日本全国に設備の充実した道の駅が続々と整備され、また手軽に利用できるオートキャンプ場なども充実してきたこともあってか、ここ数年クルマで宿泊しながら旅行やキャンプなどを楽しむ車中泊の人気が高まっています。

車中泊の魅力はなんといっても普通の旅とは違って時間の制約がないこと。移動手段であるクルマがそのまま宿泊場所になるので、旅行の際一番のネックとなる交通機関や宿泊先の選定や予約などがいりません

それに食事に関してもホテルや旅館などでは時間が決められてしまいますが、車中泊ならいつ食事しようが自由です。地元のお店で食事を楽しむのも良いですし、道の駅で食材を購入して、車内で調理してもいいでしょう。また、チェックインやチェックアウトの時間だって気にする必要もありません。一日の計画が自由に立てられます。

例えば早朝からハイキングや釣り、アウトドアスポーツを楽しみたいという人にとっては、日の出前からでも行動を始めることができるというのも大きなメリットのはずです。

さらに経済的であるというのも良い点でしょう。ガソリン代や高速道路の通行料などはかかりますが、宿泊にはあまり費用がかかりません。オートキャンプ場でもホテルや旅館よりもずっとリーズナブルですし、宿泊が許可された道の駅ならほぼゼロ。クルマを置くことができるスペースさえ確保できれば、そこが宿泊場所となるのです。

もちろん快適な車中泊のためにはそれに適したクルマがあるのがベスト。でもそれは必ずしもキャンピングカーである必要はありません。ミニバンやSUVでもフラットな就寝スペースさえ作ることができれば十分車中泊をすることは可能です。わざわざ車中泊用にクルマを買い換える必要はないのです。

もちろんクルマ以外に寝袋やマット、ランタンや窓をふさぐシェードなどは必要となるでしょう。それに車中でより快適に過ごしたいなら、家電製品やデジタル機器が使える環境も是非確保しておきたいところです。そんな車中で家庭用の電化製品を使用するために必要なのがDC/ACインバーターです。これがあれば、車中泊が格段に快適なものになります。でも、インバーターならなんでも良いというわけではありません。もしあなたがこれからインバーターを購入しようと考えるなら、オススメはなんといっても正弦波インバーターです。

インバーターでいつもの家電が
クルマの中でも使用可能に

そもそもインバーターとはどういったものなのか。簡単に言えば、クルマに搭載されているバッテリーの直流電流(DC12VやDC24V)を、家電製品などで使われている交流電源(AC100V)へ変換する装置です。これがあれば、車中泊やキャンプの際にも、クルマの電源で家庭用の家電などを使うことができるわけです。

車中泊中でも、クルマの中でスマホやタブレットの充電を行ったり、電気ポットでお湯を沸かしたいなどといったこともあるでしょう。そんな時、クルマの電源であるDC12Vに対応した、車載専用の家電を購入して使っても良いのですが、種類がそもそも多くありませんしまた、そのためだけに別途購入するのはもったいないですよね。でも、インバーターがあれば、普段から使用している家電やデジタル機器がそのまま車内でも使えるようになるわけです。

もちろん制限なく使えるわけではありません。家庭用の電子レンジのような極端に消費電力の大きな家電は、一部のクルマ(大容量バッテリーを積んだPHVなど)やサブバッテリーなどを積んだキャンピングカー以外では現実的ではありません。それにインバーター自体にも種類によって最大出力に差があります。

車載用のインバーターであれば、だいたい、定格出力で80W~1000W位までが一般的です。そしておおよそ、出力の大きさに比例してインバーターの価格も高くなります。

スマホやタブレット、携帯ゲーム、デジカメなどの充電程度であれば、定格出力120Wもあれば不足はないでしょう。ノートPCなどの場合は、ものによりますが消費電力は200Wくらいなので定格出力350Wは必要となります。

ちなみに定格出力とは、そのインバーターが安定して出力できる電力のことで、接続する電化製品の消費電力がこの出力内であれば基本的には使用可能ということになります。

ただしハロゲンライトやモーターを使用した電気機器などは、動き始めるときに通常の消費電力よりも大きな起動電力を必要とするものもあります。

この起動電力とは電気を必要とする機器が、起動するために必要とする電力のこと。消費電力はその機器が動き続けるために必要な電力になります。この起動電力は機器によって大きく違い、場合によっては消費電力の3~4倍もの電力が必要になることもあるので注意が必要です。

例えば消費電力250Wの電気製品が使いたいからと300Wの定格出力を持つインバーターを用意したのに、その電気製品は起動電力に500Wが必要なら正常に作動しない、もしくは作動そのものが出来ない場合もあるのです。あらかじめ使用したい電気製品が決まっているのなら、消費電力だけでなく、起動電力もチェックしておく必要があるでしょう。

代表的な電化製品の消費電力と起動電量の例は以下の通りです。

 

●ノートパソコン 消費電力(200W)/起動電力(200W)
●テレビ(37型) 消費電力(300W)/起動電力(300W)
●コーヒーメーカー 消費電力(650W)/起動電力(650W)
●ハロゲンライト 消費電力(250W)/起動電力(500W)
●電子レンジ 消費電力(1000W)/起動電力(1800W)

 

例を見ると分かるとおり、中でもモーターやポンプを使用する機器は起動時に消費電力の1.2倍~5倍ほどの起動電力を必要とします。そのため、このような機器を使用したい場合には、この起動電力を十分にカバーできる出力を持った発電機を選ばなくてはなりません。

例えばノートパソコン(消費電力200W/起動電力200W)と、ハロゲンライト(消費電力250W/起動電力500W)を同時に使用したい場合は、200W+250W=450Wの出力を持ったインバーターではなく、起動電力の合計、200W+500W=700Wよりも大きな出力を持つインバーターが必要ということです。

質の高い電気を作り出す
正弦波インバーター

さらに、もう一つインバーターを購入する上で知っておかなくてはならない重要なポイントが、正弦波(せいげんは)と矩形波(くけいは)です。インバーターはクルマで使われているDC(直流)の電気を家庭用の電気であるAC(交流)の変える装置です。働きはどれも同じよう見えて、実は出力される交流の電気の波形に、正弦波と矩形波(と擬似矩形波)の違いがあるのです。

こちらの図を見てください。正弦波と矩形波を単純に表したものです。

交流の電気はプラスとマイナスが周期的に入れ替わるのですが、その際正弦波の出力波形はなめらかな波型でプラスとマイナスが入れ替わります。しかし、矩形波は直線的にプラスとマイナスがいっきに切り替わってしまいます。一般的に安価なインバーターの大半は矩形波(または疑似正弦波)です。その理由はこのほうが、仕組みが簡単で安く作ることができるからです。

しかし、家庭用の電気は質の高い正弦波です。その正弦波に最適化された家庭用の電化製品を、矩形波のインバーターに接続した場合、問題なく動くものもありますが、機器によっては正常に作動しないことも少なくないのです。

ノートPCなどACアダプターを介してインバーターに接続するものはおおよそ問題ありません。でも、精密機械やマイコン制御のポットや炊飯器などの家電、電気毛布、調光機能を持った照明、医療機器などは正常に作動しない可能性が高いです。そういったことを考慮すれば、もしこれからインバーターを手に入れたいという場合は、多少値は張ってもはじめから正弦波インバーターを選ぶ方が懸命でしょう。

インバーターの使い方

車載用のインバーターを車内で使用する場合、まずはクルマの電源(バッテリー)に接続しなくてはなりません。接続の方法としては、主にシガーソケットに接続するタイプと、クルマのバッテリーに直接つなぐタイプ、そして双方に対応したものがあります。

スマホやゲーム機の充電などができればよいなど、あまり大きな電力が必要でないなら、手軽に使用できるシガーソケット接続タイプの出力100W程度の矩形波インバーターで十分です。取り付けはインバーターから伸びるソケットを、クルマのシガーソケットに接続するだけです。

あとはインバーターの電源ソケットに使用したい電化製品のコンセントを接続してスイッチを入れるだけです。インバーターから伸びるコードがちょっとジャマですが取り付けに難しいことはありません。また、もっと手軽なインバーターとしては、直接シガーソケットに指すだけでAC電源とUSB電源を取り出せるというものもあります。

https://www.cellstar.co.jp/products/dcac/dcac-mp/mp-22.html

こちらは20Wと出力はわずかですが、スマホやデジカメバッテリーの充電程度であれば十分役に立ってくれるはずです。ただ、シガーソケットから取り出せる電流は通常10A(アンペア)まで。つまりクルマの電圧が12Vですから×10Aということは最大でも120Wまでの出力にしか対応していないということ。これ以上電気を流すと、ヒューズが飛んでしまいます

電気ポットや炊飯器など、それ以上に大きな電力が必要な機器を使用した場合は、シガーソケットではなくカーバッテリーに直接繋ぐことのできる正弦波タイプのインバーターを使用しましょう。

ただその場合ちょっと手間がかかります。バッテリーに直接繋ぐので、配線に手を加える必要がある上、車内にも配線を引き込む作業も必要となります。

さらに、定格出力500W程度であればクルマのバッテリーだけでも問題ありませんが、1000Wを超えるような大出力のインバーターを使いたいという場合は、ノーマルのバッテリーやオルタネーターによる発電だけでは供給できる電気の容量が不足してしまいます。サブバッテリーなども必要になりますし、かなり大掛かりな作業となってしまうという点に注意が必要です。

その場合は、カー用品店など専門知識のあるショップに取り付け作業をお願いしてください。もちろんクルマの電装品などの取り付け経験があれば、DIYでもできないことはありませんが、くれぐれも作業には注意をはらってください。

インバーターはとても便利な車載アイテムです。使用する上で知っておくべきことや、対応する機器や取り付け方法にも注意が必要ですが、クルマに導入すると車中泊の快適度もかなりアップするはずです。これから車中泊をはじめてみたいという方は是非導入を検討してみてください。