先日国土交通省は、新型コロナなど感染症対策の一環として、高速道路料金所の有人ブースを廃止して、段階的にETC専用にする方向で検討する、と発表しました。つまり今後はETCがないと高速道路や有料道路の利用が制限されてしまうかもしれません。

あなたのクルマにはETC車載器搭載されていますか?カーリース車だったらリース契約時にETC車載器のオプションを追加しましたか?もし取り付けていない場合、マイカーであれば後つけは費用が必要ですが簡単です。では、カーリース車の場合はどうでしょう。ETC車載器を後つけしても何の問題もないのでしょうか。

ETC車載器がないと
高速道路が使えなくなる?

名古屋高速や横浜新道などの料金所職員が新型コロナウイルスに感染したことを受けて、2020年7月2日、国土交通省は「高速道路の料金所をETC専用のみとする」という方針を明らかにしました。ETCがあれば通過するだけで料金の収受が可能ですから、直接の料金の受け渡しのような人と人との直接の接触が必要なく、万が一の感染の拡大を防ぐのに確かにぴったりでしょう。

そういった意味ではETCは効果的なのかもしれません。もしかしたら数年後には高速道路の出入り口には料金所がなくなってしまうかもしれません。もちろん完全に無人になることはあり得ませんが。

現実的にはどうなのか?国土交通省によるとETCおよびETC2.0の利用率は、すでに92.9%(高速道路や有料道路での利用率で車載器そのものの普及率ではありません)に達しているそうです。そうなのであればいっそ高速道路や有料道路の出入り口をすべてETCのみとしてしまってもさほど問題はない(導入コストの問題は別として)のかしれません。むしろ、感染症対策に効果的なだけでなく、スムーズな交通の流れが加速し渋滞の解消や大気汚染の抑制も期待できるわけですからETC完全普及が加速する可能性があります。

しかし、そうなると今後高速道路や有料道路などを利用するには、ETC車載器やETCカードが必須となるということになるわけです。もちろんまだ決定ではありませんが、その流れは確実に加速していくことになるのでしょう。

そもそも国土交通省はETCの全車両への装着を目指して過去様々な割引キャンペーンなども打ち出してきたわけですし、確かにETCを利用したほうが合理的で、人件費などのコストの削減にもなることはまちがいありません。ETC2.0車載器なども手ごろな価格になってきていますから、ETCをいまだ導入されていないという方も、これを機会に車載器を装着しても良いかもしれませんね。

ただ、費用面ではそれなりの負担が必要です。いまから取り付けるならETC2.0車載器の導入が間違いないでしょうし、あわせてETCカードの申し込みが必要となります。カーナビなどと連動しない単体タイプのETC2.0車載器の購入と取り付け、そしてETCのセットアップで大体2~3万円程度。それなりの費用はかかりますが、想像よりはリーズナブルなのではないでしょうか。

カーリース契約の際にETCを
装着しなかった場合どうすればいい?

ETC2.0の車載器なら圏央道など限定的ですが割引なども受けられます。また、高速道路をいったん降りて道の駅へ寄り道をする(別途料金はかからない)といった従来のETCではできなかったとも可能です。料金所で人との接触を避けられるだけでなく、そういった利便性の高さも魅力といえるでしょう。いままで頑なにETCを使用してこなかった人も、「新型コロナ対策の一環でもあるし…」という大前提もあることですし、そろそろマイカーに装着してもいいのではないでしょうか。

ただ、マイカーなら自由にカー用品の取り付けは可能ですが、カーリース車の場合はどうなのでしょうか。リース契約時にオプション(標準装着者もありますが)のETCを選ばなかった場合、あとからこういったカー用品を取り付けてもいいのでしょうか

カーリースでは通常クルマのカスタマイズや改造は許されていません。なぜなら、リース車両は契約者が購入したものではなくあくまでリース会社から借りているクルマだからです。最終的には原状回復して返却(返却不要のリースもあります)しなければなりません。契約期間中はユーザーがそのクルマを自由に使用することはできますが、クルマの所有者はあくまでカーリース会社なのです。

ということはそのクルマを改造するといいのは例えるなら人から借りているクルマに勝手に手を加えるということになるのです。友達にクルマを貸したら勝手にエアロパーツが取り付けられていたり、オールペンされて色が変わっていたなんてことがあったら大問題ですよね。

カーリース車両に
ETC車載器を後から装着はOK?

じゃあETC2.0車載器が欲しくてもカーリース車の場合後から取り付けるのはダメなのか?必ずしもそうではありません。なぜなら改造やカスタマイズがNGの理由は原状回復が困難なためであって、問題なく原状回復が可能ならば、ある程度のカスタマイズは許されているのです。

違法改造などは言うまでもなくNGですが、クルマそのものに加工を施すようなものでなければほとんどの場合OK。例えばドライブレコーダーやカーナビなども簡単に取り外すことができクルマにダメージを与えないのならば問題ありません。ということは後つけでETC車載器の取り付けだって大丈夫ということになります。

では、リース車両に後つけでETC車載器を取り付ける場合費用としてはいくらくらいかかるのでしょうか。まずETC車載器はただ買って取り付ければいいというわけではありません。導入には以下のようなステップが必要となります。

  1. ETCカードの申し込み
  2. ETC車載器の購入
  3. ETC車載器のセットアップ
  4. ETC車載器の取り付け

1.のETCカードの申し込みに関してはクレジットカード会社が発行しているETCカードを事前に入手しておきます。ETCカードもしくはクレジットではないETCパーソナルカードがなければETCは使用できません。

入手が簡単なのはクレジットカード会社のETCカードです。普段利用しているクレジットカードがあればそちらに申し込むとたいてい無料で発行してもらえるはずなので事前に手に入れておきましょう。ETCカードは一枚あればレンタカーやカーシェアリングのクルマのETC車載器などに挿入して使用することも可能なので、ETC車載器を取り付けなくても入手しておいて損はありません。

次に2.のETC車載器の購入ですが、ETC車載器はディーラーやカー用品店、自動車整備工場などで購入できます。またネット通販などでも購入が可能です。

ETC車載器はただ取り付けただけでは使用できません。3.のセットアップという作業が必ず必要です。これは、その車載器に車両情報を登録するというもので、正しくセットアップを行うことでその車両ごとに設定された正しい料金の支払いが可能となります。そのため、一つの車載器を複数車両で共有するのは違反です。例えば奥さんの軽自動車に取り付けたETC車載器を、旦那さんの普通車に移設して高速道路を走ってしまうと道路整備特別措置法(第24条第3項)違反となります。不正通行については、通行料金に加えてその2倍に相当する割増金を請求されるそうです。

このセットアップ作業は、必ずセットアップ登録店に依頼します。通常ETC車載器販売店で行うことが可能です。大手カー用品店なら車載器の購入からセットアップ、取り付けまでワンストップで行える上、セット料金が提示されているので分りやすいでしょう。
そして肝心の4.ETC車載器の取り付けです。取り付けは販売店で行ってもらうのが一般的です。取り付けには工賃がかかります。大体4,000円~5,000円ほどでしょうか。カーナビ連動型などでなければ、クルマから電源を取り、アンテナと本体を固定するだけなのでDIY好きなら比較的取り付けは難しくありません。費用も節約できます。

ただし、取り付けたもののアンテナ位置が悪く上手く作動しなかった、などというトラブルが発生する可能性もあるので、自信のない方はプロに任せてしまったほうが確実です。オートバックスなどの大手カー用品店では、ETC2.0の車載器代からセットアップ、取り付けまで行ってコミコミ23,000円~で導入可能です。なのであればわざわざDIYで取り付ける必要はないかもしれませんね。

カー用品店などで取り付けをお願いする場合は、リース満了後にクルマは返却するので車体への加工はせず、きれいに取り外せるように装着してくださいとお願いしておくといいでしょう。

いまから取り付けるなら
ETC2.0車載器がおすすめ

とにかく費用を節約したいのであれば、ネット通販で従来型のETC車載器を購入してDIYで取り付けるということも可能です。ETC車載器はクルマごとのセットアップが必要なのに通販可能なの?と思うかもしれませんが問題ありません。セットアップ込のETC車載器を購入すればいいのです。

通販で販売されているETC車載器は多くがこのタイプであらかじめセットアップの料金が販売価格に組み込まれています。ETC車載器を購入に合わせて車検証の写しや委任状などの書類を送ると販売店側でその書類をもとに車載器をセットアップして購入者に届けてくれるというわけです。

あとはセットアップした車載器をDIYでクルマに取り付けるだけでETC導入が完了です。これなら費用はかなり節約できます。ネットで検索してみると安いものならセットアップ込みでも1万円以下、6,000円程度のものもあります。

ETC車載器のDIYでの取り付けは筆者も過去に経験していますが、決して難しくありません。クルマから常時電源とACC電源、アースを取りETC車載器につなぎアンテナと本体を車内に設置するだけです。電源類の確保とケーブルの処理が面倒ですがオーディオやナビの取り付けなどよりもずっと簡単。ネットを検索すれば詳しい取り付け方の解説動画なども多数公開されているのでそちらを参考にするといいでしょう。ただ、取り付け自体は難しくありませんが、ETC車載器選びに関して気を付けなくてはいけないことがあります。それはなんなのか?

古いETC車載器がもうすぐ使えなくなる?
2022年問題、2030年問題とは

気を付けなくてはいけないこととは電波法の改正によって2022年12月1日以降、一部のETC車載器が使用できなくなるということです。現在販売されているものであればほとんどが新規格をクリアしていますが2007年以前に製造されたETC車載器の場合、一部のモデルは使えなくなる可能性があります。

やっかいなのは新規格に対応しているかどうかは車載器管理番号などから見分けることができないということ。メーカーなどに問い合わせるしかありません。ちょっと面倒ですね。やたら安いETC車載器が通販で売られていたらもしかしたらそれは旧規格のものかもしれません。

また、今まで他のクルマで使用していたETC車載器を、新しく契約したリース車両のDIYで取り付け再セットアップして使おうと考えている場合も注意が必要でしょう。そのまま使えてしまう可能性もありますが、間違いなく電波法違反になります。新規格に対応したものに買い替えたほうが無難ですね。

さらに選ぶうえでもう一つ確認しておかなくてはならないことがあります。こちらのほうが重要です。それはETC車載器のセキュリティ規格の変更にその車載器が対応しているかどうかです。

この新セキュリティ規格は、盗聴や改ざん等の不正防止を目的に定められた情報安全確保の規格で2030年ごろに変更が予定されています。これが導入されると、対応していない古いETC車載器は一切使えなくなるのです。

2030年ならまだ先という気もしますが、あくまで2030年ごろ導入予定、となっており場合によっては(セキュリティホールのようなものが発見されたら)それよりも早く導入される可能性もあります。そうなった場合せっかく新品のETC車載器を取り付けたのにたった数年で使えなくなってしまうかもしれないのです。

この新セキュリティ規格には、従来型ETC車載器は対応していないというわけではありません。現在販売されているものはほとんど対応済みです。逆にETC2.0の車載器であっても、過去に販売されたものは新セキュリティ規格に対応していないものもあります。

つまりETC2.0だから大丈夫というわけではないのです。ただそのETC2.0車載器が新セキュリティ規格に対応しているかどうかは簡単に確認が可能です。ETC車載器の管理番号を確認してみてください「1」からはじまっていればその車載器は新セキュリティ規格に対応しています。もし「0」からはじまっていたら残念ながら新セキュリティ規格非対応です。またカード挿入口付近に■マークが印字されているものも非対応です。

いずれにしてもこれからETC車載器を新たに取り付けるのなら、従来ETC車載器でもETC2.0車載器でも新セキュリティ規格対応かどうかは必ず確認するようにしましょう。

ETC車載器を導入するなら
新セキュリティ規格対応の最新モデルを

カーリース車両であっても後つけによるETC車載器の導入は比較的簡単だということがお分かりいただけたでしょうか。ポイントは今からETC車載器を導入するなら、通販などで安易に安いものには手を出さず、新セキュリティ規格に対応した最新のETC2.0車載器を購入するということです。費用は多少かかりますが、料金割引や、渋滞情報の入手、道の駅への立ち寄りなどといったETC2.0ならではのメリットもありますし、2030年以降も問題なく使用可能です。

「お金もかかるしめったに高速なんて使わないから」とETC車載器を今まで使ってこなかったという人もきっといるでしょう。しかし、首都高速などすでにETC以外ではかなり割高な料金となっていますし、前述の通り、もしかしたらETC車載器がなければ高速や有料道路が使えなくなる未来がくる可能性もあります。クルマがあるのに高速や有料道路が使えないなんてさすがに不便すぎますよね。

さすがに新型コロナの給付金もさすがにもう振り込まれているでしょう。無理にとは言いませんが、使い道に関して多少余裕があるのなら、本気でETC車載器、それも最新スペックのETC2.0車載器の導入を検討してみてもいいのではないでしょうか。