもそもCX-60はどんなクルマなのか、まずは一通り詳しくチェックしてみましょう。

CX-60のボディサイズを
CX-5とCX-8と比べてみると

CX-60のボディサイズ
(引用:マツダ公式HP)

わかりやすいところでまずはCX-60のサイズを見てみましょう。こちらです。

CX-60ボディサイズ
●全長4,740mm×全幅1,890mm×全高1,685mm

これをCX-5やCX-8と比べてみるとどうなのか。

CX-5ボディサイズ
●全長4,575mm×全幅1,845mm×全高1,690mm

CX-8ボディサイズ
●全長4,900mm×全幅1,840mm×全高1,730mm

CX-60は、CX-5とCX-8の間で、全幅はCX-5やCX-8よりもワイド。さらに、ホイールベースに関してはCX-5が2,700㎜で、CX-60が2,870㎜、CX-8が2,930㎜なので同じく中間ですが、CX-60はFRのためかどちらかというとCX-8に近くロングホイールベースとなっていることがわかります。

サイズだけでいうとやはりCX-5とCX-8の間のポジションにあるということになるのでしょう。

CX-5やCX-8よりも明らかに高級感のある
CX-60のエクステリアデザインは

CX-60のエクステリアデザイン
(引用:マツダ公式HP)

ではデザインはどうなのか。CX-60はCXシリーズらしい共通のイメージを基本としてデザインを採用しています。しかし、フォルムに関しては、CX-60がFRということもあって、いわゆるFR車らしいロングノーズ ショートデッキ(ノーズ=ボンネット部分が長く、車体の全長をおさえながら、デッキ=乗車スペースが短いというスタイル)的なバランスになっています。

そのため、四隅のタイヤを路面に踏ん張ったような印象で、後輪にしっかりと荷重をかけつつ、前方に加速しようとしているようなスポーツカー的な佇まいを持っています。

また、フロントフェイスも全体的に厚みを増しておりゆったりと堂々とした雰囲気。マツダの狙い通りCX-60はサイズ感的にはCX-5とそれほど変わっていないのですが、明らかに高級感が増しています。

CX-5のすっきりと軽やかな雰囲気も悪くありませんが、並べてみると高級感、上質感では明らかにCX-60のほうが格上に見えます。それはCX-8に対してもそうで、ボディサイズこそCX-8方が大きい(長い)ですが、どちらが高級車に見えるかと聞かれるとやはりCX-60となるのではないでしょうか。

パワフルで滑らかな直列6気筒
3.3Lディーゼルターボエンジンを搭載

3.3Lディーゼルターボエンジンを搭載
(引用:マツダ公式HP)

パワーユニットの違い関してですが、なんといってもCX-60には直列6気筒ディーゼルターボエンジンがあります。

直列6気筒エンジンといえば、かつては高級モデルの証的なエンジン(ガソリンエンジン)でしたが、コスト高やスペースの確保しづらさ、汎用性の低さ(全長の長い大型車や高級モデルにしか搭載できない)などの理由から現在国内メーカーで採用している例はほぼありません。マツダを除いて。

ディーゼルとはいえそんな特別な直列6気筒エンジンを搭載しているのがCX-60なのです。もちろん他にもパワーユニットはあります。CX-60に設定されているパワーユニットは以下の4種

CX-60パワーユニット
●直列4気筒2.5Lガソリン 138kW(188ps)/250N・m(25.5kgm)
●直列6気筒3.3Lクリーンディーゼルターボ 170kW(231ps)/500N・m(51.0kgm)
●直列6気筒3.3Lクリーンディーゼルターボ+マイルドハイブリッド 170kW (254ps)/550N・m(56.1kgm)+12 kW(16.3 ps)/153 N・m 15.6 kgm
●直列4気筒2.5Lガソリン+プラグインハイブリッド(スペック詳細未定)

対してCX-5とCX-8のスペックはこのようになっています。

CX-5パワーユニット
●直列4気筒2Lガソリン 115 kW(156 ps)/199N・m(20.3kgm)
●直列4気筒2.5Lガソリン 140 kW(190 ps)/252N・m(25.7kgm)
●直列4気筒2.2Lクリーンディーゼルターボ 147kW(200 ps)/450N・m(45.9kgm)

CX-8パワーユニット
●直列4気筒2.5Lガソリン
●直列4気筒2.5Lガソリンターボ 140 kW(190 ps)/252N・m(25.7kgm)
●直列4気筒2.2Lクリーンディーゼルターボ 147kW(200 ps)/450N・m(45.9kgm)

CX-5とCX-8は兄弟車(CX-5のストレッチ版がCX-8という関係)なので、パワーユニットのバリエーションもスペックも共通しています。違いはCX-5には2Lガソリンエンジンが用意されているということだけです。

やはり動力性能ではCX-60の直列6気筒3.3Lクリーンディーゼルターボが際立っています。圧倒的にトルクが分厚くゆとりのある走りを実現しています。アクセルペダルを軽く踏み込むだけで、その大トルクを生かしたスポーティな加速が味わえるはずです。

振動の気になるディーゼルエンジンですが、いくつかの試乗インプレを見た限りは直6だけに回転もスムーズで振動もほとんど気にならないとのこと。さらに燃費も優れています。

CX-60 WLTCモード燃費
●2.5Lガソリンエンジン(FR) WLTCモード燃費 14.2㎞/L
●3.3Lディーゼルターボ(FR) WLTCモード燃費 19.8㎞/L
●3.3Lディーゼルターボマイルドハイブリッド(FR) WLTCモード燃費 21.0㎞/L

CX-5の2LガソリンのWLTCモード燃費は14.6㎞/L(FF)で、2.5LガソリンのWLTCモード燃費が13.8㎞L(FF)。そして、2.2LディーゼルターボのWLTCモード燃費は17.4㎞/L(FF)です。

CX-8は2.5LガソリンのWLTCモード燃費が12.4㎞L(FF)で2.2LディーゼルターボのWLTCモード燃費は15.8㎞/L(FF)となっています。

やはり設計が新しいからでしょうか、CX-60の燃費が優れていることがわかります。特にディーゼルターボに関しては、排気量で1,000㏄以上大きく、スペック的にもかなり向上しているのにもかかわらず燃費が向上している点は素晴らしいのではないでしょうか。

CX-60のインテリアは
高級SUVにふさわしいものなのか

CX-60のインテリア
(引用:マツダ公式HP)

エクステリアデザインに関しては、好みもあると思いますが、ロングノーズの堂々としたたたずまいを持つCX-60のほうが高級感を感じさせるのは間違いないでしょう。

インテリアに関しても、とても高級感があります。メーター類やステアリング、液晶パネルなどのデザインはごてごてとした部分がなく非常にシンプルです。しかし、それがかえって高級感の演出につながっており、まるで北欧の家具のような、上質で心地のよさを感じさせます。

シート表皮にも上質なファブリックや革が使われていて、サイズもたっぷりとあるので、座り心地もとても快適。こういったインテリアの造形やデザインに関しては、マツダは非常にうまいと思います。このクラスではトップレベルのとても美しいインテリアだといえるでしょう。

CX-60 の居住スペースは
SUVらしく広いのか?

CX-60の居住スペース
(引用:マツダ公式HP)

CX-60は、CX-5よりも長く、CX-8よりは短い4,740㎜という全長を持っています。乗車定員は5人で、CX-8のように3列シートの設定はありません。多くの人を乗せたいならCX-8を選んでください。ということなのでしょう。

もしくはゆくゆく導入が予定されているといわれているCX-80(CX-8の後継車?)がCX-60のストレッチ版(ロングボディ版)となり、CX-5とCX-8のような関係になるのかもしれません。

ちなみにCX-60とCX-5、CX-8の室内寸法は以下です。

●CX-60室内寸法
室内長1,910㎜×室内幅1,550㎜×室内高1,230㎜

●CX-5室内寸法
室内長1,890㎜×室内幅1,540㎜×室内高1,265㎜

●CX-8室内寸法
室内長2,690㎜×室内幅1,540㎜×室内高1,250㎜

CX-60の車内のスペースはだいたいCX-5と同じです。車体サイズが大きな割にさほど室内は広くなっていないように感じますが、これは直6エンジンとFRという駆動レイアウトゆえにこのようになっているのでしょう。広さという意味ではスペース効率に優れたFFレイアウトのCX-5やCX-8のほうが優れています。

とはいえ、CX-60は高級クロスオーバーSUVなので、これだけのスペースが確保されていれば問題ないでしょう。というか十分広いといっていいと思います。

ファミリーカーとしても使える実用的なクロスオーバーSUVならCX-5やCX-8があるのでそちらを選ぶのが賢明ではないでしょうか。

CX-60は高級車であるなら
価格もやっぱり高級なのか?

CX-60の価格
(引用:マツダ公式HP)

マツダ的にはCX-60を皮切りにCXシリーズの高級化を図っていくということなのでしょうが、ではCX-60も高級車ならば、価格レンジも高級車的なものなのでしょうか。

その価格を調べてみると、それほど高価格でもありません。エントリーグレードのガソリンエンジングレードが299.2万円で、最上級グレードのプラグインハイブリッドが626.45万円となっています。非常に幅広い設定です。

これなら、価格帯的にもほぼCX-5やCX-8と被っており、現在この両車を狙っているという方でも十分射程圏内でしょう。この価格設定で高級SUVのオーナーとなれるのであれば検討の価値は大いにありなのではないでしょうか。

とはいえ購入するのはやっぱり厳しいというのであれば、リース車という選択もあります。リースナブルでもリース車としてCX-60をご用意しています。

リースナブル「CX-60」:https://leasonable.com/model/cx60/

リースナブルなら最安コースなら月々19,800(税込)でCX-60に乗ることが可能です。ガソリン車と話題のディーゼルターボ車も設定されている(3.3ディーゼルターボモデル以外の販売開始は2022年12月の予定)ので、興味のある方は上記URLにアクセスしてみてください。

結局CX-60のポジションは
CX-5とCX-8の間ということでいいのか?

CX-60のポジション
(引用:マツダ公式HP)

マツダの公式WEBサイトを見ると、カーラインナップの並びはCX-5、CX-60、CX-8となっています。ということはポジション的にヒエラルキーもこの並び通りということなのでしょうか。

ここまで細かくチェックしてきましたが、一概にはそうは言えないようです。CX-5やCX-8は従来のマツダのクロスオーバーSUV、CXシリーズのミドル&上級モデルです。しかし、CX-60はそれらの従来のCXシリーズとは別枠の新世代の高級SUV、ラージフォーマットモデルの先駆けモデルです。

車格的にはCX-5やCX-8が幅広い層を狙った、言い方は悪いですが大衆SUV。しかし、CX-60はより高級なクロスオーバーSUVという位置づけです。この3車、価格帯がかぶっているためにわかりにくいですが、CX-60は別枠のSUVと考えていいと思います。

そして、CX-60を皮切りに今後はこういった高級クロスオーバーSUVのCX二桁シリーズが導入されていくのでしょう。

さらしCX-30やCX-50といった新生代の二桁シリーズがスモールフォーマットモデルとなるはずです。今は、過渡期にあるためちょっとわかりにくくなっていますが、マツダのCXシリーズのラインナップも、今後もう少しわかりやすくなっていくと思います。

実際現時点(2022年9月)で、CX-5とCX-8は現行モデルの注文受付を終了しています。噂では北米で販売されているCX-50やCX-80が日本に導入されるのではないかという話もありますが、CX-5やCX-8のフルモデルチェンジモデルが発売されるという話のほうがどうやら有力のようです。

そんなCX-5とCX-8の次期モデルがどのようなものになるかで、CX-60のポジションや、マツダの今後の姿勢がきっと明確になるのではないでしょうか。マツダがCXシリーズをどのように変えていくのかは今後要注目ですね。